昭和53年初版 山口四郎/訳 梶鮎太/装幀・挿絵
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
“愛の~”て和訳のタイトルがこの時代多い気がする
7人の子どもがいる大家族の話
日本も親の世代はそれくらいが普通だったよね
経済的に厳しくても、母の信仰心、父の教育で
きょうだいが一致団結しているさまは
たしかに理想的な家族に見えるけれども
家族のルールを破ると居場所がなくなると考えると
息が詰まる気もした
【内容抜粋メモ】
登場人物
父 ペフリング 音楽学校の先生
母 ツェツィーリエ
長男 カルル 高等学校
次男 ビルヘルム 高等学校
三男 オットー 高等学校
双子の姉妹 マリーとアンネ 女学校
四男 フリーダー 小学生 音楽の才能がある
末娘 エルゼ
お手伝い バルブルク 耳が悪いため半分の給料で働いている
元家具職人ハルトビッヒ夫妻
ルードルフ・マイヤー 中央ホテルの息子
●ペフリング先生一家
南ドイツの町はずれ、フリューリング通りの奥の一軒家
元家具職人ハルトビッヒの2階を借りている
子どもたちが始終、階段をのぼりおりするためすり減ると注意すると
素直に謝り、端を歩く子どもたち
ハルトビッヒ夫人:気持ちのいい子どもたちだよ これ以上言うことなんかありゃしない
フリーダーは大好きなアコーディオンを弾き始めると
夢中になってほかのことをすっかり忘れてしまう
学校が始まるとそれぞれ入用なモノが増えて、引き出しの中のお金は残り少ない
心配しているところに、フェルナーゲルディングという娘が生徒となる
フェルナーゲルディング:
ピアノを弾くのはつまらないけれども
『お嬢さん、ピアノをお弾きになりますか?』と聞かれた時
『いいえ』と言うのは教養がないと思われて体裁が悪いでしょってママも言うんです
●父が校長先生に?
マルシュタットに音楽学校が建つことになり
知人ラウスオルトがペフリングを校長に推薦してくれたため喜ぶが
数年、延期になった電文が来て、一気に気落ちする
母:
はじめはショックだったけど、不幸に立ち向かう心構えを持って心に言うの
これも神さまのおぼしめしなのだ
いずれは、私たちのためになることに違いない
これを自分に役立てるには、どうしなければいけないか考えてみるの
父は陽気な歌をつくる
♪校長になろうが なるまいが
とにかくわれらは楽しいぞ
●獅子座の流星群
家具職人の弟子レムボルトは、フリーダーのアコーディオンに感心して
学校で弾いたら、みんな感心するよと言って、フリーダーは驚く
毎年、11月の12~17日頃にしし座流星群が観れると教えて
兄3人は夜中に起きて、想像以上の美しさに感動したが
物音で起きたハルトビッヒ夫人がかんぬきをかけたため、外に閉め出され
姉妹を起こそうとしてハルトビッヒ夫妻を起こしてしまい
ハルトビッヒ:1月1日までに部屋を開けてくれ と言われてしまう
一家に好意を寄せているハルトビッヒ夫人は
共同の物干し部屋でツェツィーリエと話して
しし座流星群の話を夫に話して誤解を解く
●クリスマスを前に
降臨節(クリスマス前の4週間)、きょうだいは両親に何を贈ろうか悩む
「店でなにか買うのは造作ないが、お金をかけずに独得で素晴らしいものを贈るのに工夫がいるんだ」
フリーダーは学校でアコーディオンを弾くと、大好評で
アコーディオンを奪い合ったため壊れてしまい
心底後悔するフリーダー
それでも、両親へのプレゼントは、兄が詩をつくり、姉が二重唱すればいいと提案
中央ホテルの息子マイヤーは、一流ホテルのことを自慢するのが好き
ロシアの貴族が革命騒ぎで逃げて来て
2人の息子に音楽教師としてペフリングを紹介する代わりに
宿題のノートを見せてくれとオットーと約束し
父は毎日レッスンに行くことになる
ホテルの仕事で忙しいフリをして勉強もしないで偉ぶっているルードルフに忠告する
ペフリング:君はまだ小さい少年なんだから、背伸びしてほんとの自分以上に見せかけたりしないことだ
●警察ざた
雪合戦中に通りかかった書記フロスマン氏にあたり
カルルは素直に謝ったが、不良のバウマンは笑って当て続けたため
怒って警察に言い、警官が名前を聞くと「ビルヘルム・ペフリング」とウソを言ったため
警察が家まで来て呼び出される
母は毎日、夫や子どもが仕事や勉強に精を出しているから
せめて家くらいは気持ちよくさせてやらねばと家事をしているが
外でいい加減なら、自分の時間やお金を無駄にする必要があるだろうか?と考え込む
警察署に行くと、父も来て、一緒に弁護してくれ
フロスマン氏も人違いを認めてくれる
犯人はビルヘルムだと知りながら、友だちの名前は言うまいと決める
ペフリング:こっちが本当に正しかったら、尻込みしちゃいけないんだ
バウマンは退学になった
●1年でいちばん短い日に
12月21日 父の使いに出たフリーダーがクリスマスツリーを担いで帰る
配達のバイトと間違われて、博士夫人の所に届けて欲しいと言われたが家が見つからずに戻った
兄に付き添うように言うと、貧しい子だと思われたらカッコ悪いと思い
フリーダーだけで行かせたら、呼び鈴を押しても出てこないとまた出戻ってきた
博士夫人:
もうツリーは来ないと思って、新しく買いに出かけていた
よければそのツリーをタダであげるわ
父:
こんなことをしたら友だちが変に思うだろうなんて考えるのは金輪際止めるんだ
そんなつまらんことを考えていたら、この世の中は到底渡れないぞ
オットーはすすんで配達のバイトをして
父に卑怯者でないことを証明してみせる
●まだまだ遠いクリスマス
成績表をもらい、数学が最低の4だったビルヘルムは
父に知れて、クリスマスの楽しさが半減すると悩んできょうだいと相談し
父が出かける忙しい時間に全員の平均点を言う作戦に出る
ペフリング:
団結するなら、敵に向かってするんだ 味方に向かってするやつがあるか
なんでも教えてくれたほうが、力になってやることができる
カルルは数学が得意だから、ビルヘルムに週2回教えること
ペフリングはルードルフの父でホテル経営者のマイヤー氏に
ペフリング:
坊ちゃんは、子どもだったことがありますか?
大人のような口はききますが、生徒ならよく勉強し、よく遊ぶ子であってほしいものです
とろこが坊ちゃんは、人の言うことを聞くべき年なのに、人に命令しようとしている
ここから離して、家庭的な生活をさせてください と忠告する
マイヤー氏:
世間の方は、息子は生まれついての実業家だとおっしゃってくれます
どうかおかまいにならないでください
ペフリングはお節介をしてしまったことを後悔して妻に相談する
若い頃、父に会いに来たペフリングがオーバーと傘を取らずにいるのを見て
笑いをこらえていたが、皮肉屋の教授のもとへ行く前に忠告した話をする
ペフリング:こうして、お前の両親は知り合ったんだよ
●やっときたクリスマス
祖父母の時代から受け継いだ飾りでクリスマスツリーを飾りつけ
みんなで教会へ行く
贈り物は高価ではないが、思いがけないものばかりで思いやりがこもっていた
フリーダーにはバイオリンがプレゼントされ、夢見心地になる
バルブルクは、故郷から手紙が来て、幼馴染がやもめになり
3人の子どもの世話のため、バルブルクを妻にしたいと言ってきて
クリスマス休みに故郷に発つ
ツェツィーリエの母は80歳になるが、遠い東プロシャに住んでいて
結婚後何年も会っていない
ツェツィーリエ:なんじら神に近づけ さらば神はなんじらに近づかん
バルブルクは、先方がやっぱり子どものためには
耳の聞こえる人のほうがいいと断ってきたと話して帰る
バルブルク:
外に出て初めて、耳がどれほど悪いか分かった
奥さんのおっしゃることなら黒板がなくても分かるのに
●寒さにもめげず
ツェツィーリエの故郷から手紙が来て、2月に母の誕生祝いをするため
きょうだいたちが集まるからぜひ来るよう招待される
音楽学校で一流の音楽家の演奏会が開かれ
教師にも招待券が来ると期待していたが
校長にしか来なかったため、ガッカリする父
2時間以上バイオリンを弾いてはいけないと約束させたフリーダーが
約束を破ったため、1週間取り上げられる
ロシア人夫婦は、息子2人を学校に送り、ロシアに帰らなければならない
前年のアンネの耳の手術に60マルクもかかり、未払いのまま
その上、オットーが文法書を買った請求書が来て叱ると
教師から「その古い本はおじいさんのものだろう?」と何度も言われたと話す
父:
うちみたいなきりつめた家計では、つけは絶対使えないんだ
その4マルクは自分で払いなさい
●演奏会
マイヤー氏はルードルフを妹夫婦の家に送り、勉強の成績も上がり
叔母に感謝するようになったと喜んで、ペフリングにお礼を言う
貧しくても、裕福でも、親が心にかかるのは子どものことというのは
変わらないものだとつくづく思うペフリング
演奏会に出る天才少年エドムントを舞台に出るまで機嫌よくさせる役目に
マイヤー氏はペフリングの子どもが最適だと紹介する
ビルヘルムはとんぼ返りをして見せ、エルゼは一緒にワルツを踊る
この2人も控室に来てくれなきゃイヤだとごねる少年
父親は、お礼に演奏会の招待状を1枚あげるから来てくれと頼む
エドムントは父のピアノ伴奏で見事にバイオリンを弾いて大喝采を浴びる
エドムント:もう一度アンコールをさせられる 僕はやりたくないけど
父:
お前は病気で寝ていたいだろうが、私も病気なのに演奏会を最後までやったことがある
たくさんの人が高い切符を買ったのだから、私は演奏を約束したのを守らなければならない
演奏会後、エドムントははしかで寝込む
一緒に遊んだエルゼもかかる
●お金とバイオリンの心配
ロシア人夫婦はベルリンに行ったが、最後のレッスン料を息子に渡したはずがもらっていない
マイヤー氏は、息子たちが持ってる可能性があるから、手紙でその旨を書けばいいと言うが
親の気持ちを思うと書けずに諦めるペフリング
代わりに上の子3人が息子ら宛てに手紙を書いて
出す前に母に話すと、叱られる
母:怪しいという疑いだけで事実のように言うのはよくないわ
その後、息子たちからレッスン料が戻る
フリーダーはまた約束を破って、バイオリンを弾き続け
1年間弾くのを禁止されると、バイオリンを抱いたまま黙ってしまう
一番大人しい子の反抗にみんなは驚く
父:出ていけ、よその子!
姉妹は同情してフリーダーを説得し、黒いショールにバイオリンを包んで差し出す
父:これでお前はまたうちの子になったんだよ
●母のいない家
2月のはじめに帰郷を決めた母
母のいない家はぽっかり穴があいたようになる
父:手紙では楽しいことだけ知らせよう
エルゼが1人で留守番していた時に、見知らぬ男が入ってきて
父の知人だと言い、引き出しから家賃用のお金をすっかり盗み
途方に暮れる父と子どもたち
母は家族と別れの悲しみに震えていたが、別れを惜しまれながら
愛する者のもとへ旅して、喜びをもって迎えられる者こそ幸いだと思う
帰宅した日の食卓の祈りの言葉:
神さま、今日、私どもに、再会の喜びを与えてくださいました!
今からまたしっかりと力をあわせ、悲しみ喜びの中を渡っていきます
(祈りって、今日良かったこと3つをあげるポジティブシンキングみたいだな
どろぼうに入られて、犯人は捕まったが、賭け事ですってしまい戻らないと話す
夫婦は相談して、マリアンネの部屋を人に貸せば、月に20マルクもらえるプランを思いつく
●ペフリング一家よ、さようなら
フェルナーゲルディング嬢は結婚が決まる
復活祭の休み前、母の兄が泊りに来る
北ドイツの教授で、子どもが3人、お手伝いが3人いるから
ペフリングの子どもの1人を引き取る約束をした
子どもたちがとてもしつけられていることに感心する
兄:
この小さい国は実に面白い
強者が弱者をいたわり、めいめいが我をおさえて全体につかえ
両親には心からの愛と従順をささげている
そうしないと家庭の骨組み全体が崩れると感じているんだ
主人はたかぶらない支配者だし、妻は主人の責任大臣だ
マリーは叔父が子ども1人を引き取る話を聞いて
子どもたちで集まり、誰がふさわしいか話し合う
兄:
お宅の子どもたちの羨ましいのは、生涯変わらぬ友だちを持っていることだ
いつまでも連帯感を忘れないだろう
立派な土台の上にすべてうちたてられている つまり正直と宗教だ
あの計画はやめましょう!
ペフリングが校長に決定した知らせが届き、みんなで大喜び
バルブルクは給料が倍になり、一家は引っ越しが決まる
ハルトビッヒは「貸し部屋あり」の札を出し
夫人は涙を流す
ハルトビッヒ夫人:私は口には出さなかったけど、本当にあの家の人たちが好きだったよ
■解説
アグネス・ザッパー
1852年 南ドイツ ミュンヒェン生まれ
父は政治家 23歳で町長と結婚し、5人の母となる
夫と死別し、作家となる 初めての作品は43歳の時の『子どもたちのなかの母』
本書は54歳の時の作品で世界で有名になり
今なおドイツの代表的な家庭小説として読まれている
『大きくなったペフリング家の子どもたちのその後』(日本では『愛の人びと』
77歳で死去
現実はそう甘くないといって、厳しい現実にさらされた子どもたちを描く本もたくさんあるが
子ども時代はもっと夢を追う理想主義者であってもいい
この翻訳は原作を少し縮めてある
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
“愛の~”て和訳のタイトルがこの時代多い気がする
7人の子どもがいる大家族の話
日本も親の世代はそれくらいが普通だったよね
経済的に厳しくても、母の信仰心、父の教育で
きょうだいが一致団結しているさまは
たしかに理想的な家族に見えるけれども
家族のルールを破ると居場所がなくなると考えると
息が詰まる気もした
【内容抜粋メモ】
登場人物
父 ペフリング 音楽学校の先生
母 ツェツィーリエ
長男 カルル 高等学校
次男 ビルヘルム 高等学校
三男 オットー 高等学校
双子の姉妹 マリーとアンネ 女学校
四男 フリーダー 小学生 音楽の才能がある
末娘 エルゼ
お手伝い バルブルク 耳が悪いため半分の給料で働いている
元家具職人ハルトビッヒ夫妻
ルードルフ・マイヤー 中央ホテルの息子
●ペフリング先生一家
南ドイツの町はずれ、フリューリング通りの奥の一軒家
元家具職人ハルトビッヒの2階を借りている
子どもたちが始終、階段をのぼりおりするためすり減ると注意すると
素直に謝り、端を歩く子どもたち
ハルトビッヒ夫人:気持ちのいい子どもたちだよ これ以上言うことなんかありゃしない
フリーダーは大好きなアコーディオンを弾き始めると
夢中になってほかのことをすっかり忘れてしまう
学校が始まるとそれぞれ入用なモノが増えて、引き出しの中のお金は残り少ない
心配しているところに、フェルナーゲルディングという娘が生徒となる
フェルナーゲルディング:
ピアノを弾くのはつまらないけれども
『お嬢さん、ピアノをお弾きになりますか?』と聞かれた時
『いいえ』と言うのは教養がないと思われて体裁が悪いでしょってママも言うんです
●父が校長先生に?
マルシュタットに音楽学校が建つことになり
知人ラウスオルトがペフリングを校長に推薦してくれたため喜ぶが
数年、延期になった電文が来て、一気に気落ちする
母:
はじめはショックだったけど、不幸に立ち向かう心構えを持って心に言うの
これも神さまのおぼしめしなのだ
いずれは、私たちのためになることに違いない
これを自分に役立てるには、どうしなければいけないか考えてみるの
父は陽気な歌をつくる
♪校長になろうが なるまいが
とにかくわれらは楽しいぞ
●獅子座の流星群
家具職人の弟子レムボルトは、フリーダーのアコーディオンに感心して
学校で弾いたら、みんな感心するよと言って、フリーダーは驚く
毎年、11月の12~17日頃にしし座流星群が観れると教えて
兄3人は夜中に起きて、想像以上の美しさに感動したが
物音で起きたハルトビッヒ夫人がかんぬきをかけたため、外に閉め出され
姉妹を起こそうとしてハルトビッヒ夫妻を起こしてしまい
ハルトビッヒ:1月1日までに部屋を開けてくれ と言われてしまう
一家に好意を寄せているハルトビッヒ夫人は
共同の物干し部屋でツェツィーリエと話して
しし座流星群の話を夫に話して誤解を解く
●クリスマスを前に
降臨節(クリスマス前の4週間)、きょうだいは両親に何を贈ろうか悩む
「店でなにか買うのは造作ないが、お金をかけずに独得で素晴らしいものを贈るのに工夫がいるんだ」
フリーダーは学校でアコーディオンを弾くと、大好評で
アコーディオンを奪い合ったため壊れてしまい
心底後悔するフリーダー
それでも、両親へのプレゼントは、兄が詩をつくり、姉が二重唱すればいいと提案
中央ホテルの息子マイヤーは、一流ホテルのことを自慢するのが好き
ロシアの貴族が革命騒ぎで逃げて来て
2人の息子に音楽教師としてペフリングを紹介する代わりに
宿題のノートを見せてくれとオットーと約束し
父は毎日レッスンに行くことになる
ホテルの仕事で忙しいフリをして勉強もしないで偉ぶっているルードルフに忠告する
ペフリング:君はまだ小さい少年なんだから、背伸びしてほんとの自分以上に見せかけたりしないことだ
●警察ざた
雪合戦中に通りかかった書記フロスマン氏にあたり
カルルは素直に謝ったが、不良のバウマンは笑って当て続けたため
怒って警察に言い、警官が名前を聞くと「ビルヘルム・ペフリング」とウソを言ったため
警察が家まで来て呼び出される
母は毎日、夫や子どもが仕事や勉強に精を出しているから
せめて家くらいは気持ちよくさせてやらねばと家事をしているが
外でいい加減なら、自分の時間やお金を無駄にする必要があるだろうか?と考え込む
警察署に行くと、父も来て、一緒に弁護してくれ
フロスマン氏も人違いを認めてくれる
犯人はビルヘルムだと知りながら、友だちの名前は言うまいと決める
ペフリング:こっちが本当に正しかったら、尻込みしちゃいけないんだ
バウマンは退学になった
●1年でいちばん短い日に
12月21日 父の使いに出たフリーダーがクリスマスツリーを担いで帰る
配達のバイトと間違われて、博士夫人の所に届けて欲しいと言われたが家が見つからずに戻った
兄に付き添うように言うと、貧しい子だと思われたらカッコ悪いと思い
フリーダーだけで行かせたら、呼び鈴を押しても出てこないとまた出戻ってきた
博士夫人:
もうツリーは来ないと思って、新しく買いに出かけていた
よければそのツリーをタダであげるわ
父:
こんなことをしたら友だちが変に思うだろうなんて考えるのは金輪際止めるんだ
そんなつまらんことを考えていたら、この世の中は到底渡れないぞ
オットーはすすんで配達のバイトをして
父に卑怯者でないことを証明してみせる
●まだまだ遠いクリスマス
成績表をもらい、数学が最低の4だったビルヘルムは
父に知れて、クリスマスの楽しさが半減すると悩んできょうだいと相談し
父が出かける忙しい時間に全員の平均点を言う作戦に出る
ペフリング:
団結するなら、敵に向かってするんだ 味方に向かってするやつがあるか
なんでも教えてくれたほうが、力になってやることができる
カルルは数学が得意だから、ビルヘルムに週2回教えること
ペフリングはルードルフの父でホテル経営者のマイヤー氏に
ペフリング:
坊ちゃんは、子どもだったことがありますか?
大人のような口はききますが、生徒ならよく勉強し、よく遊ぶ子であってほしいものです
とろこが坊ちゃんは、人の言うことを聞くべき年なのに、人に命令しようとしている
ここから離して、家庭的な生活をさせてください と忠告する
マイヤー氏:
世間の方は、息子は生まれついての実業家だとおっしゃってくれます
どうかおかまいにならないでください
ペフリングはお節介をしてしまったことを後悔して妻に相談する
若い頃、父に会いに来たペフリングがオーバーと傘を取らずにいるのを見て
笑いをこらえていたが、皮肉屋の教授のもとへ行く前に忠告した話をする
ペフリング:こうして、お前の両親は知り合ったんだよ
●やっときたクリスマス
祖父母の時代から受け継いだ飾りでクリスマスツリーを飾りつけ
みんなで教会へ行く
贈り物は高価ではないが、思いがけないものばかりで思いやりがこもっていた
フリーダーにはバイオリンがプレゼントされ、夢見心地になる
バルブルクは、故郷から手紙が来て、幼馴染がやもめになり
3人の子どもの世話のため、バルブルクを妻にしたいと言ってきて
クリスマス休みに故郷に発つ
ツェツィーリエの母は80歳になるが、遠い東プロシャに住んでいて
結婚後何年も会っていない
ツェツィーリエ:なんじら神に近づけ さらば神はなんじらに近づかん
バルブルクは、先方がやっぱり子どものためには
耳の聞こえる人のほうがいいと断ってきたと話して帰る
バルブルク:
外に出て初めて、耳がどれほど悪いか分かった
奥さんのおっしゃることなら黒板がなくても分かるのに
●寒さにもめげず
ツェツィーリエの故郷から手紙が来て、2月に母の誕生祝いをするため
きょうだいたちが集まるからぜひ来るよう招待される
音楽学校で一流の音楽家の演奏会が開かれ
教師にも招待券が来ると期待していたが
校長にしか来なかったため、ガッカリする父
2時間以上バイオリンを弾いてはいけないと約束させたフリーダーが
約束を破ったため、1週間取り上げられる
ロシア人夫婦は、息子2人を学校に送り、ロシアに帰らなければならない
前年のアンネの耳の手術に60マルクもかかり、未払いのまま
その上、オットーが文法書を買った請求書が来て叱ると
教師から「その古い本はおじいさんのものだろう?」と何度も言われたと話す
父:
うちみたいなきりつめた家計では、つけは絶対使えないんだ
その4マルクは自分で払いなさい
●演奏会
マイヤー氏はルードルフを妹夫婦の家に送り、勉強の成績も上がり
叔母に感謝するようになったと喜んで、ペフリングにお礼を言う
貧しくても、裕福でも、親が心にかかるのは子どものことというのは
変わらないものだとつくづく思うペフリング
演奏会に出る天才少年エドムントを舞台に出るまで機嫌よくさせる役目に
マイヤー氏はペフリングの子どもが最適だと紹介する
ビルヘルムはとんぼ返りをして見せ、エルゼは一緒にワルツを踊る
この2人も控室に来てくれなきゃイヤだとごねる少年
父親は、お礼に演奏会の招待状を1枚あげるから来てくれと頼む
エドムントは父のピアノ伴奏で見事にバイオリンを弾いて大喝采を浴びる
エドムント:もう一度アンコールをさせられる 僕はやりたくないけど
父:
お前は病気で寝ていたいだろうが、私も病気なのに演奏会を最後までやったことがある
たくさんの人が高い切符を買ったのだから、私は演奏を約束したのを守らなければならない
演奏会後、エドムントははしかで寝込む
一緒に遊んだエルゼもかかる
●お金とバイオリンの心配
ロシア人夫婦はベルリンに行ったが、最後のレッスン料を息子に渡したはずがもらっていない
マイヤー氏は、息子たちが持ってる可能性があるから、手紙でその旨を書けばいいと言うが
親の気持ちを思うと書けずに諦めるペフリング
代わりに上の子3人が息子ら宛てに手紙を書いて
出す前に母に話すと、叱られる
母:怪しいという疑いだけで事実のように言うのはよくないわ
その後、息子たちからレッスン料が戻る
フリーダーはまた約束を破って、バイオリンを弾き続け
1年間弾くのを禁止されると、バイオリンを抱いたまま黙ってしまう
一番大人しい子の反抗にみんなは驚く
父:出ていけ、よその子!
姉妹は同情してフリーダーを説得し、黒いショールにバイオリンを包んで差し出す
父:これでお前はまたうちの子になったんだよ
●母のいない家
2月のはじめに帰郷を決めた母
母のいない家はぽっかり穴があいたようになる
父:手紙では楽しいことだけ知らせよう
エルゼが1人で留守番していた時に、見知らぬ男が入ってきて
父の知人だと言い、引き出しから家賃用のお金をすっかり盗み
途方に暮れる父と子どもたち
母は家族と別れの悲しみに震えていたが、別れを惜しまれながら
愛する者のもとへ旅して、喜びをもって迎えられる者こそ幸いだと思う
帰宅した日の食卓の祈りの言葉:
神さま、今日、私どもに、再会の喜びを与えてくださいました!
今からまたしっかりと力をあわせ、悲しみ喜びの中を渡っていきます
(祈りって、今日良かったこと3つをあげるポジティブシンキングみたいだな
どろぼうに入られて、犯人は捕まったが、賭け事ですってしまい戻らないと話す
夫婦は相談して、マリアンネの部屋を人に貸せば、月に20マルクもらえるプランを思いつく
●ペフリング一家よ、さようなら
フェルナーゲルディング嬢は結婚が決まる
復活祭の休み前、母の兄が泊りに来る
北ドイツの教授で、子どもが3人、お手伝いが3人いるから
ペフリングの子どもの1人を引き取る約束をした
子どもたちがとてもしつけられていることに感心する
兄:
この小さい国は実に面白い
強者が弱者をいたわり、めいめいが我をおさえて全体につかえ
両親には心からの愛と従順をささげている
そうしないと家庭の骨組み全体が崩れると感じているんだ
主人はたかぶらない支配者だし、妻は主人の責任大臣だ
マリーは叔父が子ども1人を引き取る話を聞いて
子どもたちで集まり、誰がふさわしいか話し合う
兄:
お宅の子どもたちの羨ましいのは、生涯変わらぬ友だちを持っていることだ
いつまでも連帯感を忘れないだろう
立派な土台の上にすべてうちたてられている つまり正直と宗教だ
あの計画はやめましょう!
ペフリングが校長に決定した知らせが届き、みんなで大喜び
バルブルクは給料が倍になり、一家は引っ越しが決まる
ハルトビッヒは「貸し部屋あり」の札を出し
夫人は涙を流す
ハルトビッヒ夫人:私は口には出さなかったけど、本当にあの家の人たちが好きだったよ
■解説
アグネス・ザッパー
1852年 南ドイツ ミュンヒェン生まれ
父は政治家 23歳で町長と結婚し、5人の母となる
夫と死別し、作家となる 初めての作品は43歳の時の『子どもたちのなかの母』
本書は54歳の時の作品で世界で有名になり
今なおドイツの代表的な家庭小説として読まれている
『大きくなったペフリング家の子どもたちのその後』(日本では『愛の人びと』
77歳で死去
現実はそう甘くないといって、厳しい現実にさらされた子どもたちを描く本もたくさんあるが
子ども時代はもっと夢を追う理想主義者であってもいい
この翻訳は原作を少し縮めてある