メランコリア

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少年少女サスペンス推理 3 メニエ騎士像のなぞ アンドレ・ノートン/著 学研

2023-07-13 17:01:33 | 
昭和51年初版 長谷川甲二/訳 由谷敏明/絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください



戦時中のスパイものは複雑で要点がボカシてあって苦手…
国家や企業間ではいつもこんな裏工作をしているって本当にご苦労さま

地下活動とかって、常に監視、尾行されていたりして自由がないのと
窓もない狭い部屋にずっと隠れたりする描写があると息苦しくなる

あとがきを読んでようやく全貌がわかった
これを読む対象年齢の少年少女に理解できるかどうか疑問

一度目に焼き付けたら忘れないドラえもんの未来道具みたいな能力はいいな
いや、忘れることができるのがヒトにとっては幸せか


【内容抜粋メモ】

登場人物
クイン・アンダース 歴史家 学者の父ウィルソンの本を完成させようとする 19歳
スターク 兄 CIA アメリカ陸軍情報部員 クインとは母が違う

ファン・ノーレス オランダ人宝石商 第二次世界大戦中、スタークと仕事していた
ローレンス・ケーン アメリカ人 ノーレスの部下
サム・マルサキ 日系アメリカ人 ノーレスの部下
ダーク オランダ人
ヨリス オランダ人記者
ウォースバーグ ヨーロッパとアジアのハーフ
リー・クォング 東洋人







●トロイの木馬
クイン・アンダースは、兄スターク大尉とともに仕事をしていたノーレスを訪ねる
6週間前、兄から手紙が届き、ノーレスに会うよう書いてあったと話す
手紙はクインにしか分からないような暗号的な内容

同封されていたトロイの木馬を割ると、9センチほどの像が出て来る
大主教メニエの宝で13体あるうちの1つ

兄は事故死したと聞いたが、なにか事件に巻き込まれて殺されたに違いない
それを調べるためにマーストレヒトに行きたいと話す






●合言葉はロオアジャクト
ノーレスの部下マルサキを紹介される

父の形見の腕時計に誕生日や星まわりを表す宝石を埋め込まれる
7つの宝石のかしら文字から「ロオアジャクト」という合言葉を教わる

ノーレス:
ドードレヒトに着いたら、デイドリッヒ・ベブルートという男がやっている骨董店に行くこと
これは戦場のない戦争だ
ヨーロッパではドルはひっぱりだこだ

5枚の顔写真を見せて、ベブルート、ローレンス・ケーン、コーニイ・スミッツ、クォングらの名前を教え
クインは歴史研究家として旅行することなどを忠告


●1万ドルのニセ札
ファン・ヌールデンと名乗る男がやたらとまとわりついてくる

兄が殺される直前に書いた手紙が届く
どこかのレストランのメニューを破いて慌てて書いた様子
「記憶を売る男」とある

受け取った封筒の中には1万ドルのニセ札が入っていた
通貨密輸の罪に陥れようという計画を見破り

古本屋で本を買い、包み紙で封筒を作り、ニセ札を入れて
切手なしで警察に届くよう投函

骨董店に入り、ベブルートに時計を見せると
「りこうなおすネコ」というレストランに行けとすすめられる


●黒ネコのいるレストラン

ノーレス:
僕はダメだよ、兄さん
こんなことがしょっちゅうなのかい?
この心細さを兄さんは味わっていたの?
誰にも頼れない恐ろしさを?



レストランの奥に鎮座するヨンクフラウ・ファン・ナル「ゼロの貴婦人」に会う
ロオアジャクトと名乗るがなかなか信用されない







ゼロの貴婦人:
あなたは知りすぎています
いや、知らなすぎるのかもしれません

ホテルに戻ると「警察が、そこへ、今夜」と電話があり、切れる

窓から侵入する男と格闘になり、男は落下死して、警察に追われる身となる
頼る者もいないため、またゼロの貴婦人にかくまって欲しいと頼む

落下死したのはドッペルガンガーという下っ端の悪党
ものすごい奥にある窓もない地下室で一夜を明かす

ドッペルガンガーの雇い主はゼロの貴婦人の敵と分かり
「記憶を売る男」について教える


●記憶を売る男
レストランの給仕ヨハンはクインに目隠しをして、長々とボートを漕ぐ
急にモダンな建物の中に入り、ファン・ト・ザラフダ「そっくりそのもの」と名乗る男に会う

記憶を売る男:
ホテルに泊まった男は君ではなかったことにする
君はヨットにいる友人を訪ねて、そのまま乗っていた
1分刻みに目撃を証明できる仕掛けになっている

マーストレヒトに着いたら、ゲルハルツ・ルース博士を訪ねること
君は立派な推薦を受けている
味方として無料で助けてやるのだ

君はこの3日間、ダーク・ファン・ダル・ホルヌの客だった
彼は「しんせつおまわり号」というヨットを持っている

風邪菌のついたハンカチを吸い込むと、クインは数日後に風邪をひく/驚


●しんせつおまわり号




ヨットには他にも数人の男が乗っている
新聞記者のヨリスもその1人

海外で過ごしていたオランダ人は、植民地がなくなり
職も家もなく本国に続々と戻ってきていた

ダークの城に着くと、父ハガフと学説で熱い議論を交わす

スターンリッツ家の最後の大公は行方不明で結婚しなかったため継ぐ者もいないが
大叔母フラーラ・マテルダは大公の妹だから会ったほうがいいと勧められる

ヨリスに誘われたレストランは、兄が最後の手紙を書いた場所

ヨリスが調べているチュバック氏は、戦友から手紙が来て
訪ねて行ったきりファルケンバーグで行方不明になった

ウィルヘルム・ウォースバーグという男に尾行されていると教えられる

有名な歴史学者ルース博士に会いに行き、歴史について話し合った後
兄についての事情を明かし、「猟犬隊長」からの連絡を待てと言われる

ルース博士:
持ちつ持たれつでいないと粉々にされるだけだ
団結が今の時代のモットーだ

ノーレスの部下ケーンを見かけ、セント・ベータースバッハの大洞窟に行く計画を聞く
有名な観光地で、複雑に入り組んだ地下道は案内人がいないと迷って死んだ人もいる
戦時中、地下組織に使われた秘密通路もあり、ベルギーへの抜け道もあるという噂

ドアの下に猟犬隊長からのメモが入れられる

ヨリスからの暗号文をもらい、訪れると狙撃され
尾行していたウォースバーグがなぜか体当たりして助けてくれる
協力しないかと持ちかけるが断られる







暗号文はニセモノだった
ウォースバーグはスターンリッツ家の最後の生き残りではないか説が出る

万一の護身用にペンタイプの小型ピストルをもらう
ヨリスは地下通路につけた秘密の目印を知っている

チュバックの部屋を探したら、1匹の竜の絵を見つけた 紋章の一部か?


●にせ騎士の像
ケーンはにせの騎士像を見せる
底につくった職人の葉の形のサインがある その名はワルファンファー
像のニセモノを売ってドルを得る計画があると思われる


●フラーラ・マテルダの古城




マテルダはエリザベス一世にそっくりで驚く
兄も以前、彼女にメニエの宝について聞きに来た

西ドイツに潜入しようとして監視兵に撃たれた男が
死ぬ前に騎士の像を兄に渡した
スターンリッツ家の狩猟小屋で見つけた

マテルダが誕生日祝いに贈られたブローチにも1匹の竜が描かれている
カーロフ家の紋章で、造ったのはハガフ
ノーレス商会のつながり

チュバックはワルファンファー職人ではないか?

マテルダ:
これはよせ絵といいます
ほかの人の絵を切ったり貼ったり、人生に似たところがある
完成した作品はあなた自身のもの
他人の作品をあてにしないで、ご自分の絵をおつくりなさい

クインはルース博士にオドカー塔について調べて欲しいと頼む

ヨリスにチュバック、兄の事情について話すと
すぐに洞窟に向かおうと言う


●セント・ベータースバッハの大洞窟
ウォースバーグは先に入り、その後を新たな尾行者が追って入った
洞窟を案内しようと言い寄ってきたハンス・ルウという男に頼む
洞窟内で2人は殴られ、縛られる








●オドカーの塔
ヨリスが印を見ながら、とてつもなく冷たい水が激しく流れる場所を越える
森に出て、土砂降りの雨の向こうにオドカーの塔が見える

橋が唯一の入口だが見張りが立っている
最初に見せてもらった写真を思い出し
地滑りで崩れ落ちた場所から中庭に入れるだろうと伝えるクイン
彼は一度見たら、頭に焼き付けて忘れない特技がある

ケーンは数日前からここにいて、塔の周りを見張っていた
宝はおそらく塔の真下にあると思われる







敵は5人 ケーンは見張りを縛りあげる
暗がりの中に大きな落とし穴があり、その上のロープを使って渡る仕組み







その先ではノーレスが最も要注意と言っていたクォングが指揮をして
ハンス・ルウとウォースバーグが宝さがしをさせられている

ウォースバーグはなぜかケーンに飛びかかり形勢逆転
クォングらは、ウォースバーグの父が
はじめの晩に死んだと告げて逃げ、扉を閉める
ウォースバーグは狩猟小屋に通じる秘密通路を教える

父と息子はクォング一味に捕らえられ
騎士像のありかを教えたら父を助ける約束だった


●メニエの騎士像
ハンス・ルウはクォングの撃った流れ弾で死ぬ
クォングの部下カマーは逃げたためヨリスが追う
ウォースバーグも撃たれて重傷を負う

逃げたクォングは森のあちこちに仕掛けられた爆弾にかかって死ぬ

11体の騎士像は見つかり、クインはホテルで目覚める
カマーと見張りの男は警察に捕まった

ウォースバーグは自分はスターンリッツ最後の大公の孫だと明かす
マテルダのことを話すとぜひ会いたいと頼む

大公は清王朝の王家のメイ王女と結婚
ロシア軍が満州に攻め入った時、父と逃げたがクォングに監禁された
オダンダに着くと、同じ騎士像を追うクインについて聞いて尾行した

ケーンは、メニエ像のニセモノを売り
ナチ残党の資金づくりをする計画があったと話す

クインとスターンリッツはマテルダを訪ねる

クインは本を書き上げて出版
ノーレスから連絡を受けて再会する

騎士像の買い手が見つかり、スターンリッツの今後の経済的問題は解決

ケーンの報告書でクインは頼りになる人物に値するとあり
仲間にならないかと誘われる

足が弱いことで迷惑をかけたことを恥じていたクインだが

ノーレス:
1人の男のできることが、他の男は出来ないことがある
僕らはいつも敵とにらみ合っている
こういったゲームに木偶の棒はいらん

ノーレスはクインに早速、次の仕事内容を話す

(こうしたことに“正義感”や“愛国心”、“男らしさ”を感じる者がいるかぎり
 スパイ活動もなくならないな
 それは結局は平和と真逆の方向に行く道を助長しているのと同じだと思う




あとがき
本書は一連のスパイ冒険小説「剣」三部作の1つ

CIAのスタークが不可解な死を遂げる
ナチの地下グループの残党が宝を利用して再建資金のドル稼ぎをするもくろみを
一挙に粉砕する物語

多彩な登場人物は架空だが、ドードレヒト、マーストレヒトはオランダの実在都市
セント・ベータースバッハの大洞窟は今も観光客が絶えない


アンドレ・ノートン
アメリカ オハイオ州生まれ
図書館の仕事、児童図書の編集、書店経営などした

SF作家としても世界的に有名
『星人の息子』
『惑星パトロール』
『宇宙はわがもの!』
『時間逆行機』シリーズは各国語に訳されて絶賛されている

歴史研究もして、アパッチ族、西インド諸島の海賊を描いた伝奇小説も書いている



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