メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『少年少女世界の名作 27 巌窟王』 大デューマ著 偕成社

2021-03-13 11:04:28 | 
著者/高垣眸
装幀/岡本かんじ
カバー絵/伊勢田邦貴
挿絵/中村猛男


「ジュヴェナイル」カテゴリー参照


これも貴重な「少年少女世界の名作」シリーズの1冊
杉並区図書館はなんでもあるなあ!

タイトルは知っていても読んだことのない本がまだまだたくさんあり
一度、物語に入ると、すっかりその世界の住人と化してしまう

宝探しあり、復讐劇あり、海賊も出てくるし
途中で円形劇場が出てきて『ポンペイ最後の日』ともリンクした/驚


今度は冒頭の「内容」のネタバレを読まないよう注意した/苦笑

たくさんの大人や子どもが読んだと思われ
あちこちにつぎあてのようにテーピングしてあり
傍線をふったあともある

お父さんを大デューマ、息子を小デューマて呼ぶって面白い



「この物語について」
『椿姫』で有名な大デューマの息子
1802年 フランス生まれ
自然に囲まれて暮らし、21、22の頃、パリに出て劇作家を目指す
苦しい生活が続いたが、『アンリ3世とその宮殿』が大成功をおさめて
フランスの人気作家となる

本書の原題は「モンテ=クリスト伯爵」



■囚人三十四号
「イフの古城」には政治犯などが幽閉されている
エドモン=ダンテスが監禁されたのは19歳の時

もとはモレルの船ファラオン号の代理船長を務め
メルセデスと結婚式を挙げている最中に捕らえられた

朗らか、誠実、勤勉、誰からも愛された青年は
正式な裁判にかけられないまま長年幽閉され
性格や容貌まですっかり変わり果てた

ついに自殺を決意した時、牢破りが壁を掘る音を聞く


■壁をへだてて
仲間を得て、拒んでいた食事をとり
体力と希望を取り戻すダンテス
彼もまた皿を割って道具を作り、ベッドの脇を掘り始める

鉄鍋の柄を使うとより効率的に掘れるようになり
ついに牢破りの相手と話す


■二十七号の気狂い法師




ダンテスはナポレオンの陰謀に荷担したという無実の疑いで投獄されたと話す

牢破りは、海に続く断崖から飛び降りて
無人島まで泳いで逃げる計画だったが
測量を間違えたと絶望する

ダンテスは法師の智慧と
自分の若い力があれば脱出できると誓う


■相寄る魂
法師とダンテスの部屋には15mほどの通路が出来、行き来するようになる
道具を作り、7年もかけて地下道を掘り続けたという
法師の智慧と根気に脱帽するダンテス


■長いあいだの疑問
2人は再び牢破りの計画を立てる
牢番の真下まで掘り、牢番を縛り
海を泳いで無人島テイブランカ島に逃げる

掘り進める間、ダンテスは法師の底知れぬ智慧をスポンジのごとく吸収していく
地理、数学、歴史、、、

ファリア法師は、イタリアの名門スパダ家に仕え
数万冊の蔵書を読んだ大学者

自分がなぜ投獄されたのかを推測してもらう
ダンテスはマルセーユで老父と住み
見習い水夫として働いていたことを話す


■フェルナンとダングラール
法師はなにか心当たりはないかと聞く

最後の航海の時、船長に頼まれて
ボナパルト党のある人物に親書を渡すよう頼まれたという

誰か恨む者はないかと聞く
若くして船長になるダンテスを妬む船員ダングラールと
メルセデスを愛していた従兄フェルナンを思いつく

逮捕された時のことも詳しく話すと、すっかり推理する法師
奇妙な告訴状の文字は筆跡がバレないように
ダングラールが左手で書いたもの

逮捕の2日前、2人が居酒屋で紙を前に親し気に話していて
酔った仕立て屋のカドルッスがそばにいたことを思い出す

ビィルフォール代理検事は親切だったが
告訴状を見るなり焼き捨てた
宛名はボナパルト党の領地ノワルテイユ つまり彼の父

すっかりハメられたことを知り、1人復讐を誓うダンテス


■業病の発作
2年間掘り続け、ようやく牢番の下まで来た時
遺伝性の発作カタレプシーに襲われる法師



■かくしインクの遺書




クスリで一命をとりとめるが
次の発作で助からないと言う

半身も動かず、海を泳ぐことも出来ないから、1人で逃げろというが
担いででも一緒に行くと誓うダンテスに心打たれ
ある古い紙を見せる

法師:わしはこの財宝のことを言うたび気違い扱いされた と話し出す

1498年
法皇は散財の挙句、富裕層を招待しては毒殺し、財産を召し上げていた
スパダ当主は、次は自分の番と、全財産を7つの櫃におさめて隠した


■スパダ家の大財宝
スパダ家当主セザールは
地中海の無人島モンテ・クリスト島の巌窟に財宝を隠し
毒杯を飲まされて死んだ

その後、法皇も身内も血眼で探したが見つからず
智慧者ファリアを秘書として雇った

セザールは、一切をファリアに譲る遺言をのこした
その後、系図書に紙が挟んであるのを見つけ
偶然火に当たって文字が浮かび
財宝の隠し場所が書かれていた!

慌てて島に行こうとしたところ
独立運動の陰謀家の一味と疑われて投獄された
牢番に分け前をやるから出してくれと頼んでも気違い扱いされた

法師:
牢から出たら世のため人のために使うはずだったが
わが子よ、最後の贈り物として受け取ってくれ


■死体袋のなかへ
こうして法師は牢獄で一生を終えた

囚人は麻袋に入れられて持ち出される

堂々と出て行けるのは死人のみ!
その袋に入って脱獄しようと思いつくダンテス

法師の遺体を自分のベッドに寝かせ
袋に入って、時間を待つ

とうとう外に出られたはよかったが
足に錘をつけられ、そのまま海に放り込まれてしまう


■嵐の海で
思わず大声を出してしまうダンテス
法師の形見のナイフで海底で袋を切り裂き
無人島テイブランカに泳ぎつく

しかし、すぐにバレて、村にもしらせが来るだろう
どこに逃げれば?


■密輸船
そこに密輸入の船が通りかかる
そこなら役人に引き渡されることもないだろうと
嵐で難破した水夫を装って助け出される

人の良いジャコポに介抱され
船長に雇われるダンテス


■かわった面影
このあたりの海は自分の庭のように知っているダンテス
その人柄は誰からも好かれ、船のさばき方は船長も感心するほど

今が1829年で自分がもう33歳だと分かる
ダングラール、フェルナン、ビィルフォールに
神に代わって罰を与える決意を固める

すっかり容貌が変わったことを確かめるため
昔行きつけの理髪店でぼうぼうに伸びた髪とヒゲを切ってもらうが
誰もダンテスと気づかないばかりか
智慧、品位、威厳を身に着けた立派な青年になっていた


■モンテ・クリスト島
船が密貿易のためにクリスト島につけた時
なんとか1人で残るため、狩猟後、足が折れて動けないから
食べ物を置いて、次通る時に迎えに来てくれと頼む


■掘りだした大櫃
紙に書かれた通り、20番目の大岩を火薬で吹き飛ばすと洞窟がある
闇にすっかり慣れた目で、2番目の洞窟に入り
足元を掘ると大木箱が見つかる

そこには金塊、あらゆる宝石が砂利のようにおさめられていた!
1箱だけでも世界中と肩を並べられるほどの量





これをどう処理するか用意周到に計画を立て
小さな宝石5個だけ取って
5日かけて元通りに埋め戻す

船に迎えられ、港のユダヤ商人に売ると
「これほど上質のダイヤが5個も揃うなんて見たことがない」と欲深く喜ぶ

船長には叔父が亡くなり
莫大な遺産が入ったため暇を頂くと言い
ジャコポを部下に引き取る


■悲しい消息
ダンテスは豪華な船を新造させ、秘密仕掛けの金庫に
島から運べるだけ財宝を入れる

ジャコポに老父とメルセデスの消息を調べさせると
ダンテスが捕まるとすぐ父は亡くなり
メルセデスは行方不明と分かり悶え泣き
復讐の決心を新たにする

善人には幸福を 悪人には懲罰を
物と心の準備が出来上がり
故郷のマルセーユにあがる


■旅法師とダイヤモンド
仕立て屋カドルッスは、商売が上手くいかず
安宿の主人となったが、そこも貧しい状態

そこに旅法師(ダンテス)が訪ね、ダンテスのことを聞くと
ツーロンの牢で死んだと言う






旅法師はその死の際の懺悔を聞き
同じ監房にいた貴族からもらったダイヤモンドを
親しい者5人に渡してくれと頼まれたと話す

老父、メルセデス、カドルッス、ダングラール、フェルナン

カドルッスはダングラールとフェルナンこそ陥れた犯人だと言い
居酒屋で聞いた話をする



■ファリア法師の明察

カドルッス:
老父は息子を失った悲しみで飢え死にした
最後まで見舞い、死を看取り、葬儀を行ったのは
自分とメルセデス、モレルさん

ダングラールはダンテスを妬んでいたし
フェルナンはメルセデスを愛していた

ダングラールがウソの密告状を書いて
フェルナンが投函した

ファリア法師の推測通りだった

なぜ証人にならなかったか聞くと
危険な国事犯だから同類と思われるとダングラールに脅されたため

ダングラールはパリで1、2を争う大銀行家に成り上がり
男爵となり、国会議員になった

フェルナンは戦争で手柄を立てたとかで伯爵から上院議員になった

メルセデスはなんとフェルナンと結婚した


ダンテスは動揺を押し隠して、カドルッスにダイヤモンドを渡す
その代わり、モレルが父に渡した古財布をくれと頼む

モレルは不運続きで破産寸前だと聞く



■左書きの密告状
トムソン銀行員(ダンテス)だと言って警務監察官ボビィルを訪ねる

モレルの船は次々難破し
最後のファラオン号が沈んだら商会は破産する
彼はモレルに預金を預けたため、娘の結婚式が挙げられないと嘆く

銀行員はその20万フランの債権を買い取ると言う
その代わり、ファリア法師も預金していたとウソを言い
イフの古城の囚人記録を見せて欲しいと頼む

ボビィル:
1人の囚人が死体袋に入って脱獄を試みたが
海に放り投げられて死んだ と笑う

記録簿に左書きの密告状が挟まれているのを見つけて懐に隠すダンテス



■モレル商会の悲運
モレル商会はみなの信用があったが
ここ数年で不運が続き、頼みの綱はファラオン号のみ

銀行員になりすましたダンテスは
手形など全部で28万フランほどになると話す

そこにファラオン号も沈んだとしらせが入るが
モレルは船員がみな無事なことを聞いて安堵する



■船乗りシンドバッド

銀行員:
あなたの破産は銀行にとって利益にならない
手形の支払期限を3か月延ばしましょう

娘のジュリー嬢には、船乗りシンドバッドから手紙が来たら
指示通りにして欲しいとことづける

仕方なく解雇された水夫長ペヌロンを呼ぶダンテス

その後、金の工面に奔走したが、とうとう期日となり
銃で死ぬ用意して時間を待つモレル

そこに船乗りシンドバッドから手紙が届き
ジュリーが行くと、モレルの古財布が置いてある


■うれしい奇跡
財布にはきっかり全額入っていた
船乗りシンドバッドはあの銀行員だと分かったが
なぜそこまでしてくれるのかフシギな親子

すっかり豪華になったファラオン号まで入港する
乗っていたのはペヌロンだった





■昔ばなしの主人公
さらに数年後

イタリアのカーニバルの日には
地元民も観光客も仮装して
すれ違う馬車に花などを投げ合ってどんちゃん騒ぎとなる

パリの社交界の花形の若者2人もやって来た
陸軍中将伯爵モルセール上院議員(フェルナン)の一人息子アルベール子爵と
親友のフランツ・デビネー男爵


2人は小島に猟に来て、焚火を見つけ
船乗りシンドバッドと名乗る男から招待を受ける

10年ほど前にこのモンテ・クリスト島を買い取り別荘を建て
時々保養に来て、水夫仲間を助けて、神のように崇められている

好奇心にかられた2人は目隠しをされて洞窟に案内される

洗練されたフランス語で40歳前後のトルコ帽をかぶり
青白い顔に威厳と気品をたたえ
鍛えられた肉体の主人(ダンテス)に会う

室内はどこにも劣らぬ贅沢な装飾で
急な客人にも関わらず、贅沢を極めた料理、珍果に舌を巻く2人

理想的な黒人執事のアリーは、無実の罪で舌を抜かれた男で
シンドバッドが救い出して忠実な部下となった

(ネモ船長みたいだな



■不老不死の霊薬
シンドバッドから不老不死の霊薬だという液体をもらって飲むと
天にも昇る気持ちになり、そのまま寝てしまう

目が覚めると辺りの装飾はもとの洞窟に戻り
シンドバッドはヨットに乗って発った後

2人は歯の立たない相手に兜を脱ぐ


■カーニバルの馬車
2人が街に着くと、部屋はどこも満員で粗末な部屋に機嫌を損ねる
他の部屋は全部モンテ・クリスト伯爵が貸し切ったという

カーニバルで高額になった部屋を
全部貸し切るとはどれほどの富豪か

馬車も1台も見つからず困っていると
ホテルの主人がクリスト伯爵に頼み、すぐに用意される



■モンテ・クリスト伯爵
お礼を言おうと部屋を訪ねると
中は豪華絢爛、趣味よく飾られている

モンテ・クリスト伯爵とは昨夜のシンドバッドと知り驚く2人
アルベールはすっかり強く惹かれてしまう

クリスト伯爵は2人を祭りの最初の行事
重罪人の死刑見物の一等席に案内する
(また物騒なエンタメだなあ↓↓↓

その前にアルジェンチナ劇場に観劇に行くと
その特等席にも天使のような美しい婦人を連れた伯爵がいる
親子にしては歳が離れているとフシギがる2人

1幕が終わると席を立つ伯爵と美女
2人も劇場を出て、大円形劇場を見に行くことにする

完全に廃墟と化し、ライオンやヒョウを入れた檻や
闘士の控室も名残をとどめるのみ



■シンドバッドと山賊
夜の闇に隠れてシンドバッドと山賊パンパが話しこんでいるのを見る
子分のベビーノが死刑にされるのを救う算段

暴れ者を使って首切り役人を殺すというパンパに

シンドバッド:
役人は職務を行うだけで罪はない
シンドバッドは不法な人殺しには荷担しない

法王庁は私に莫大な寄付を頼んだ
当日の結果を見ていたまえ


■死刑囚の特赦
断頭台に引かれた2人のうち、法王庁からの急使により
ベビーノの特赦が決まる(映画みたい

悪党のもう1人は怒り狂い、道連れにしようとするが捕まって断首される
昔は「寸断の刑」だが、現代は死体を寸断するのみ
(それだって残酷極まりないよ↓↓↓

根は優しいままのダンテスは、この残虐な様を見て
これから行う復讐を成し遂げるための修行だと耐える



■身代金4千フラン
死刑が終わるとローマ全市の寺院の鐘が鳴り
一瞬で歓楽の天国と化す

祭典は土曜から火曜まで4日間続く

生粋の貴族アルベールは心から楽しむが
デビネーは事情が違った

幼少で母を失い、将軍の父はボナパルト党に暗殺され
孤児となり、親戚に育てられ、辛酸を味わってきた

祭りが終わると喧噪はぴたりと止み、市中は暗黒と化す

アルベールが帰らないので心配していると
使いの者から手紙をもらい
山賊に囚われて身代金4千フラン用意しろとある

持ち金を合わせても足りず、クリスト伯爵に頼みに行く


■ペピーノじゃないか
夜中にも一心不乱に働く伯爵を見て
世間にありふれた道楽者とは違うのだとますます感心するアルベール

身代金4千フランをすぐに用意してくた伯爵に
手紙の差出人はパンパで、伯爵に恩義があるから
山賊からアルベールを救って欲しいと頼む

「人に恩をかけたことはない」とサラっと言う様を見て
人柄の奥ゆかしさにまた胸を打たれる

手紙を持ってきたのはベビーノだった


■土牢にねむる
鬼気迫るような寂しい場所に山賊の根城があり
伯爵が着くとパンパはアルベールが伯爵の友と聞いて驚く


■5月21日の約束
どのような場所、悲惨な運命に遭っても
明朗さを失わないのが生粋のパリっ子
(妙な基準だ

その点、アルベールは土牢の中でも平然と眠り、感心する伯爵

伯爵に救われて感激のあまり握手すると戸惑う姿に気づくデビネー
伯爵は一度もこれまで自分から握手しないことに気づくが理由は分からない

アルベールはパリに来たら真っ先に自分の屋敷に寄るよう伯爵を招待し
5月21日10時半に約束する

ついに復讐を遂げる機会が来たと神に祈るダンテス
このために、寝食を忘れて準備し、準備万端に整えてきたのだ



■午前10時半
約束の日
アルベールはパリの代表的な紳士4人と伯爵を引き合わせることにする

首相秘書官長ドブレー氏:政治の内情に通じた才人
貴族のシャトウ伯爵:古い貴族の出で、上流社会に通じる
民主新聞主筆ポーシャン:報道機関の敏腕家
軍人モレル大佐:アルジェリア戦線で勇名をとどろかせた軍人

「どこの国にもモンテ・クリスト伯爵なんて家柄はない」

と疑っていると、時間ぴったりに伯爵が現れて驚き
非の打ち所がない姿に、自分たちのほうが笑われないか身支度を整える紳士たち


■3個のエメラルド
ローマから馬車で来ても疲れた様子が見られないと記者が指摘すると
催眠薬で眠っていたとクスリを見せる

クスリより、その容器に驚く
鶏卵ほどもあるエメラルドが惜しげもなく削られてフタがつけてある

シャトウ:
これほどのものは昔スパダ家に3個あるという伝説を聞いたことがある

クリスト:私の家にも同じものが3個伝わっています

記者:近頃、トルコ国王が素晴らしいエメラルドを手に入れたと聞いた

クリスト:
私がある人の命と引き換えに献上しました
奴隷にされそうな少女を買い受けたのです

アルベールは劇場で見た美女ではないかと推測する

もう1個もローマ法王に献上したと聞き
ベビーノを救ったものだと思い当たる

みな、クリストはスパダ家の血を引いた者に違いないと思い込み
とても競争できる相手ではないと舌を巻く


■法律以上の力
アルベールが山賊から救われた話も信じないわけにいかない4人

ダングラール男爵は、内閣がかわれば大蔵大臣になるはずだという話になる

クリスト:
私もいずれお目にかからなければ
パリにおける私の取引銀行になるはずです

トムソン銀行の話が出て
モレルはそこの銀行員のお蔭で一家が救われたのだと話す
後で銀行に尋ねたら、そんな話は知らないと言われた


■モルセール夫妻
フェルナンは堂々とした将軍に変わっていたが
ダンテスにはまったく気づかずに
息子の命の恩人として迎えるが

クリストを見た瞬間、メルセデス夫人は幽霊を見たかのように真っ青になる
(そんなことがあるはずがない・・・)





■窓かけのかげから
動揺を隠しつつ、一人息子を助けてくれた礼を述べる

フェルナン:当家を自分の家と思って、いつでも自由に来てください

外につけた馬車はパリ一流の造りで
パリで評判の名馬が引いているのを見て感心するフェルナン

メルセデスは見送らず、両手で顔を覆い震えていた
病気かと心配する息子になんでもないと誤魔化す



■ダングラール男爵
クリストのパリの新邸はシャンゼリゼ街

金指輪やダイヤのネクタイピンを光らせて
ひと目で成り上がりと分かる
大銀行家ダングラール男爵がやって来るが門前払いをくらう

クリストはその様子を影から見て
男爵の馬車の見事な馬2頭を
今日中に買うようアリーに言いつける

ダングラール男爵はクリストが田舎大尽とはいえ
イギリスのロスチャイド銀行も得意先とあれば
甘い汁が吸えるとほくそ笑む

東方の野蛮国の豪族と思っていたが
クリストを見ると気圧される

クリストは「無限の信用が必要」と言い放つ



■大銀行の信用状
ダングラール男爵は命以上に金が大切な拝金主義者
クリストのためにいつでもご用立てすると約束すると
当座に600万フラン用意してくれと容易く言うクリストにたじろぐ


■栗毛の一対
今用意するのは無理だから明日届けると約束

名門貴族の生まれの妻を紹介すると
金に目がくらんで馬を売った男爵に怒る

明日、検事総長のビィルフォールの妻に貸す約束だと聞き
そうとは知らずと謝り、その1時間後、馬が戻るとともに
謝罪の意味として馬の額飾りにダイヤがつけられていた


■黒人の神技
クリストはオートイユの別荘に着くと
アリーの投げ縄の腕を買って
もうすぐ2頭の馬が来るから
門の前で止めろと言いつける

時間通りに来た馬車は、御者も振り落とされ
猛スピードで走ってくる

中にはビィルフォール夫人と愛する息子が
気を失わんばかりに叫んでいる

曲がり角でぶつかるとみんなが思った矢先
アリーが見事に暴れ馬2頭を止めてみせる





救ったのがクリストの部下と聞いて
命の恩人を必ず夫に会わせると約束する



■良薬か毒薬か
息子エドワールが失神しておろおろする夫人に
血のように赤い液体を飲ませると意識が戻る

クリスト:
クスリ箱の中には、なんの痕跡も残さず人を殺せる毒薬もあります
人の命を救うこともできれば、量を誤れば毒薬にもなる
中風にも効きます

父が中風で長年寝ていると話し、クリストからクスリをもらう夫人

馬の事件の噂は、社交界、全市中に広まった


■悪魔と天使と
翌朝、ビィルフォールはクリストに礼を言いに来る
クリストは法律学も学んでいると話す

クリスト:
法律の根源は復讐からきている
目をえぐられたら目をえぐりかえせというのが精神に思います

ビィルフォール:
それは昔のことで、今は社会の安寧秩序の維持で
全般の幸福のためにあります

クリスト:
私の奉じる法律は、人間が作ったものでなく
神のつくりたもうた法律です
私はそれを行うために遣わされた天の使いなのです

ビィルフォールが去った後
復讐する相手3人ともふしぎなほど立身出世して
復讐が困難なのも神が与えた御心に違いないと考えるクリスト

クリストは心が張り詰めると、エデ姫と話す
童話の王女のように美しく、清らかで
養女にしてから、彼女と話すとすっかり心が安らぐのだった


■カバァルカンテ子爵
恩師ブゾーニ法師の紹介状を持って
イタリアの大侯爵家の嫡子、カバァルカンテ子爵と名乗る青年がやって来る

クリストは住む屋敷、当座の費用として20万フランの小切手を渡す

実は彼は前科者で、ツーロンの牢獄にいたベネットという名で
クリストが復讐の駒に使うべく紳士に仕立てたことを本人は知らない

その後、クリストは電信局員を買収してニセの電信を打たせる


■ダングラール男爵破産
翌朝、トップ記事に
「逃亡中のスペイン国王が帰り、再び王位についた」と出たため
スペイン公債の相場は急落する

(株とか債権とかってほんのちょっとの噂で上下する賭博だね

有名な閣僚につてがあるダングラール男爵夫人は
ニュースの事前に数百万フランのスペイン公債を損失なく売り飛ばしていた

その後、電報は間違いだと取り消し記事が載り
一番上手くやったと思われた夫人が大損してしまう

ローマ、ウィーンの大銀行が次々と倒産し
ダングラール銀行も危ないと預金者の集団が窓口に押し寄せる

巨財を一朝で失ったダングラールは死にも勝る苦痛を味わう

だが、カバァルカンテ子爵が結婚相手を探していることを知り
嫌がる娘ユージェニーと結婚させればすぐ立て直せると画策する

カバァルカンテ子爵は本名のベネットと呼ぶ男に呼び止められる
ツーロンの牢で一緒だったカドルッスだった


■深夜の来客
2人は人目を避けて居酒屋で話す

ベネットは父を知らずに育ったが
これほど手厚くしてくれたクリストこそ実父に違いないと話す

カドルッスは今夜、クリストの屋敷に忍び込む手引きをしてくれ
でないと子爵など全部ウソだとバラすと脅す

夜中に泥棒が入ったとしらせを受けて
犯人を知ると、法師の服に着替えて現れるクリスト


■カドルッスの最期
以前、ダイヤモンドを渡してくれた法師だと分かり驚くカドルッス

法師:
お前はダイヤを餌に宝石商を殺して牢に入ったが
脱獄して、また悪事を働いている
今すぐ悔い改めよ

心を入れ替えると約束して屋敷を出たカドルッスを
ベネットは口封じに刺し殺してしまう

息絶え絶えのカドルッスに、自分を暗殺したのは
カバァルカンテ子爵と名乗るベネットだと書き記させて
カドルッスは息絶える


■新聞記事の評判
さらに特ダネがパリ市民を驚かせる

十数年前、ギリシア独立戦争で首都ジャニナ城は
総統アリの信頼を裏切ったフェルナンによりトルコ軍に売られ
城は陥落、総統は戦死した
今ではモルセール伯爵と呼ばれている

上院で演説を行う予定だったモルセールが議場に行くと
査問会が開かれることになる

モルセール:
これは政治的陰謀です
その証拠を持参して証明いたしましょう

査問会は午後8時に開かれることとなる


■査問会の証人
議長に1通の封書が渡されたが
その前にモルセールが無実を訴える熱弁をふるい潔白を主張する

総統の死の直前の遺言で、妻と娘のエダ姫を託され
印章を刻んだ指輪も預けられた、と見せると
モルセールの潔白を信じる市民

議長:証言後、有力な証人が来たから呼び入れる

それはギリシア風の服をまとったエダ姫だった


■裏切り者の末路

エダ姫:
父が調印した誕生証書もあります
私は当時4歳でしたが、あの恐ろしさ、悲しさは生涯忘れられません

私は母に生き写しと言われます
私を見れば、もはや知らぬとは申されますまい

職権を代表する印章指輪は、大佐が私たちの目の前で
父の屍から抜き取ったのです





モルセールは返す言葉もなくヨロヨロと廊下へ出て行く



■エドモン・ダンテス
アルベールは父を心より敬愛していたため
観劇中のクリストに手袋を投げつけて決闘を申し込む

申し込まれたほうに条件を決める権利があるが
アルベールに譲ると言うと思わず胸を打たれる
明朝8時、パァセンヌの森で、武器はピストルと決める

邸で射撃の腕を試すクリスト
並べたカードのハートを寸分の狂いもなく撃ち抜いてみせる

そこにメルセデスが駆け込んでくる

メルセデス:
エドモン!
誰もが忘れても、私は今日まで1日だった忘れたことはなかった


お怨みになるなら私を罰してください
アルベールに何の罪がございましょう

あなたもあなたの父も亡くなり、頼る人がない時
従兄のフェルナンがただ一人優しくしてくれました
私が弱かった罪なのですね

クリストはメルセデスにこれまでの経緯をすべて話す

メルセデス:
あなたのお怨みはよく分かりました
あなたがすべて正しいのです

アルベールの命の代わりに私の命をおとりください
でなければ、私は自殺します


子を想う母の心に打たれて
アルベールの命は取らないとつい約束してしまうクリスト

それは、他の2人の復讐を諦め
むざむざと死ぬことを意味し
激しく後悔するも遺書を書くクリスト



■決闘の朝
立会人、介添え人は記者のシャトウ伯と、書記官長ドブレー

アルベールは遅れて乗馬で駆けつける
時間ぎりぎりでは気持ちが乱れて射撃の腕が狂う
ピストルの決闘では手が震えて狙いがつかないと気づかう2人

アルベールは泣き明かしたように瞼が腫れ
決闘ではなく謝罪したいと前代未聞のことを言う

アルベール:
昨夜、天使が現れ、私の誤解を諭してくれました
父は伯爵自身に恐るべき罪を犯した
天意による復讐だと初めて知りました

これ以上の厳しい手段を用いて
一族を罰しなかった寛容さに深謝します


なんと有難い天意か
これでわが復讐の大業は完遂出来る
これはメルセデスのはからいに違いなかった


■銃声一発
息子の決闘でクリストが殺されるのを心待ちにしていたモルセールは
逆に謝罪したと聞いて怒り、サーベルを持ってクリスト邸に来て
何の怨みで、関係のない私に恥辱を与えたのか!と決闘を申し込む

クリスト:
君は漁夫のフェルナンだ
軍隊にとられると、ひそかに脱走し
生国スペインにスパイとして入り売国した

水夫服に着替えたクリストを見て
ようやくダンテスを思い出し
よろめくように立ち去るフェルナン





その夜、部屋から銃声がして、フェルナンは自殺する



■人殺し花婿
ダングラールは破産しても
カバァルカンテ子爵の持参金500万フランがあれば大丈夫と高を括り
信用回復のためにパリ全市を驚かせるほど盛大な結婚式を準備する

指輪の交換の最中に憲兵が押し寄せる
カバァルカンテ子爵は殺人容疑で逮捕され
汚らわしい屋敷から出ようと招待客は我先に立ち去る

ダングラールは500万フランを持って
泣き沈む妻子を捨てて夜逃げする


■ベルツッチオ小父
裁判になれば死刑は免れない身ながら余裕のベネット
育ての親ベルツッチオが来て、クリストこそ実父で
きっとここから救い出してくれると話すと

小父:
お前の素性をこの世の名残に話して聞かせよう
お前ばかりか、おれの命にも関わる秘密だ と話すと

ベネット:
生みの親父がそんな人でなし野郎なら
おいらをこんな風にしたのも
その曲がった根性を受け継いだせいだ
裁判が楽しくなってきたぜ


■ベネット裁判
パリ市民は傍聴席を求めて押し寄せる

裁判を主宰するビィルフォールは、先妻の娘の死で悲しんでいた
死因は毒薬によるもので、先妻の遺産500万フランが
母違いの弟エドワールのものになると聞き

まさかと調べたら、妻の鏡台から毒薬瓶が出てきた
これが世間に知れたら一生が台無しだと思い
妻に人知れず自決するよう手紙を残してきたのだった

この気持ちを晴らすには、今日、極悪人ベネットに極刑を与えて
人々を感嘆させようと決めていたため、死刑を要求する


■被告の身の上話

ベネット:
都合があって、名前は最後に申し上げます
最初は偽札作り、泥棒、とうとう人殺しをやりました
私は捨て子で、生みの父は出世して今は検事総長です

彼は若く美しい小間使いを愛し、偽って結婚式を挙げたと思いこませ
私が生まれる頃、持参金つきの貴族と正式に結婚しました

彼は生まれたばかりの私を押し殺して死産に見せかけ
死体を裏庭に埋めました

母は気落ちして悶え死にました

母の従兄ベルツッチオは母を愛していたため
亡き愛人の形見の私を掘り起こすと息を吹き返しました

私の父の名はそこに座っているビィルフォールであります


■発狂した検事総長
ビィルフォールは返す言葉もなく認め
夢遊病者のように家に帰ると、待っていたのは
最愛の息子エドワールと妻が抱き合ったまま息絶えている姿だった

遺書には、母亡き後に残すのは不憫のゆえ
一緒に連れて行きますとある
(なんという痛ましい・・・涙

ビィルフォール:
これほどまでの罰を受けるほど、私の犯した罪は大きかったのか?
神よ! 重すぎる罰をお与えになったのでは?

(我が子を殺して埋めたのが軽い罪???

そこにダンテスが現れ
青春の14年間を墓場のような地下牢に閉じ込められたのは
ビィルフォールの立身出世の野心と卑怯さゆえと話すと
すっかり思い出して言い知れぬ恐怖に襲われ
ついに発狂してしまう



■十万フランの一品料理
パリ落ちしたダングラールは
命より大切な札束をカバンに入れて歩いていると
屈強な山賊に捕まり、洞窟の格子戸に閉じ込められる

身代金も要求せず、食事も与えず
耐え切れずに食べるものをくれと頼むと
番人は1食前金で10万フラン出せと言う

番人:
そのカバンには札束が500万フラン入っている
餓死したいなら食わなきゃいい

意地を張るのも限界で
鶏の丸焼きをたいらげるダングラール


■大使命はおわった

首領パンパ:
身代金はカバンの中の残額490万フランだ
払えばいつでも自由にお帰りください
あなたを殺すのは禁じられている

そのうち我慢の堰が切れて
1日に3度も4度も料理を注文し
12日目にはもう1枚の紙幣も残らない





ダンテス:
ある老人が飢え死にした苦しみの10分の1でも思い知ったかね?
後悔したなら許してあげよう

君の相棒だったフェルナンはピストル自殺した
ビィルフォールは発狂した
君1人許されたのだ どこへでも立ち去るがよい


無一文になったダングラールは
水面を覗くと、頭髪が真っ白になっていることに気づき
すすり泣きとともにくずれ伏した



■大団円
クリストは使命を果たし、誰にも告げず
エデ姫、アリーとともにヨットに乗り
はるか東方の海目指して行方をくらました

今もなおふしぎなロマンスが語り伝えられた





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