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アガサ・クリスティー探偵名作集 24 オリエント急行殺人事件 下 アガサ・クリスティー/著 岩崎書店

2022-09-11 14:13:00 | 
2000年初版 各務三郎/訳 安藤由紀/挿絵


「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください


アガサ・クリスティー探偵名作集 23 オリエント急行殺人事件 上 アガサ・クリスティー/著 岩崎書店



【内容抜粋メモ】

<寝台車の見取図>





<登場人物>
ポワロ:私立探偵
メリー・デベナム:バグダッドで家庭教師をしていたイギリス婦人
アーバスノット大佐:イギリス人陸軍
ブック氏:国際寝台車会社重役
ラチェット:初老のアメリカ人 カセティ
マックィーン:ラチェットの秘書でアメリカ人
エドワード・ヘンリー・マスターマン:ラチェットの付き人?
アントニオ・フォスカレリ:イタリア人 自動車の代理店経営者

ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人:ロシア人の大富豪
メイド:ヒルデガルデ・シュミット
アンドレニ伯爵夫妻:ハンガリー公使で妻は若くて美人のエレナ・マリア 旧姓ゴールデンベルグ 20歳
キャロライン・マーサ・ハバード老夫人:娘の話ばかりしているアメリカ人
コンスタンチン博士:ギリシャ人医師
ピエール・ミシェル車掌:15年勤務の正直者
グレタ・オルソン:いかにも気の良さそうなスウェーデン人
ハードマン:セールスマンに扮した探偵

デイジー・アームストロング 誘拐され殺された少女
父:アームストロング大佐
母:ソニア リンダの娘
リンダ・アーデン:アメリカ人の有名な悲劇女優




●ハードマンの証言




セールスマンと言うが、実はラチェットに護衛を頼まれた
マクニール探偵社の探偵と明かす

“小柄で髪が黒く、女のような声をした男”に狙われていると言われて
ドアを開けて見張っていたが、外部からは誰も通らなかった

ポワロ:誰にも当てはまらない人相ですよ



●イタリア人 アントニオ・フォスカレリの証言
自動車の代理店経営者

ポワロ:この事件は極めて綿密に計画された知能的な犯罪

デベナムも背中に龍の刺繍が入った赤いキモノの女性を見たと話す






●ドイツ人女中 ヒルデガルデ・シュミットの証言
ヒルデガルデ:車掌はどこかの部屋から出たところだった





3人の車掌を呼ぶと、この中の誰でもない
口ひげを生やした“小柄で髪が黒く、女のような声をした男”だったと話す





(12カ所刺されたことと、乗客の数が同じだと気づいて
 犯人と動機も確信したが、どのようなトリックだったのかまでは分からない



凶器のナイフ
血まみれのナイフがハバード夫人の洗面用具入れから見つかり
イスタンブールの市場によくあるタイプと分かる

ハバード夫人は部屋を替えてくれと頼み、アテネ=パリ行きの車両に移る
内部は同じで向きが逆

部屋の中で再現させて、かんぬきが取っ手の下で見えないことを確認する



乗客の荷物検査
アーバスノット大佐の部屋から現場と同じパイプクリーナーが見つかる

グレタをハバード夫人の慰み相手が必要と部屋を出てもらい
デベナムに急行に乗る前、アーバスノット大佐に
「今はダメ すっかり片付いたら」と言った意味を聞くと
「これだけは言えない」と断る






ポワロ:
急行に間に合わないとしても、毎日出ているのに
なぜあんなにうろたえていたのか?

デベナム:ロンドンで友だちが待っているから

ポワロ:
では、今、雪で連絡もとれない状態なのに
なぜそんなに落ち着いているのか?

デベナムは唇を噛んで何も言えなくなる

ポワロ:ウサギを捕まえるには、穴にイタチを放すこと



●車掌の制服と赤いキモノ
ヒルデガルデのスーツケースから、自分が見たと言っていた
謎の車掌の制服が出てきて驚く
3つ目のボタンがない

ポワロ:
犯人はあなたとぶつかって、脱がなければならなくなり
あなたのスーツケースに入れた

もうあとは我々の脳細胞に頼るしかありません

タバコを取りに部屋に入ると、ポワロのカバンから
赤いキモノが出てくる






●食堂車での瞑想

ポワロ:
雪に閉じ込められて、どの証言が正しいか確かめることも出来ない

ラチェットは外国語が出来ないのに
こなれたフランス語だった

ポワロは証言をキレイにまとめて、10の疑問点を提示する
Hと刺繍されたハンカチ、パイプクリーナー、キモノ、時計の針など

あらゆる階級、年齢、国籍の客が冬に満席になることは珍しい
急行に乗らなかったハリスも気になる

アンドレニ伯爵夫人のパスポートの油のしみは新しい
エレナではなく、ヘレナで、書き換えて油をたらして隠した
伯爵夫人のカバンのラベルも同様だった






雪が基本計画を壊してしまった
降らなければ、イタリア警察で証言して外部の犯行にできたが
汽車は動かないため、犯人が車内にいると分かってしまう

ラチェットは敵は彼がよく知る私怨によるものと分かっていた
脅迫状はなぜ命が狙われているか知らせるため

リンダの本名はゴールデンベルグ
アームストロング夫人の妹で、悲劇の時は少女だった
ヘレナ・ゴールデンベルグ



ヘレナ・ゴールデンベルグ
食堂車でエレナがヘレナだと明かすと認めるが
ハンカチは自分のものでないと否定
伯爵は妻は殺人に関与していないと誓う

自殺したメイドの名前はスザンヌというフランス人
乳母はステンゲルベルグ
家庭教師はフリーボディという大柄な女性


ドラゴミロフ公爵夫人がHのハンカチは自分のもので
ロシア文字のHはNだと明かす

ドラゴミロフ公爵夫人:この事件は、厳しい正義が行われたのだと考えています

アーバスノット大佐にデベナムがアームストロング家の家庭教師だったというと狼狽える

デベナム:自分で生計を立てねばならず、新聞に出たら雇ってもらえない

証言の途中でいきなり泣き出して、大佐は慰め、ポワロに激怒する

アーバスノット大佐はアームストロング大佐の従卒





フォスカレリはアームストロング家の運転手
グレタは乳母だと言うと、激しく泣き出す







2つの解決策
ポワロはついに乗客を集めて2つの解決策を話す






1つは、犯人は途中の駅から入り、車掌の制服を着て
ラチェットを殺害、発車直前にドアから降りた

もう1つは、種々雑多な人の集まりはアメリカならあり得ると気づいた
アームストロング家の悲劇の人物にそれぞれ当てはめてみた

命を狙われているラチェットが睡眠薬を飲むのはおかしい
召使いかマックィーンが飲ませた

部屋は偶数と奇数で向きが逆になっていて
ハバード夫人の部屋からはかんぬきが見える

時計を寝る時ポケットに入れるのは不自然
犯行後に入れられた

車掌が呼ばれて声がしたのは、ポワロに聞かせるため
ラチェットはクスリでまだ眠っていた
殺人時刻を狂わせるため

この事件はみんなが関係していた
それぞれの証言でアリバイが成立する
12人の陪審員が死刑執行人の役をした

“小柄で髪が黒く、女のような声をした男”は
男女誰にも当てはまる巧妙なウソ

みんなで1人ずつハバード夫人の部屋から入って刺したため
どれが致命傷かは誰にも分からない

さらに混乱させるため、2つの遺留品を置いた
キモノの女性も作り話

焼いた手紙のアームストロングという文字が発覚して
みんなで関係を否定しようと決めた

車掌を加えると13人になる
では誰が無実なのか?
伯爵は夫人ヘレンの代わりを務めた

ハードマンはスザンヌと恋仲だったと想像される

ハバード夫人はこのドラマの主役を演じた
アームストロング夫人の母で名女優のリンダ(!

ハバード夫人:
前から一度喜劇を演じてみたいと思っていました
偶数と奇数でかんぬきの位置が違うとは考えもしなかった
やはり日ごろの稽古が大切ですわね

ハリスは架空の人物
発車間際にポワロが来て混乱した

どうしても表沙汰にされるなら、私だけの罪にしてください

ポワロはブックとコンスタンチン博士に意見を聞くと
2人とも迷わず、1つ目の解決が正しいと言い

ポワロ:私はこれで事件から手を引かせていただきます


見事な幕切れだな




作品と解説 各務三郎
小説の題材や背景には、実際あったことが登場することが多い

ドイルの『恐怖の谷』の秘密結社は、実際アメリカの炭鉱地帯で勢力をふるい
殺人さえしたモリー・マガイア団がいた

環境保護論者ロス・マクドナルド『眠れる美女』の背景には
海底油田から漏れた原油に汚染された海が広がるが
1969年、カリフォルニア、サンタ・バーバラ沖の原油漏出事故がモデル

本書のモデルは、当時、世界中で報道された「リンドバーグ事件」
1927年、世界で初めて単独で大西洋の無着陸横断飛行に成功した人物(驚×5000

その5年後の1932年、一人息子で2歳のチャールズが屋敷から誘拐され
7万ドルの身代金が払われたのに、4マイル先の道ばたで死体で発見された
メイドも疑われて自殺した

2年半後、ブルーノド・ハウプーマン、35歳のドイツ系大工の自宅から
身代金が見つかり、裁判の末、有罪となり、
翌年、電気椅子で処刑されたが
最後まで無実を主張していた

(都市伝説みたいな事件だな・・・




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