メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1994.5~ part2)

2013-01-18 15:20:12 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part1からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1942)
監督:ルキノ・ヴィスコンティ 出演:マッシモ・ジロッティ、クララ・カラマイ ほか
ルキノ・ヴィスコンティの処女作。これは後に、ジャック・ニコルソンとジェシカ・ラングで'81にリメイクされ、
より過激な性描写で話題を呼んだが、その元ネタとあって微妙な違いが興味深い。
ヴィスコンティ作品には常に目も覚めるような若い美男子が登場するけれども、ジーノ役の俳優もなかなかハンサム。
クララはクールな美貌で妻の複雑な心情を見事に演じている。

保険金目当ての殺人とは直接的に描いていないにせよ、不幸な女が企てた冷酷な殺人計画として観られても不思議じゃない。
印象に残るのは、ジーノを逃がすために商売女のフリをしなければならなかった女性の哀しげな後ろ姿。
女が男を利用する場合のほうがより冷酷でずるがしこい女狐だと思われるのに、
男にもて遊ばれ捨てられる女は、まるで当然のごとく忘れられてしまう存在だ。
ヴィスコンティの眼はその点も見逃してはいないのだけれど。
金もなく、頼るあてもない女の悲しい姿。若い男をつかまえても絶えず疑念や嫉妬、不安がつきまとう。
根無し草の男と、家に執着する女の象徴的な姿が描かれている。


『スウィーテイー 悪魔のような姉』(1989)
監督:ジェーン・カンピオン
複雑な心理劇。大した芸でもないのにすごい才能があると信じて疑わない父と、
その夢をほとんど強制的なプレッシャーとして追い続け、現実逃避し、幻を見るしかなかったスウィーティ。
姉のエゴ。家庭不和で自閉症気味のケイ。ラストのテロップ"for my sister"というのも意味ありげ。
どこかデヴィッド・リンチ風の映像トリップ、アブノーマルな登場人物たち。
今作がオーストラリアの女性監督によって作られたというのも変わっている。

タイトルの響きが妙に気に入った。スウィーティー役の女優はキョーレツな個性で、神経質そうなケイと対照的。
瞑想のインストラクター?をしているルイは、女子の憧れの的として甘いルックス。
社内で男女関係のことしか頭にない群集化した女性社員って世界中どこにでもいるのね
指輪1個にヒステリックに一喜一憂して、そうでないコは「考えが古い」で仲間はずれにされちゃう。
「結婚で救われる」って考えのほうがよっぽど古いのに。
ケイは木恐怖症。根がいつか家まで傾けて、自分を襲うのではと心配している。
天に伸び、地にしっかり根をはる木は、健全な精神の象徴でもあるのに。
「君は木を生かすこともできないのか?」「現実ってなんなのか、それは難しい問題だよ」


『SOUL TO SOUL 魂の詩』(1971)
出演:ウィルソン・ピケット、アイク&ティナ・ターナー、サンタナ、ロバータ・フラック、ステイプル・シンガーズ ほか
'70年代の香りプンプン ブラック・ミュージック、ソウルに改めて体中が惹かれる感じ。
奴隷制度の暗い歴史とは裏腹に、町中あらゆる場面で音楽が生き、踊りがある。
本場アフリカのフィーリングに合うもの合わないもの。
サンタナが意外に反応が少なかったのは、唯一白人の多いグループだったから?
ステージに上がって一緒に踊る者もいて、熱気ムンムンのサイコーなショー。ティナのパフォーマンスもイイ。
「ソウルって何だ?」「それは感覚的なものさ」
「どんな風にだ?」「そうだな。手がこう勝手に動くのさ、足が動き出す者もいる」


『ルナ』(1979)
監督:ベルナルド・ベルトルッチ 出演:ジル・クレイバーグ ほか
ほかのベルトルッチ作品に負けず劣らず長い時間も忘れる、
異国を舞台にした壮大で感動的なオペラにのせて展開する悲しいほど深い愛情。
それは親子として、また時に人間=動物であるがゆえに男女の微妙なあやを見せて、
1シーンごとにベルトルッチの特別な想いが込められている。
最初の月明かりに守られて親子でたわむれるシーン、自転車を走らせるシーンからどことなくセクシーで
誰一人、第三者が立ち入れない絆が見える。

ちょっとダイアン・キートンみたいな雰囲気の女優。
オペラの声は吹き替えだろうけど、妙に気張ったり、有名人にありがちな高飛車なところがないだけに
傷ついた息子から離れられずにいる母親を時にユーモラスに、時に素直な女性として見事に演じている。
ジョー役のコも愛に飢えた現代っ子、麻薬に溺れながらも頭はハッキリしている堂々たる俳優ぶり。
ラストちらっと顔を見せるだけの父親役も複雑な立場を口数少なく重い存在感で印象強い。
1つの迷路のような家族愛を神秘的な月と美しいオペラ、その裏方劇に絡めたあたりは
さすがベルトルッチの確かで鋭い感覚が感じられる。
エグい描写が多いかと思いきや、なんとも悲しく感動的なロマンティックストーリー。


『MADONNA "THE GIRLIE SHOW LIVE DOWN UNDER"』(1993)
いやあスゴイという噂は聞いてたけど予想以上 この間観た米米のステージが派手だと思っていたら、
なんのその、さすがに世界を渡り歩いて長いキャリアを持つ、これぞまさにスーパースター!という貫禄。
単に豪華ってだけじゃなく、デビュー当時ははみ出し娘の元気一杯さ~大人の女の艶やかなもの~
今回はあの『ロッキーホラーショー』に負けず劣らずのセンセーショナルな肉感+黒人差別+エイズを
分かりやすいダンスパフォーマンスで魅せる。
シンディとスタイルは違っても、ともに女性解放者として、かなり辛らつな表現、直接男を侮辱し丸め込むシーンがあるのは見逃せない。

その性描写をモロに表現したダンス等でライヴを断った場所もあったそうだけど、
表面だけじゃなく、ちょっと気をつけて見れば、マドンナがスターの座を利用して訴えているメッセージが届くはず。
ブラのファッションで挑発する過激さだけでない、寸分の狂いもなく計算し尽くされたステージング、
2時間びっちりダンサーと肩を並べても決して劣らないダンス+崩れない表情+歌は、
それに見合うかなりの練習量、持っている才能以上を発揮させる日々の肉体作り、努力なしでは完成されない
彼女のパワー、行動力、成功を掴み取る強さ、野望を感じさせる
本当にこのメチャクチャハードなショーで何十日にも渡って世界をツアーして回ることなど可能なんだろうか
途中、字幕がないからよく把握できなかった部分もあるけけど、サルティンバンコ顔負けのこのスケールで
進歩し続けるマドンナのライヴ。ここまできたからには次はどうなることやら。


『カーペンターズ・ストーリー』(1988)
出演:シンシア・ギブ ほか
実家にある何十枚もの洋楽のレコードの中にあったカーペンターズの1枚のレコード。
カレンの透き通ったぬくもりある女性的な美しい歌声とやわらかなリズム、感動的な詩。
それからずっと今まで聴き続け、今回改めて'70に占めていた彼らの位置を知り、
今でも世界中のあらゆる人々に聴きつがれているヒットソングを聴き直し、
兄妹のたどった道のり、噂に聞いたカレンの拒食症からの悲劇的な死が、
兄リチャードをはじめ、カレンをよく知り、愛してきた人間が製作に関わって
ヒット曲をちりばめてとても丁寧に作られているのがヒシヒシと伝わってくる。

カレンが救急車で運ばれ、その脇を10代の彼女自身が通るなんともショッキングな冒頭から
ファンにとっては痛ましいかぎりであるとともに、一気にスターダムに上りながら、常に健康に怯え続け、
歌声や姿からまったく想像もできない悩みを抱えていたのは予想もしなかった。
近年、若い女子に増えていて社会問題となっている、精神の病からくる拒食症。
当時はまだ研究中で、あれほど温かい家庭のどこに原因があるのかとても疑問に思えるが、
度々カレンが自分の意見がまったく皆に通じていないと怒るシーンが重要な鍵ではないか

当時すでにカウンセリングが一般的だったアメリカで、なぜ誰も専門医を紹介し、
根本から原因をただし、時間をかけて休息をとらせなかったのか。
一番身近に暮らしている家族であるからこそ、問題点を見逃してしまう。
母親が「女は結婚し、夫に寄り添っていれば絶対幸せになれるものだ」と言うシーンは心が痛んだ。
愛情も身近にいすぎるとかえって表現することが難しい。

気になったのは、兄妹の仲がよすぎるほどだったという噂。
2人は深いコンビネーションで互いを支えあってスターの座を築き、
離れて活動することは不可能だったのかもしれない。
兄も不眠によって薬を飲みすぎて倒れるが、彼らは知らなかったのだろうか?
多くの貴重なアーティストが大衆の過剰な期待、プレッシャー、ストレス、疲労で
どれだけ未来を見失い、ドラッグやアルコール等で自らの命を縮めていったかを。

リチャード「夜になると、これからどうなるのかって頭がいっぱいになる」
いつか見捨てられるのではという不安は、成功のステップを急に上り詰めた者にしか分からないだろう。
彼らは確かで稀な才能を持ち、それは大衆の移り気な判断で測られるものではなかったのに。


『MADONNA THE IMMACULATE CORRECTION』(1990)
デビュー当時からのMVをまとめたもの。でもこうして見ると、やっぱりライヴ映像のほうが面白い。
彼女は常に女優業にも関わり続けていて、それも才能あるけど、あの鍛え上げられた肉体を
惜しげもなく披露して、ダンサー顔負けに歌って踊るサーカスの世界、
次に何が起こるのかなってワクワクするし、彼女ならやってくれる。
ビデオのほうは女優の顔が強くて、ちょっと肩透かしを食らった感じ。
変幻自在の変わり様、どんどん進歩してゆく彼女の様子をこうして年代順に振り返るのも一興か。
脂がのりまくったこれからのマドンナは、どう私たちをビックリさせるのか、まだまだ目が離せない。


『THE WHO LIVE FEATURING THE ROCK OPERA TOMMY』(1989)
噂のロックオペラ映画『トミー』を観た後だけど、今作はまたちょっと違ったストーリーをもったロックコンサート。
ほとんど同じ出演者が集まって再演したってことか?状況がよく分からないのが残念。
ザ・フーの個性は、そのまま個性的なメンバとつながっている。
彼らに必要なのは、何百万単位の観客と自由に飛びまわれる大きなステージだ。
不思議なのは、強烈なライトをドビューっと浴びても、どこか素人臭いところがかえって
自由奔放な男の子がまんま大人になってしまったロックミュージシャンといった感じで
まさに'70年代を感じさせる無軌道さ、繊細さ、純粋さまで感じる。名曲ぞろい。
偉大なバンドだけど、なぜか笑えるセサミに出てくるマペットのロックバンドみたい。
ロジャーはしきりにポーズを決めて、青い眼は信じがたいほどクールだし、
しきりにジャンプするピートは、すごくイイ声の持ち主で、その表情からは奥が読めない深さがある。
ビックリ箱みたいなバンドだな。時代の若者の心をとらえ、表現したパワーとサウンド、
フィーリングには時間の経過はあまり関係していないようだ。


『勝手にしやがれ』(1959)

監督:ジャン・リュック・ゴダール 出演:ジャン・ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグ ほか
もっと『俺たちに明日はない』式に2人の若い男女が無軌道に大人に反発して暴れまわる話かと思いきや、
今や伝説的なこのゴダール作品は、やはりフランス映画の永遠のテーマ「男と女」を意外に冷静に見つめて描いている。
あふれだす言葉、言葉、言葉。それが即興というのは驚かされた。
何か言葉にすればするほど、真実から遠ざかってゆくようだ。
「幸福な愛などない。不幸な愛すらないんだ」
「どうして記者になったんだ」「男から自由になれるからよ」
スカートをめくられて、ミシェルの頬にバシっと一発ビンタを食らわせるシーンは快感。
「一発ヤラせるなら車に乗せてやるよ」って男なんだもの。


『THE LATE SHOW "LIVE AT MONTEREY"』

ウッドストックもモンタレーもその全員の演奏が録画されたはずなのにどうして完全版をビデオ化しないのかしら?
年代は同じなのに、ここまで対照的なブラックミュージシャンを1つにまとめた勇気は偉い。
もっとオーティスのライブを長く見ていたかった。思い出すのはジャニスの言葉 "OTIS? Oh, my man!"
この2人は若くして死んだから伝説的なのではなく、若くして才能その他をはるかに超えてしまったからかも知れない。

▼参加アーティスト
OTIS REDDING ♪SHAKE, RESPECT, SATISFACTIO!、JIMI HENDRIX、BOB DYLAN

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notes and movies(1994.5~ part3)

2013-01-18 15:20:11 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part2からのつづきで紺色のノートでラスト。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『気狂いピエロ』(1965)

監督:ジャン=リュック・ゴダール 出演:アンナ・カリーナ、ジャン=ポール・ベルモンド ほか

「見つかった?」「なにが?」「永遠が。海が。太陽に溶けこむ」

ストーリーの細部はよく分からない。どのみち仏映は、ストーリーより流れる詩だ。
「私の運命線を見て。短いわ」「僕は君の腰の曲線が好きだ。僕の愛撫する線が」
ミュージカル映画にでもなったような長く歌うシーンはイイ。
逆に車を炎上させ、黒い煙が空気や空をいやおうなく汚してゆき、
気にもかけない男女のシーンには我慢ならなかった。

途中、画面全体を「人生」「シネマ」「ラスベガス」などとテロップでその場面を象徴させたり、
主人公の俳優にベトナム戦争でのアメリカ軍兵とベトナム女性の狂言を演らせるなど、
映画全体がとても新鮮で自由な作りになっているのがイイ。
まるで作品を貫いている純粋に美しい海と空の青さと同じ。

「信じるよ、嘘つきめ」

ここでも自由を得ようとする女は、誘惑をうながす魔女か何かのように翼をもがれるしかなかった。


『ルシアンの青春』(1973)
監督:ルイ・マル 出演:ピエール・ブレーズ ほか
ゲシュタポ
1933年、反ナチス運動の取り締まりを目的として創設された。ナチス‐ドイツの国家秘密警察。親衛隊の統轄下に置かれた。

ヌーヴェルバーグの傑作と言われる今作。『さよなら子供たち』では、
学校の子どもたちに焦点を当てた同じくナチ下のフランスを舞台にした作品だったが、
これはもっと当事者に近い若者の複雑な状況での恋愛を描いたもの。
関係が複雑で登場人物も立場上語らないため、なおのこと緊張感が伝わるが
政治や歴史に詳しくない者にはちょっと説明しにくい。
粗野ではあるが若さと無知のために嘘をつく口を持たず、悪に染まりきっていない主人公は、
最初、鳥をパチンコで殺すシーンでは好きになれなかったが、どこか憎めないところがある。
この時代もやはり女は犠牲者で、戦利品、虐げられている民族と同じく、言う口を持たず、考える意志も持てない。
特別な言葉も要らず、国境や人種の違いもない恋する男女の世界を純粋に真っ直ぐ描けるのは、
ルイ・マル自身が若く、そういう感覚をいつまでも保ち続けているためだろう。


『蘭の肉体』(1987)
監督:パトリス・シェロー 出演:シャーロット・ランプリング、ブルーノ・クレマー ほか
フランスのサスペンス映画で、ランプリングが主演だからなおのこと一筋縄じゃいかない。かなり込み入った話。
元サーカス団員で、今はプロの殺し屋の兄弟とは、仏映じゃ殺人鬼ですらどこか味わい深い。
暗い過去と謎を山ほど抱えた役を演らせればランプリングはまさにピッタリ。
男女の切羽詰ったギリギリの状況での短い関係が緊迫感たっぷりに描かれている。


『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)

監督:ロナルド・ニーム 出演:ジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン ほか
パニック映画絶頂期のアメリカならではのスケールの大きさ、迫力、おそらく相当の費用と特殊技術、
フィルムが回っていないところでも、もう1つのストーリー(撮影、裏方等もろもろ)が存在しただろう。
かの『タワーリング・インフェルノ』と並ぶパニック映画の金字塔
これはもう娯楽以上に観客を引きこみ、心を動かし考えさせられるものがある。

背後から魔の手のごとくのびてくる海水、緊張の連続、素晴らしいパニック映画を観た後は
人間の生き残ろうとするすごいパワーと命の大切さ、人と人との愛情や憎しみ、
普段の生活では忘れかけていることが思い起こされる。

「神は忙しい。だから自分の力、自分の内なる神を信じ、自分で戦うことだ」
「いつか誰かが助けてくれるだろう」「祈ってさえいれば神は助けてくれる」
という人々は死を待つのみで最初から生命に対して負けていた。
助かった人々は誰かの助けより、自分たちの力で、時に補い合いながら自力で生き残ったのだといえる。
それぞれの愛する者を失い、その後の人生を続けてゆくのは生き残るゲームよりもっと大変なことだろうが。

牧師役のハックマンの役割は特に素晴らしく、この映画にしてこの俳優
作品中に何度も訪れる選択肢。それは生か死か自分が決める選択であって、
もし自分が同じ船に乗り合わせていたら・・・
きっと最初に船が逆さになったショックで死んじゃってるだろうなあ・・・


『SOSタイタニック』(1956)
監督:ロイ・ベーカー 出演:ケネス・モア、ロレンス・ネイスミス ほか
世界中にショックを与えた豪華客船の処女航海における沈没事故。
確かな原因はいまだに不明だけど、生存者の証言等の協力を得て、極力事実に忠実に再現したのが今作。
なんといっても印象に残ったのは、階級の差がなんとも大きいことだ。
労働者、富豪らの船室の違い、応対もまるで天と地の差がある。イギリスという国の縮図そのものだったわけだ。
生と死の瀬戸際にも上流階級が先、ボートに乗った婦人は「これ以上乗せないでくれ。我慢出来ない」と言った。

「人には上も下もない。命の尊さに貧富の差はない」というメッセージも強く訴えている。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』にあらわれる牧師と子どものシーンを思い出さずにはいられない。
海水面に対して船首から垂直になるまで船にしがみつく者、凍るような海水に落ち、
なにか浮くものにつかまり、他人をおしのけて自分だけ助かろうと必死になる様子などはまさに地獄絵だ。
2千人中、約半数しか生き延びることができなかったという事実。
この悲劇は教訓とさまざまな思いを後世にずっと残し伝えてゆくことだろう。


『美しき諍い女』(1991)
監督:ジャック・リベット 出演:ミシェル・ピコリ、エマニュエル・ベアール ほか
1時間版を観たけど、やはり4時間版もチェックすべき。時間の工面に勇気がいるけど
諍い女=ケンカっ早い女という意味らしい。
マリアンヌに「顔を描かせるのは断ったほうがイイ」と忠告するが断られる。
なぜ顔なのか? 先日TVで写真家が「ヌードを撮っても結局は顔になる」と言っていた。
ベアールのヘア問題より、久々ジェーン・バーキンが見れることに期待した。
いつもは人騒がせな役は彼女が演っていたが、今作では画家である夫に
全身全霊吸い取られたかのような無気力に生きる妻を演じている。

今作では画家がまるで神のごとく描かれている。モデルを裸にし、人形のように扱うのは
同性として面白くないが、途中からマリアンヌ自身の動き、時間、場所で演じたのはよかった。
描かれた本人が見るべきではなかった絵とは一体何だったのだろう。
偉大な画家は大勢いるが、彼らが描き出すもの、芸術とは?その目的とは?
大きすぎる疑問が残った。その疑問を問いかけているという点では観てよかった。


『グランド・ツアー』(1991)
監督:デヴィッド・トゥーヒー 出演:ジェフ・ダニエルズ ほか
未来の観光者は、町に巨大隕石が落下する瞬間を見に来た「災害見物ツアー」客だった。
雪の上を駆ける馬の美しいシーンから、一瞬で悲劇になるシーンは鮮やかだが恐ろしい。
いくつもの流れ星が落ちる景色も美というよりどこか異常。
「もしあの場所、あの時間に居合わせなかったら?!」被害者なら誰しも思うことだろう。
事故や病気だけでなく感情まで失ってしまった今作の未来世界は、
どうやらそれほど「グランド(ステキ)」ではなさそうだ。
自然災害や文明がもたらす災いの悲劇は、悲惨極まるものだが、
それにも「バランスをとる」というプラス面もあるのかも知れない



【読書感想メモ】
「シンデレラ・コンプレックス」コレット・ダウリング


【歌詞をメモした曲】
♪Where do we go from here?/J.R.Robertson
♪4% Pantomime/J.R.Robertson, V.Morrison
♪Stage Fright/J.R.Robertson
♪Across the Great Divide/J.R.Robertson
♪It makes no difference/J.R.Robertson
♪AMERICA/P.Simon
♪The only living boy in New York/P.Simon

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notes and movies(1994.3~ part1)

2012-12-28 10:48:39 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
今回はオレンジ色のノートからご紹介。

  

photo1:基本形
photo2:時々アートなコラージュがある
photo3:ザ・バンドを見に行った時の半券。わたしと友だちが会場内で一番若く見えた

若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『ボワ・ノワール 魅惑の館』(1989)
監督:ジャック・ドレー 出演:ベアトリス・ダル ほか
『ベティ・ブルー』で衝撃的デビューしたダルが情熱的なヒロインとはうってかわって、
しっとりしたパリジェンヌを演じて、演技の多様さ、確かさも見せている。
南仏の自然がとにかく美しい。中世の造りで迷路のような通路、
一羽の鷹が獲物を狙って目を光らせてはばたくシーンの緊張感。
完璧に俗世間から離れた世界。

兄を演じるフィリップ・ヴォルテールは、フランスのキース・キャラダインといったところ。
ピンと張り詰めたサイコな演技、ルックスもイイ。極端な行動に走る彼の本当の姿は結局分からずじまい。
日記がキーとなっている。自分をさらけ出し、第三者の眼から隠しながらも意識せざるを得ないフシギな世界。
それを読めば、書いた人間を深く理解することができるかもしれないが、
人間同士付き合っていくことはまた別物。「日記は過去で縛り付けるもの」だろうか?


『歌え!ロレッタ 愛のために』(1980)
監督:マイケル・アプテッド 出演:シシー・スペイセク、トミー・リー・ジョーンズ ほか
シシーが歌を披露しているという今作を前から気にかけていたけど、やっと観ることができた。
ロレッタ・リンは、カントリーの女王として一世風靡したそうだけど、年代も古いせいか本物は聴いたことがないが、
シシーのハスキーな声で数曲のヒットソングが歌われ、歌手としてもなかなかイケる。
レヴォン・ヘルムが父親役で出演しているのに驚いた!はじめは同姓同名の別人かと思っちゃったけど、
可愛い娘を遠くへ嫁に出す貧しい鉱山労働者の父親役を温かく、渋い味が出てて俳優としてもスゴイ。
シシーは今作で念願のオスカーをとり、涙を流して感激したそう
ティーンからシンガーソングライターとして成功した母親までの半生、
少女から、自立した、家族と歌を愛する女性へと成長する様を見事に演じきっている。
化粧などによって改めて女って変わるものだなって感心させられるけど、やっぱり個性があってイイ。
リンを支え、愛し続けた夫役にジョーンズほか、助演陣もそれぞれ好演。
ケンタッキーの土臭さ、カントリーミュージック世界一色の1本。


『ニューヨークの奴隷たち』(1989)
監督:ジェイムズ・アイヴォリー 出演:バーナデット・ピータース ほか
音、ファッション、メイク、セリフ、ちょっとした動きや、セットももちろん、
ここまで現代のポップカルチャーにこだわってる映画もスゴイ
ニューヨークの前衛的で、エネルギッシュで、混乱、ドラッグ、アルコール、恋愛に満ちた
若者の群像劇で、次第に深みが加わって、ストーリーも盛り上がってふくらんでいく感動作。
単に軽いだけじゃないんだな。女の子が喧騒に巻き込まれながら自立する物語りでもあるし、
若いアーティストたちが自らの道を模索しながら切り拓いていく物語りでもある。
ニューヨークって、いつもチャンスを狙ってる奴らで賑わっている。
「孤独でいるよりツラいことはあるのよ」
突然集まった連中でそれぞれ問題を抱えたまま夢中で野球をするシーンなんか涙が出てくる。
田舎と同じ絆をニューヨーカーも求めている。成功やお金と同じくらいに。
アンディ・ウォーホルが絶賛してたっていう原作もぜひ読んでみたい。


『わが美しき愛と哀しみ』(1987)
監督:ジョゼ・ピネイロ 出演:カトリーヌ・ヴィルグナン ほか
邦題とは違って軽石みたいにポップな仏映。
終始バックに流れる英語の歌謡曲に合わせて、なんとなくアメリカ人が撮ったちょっと勘違い仏映っぽい。
せっかく花が咲きかけた才能を理解しないどころか、そこから突き落としてまで求めるような男じゃ
断固パスされても仕方ないって感じ。なんとなし覚えたセリフを言いながら
橋の欄干の上を歩く男の姿はちょっと寂しいものがあったけど。
最初、女が男のいいなりになっていたのが、次第に男が女のオモチャと化していくあたりがポイントかな。
演劇界の舞台裏は、懐かしい角川映画の『Wの悲劇』をちょっと思い出してしまった。


『アメリカン・グラフィティ』(1973)
監督:ジョージ・ルーカス 出演:リチャード・ドレイファス、ロン・ハワード ほか
いまやスピルバーグと並んでハリウッドトップの一人、ルーカス29歳の作品で、'60年代を思い入れたっぷりに描いている。
終始流れるオールディーズは、私の両親が大好きだったこともあって小さい頃から親しんでいるから、
耳にすれば思わず口ずさむような懐かしい曲ばかり。
出演者の顔ぶれが、これまた今や渋い大スターばかり。ハリソン・フォードまで若い、若い!
一夜の様々な若者たちの群像劇がこれほどリアルに描かれている作品も珍しい。
よく「青春グラフィティ」ってジャンルがあるけど、今作のタイトルからきてるのかしら?

を転がして小さな町をブラブラ回る若者。町中が知り合いで、ダンスパーティーではポマードをつけた
オールバックでロカビリーにシェイクダンス~'60って、今から見ればなんだかフシギな時代に見えるけど、
当時の人にとっちゃ、古着に男もピアスを着ける現代のほうが異様に見えるんだろうね。
過去の思い出、古き良き時代ってなんだか切なく感じてしまうけど、
こんな一夜が存在し得なくなって、羨ましい部分もあるのかもしれない。


『ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドライブMCMXCⅢ』

いつ見てもウォーホルがデザインしたバナナの絵ってホレボレしちゃうね。
まさにバンド名も、スタイル、コンセプトも神業的としか思えない。
最初にこれを観た時よりは少しだけ知識もついて、それを踏まえるとなかなか一味違う感じ。
でも、'60年代ピークにいた彼らのステージと比べるチャンスはないから残念でもある。

サングラスをちょっと老眼っぽいインテリなフレームに変えたリードは、
どちらかといえば繊細な文学系に見えるけど、ギターの腕もイイ。
ケイルのヴィオラとの延々とした掛け合いはミュージシャンの年季が入っている。
♪HEROIN の奇抜さ。ドラッグをこんなにストレートに賛美してる曲を除けば、
'60年代を知らない私には退廃美よりむしろ♪PALE BLUE EYES等の美しいメロディだけが印象に残る。
黒いTシャツとジーンズという格好、セットもシンプルそのもの、
終わり方も横一列に4人が並んで何度も客席からの喝采に頭を下げる。
リードが胸を叩いた仕草にもバンド自体が持つとても重い意味が感じられた。
感動的な再結成をようやく果たした後、今現在はどんな活動をしているのか知りたい。


『A NIGHT WITH LOU REED』(1983)(輸入版を購入
んー・・・個人的には1993年の顔のほうが好きだなっていうのが結果論。
まあ、ルックスだけの問題じゃなく、声は昔も今も他の誰にもない素晴らしい声なんだけど、
まだ'83といえば40代前後。若い頃のテンションが残っていて、キャリアの中でも中間期でもあったわけだし。
それにしてもテーブルに座って、飲んだり食べたりしながらロック、
それもリードを聴く観客のほうがよっぽどスゴイと思う。
1カットだけウォーホルの姿がチラッと抜かれてたのも印象的。
酒が入ってるだけに、エアギターでノリまくってるおやじには参っちゃう

舞台裏のひとコマ入りで、ステージに上がる前の楽屋でのちょっとした緊張感、
終わった後の興奮の余韻でベラベラと喋りまくっているリード。
真っ赤な服の妖しげな女性はシルビアかしら?
ギターがクイン、ベースは黒人、ドラムはなよなよだけどシンセドラムをパンクみたく叩いてるってゆう編成。
リードはエレキギターで終始アンプの前に膝をついて何やら音響効果の調節に忙しい。
セトリも♪NEW SENSATION あたりまでのヒットナンバー目白押しなんだけど、
激しいリズムとギターの割に深みがないというか、アレンジは面白い。
タイトル通り、軽い気分で観て、一晩のショーとして楽しむべきかも。
やっぱり不協和音のルーツに還った'93のステージにはかなわないってところかな。


『Rolling Stone 20 years of Rock'n'roll』(1983)
参ったな・・・なんか観た覚えがあると思ってたら、やっぱり'90.12に観たって日記に書いてある。
でも、その頃はまだロックの勉強?を始めたばかりだったから、
なにも特別な思いを抱かなかったけど、4年後の今、新たな驚きがいっぱい詰まってる。
ゲストの中にロビー・ロバートソンがいて、ディランのことから、パンクシーン、
グラムロック、ニューウェーブ後のポップまで「影響を受けて面白いと思ってる」なんて話をしているシーン、
そしてリードが「ディランはすごい」(前は大嫌いだってゆってなかった? でも30周年記念コンサートにはいたね)
とか「黒人音楽はスゴイ。オーティスに勝るものはない」みたいなコメントをしているシーンがある貴重な資料。

グレイトフル・デッド、ティナ・ターナー、トーキング・ヘッズ、スティング、
ニール・ヤング、ミック・ジャガー、ジョージ、ハリスン、D.ボウイ等々、
さすがアメリカを代表する音楽雑誌の巨大なパワーと金の力はすごい
圧巻なのは、ジャニスの♪Little Girl Blues なんて美しいんだろうって感動せずにいられない。
ダークでルーズィな衣装も、声も、ブラウンの髪も、長い指もなにもかも。
デニス・ホッパーが案内役というのもうってつけ。'60~'80までの20年間、
政治、若者らの運動、モンタレー、ウッドストックに代表されるヒッピームーヴメントなどの社会現象、
ロックシンガーの死、移り変わりが分かりやすい形でビートに乗せて、まさにロックの変遷のガイドブック。

【収録ミュージシャン】
ビートルズ、バッファロー・スプリングフィールド、ジェファーソン・エアプレイン、
グレイトフル・デッド・ジミ・ヘンドリックス、オーティス・レディング、アレサ・フランクリン、
マーヴィン・ゲイ、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、ザ・フー、ジョニ・ミッチェル、
ジョー・コッカー、ザ・ローリング・ストーンズ、ジャニス・ジョップリン ほか

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notes and movies(1994.3~ part2)

2012-12-28 10:48:38 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。part1からのつづき。
この頃は音楽系にハマってたらしい。
長いけど、最初に見たバンドの第一印象って面白いからそのまま載せてみたw

若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『Rock'n'roll '69 the greatest years』(1989)
いやあ、訳も分からず観ちゃったけど、コンセプトがよく分からん。
ヒット曲のプロモーションビデオやら、当時の映像をかき集めた割に唐突でメチャクチャな構成。
でも'69当時のロックシーンの雰囲気をちょっと齧るには興味深いし、資料としての価値は高い。
ヒットチャートで何位だったとかゆうテロップは必要ない気もするけど、
それぞれのカットの切り替えが早いから、下の英語を読んでいるうちに演奏が終わっちゃってたりする。
やっぱりジャニスはすごいのと、D.ボウイがキョーレツだったっていうのが'69年かな。
テンション高いアンドリュースの掛け声やギターソロもイイ。ジャニスのアクションもサイコー
同じ年にヒット曲を持ってたジャスとボウイ。ほど遠い2人が出会うチャンスなんて一体あったのかしら???

【収録アーティストメモ】
Fleetwood Mac
思い切り演奏してないのがバレてるドラムス

Amen Corner
Andy Fairweatherは本当にカリスマ。ニタついた危ないヴォーカルって意味で。

Desmond Dekker
もっと笑っちゃう!黒人の怪しいロボットかなにかみたい。完全に宗教。

Clodagh Rodgers
イギリスのアイドル歌手。日本のアイドル歌手と似てる。(そいや、モンティ・パイソンのネタにも出てきたよね?w

Martha & the Vandellas
モータウン出身の女の子3人組。やっとまともになってきた(失礼だ

Beach Boys
カルフォルニア・ポップ。いまだに現役でしょ?ハーモニーがキレイ

Stevie Wonder
スゴイ ハモニカやピアノだけじゃなく、ドラムも叩ける。盲目とは信じがたいリズム感覚。
バックのオーケストラと生演奏なのがイイ。

Janis Joplin
彼女が突然ロックシーンに飛び込んできた'69の映像だもんね。文句なしにすごいこのノリ、
どのビデオを見ても彼女のクリエイティヴでエキサイティングな才能には誰もかなわない!貴重な資料

The Who
元気だねえ、コードマイクをそんなに振り回したら危険だよ。突然ここで照明効果。

Leon Russell
速いピアノと歌がイイ。

Bill Medley & Bobby Hatfield
これは2人の名前か?

The Righteous Brothers
クラシカル。相手方の小鳥みたいなバッキンコーラスがイイ。

The Rolling Stones
若い!当時長髪のミックのマッチ棒みたいな体。跳んだりはねたりのノリは今と同じ。

David Bowie
これ絶対本人は見たくない、見せたくない映像だろうね。若すぎる。初めて見たし、ショッキング。
TOMってデカデカ書かれた宇宙服で♪スペイス・オディティの世界をそのままドラマ仕立てで演じてる。
でもスーパースターになるべく一生懸命だった第一歩だったわけよね。
それにしてもわざとらしい演出。この頃から充分にunusual。面白いアレンジで変にキレイな声で歌ってる。


『Rock'n'roll '70 the greatest years』(1989)
どうやらブリティッシュロック中心にU.K.チャートばかりのヒットを集めてある。
ヘヴィなサウンドがウケてた一方で名曲を数多く出したカーペンターズってデュオもいた時代。

【収録アーティストメモ】
Jimi Hendlix
いきなりジミ・ヘンから。この頃はまだギターソロもおとなしい。
スキニーボディに、コントで爆発した後みたいなヘアスタイル。
今のギタリストで影響受けてる人は多いけど、彼は誰かの影響を受けたのかしら?

Mungo Jerry
すごいもみあげ!狼男だよ。ピアノをベースにした童謡みたい。

Black Sabbath
これは前に観た。ヘビメタのはしりだそうな。

The Beach Boys
また彼ら。当時相当活躍してたんだね。イージーリスニング。

Deep Purple
噂に聞くこのバンド。ヘビメタのルーツ。現代に比べるとまだソフトだと思うけどイイ。

Blue Mink
黒人女性と白人男性のヴォーカルの組み合わせは珍しい。
歯切れのいい2人のハーモニーもイイ。

Canned Hearts
グルーヴィなロック。ちょっとヴォーカルが太めのサンタ風

Christie's Chart
♪Yellow River は知ってるけど、バンドは初めて見た。曲に合わせて船で川下りしながらって演出はニクイ。

Shocking Blue
バナナラマによってカバーされ再ヒットした曲♪ヴィーナス 日本でも知られている。
元は黒人系の思い切り'70年代ファッションの彼女が歌ってたわけだ。
ドラムスが女の子なのも当時は珍しかったんじゃないかな?

The Kinks
♪LOLA このバンドも伝説的。ライブの映像でノリがいい。完璧ロックなのにヴォーカルはスーツ着てる。

The Faces
ロッドが若い!ひよこヘアはそのまま、しゃがれ声も、タイトなファッションも。

Ciarence Carter
盲目の黒人シンガー。小説風の歌。

The Carpenters
カレンの透き通った声はいつ聴いても感動的 大きな眼にブラウンの長い髪。
女性がドラムとヴォーカルってゆうのも斬新だし、今回初めて兄のリチャードがピアノとバックコーラスをしているシーンを観た。
この名曲に、このバンド。何十年経とうと不滅だね。カレン亡き後、兄は今どうしているのかしら?

Edison Lighthorse
アイドルグループっぽい。テレビとスタジオでしかプレイしなかったんだって。

James Brown
なんか若い頃から太鼓腹。ゴスペル、ソウル、今や神様。パープルのスカート風衣装で
白人の女の子とダンスも踊っちゃうパフォーマンス。



『Rock'n'roll '71 the greatest years』(1989)
やっぱりノリにノッてた頃のT.REXかな。ロッドの声と曲も甘くてイイし、
生まれたてのヒヨコみたいなルックスも可愛かった
スターダムを一足先に降りて天に昇ってしまった人もいれば、20年経った今でも
ちゃんとロック界を背負って、新しい創造にチャレンジしてる人もいるってのはスゴイこと。
今の子どもたちにとっては、CDショップで手にとった時点で新しい出会い
新曲であり、新しいショックと驚き、感動でもあるんだよね。

【収録アーティストメモ】
The Kinks
いかにもかぶりもののApemanとバンドメンバのからみのビデオクリップ。

T.REX
イエス!これは見た。シルクのオレンジ色のスーツにシルバーのパンツ。
中がミッキーのTシャツなのがなんともキュート。こうしてロック史の流れから見ても
マーク・ボランのスタイルは画期的だ。動きのあるカメラワークも。
♪ジープスター がどんな歌かと聞かれて、ボランいわく「It's a car, of course」て
自分じゃ絶対運転しなかった車狂なんてフシギじゃない?
スティーブも一生懸命ボンゴ叩いてる。どこかのライブ版。

Elvis Presley
エルヴィスがわざとらしく動くたびに聞こえる黄色い声が面白い。

The Who
'69のヤンキー少年から突然ツェッペリンみたいな雰囲気に転身。
ギタリストは相変わらず元気。ドラッギーなステージ。

Dawn
♪Knock Three Times 聴いたことある。胸毛の濃い、それを強調する大きなV字シャツ!
一緒に踊ってる2人のコーラスガールがいかにも'70スタイル。

Middle of the Road
スコットランドのグループ。ロリータっぽいボーカルのコ。民謡に近い。

Rod Stewart
まだ眠そうな寝起きみたいなロッドが若くて可愛い。ハスキーヴォイスで曲もスイート。

Slade
ヴォーカルの顔がルー大柴並にコワイ。金属音みたいな声。ハードロック。
ハイテンションでカメラレンズまで曇らせちゃったライヴヴァージョン。

Equals
2ギター、ベース、ドラムスのシンプルな構成。

The Carpenters
'83に亡くなったカレンがドラムから離れてマイクで歌っている姿が見れる。
上品なパープルのドレスと黒髪が美しい。兄リチャードも蝶ネクタイだもんね。クラシック作曲家みたい。

Gilbert O'Sullivan
ピアノを弾きながらのフォークロック。

Theme From Shaft
インスト。黒人指揮者に合わせてのレコーディングセッション風で観客もいる
スローな映像と軽快なリズムの組み合わせはフシギな効果。
後半に入るちょっとした歌とコーラスもなかなかイイ。

Ringo Starr
ソロ活動。ビートルズ時代のノリをそのままひきずったジョークなヴィデオクリップ。
ペンギンバンドとの演奏とか。

The Rolling Stones
エジプト人風アイメイクをしたミック。音もデビュー当時のシンプル+混乱したものに比べてペットも入っててイイ。
このパワーとアクションは今でも同じだもんね。


『Rock'n'roll '72 the greatest years』(1989)
とゆうわけで、これが少なくとも近所のレンタルショップに置いてあるシリーズのラスト。
'63には♪風に吹かれてを歌うディラン、♪ビー・マイ・ベイビーのロネッツなどが入ってるって
ラストの宣伝にあって、面白そうじゃないか!とにかくあるだけではこれで最後。
他にも見たいバンドはいっぱいあるけど、トップチャーターだけを扱っているからこんなもんでしょ。
相変わらず好調に走ってたロッドやボランから、洗練されたサウンドを聴かせるテンプス、
ドリフターズ、アリス・クーパー他のキョーレツな奴もたくさん見れたし、
'60、'70のロックは今でも不滅だ。こんな企画ももっと増えてほしい。

【収録アーティストメモ】
Roxy Music
ブライアン・フェリーがギター&ヴォーカルのバンド。
一本調子のヴォーカルにチンピラっぽい前髪。

Vincent Furnier
アリス・クーパー率いるバンド。猿に電話させたり、煙草を吸わせたり、
金・金・金の扇動的な政治屋かロックスターかを風刺したヴィデオクリップはなかなか面白い。

Don Mclean
ギターの弾き語りのフォーク。ディラン風でルックスもソックリ。
ゴッホにインスパイアされたという♪ヴィンセント はボウイの曲に似てる。

Dr.Hook & the Medicine Show
♪Sylvia's Mother は世界的ヒットらしいけど知らない。土臭いスタイルのバンド。
あやしい片目の男がコーラスでキレイ。

The Faces
ファンキーなライヴアクト。シンプルなメロディで大勢の観客もノリまくってる。

Focus
♪Thijs van Leer ヨーデルを歌うキーボードがサイコー!オランダのバンド。
冗談じゃなく真剣に高音で歌っているのがイイ。ロックオペラってとこかな。
ロックとのミスマッチさがイケる。フルートまで吹いちゃって本当にぶっ飛んでる

Cat Steven's
ピアノの太ったアフロヘアの男はキョーレツ。ラヴ&ピースな歌。

The Drifters
彼らがドリフターズかあ!脚の長い4人黒人グループ。
タイトなスーツを着て、クラシックでスウィングなサウンド。
ヴォーカリストがユーモラス。低音からものすごい高音まで歌うクリクリした眼がキュート。
2人のコーラスに1人ギター。洗練されている。

Rod Stewart
一転してカラフルな青いシャツ。ソロになったロッド。アイドルっぽさから抜け出して渋さが加わってる。
メロディ・メイカーとしても才能あるよね。

The Osmonds
なんとも中性的で個性的なルックスのシンガー。ベビーフェイスだけどしっかりした音楽。
家族編成のバンド。タイトルもなんともいえない響き。

Peter Skellern
♪You're a lady 静かなバラッド。ロマンティックなラヴソング。
ピアノを弾くシンガー・ソング・ライター。弾き語りそのもの。
どうやら女性教師に恋した生徒の歌?ありがちだけど大層なコーラスがついてる。

T.REX
トップ10に5曲、そのうち3曲がトップ3だってゆう驚異的人気だったピーク

The Temptations
ピンクのステージ衣装で、声といい雰囲気ですぐ分かった。
ステージ下で踊るブラックキッズたちの大きなアフロヘア!
それぞれのフィーリングで好きに楽しんでいるのがイイ。洗練されたコーラス。

Alice Cooper
♪School's Out ラクダが出たり、サーカスの世界そのもの。ハードロック。
クーパーのカリスマ性は眼を見張る圧倒的ステージ。
ケンカのパフォーマンス、メイクしたファンらを巻き込んだ暴力映画みたい。

Michael Jackson
ジャクソン・ファイブの一番若いメンバだったマイケルがまだ若い!
♪BEN は静かなラヴソング。デカい花柄パンツ。

Procol Harum
チャートのマジックで突然復活したってゆう♪A whiter shade of pale は今でもテレビCMで使われたりする。
政治的な映像も使われて、キーボードのメロディがノスタルジック。
バンドメンバは平凡だけど、サウンドには注目。


『WOODSTOCK 3DAYS OF PEACE & MUSIC』(1970)
 
監督:MICHAEL WADLEIGH
結局ラストはジミヘンのアメリカ国歌で締めたわけだけど、他にももっと出演者はいたはず。
初日に来たジャニスもプレイしたはずだし、本に書いてあった通り彼女のアクトが
映画、資料としての映像で残っていないのはなんとも残念。
やはり一番の圧巻はジョー・コッカーだな。とにかく天にも届くあのバラッド、あの叫び、あのリズム



主催者が集まった連中と同じ若い青年なのにまず驚かされる。ステージ建設の始まりから、
次第に集まる群衆、それが一大イベントとなり、誰も止められない前代未聞のニュースとなった。
雨が降っても人々の興奮はおさまらない。みんな口々に
"We're helping each other, and loving each other" この映画ではこれが強調されてる。
観客の視点からとらえているのがイイ。プレイヤーにはまた別の物語りがあっただろうし、そちらも興味深いけど。

何十万人のそれもアメリカの三大都市の一画、大した設備もない場所で、ほとんど暴動らしきものもなく、
平和的にことが運んだってだけで、もうこれは驚きに値する。
いろんな伝言、求婚、出産、親に電話しろだのメッセージが飛び交って、周囲の住民の反応も様々。
同じ歳の子どもを持つ人々は歓迎していたんだね。実際はもっと混乱してたはず。
個人的には、加わるにはハードすぎると思うけど。ドラッグ、酒、フリーラヴがまかり通る
フリーでピースフル、ファンタスティックなミュージック・フェスティヴァルだったとうこと。

モンタレー・ポップ・フェスティヴァルもウッドストックと同じくらい大規模なフェスだったらしいけど、
そちらも全体的な映像を映画化した映像はないのかしら?
ヴェトナム反戦、自由を訴えるという若者たちの、古い体制、考え方への反発運動でもあったこのフェス。
でも、参加者にはそれぞれの思いが十人十色あただろうし、それで何を得たのかな?
20年経った今、個人個人どう変わったのか知りたい気もする。
もう2度とこんな規模の奇跡は起きないだろうし。

(各ミュージシャンのパフォーマンスの感想も書いてあったけど長いから省略


『MTV CLOSET CLASSICS 栄光の60年代』(1987)
いかにもMTVらしいコンセプトで撮られた1本。いまだにヴィデオクリップじゃ口パクが主流だけど、
この頃はもろに手と音が合ってない。とくにドラムは難しいのは分かるけど・・・
他の年代のもビッグアーティストのがあるだろうし、もっと提供してほしい。

【収録アーティストメモ】
'67 CREAM/I FEEL FREE
こりゃビックリ。ボウイがアルバムで歌ってたやつだ。これが元ネタだったのね。
ボーカルがトム・ベレンジャーみたい。エリック・クラプトンがギターだって、またビックリ。

'68 THE MOODY BLUES/NIGHTS IN WHITE SATIN
ハリウッドスターぽいシンガー。静かなラヴソング。"yes I love you"を延々と繰り返してる。

'68 THE WHO/MAGIC BUS
もちろんマイク回して、ギター回し弾き、エルヴィス風のヒラヒラ衣装のロジャー。
ドラムス危ない立ち打ち。

'68 THE BEACH BOYS/SURFIN USA
これは今でも聴く典型的サーフィン向き。バンド名からして徹底してるものね。
みんな遊んでて演奏してないのがバレまくり。

'69 STEPPENWOLF/BORN TO BE WILD
この曲も有名。でもバンドは初めて見た。曲通り、グラサンのワイルドなスタイルのシンガー。

'72 BLACK SABBATH/PARANOID
これも先日聴いたけどカラフルな映像がグラムスターっぽい。
アートをバックに長髪男たちのバンド。あんましカラフルで目がチカチカする。
ヴォーカルがオジー・オズボーンなんだ。

'71 T.REX/YOU'RE MY LOVE(JEEPSTER)
イエス!タイトルなんで違うんだろ?ボランは珍しく?実際に歌ってる
ブルーのシャツに黒いパンツ、ギラギラのグラムスターになる前?
なんか表情硬い。生のシャウトが聴けるなんてラッキー

'70 FREE/ALL RIGHT NOW
これも一部だけ見た。いいメロディ。エレキのサウンドとボーカルの恍惚とした歌い方、
グルーヴィな曲だもんね。ギターのソロといいライヴなステージ。

'66 JIMI HENDRIX EXPERIENCE/WILD THING
彼の映像が残っているだけで価値があるのに、このアクション
舌を出したり、背中でギター弾いたり、ギターでサンキューと挨拶して、
アンプに突進してプレイ。これじゃ当時の子どもたちがみんなショック受けて
ギタリスト目指しちゃうわけだな。とっても危険でセクシャル、
ヴァイオレント・ムーヴィーでも観ているみたい。誰にも敵わない。

'71 YES/ALL GOOD PEOPLE
ジミ・ヘンのあの毒を見せられちゃ、他のどのロックも甘いラヴソングに思えてくる。

'70 MUNGO JERRY/IN THE SUMMERTIME
これも先日聴いた。陽気なバンドの陽気な曲。今度は空ビンを吹いてないで
口で♪チッチチオ!っていってリズムをとってる。
このピアニスト、音はいいけど、いつまで続くんだ。

'71 THE BYRDS/SO YOU WANT TO BE A ROCK'N ROLL STAR
犯罪者グループみたい。でもヴォーカルはタイしてるんだけど。

'72 THE GREATEFUL DEAD/ONE MORE SUTURDAY NIGHT
彼らがそうか。この間観たおじさん。ジェリー・ガルシア。顔中ヒゲだらけ。
このロックが後に影響を与えたのかしら?

'71 SANTANA/BLACK MAGIC WOMAN
この曲も知ってる。ウッドストックで歓迎されてたよね。キーボードの人が歌ってるけど、
君のほうが黒魔術師だよ。とくにパーカスのノリがサイコー。

'71 IKE & TINA TURNER(& THE IKETTES)/PROUD MARY
この曲も知ってる。スローにアレンジしてあるけど。わあ!すっごいミニスカートでセクシーダンス。
突如テンポアップして、コーラスガールとシャウト!
とりつかれたような踊りも見どころ。クロール泳ぎの速いダンス!

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notes and movies(1994.3~ part3)

2012-12-28 10:48:37 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part2からのつづきで、これがオレンジ色のノートのラスト。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『レモン色の空』(1988)
出演:ケヴィン・ベーコン ほか
ピュリツァ賞受賞作家ランフォード・ウィルソンの自伝的作品のドラマ化とあって、
家族問題を真正面からとらえた重いドラマ。ケヴィンが好んでよく出る、
登場人物が事の成り行きや本音のモノローグを語りかけながらストーリーが進行する構成。

若者一人ひとりがそれまでの凝り固まったグッドオールドデイズの考え方や生活スタイル、
常識を必死に覆そうとし、父母との関係の避けられない軋み、考えの違い、反抗が起きる
しかし、反抗する子どもらは根本的に腐ってるわけでも悪いのでもない。
ただもっと正直に、自由に、すでに引かれたラインではない自分の道を進みたいだけなんだ。

家族は血で結ばれた個人の集まりだけど、こんな家族の不和は別に珍しくはない。
「目の前にある現実すら信じがたいときがある」
これは逃れようのない現実で自分の人生の一部だ。
こうして時間は相変わらず流れて、親と子の関係はこうして永遠に連なってゆく。
・・・まったく、参ったね。


『ランデヴー』(1985)
監督:アンドレ・テシネ 出演:ジュリエット・ビノシュ ほか
どの国にも大女優を目指して一生懸命生きてる卵が星の数ほどいるんだろうけど、
その成功の裏には挫折の他にもいろんな人間模様があってこそ、
人間を描いた劇をリアルに演じることができて、観る人の心を打つんだろうね。
一番良かったのはボロボロになるまでニーノを愛したポーロの役割かな。
結局、彼の一途な愛だけが唯一本物だった気がする。
「人を愛することは芝居じゃないんだ。現実なんだよ。君は全然分かってない!」
女性を“体を強要するだけの道具”として描いているのが鼻についた。


『ファントム・オブ・パラダイス』(1974)
監督:ブライアン・デ・パルマ 出演:ポール・ウィリアムス ほか
♪人生はゲームのようなもの 騙されることもあるさ 生きるなんてどうせくだらない
軽快なピアノのビートに乗せて歌われるラストの曲。'70年代の若者の生き方をストレートに歌ってる。
ジェシカ・ハーパーも出演していることだし、どこか素晴らしきカルト映画
『ロッキー・ホラーショー』を思い出すロック・オペラ。
商業化した音楽、特にロック界を大々的にパロったもの。

有名な『オペラ座の怪人』からアイデアをとってもいるが、やはりこれはロック界への風刺・警告。
契約で縛りまくり、契約書たるや百科事典より分厚くて、「何もかも捧げよ」などと
アーティストの人権などこれぽっちも認めなかったり、コーラスに集められた女の子たちが皆ベッドに連れ込まれてたり、、、
でも、これを撮ったのが『キャリー』などを撮ったデ・パルマなのがまた驚いてしまう。
こうゆう隠し技も持っていたんだ/驚

ジェシカもフシギな女優。飛びぬけて歌が上手いとか、美人とかじゃないけど、
普通の女の子がビッグスターに変身するって役どころで独特の雰囲気を持っている。
スワン役のウィリアムズと、ビーフ役のオラーマン?がキョーレツなキャラかな。
そのまま悪魔に魂を売った信用できない奴、まさにレコード業界のトップ連中を体現しているようなこの風貌は怪しい。
でも、ロックは単に暴力的、ドラッグ、酒等々を意味してるんじゃなく
若者たちの魂の叫び、古い体制への反発、解放、自由や愛ほかのメッセージ、
自らを表現する素晴らしい手段だってことを理解しないとね。


『誕生日はもう来ない』(1981)
監督:J.リー・トンプソン 出演:メリッサ・スー・アンダーソン ほか
アメリカ映画にありがちなB級ホラーだけど、ちょっと話が込み入りすぎてて不明瞭。
ヒロインがあの『大草原の小さな家』のメアリー姉さん役のメリッサ。
まだあの頃の面影が残っている頃の作品だけど、うって変わって妖しげな魅力ものぞく。
クールで静的な美人は、こうゆうヒロインも演じられる。今は何をしてるんだろ?
いかにもすぐに分かっちゃう犯人当ての演出に、軽めのスプラッター、
この手の作品は深く読もうとしても特に重要な意味はない。
いってみれば、約束はキチンと守って、友情は大切にしましょうってとこかな。


『ボクシング・ヘレナ』(1993)
監督:ジェニファー・リンチ 出演:ジュリアン・サンズ ほか
ショッキングな題材をとりあげた原作のほうも気になる1本。
そして監督は、あのデヴィッド・リンチの娘というから話題にならないわけがない。
ピークス一家?からシェリル・フィンが悲劇のヒロインを演じている。
今作の見どころは彼女の完璧な美しさにあるが、これは同性としてとても屈辱的。
意志と無関係に醜い姿にした、自分を崇拝する男を愛さざるを得ないなんて!
ネタ切れ状態みたいなエンディングは『ツイン・ピークス』よりも納得できない。
女性の感性も効いているし、さすが映像美はイイけど、
まだハッキリしないカットの組み合わせっぽくて、ちょっと戸惑うところがある。


『過去へ旅した女』(1979)

監督:フランンク・デ・フェリッタ 出演:リンゼイ・ワグナー、マーク・シンガー ほか
4年ぶりに再鑑賞した。心に残る不思議な余韻。今観直すと、とてもノスタルジックな作品だと再認識した。
現代と過去を結ぶ恋。ストーリーもロマンティックだけど、時空を超えたとっても美しい物語り
誰でも自分にピッタリの場所や時代に産まれることは選べない。
もしかすると出会える可能性があっても微妙なすれ違いで出会わずにいるのかもしれない。
マークも若い。口ヒゲに長い髪。中世の画家をハンサムに演じている。
ジェニー役の女優もキレイだけど、いつも同じドレスでいるのは勇気がいったろうにw

(以前も書いたような気もするけど、地味ながら佳作。



【読書感想メモ】
「ROSE MELIE ROSE」MARIE REDONNET(そうそう、こうゆう“雰囲気”で書かれた小説シリーズで読んでたんだった
「さよならアンディ~ウォーホールの60年代」ウルトラ・ヴァイオレット

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notes and movies(1993.11~ part1)

2012-12-22 13:58:19 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
今回は赤色のノートから10作ずつをご紹介。

  

photo1:基本形(ジャン・ユーグ・アングラード特集記事
photo2:ここにもスティーヴン・キングあり
photo3:シンディのライヴに行った時の衣装のヘタっぴなイラストとかw(体調不良で一度延期されたんだよね

若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『ラスト・オブ・モヒカン』(1992)
監督:マイケル・マン 出演:ダニエル・デュ・ルイス、マデリーン・ストー ほか
今年話題となった作品の一つ。「モヒカン族の最後」を映画化。
雄大な自然の中でインディアン青年とイギリス女性の古典的ラブストーリー。
シンプルでピュアなインディアンらの生活は、私たちのルーツであるにも関わらず、
歪んで荒んだ現代社会と全く両極にかけ離れてしまったことを訴えているのかも。

作品を引っ張っているのはデュ・ルイスとヒロインのストー。
作品ごとに全く違う側面を見せてくれるルイスは、今作では陽にやけた褐色の肌、
波打つ黒髪、精悍な肉体、どこをとってもインディアンになりきっている。
対するヒロインは美しい白い肌にブルネットで対照的。清純な美しさが輝いている。
今となってはインディアンは血生臭い争いを好み、話の通じない人種のイメージが強いけれども、
家族愛、部族の結束など、私たちが失ってしまったものをいつまでも守り続けている
彼らの文化、考え方をもう一度振り返ってみたほうがよさそうだ。


『そして船は行く』(1983)
監督:フェデリコ・フェリーニ 出演:フレディー・ジョーンズ ほか
逝ってしまった愛すべきイタリアの映像の魔術師フェリーニへの追悼の想いを込めて。
その美しさと1シーン1シーン瞬きするのももどかしいくらい驚きに満ちた巨大セット、
親しみ深い不思議な登場人物たち、彼の頭の中に溢れるイメージそのままに賑やかで色とりどりなストーリー。
きっと天上でも観客を前に楽しいサーカスの世界を披露しているんじゃないかしら?

レンタル屋でもささやかながら、彼のコーナーが作ってあって、
私がまだ観ていないものもいくつかあったうちの1本。
なんとオペラの歌姫の葬儀の物語。
サイレント、セピア色の懐かしい映像で始まり、音楽、色が加わり、話の案内役はお茶目な風貌の記者。
政治的な問題も重なって暗くなってもいいはずが、様々な人間模様を浮き彫りにして、
ラストまで陰気臭さが全く感じられない、どこかおどけたところがフェリーニ独特の言い回し。
みんな個性豊かで、異国文化への好奇心や不安感がストレートに描かれている。
2時間たっぷり、登場人物とともに船旅をしているようだ
数々のクラシックが流れているのも心地よい。純粋無垢な天使みたいな少女が印象的。


『寄席の脚光』(1950)
監督:フェデリコ・フェリーニ 出演:ペッピノ・デ・フリッポ、ジュリエッタ・マシーナ ほか
フェリーニ初監督作品。彼の大好きな芸人一座をヒューマンタッチで描いている。
チャーミングで、男に捨てられてもなお慕い続ける情が深い女優役を演じたマッシーナが今作で賞をとったらしい。
今じゃテレビ画面と向き合う味気ない娯楽が主流だけど、当時は貧しくても
巡業する中で喜び悲しみを共にして、生のショウを観客と楽しむ芸人の世界があった。
フェリーニ調の不思議な映像美はまだ現れていないけれど、様々な個性がぶつかり合い、絡み合う人間模様。
つくづく彼は映画を愛するのと同じくらい、人間を愛していたんだなとしみじみ伝わってくる
アメリカから渡ってきたという黒人トランペッターがよかった。


『フック』(1991)
監督:スティーブン・スピルバーグ 出演:ロビン・ウィリアムズ ほか
出演者の顔ぶれの豪華さ!スピルバーグの超出費作?としても話題となった今作。
原作を初めて読んだ感動のなごりをひいて、その映像化にすごい感激と驚き
本やアニメもよいメディアではあるけど、やっぱりリアルに再現して見せてくれるこの映像の素晴らしさ!
大人になってしまったピーターのその後話を作るなんてアイデアがすごいけど、
リアルで親しみやすく、家族愛が原作を汚すことなく感動的に描かれていた。

難解な役もロビン特有のキャラならでは、ちっとも不自然なく、なりきった演技で引きこまれてしまう。
脇を固めるダスティン・ホフマン、ボブ・ホフキンス、ジュリア・ロバーツ、
それぞれが自分の役を楽しんでやっている感じが伝わる。
音楽もディズニー張りで、子どもは皆天使のように可愛い
子どもの世界には、人種や国境等のしがらみ、制限など何もないんだというスピルバーグの意図も感じられる。
「冒険は終わっちゃいない。人生こそ最大の冒険なんだ」
2時間たっぷり泣いたり、笑ったり、すっかり童心に戻った。


『マーラー』(1973)
監督:ケン・ラッセル 出演:ロバート・パウエル ほか
ラッセルはこの2年後、あの壮大なロックオペラ『トミー』を撮っている。
ポップやロックが体に浸透している自分としては、
クラシックの深遠かつ崇高な魅力と美しさの価値はよく分からない。
天才が担わざるをえなかった不幸、貧困、夭逝は同じでも、今作を観るかぎり
チャイコフスキーよりマーラーのほうがまだその苦しみが軽く見えるのは、彼が異性愛者だったから?
途中回想が入ることで、生い立ちや妻マイラとの出会いなどが紹介されてゆくというパターンで
ラッセルの奇抜なアイデアと映像が展開されてゆく。
マーラーとマイラを演じる2人の個性的で魅力的な俳優、前衛的といわれたマーラーの曲が作品中に流れる。
でも、どうして天才作曲家って偏見や無知で未発達な医術の時代の犠牲になってしまうのか


『ボッカチオ'70』(1962)
【第1話レンツォとルチアーナ】
監督・脚本マリオ・モニチェリ 出演:マリサ・ソリナス、ジェルマーノ・ジリオーリ ほか
なんだかんだいってもちゃんと愛が2人を結びつけていて、一緒に頑張っているところを見ていると
こんな生活もいいかもしれないと思えてくる。
ヘアスタイルやファッション、化粧などが、私の母が若かった時代の感じで、
男優もハリウッド系なルックスだったり、デートスポットのダンスホールなんか、
こんな風だったのかなあと想像すると面白い。とっても人間臭いリアリズム。

【第2話アントニオ博士の誘惑】
監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ 出演:アニタ・エクバーグ ほか
フェリーニのお馴染みの不思議な世界。巨美女アニータと蟻んこサイズの博士とのやりとりなど、
今じゃ見慣れた特殊撮影も、当時は相当な苦労と工夫が必要だったみたい。
別撮りを組み合わせて、思い切り作りものっぽいシーンはかえって微笑ましい
必ず巨大セットで四次元世界を楽しませてくれるフェリーニ。とにかく観ていて楽しい。
アニータの豊満で円熟した美しさはまさに世界でも比類なし。
今作は性描写なんたらより、広告が人々の深層心理に及ぼす影響がどれだけ大きいかを伝えている気がする。
毎日、毎日、テレビや、通りから何気なくて覚えやすいメロディに乗って
商品名が記憶や意識の中へ浸透していって、いつのまにか操られてゆく。
CMの氾濫、その悪用によって、私たちも博士のように我を忘れる悲劇にならなきゃいいけど。

(あれ?ウィキ見たら第3、4話もあるみたいだけど、ノートには書いてないのはなぜ?


『めぐり逢えたら』(1993)(劇場にて
監督:ノーラ・エフロン 出演:トム・ハンクス、メグ・ライアン、ビル・プルマン ほか
なかなか評判が良かった今作品。まさに“男女の運命の出会いとは”を思い切り分かりやすいファンタジーにした映画
何がよかったって、作品を飾る名シンガーによる名曲の数々
1時間も劇場で観ているとお尻は痛いし、ダレてくるのを、ジャズの軽快なリズムで、
しっかり観客の心をつかむコツを心得ているハリウッド映画。
主演は身近にいそうな親しみあるルックスのハンクスにメグ。子役も可愛い
劇中劇の『めぐり逢い』(ケーリー・グラント、デボラ・カー)も大きな鍵。
'50年代の純愛映画はいまだにゆるぎない理想として、恋する乙女の根底にあるっていうのには共感できる。
できすぎた話ではあるけど、どこかにきっと自分にピッタリのベターハーフがいるって思い描くのは楽しいもの。
それをいかにもありそうに描いた今作は、Dream's come true のアメリカらしい精神かも。


『サルート・オブ・ザ・ジャガー』(1989)
監督:デヴィッド・ピープルズ 出演:ルドガー・ハウアー ほか
ハウアーはルックスも他にない魅力と演技力も充分にあるけど、
なかなかアンチハリウッドで表に出ない代わりに、B級じゃないマイナー作品を選ぶ眼がある。
このエキサイティングで目新しいSF近未来映画は、
他のSFにある政治的、未来への警告なんかを排除して、
ひたすらシンプルで命を賭けたゲームとジャガー(闘士)らを描いている。
実際に存在しないのに、いつかこうなるかもしれないという現実味をもつSF。
今作の世界も人類のこれからの姿と無関係とは言い切れないのかもしれない。
核戦争後らしく、残っているものといえばガラクタばかり。
しかし、それらを最大限に利用して雄々しく暮らしている人々。
戦闘武器もコンピューターばかりのSFと違って手製なのがより現実味を感じさせる。
ラストの戦闘シーンは、ところどころスローテンポの映像、効果音がより興奮を高め、
思わずのめりこんでしまう迫力がある。

ジョアン・チェンはハウアーともう1本似たような近未来もので共演しているけど、
『ラストエンペラー』とはうってかわった、女戦士でありながら可愛いらしさをもつ役を体当たりで演じていてイイ。
さりげない無情さが漂って、まったく低予算さがなく、期待以上の1本。


『遥か群衆を離れて』(1967)
監督:ジョン・シュレシンジャー 出演:テレンス・スタンプ、ジュリー・クリスティ ほか
まあ、60年代としてはこんなところか。いくつか話に不自然な展開があったから
文芸大作と言えるかどうかはちょっと賛同しかねるけど。
先日観た仏映のテレンスに比べたら、この頃は若くて、色男役を演じるこんな俳優だったのかと驚いてしまう。
犬が羊を皆岸壁の下へ落としてしまうシーンも信じがたいけど、
あらゆるシーンが暗喩だとしてもあまりに突飛で訳が分からない。
女主人公が鏡を見てうっとりする自己愛が強いのも変な感じ。


『ルームメイト』(1992)
 
監督:バーベット・シュローダー 出演:ブリジット・フォンダ、ジェニファー・ジェイソン・リー ほか
サスペンスもそろそろネタ切れかと思いきや、こんな新手の心理的恐怖を見せつけられるとは、
凄くショッキングだけど、サイコ映画ファンには堪えられない。期待を裏切らなかった1本。
特筆すべきは、なんといってもジェイソン・リーのサイコっぷり。フォンダと本気で乱闘するシーンは凄い迫力。
元々アブノーマルな女優さんだけど、まさにハマった感じの今作。
2人ともそれぞれ個性を持つ実力派だから今後の期待度も大きい。
一緒に住むなら趣味も合うほうがいいけど、ソックリに真似されるとこれはまさに心理サスペンスの世界。
原作も面白いっていう噂だし、読めばもっと深く理解できそう。

コメント

notes and movies(1993.11~ part2)

2012-12-22 13:58:18 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part1からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『ヴァージニア』(1992)
監督:佐藤嗣麻子 出演:ジュリアン・サンズ ほか
悲しいほどにつまらなかった。キャスティングがイイだけにもったいない。
英国の美青年サンズは、美女の生き血を吸う吸血鬼にはピッタリだし、
それだけの演技力もあるのに全然発揮されていないのは、本人らにも分かっているんじゃないかしら?
相手役のスザンヌ・ハミルトンっは『1984』のヒロイン役。
神秘的な奥深い美しさを持っているのに、そう撮られていないのは残念。
初監督作品としてはまずまずだろうけど、宣伝のしすぎ、期待しすぎが裏目に出た感じ。
テレビドラマなら満足したかも? 構成が単発的で、カットが中途半端でつながっていない。
筋もあやふやで設定がつかめないし、登場人物になんの想い入れも抱けない。
メランコリックなセピア色で全篇通しているけど、血を飲むシーンだけ妙に大胆に血をドクドク使って品がない。
ドラキュラ映画はコッポラの『ドラキュラ』ですべて語り尽くされたのではないだろうか?
恐怖も、永遠の愛も、悲しみ、痛み、お定まりのルールさえ、彼は完璧に完成させてしまったのだから。
その上まだドラキュラ映画を撮るとしたら、別の角度から、よほど注意して創らなければならないだろう。

(珍しくすごい酷評だな・・・


『チャーリー』(1993)
監督:リチャード・アッテンボロー 出演:ロバート・ダウニー・Jr.、ジェラルディン・チャップリン ほか
大きな期待に大いに応えてくれた伝記映画。世界中にその名と作品が知れ渡っている喜劇王、
無声映画の王様チャーリー・チャップリンの物語。
伝説的なこの人が'77まで生きていたなんて、なんだか不思議/驚
4度目の妻ウーナはつい2年前の'91に亡くなっているし。
ということは、せっかく見事に出来上がった今作を彼女は観ずにこの世を去ったのだろうか?
チャーリーの歩みは、映画の歩みとも一致しているのも興味深い
駒落としのカラクリ人形みたいな昔の映画は、週に何本もの信じられない過密なスケジュールで、
監督が本番中に掛け声で指示しながら撮っていく様子なんてただただ驚いてしまう。

文句なく評価すべきなのは、ダウニーJr.の完璧な演技。
きっとチャップリンを相当研究し、暗中模索したんだろうなあと想像できる。
祖母役を演じたジェラルディンは、かなり難しい稀有な体験だったろうと想像する。

今作の主軸は小説家ジョージと晩年のチャーリーが自伝を書く上で様々な思い出を話すという構成。
でも、ジョージは今作を撮る上での架空人物だと知ってビックリ!
それだけアンソニー・ホプキンスの助演としての存在感の大きさと実力の深さを改めて感じた。
ダイアン・レインもダン・エンクロイドも、それぞれベストを尽くして演じているのが分かる。
ダウニーJr.はひとっ飛びに実力派俳優としての貫禄を身につけたけど、このプレッシャーを乗り越えて、
また更に大きなプレッシャーを背負うことになりそうで眼が離せない。

アメリカ、夢が叶えられる自由の国、その大衆は時にとても冷酷でストレートだったが、
そんな人々の歓声と笑顔こそ、チャップリンが唯一求めてやまないもの、
彼の人生を進め、安らかに終わらせたものではなかったか。
私はいまだにチャップリン映画を観たことがないから、ぜひいつか観てみたい。
彼の存在は映画の中にあり、時代背景とともに見えてくるだろう。

(わたしはチャップリンより、キートンが好きなんだよね

■『夢の涯てまでも』(1991)は、「心の中のベストフィルムvol.20」として抜き出しました。


『青い挑発』(1989)
監督:ピエロ・ビヴァレッリ 出演:モアナ・ボッジイ ほか
なんだかよく分からないラスト。イタリアお得意のエロティック・コメディ。
妙に教師面で若い娘に説教したがる家庭教師も2人の激しい露出演技にはイチコロ。
なんだかんだでまんまと罠にハマっていっちゃう。
イタリア美人3人に、夏の離れ小島での休暇、単にそれだけで他に深い意味はなさそう。


『トミーノッカーズ』(1987)
原作:スティーブン・キング 監督:ジョン・パワー 出演:ジミー・スミッツ ほか
今、原作が書店で人気を呼んでいる本がもう映画として映像で楽しめるのはすごくラッキー。
まさにキングは今を生きる「キング・オブ・ホラー」
しかもキャスティングが興味深い。『スウィッチ』で個性ある魅力が気になってたジミー・スミッツが主演。
マッチョな大男なのに愛嬌のあるクリクリした黒い目、頼りがいのある優男って感じでこれからも期待大。

キング作品はいつも何か計り知れない力が働いて、平和な町、普通の人々が
恐怖のどん底を味わうサイコ・ホラーが多いけど、今回ほどストレートなSFは珍しい。
もし宇宙人がこんな高度な文明を持つヌラヌラ怪物だったらヤダ

日常生活の中から生まれる、平凡だけど時に恐い人々の願いが体現されるところは、キングの人気の一つかもね。
エイリアンやUFO内部のデザイン、発明品なんかのデザインも見どころ。
考えるだけで小説をタイピングできちゃう未来の機械は、もしかしてキングの密かな願望の表れか?
とりつかれちゃった人々のメイクも、人の顔ってこれだけ変わるのかってビックリさせられる。


『ダーク・ハーフ』(1993)
原作:スティーブン・キング 監督:ジョージ・A・ロメロ 出演:ティモシー・ハットン ほか
これも新作中の新作。表紙もピカピカ光って書店の特等席に並んでいる著作の映画化
本と映画が同時に売り出されるって今までにあったかしら?
どっちがどう評価されるかキング自身賭けているのか?
主人公が作家で、四次元的な力が働いて平凡な家庭、人々を恐怖へおしやる。
その映像の静けさ、音響効果等々、キング作品は、どうしてこんなに興味を惹きつけ、恐怖心をあおり、余韻を引きずるのか

ハットンがやっと見れて、主人公の善と悪をきっちり完璧に演じ分けている。
その重ね撮りの技術も素晴らしいけれども、ハットンのなりきった演技が、
同じ顔をした2人の人物がいるのでは?という錯覚に陥らせる。
何を演らせても彼ほど完璧に演じられる俳優はいないのに、どの監督も彼の本当の力量を
完全な形で発揮させることはいまだに出来ていない気がする。

妻役は『フィールド・オブ・ドリームス』の女優。『ケープフィアー』のジェシカ・ラングと
同じ役どころだけど、夫と子どもを愛し、家族を守ろうとする役にハマってた。
キャッスルロックといえば『デッドゾーン』にも出てきた。キングのお気に入りか?

「作家は内部の自己を解放させ続ける義務がある」
どんなアーティストでも同じことが言える。自己の解放、それこそ人が求めるもので、
時に苦痛を伴う、一種、未知への挑戦でもある。

「ほとんどの者が最初は双子だが、成長する過程で強いほうが弱いほうを吸収する」
誰もが善良さと冷酷さをもっている。ダークハーフはそんな二面性を描いている。
雀の大群を死への暗示に使うシーンは、ヒッチコックの『鳥』を思い出させる。
今作も特殊撮影は素晴らしく、恐怖を抱かせる。
キングの執筆の才能、アイデアには終わりがない。アイデアの枯渇さえもアイデアの一つに加えてしまっているようだ。
私たちがちょっとした刺激を平凡な日常に求めようとするなら、キングの新作を待てばいい


『DUST DEVIL』(1992)
監督:リチャード・スタンリー 出演:ロバート・バーク ほか
近未来ホラー。“15歳以上の制限が初めてついた洋画ホラー”という肩書きに興味をそそられて観てみたけど、
これぐらいのベッドシーンや殺人シーンなんか今では珍しくなくなってしまった
確かに惨殺死体などやその方法はリアルに描かれているけれど。
人間の情念をもつ死神。あんなセクシーな悪魔がいたら、ついヒッチハイクで乗せちゃうのも無理はない。
怖ろしい速さで進む時計。ダストデビルは人類創世から神とともに生き続けてきた悪魔。
彼らはきっと人と同じ姿をして、今でもあらゆる場所で罪のない命を奪っているんだ。


『アグネス』(1985)
監督:ノーマン・ジェイソン 出演:ジェーン・フォンダ、アン・バンクロフト、メグ・ティリー ほか
前から観たいと思っていたメグ出演作。アン・バンクロフトの旦那はあのメル・ブルックスだなんて
現代の映画のテーマには珍しいけど、これはロマンスもなく、どちらかというと男子禁制の修道院で生まれて死んだ
子どもの父親は誰なのか? どうして死んだのかを精神科医の女性が謎を追うミステリーで、宗教的な作品。
純粋無垢で何かにつかれたような美しい尼僧役にメグはぴったりハマっている。
俗世間から離れ、禁欲的な生活を送る尼僧たちは、世間で深く傷つき逃れてきた者も多いのかもしれない。
灯の消えた冷え冷えと人気のない廊下のシーンは、あまりにも寂しく、
彼女らの必ずしも平穏ではない心の叫び、奇跡を求める祈りが伝わってくるよう。


『光のエイリアン』(1987)
監督:アウレリオ・キエサ 出演:トーマス・ミリアン ほか
青い色のなんとも不思議なSF映画。魂の復活を説くわけでもなく、
他の星からの生物がとりついて人が死から蘇る、まぎれもないSFの世界。
地球で幸せになろうとする異性人のカルチャーショック的シーンもあって、
なぜ彼らは自分の故郷から移住してきたのか、一体何者なのか、あまり語られない。
しかし、これだけ登場人物が交通事故死する作品も珍しい
せめて主人公の男優がもうちょっとルックスがよかったらなあ!(失礼だ
異性人が乗り移るたびに美人の奥さんがもらえるなんて、かなりおいしい話じゃない?w
全体的に素人っぽい映像や俳優で、みんな妙に囁いているのが不思議。
人間、死んだら一体どこへ行くんだろうか?
人の死を理解することはかなり難しく悲しいものだ。今作のメインテーマはその辺にありそう。


『善悪の彼岸』(1977)

監督:リリアーナ・カヴァーニ 出演:ロバート・パウエル、ドミニク・サンダ ほか
男2人、女1人の同居というインテリジェンスとセクシュアリティの混ざった男女の友情と愛憎の三角関係はなかなか面白い。
パウェルのおかげでケン・ラッセルも思い出させるけれど、そこまでぶっ飛んではいないものの
かなりホモセクシュアルな作品でもある。
ドミニクに自由を求める女性を演じさせればピッタリ! 彼女のようなクールビューティーは、
ディートリッヒからジェーン・バーキン、ジョディ・フォスターなんかに確実に引き継がれていくんだね。
現存する価値観やしがらみから超越していて、センスのいい黒を基調としたファッションは象徴的で印象的。
でも、決して幸福にはなれない運命なんだな彼女の役って。
絶対自分のスタイルは変えずに、周囲を変えさせるその美しさや強情さは冷たさだけじゃない。
女性のもつ深い情愛と優しさももっているところが大いなる魅力なんだ
「世紀末よ、私たちの時代が来るのよ」

コメント

notes and movies(1993.11~ part3)

2012-12-22 13:58:17 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part2からのつづきで、これが赤いノートのラスト。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『田園交響楽』(1946)
監督:ジャン・ドラノワ 出演:ピエール・ブランシャール、ミシェル・モルガン ほか
作品を通して雪の積った静かで小さな村の映像がなんとも美しい。
山間の道ならぬ道を一頭の馬が鈴をシャンシャンと鳴らして、橇を滑らせてゆくシーン。
モノクロだけれどもとても叙情的で、思わず魅せられる。
昔の作品だけあって、貞節や清純さが生きていた時代で、
ヒロインが「ジャックとキスしたの」って言うだけで牧師が大ショックを受けるシーンなど、
やっぱり時代を感じさせるなあ!
現代の過激なラブシーンばかりの中で、モルガンの高貴で清らかな美しさも貴重。


『賭けはなされた』(1947)
監督:ジャン・ドラノワ 出演:ミシュリーヌ・プレール ほか
'40年代にしてはなかなかSFチックで、現代のハリウッド映画にしてもウケそうな面白い設定。
ジャン・ポール・サルトルがシナリオを書いたとのこと。仏映らしいアンハッピーエンディング。
「愛」というなんとも不確かなものを、会ったばかりの、身分も生活環境も全く違った男女が
信じあう賭けなんて、死の役人たちの暇つぶしにしかならないような叶わぬ夢なのか。
人生経験を積んだ男女だからこそ、大人の愛情物語りとしてのセンス、渋み、重みがある。


『傷ついた男』(1983)

監督:パトリス・シェロー 出演:ジャン・ユーグ・アングラード ほか
さすがエルヴェ・ギベール脚本だけあって男が男と出会い惹きつけられてゆく、
緊張感に満ちた瞬間、同性を愛してしまうことへの不安、危険、周囲の目などじっくりリアルに描かれてゆく。
ディテイルは捉えにくいが、ジャンの初主演作で、これだけハードゲイ映画に
のめりこんで演じ切ってる、その熱演が光る。
'90年代の美形は受け身の静かな美しさ。思わずハッとさせられる当時28歳の彼は、
後の作品でもよくヌードを見せるけど、整ったルックスに自分でも自信があるんだろうな。
なんとも痛々しいまでに初々しい少年を演じて、後に大物として人気を集める才能が表れている。


『赤死病の仮面』(1989)
監督:アラン・バーキンショウ 出演:フランク・スタローン、ブレンダ・ヴァッカロ ほか
図書館でとんでもないビデオを借りたもんだ
偉大なエドガー・アラン・ポーが自らの命をすり減らして書いた1839年、30歳の時の作品を
見事にチープなB級映画に仕上げてくれた。
『デッドゾーン』での医師役を演じたハーバード・ロムをはじめとするキャストが悪くないからかえって惜しい。
観ている間も観た後も、安っぽいロックの使い方に、ラストのオチまで丁寧に付け加えて
後味の悪さはジェイソンシリーズ以上。
なんでも狂気のせいにするのは、ホラーとしてあまりに安易だよね。
それに女一人でパーティに楽しげに参加しながら、殺人やチャンバラまでしちゃうなんて、
ちょっと考えても設定が厳しすぎる。こうゆう不自然さがB級の悪いレッテルになるんだ。
また、主人公が生き残るしぶとさ、逃げ足が妙にとろくて最後は単に女同士の取っ組み合い。
ああ、こんなに並べたてても意味がないけど、セットや美術、衣装はなかなか斬新。
アラン・ポーの名前なんか背負わないで、ポップなホラーだって最初から開き直れば、
観るほうもそれなりに観て、これほど失望はしなかったろうに。

(またまた酷評


『ヴァージン・スピリット』(1988)
監督:カトリーン・ブレイヤ 出演:デルフィーヌ・ザントゥ、エチエンヌ・シコ ほか
若くてマセた10代の女の子と、中年男のロマンスものも、なぜか昔から映画やドラマの格好の対象。
でも、お国柄や撮る監督によって見方がそれぞれ違ってくるんだなあ。
これがイタリア映画なら、よりセクシーで軽快さが前面に出るだろうけど、
仏映はより精神的苦悩に重きを置いている。テーマは“ロストヴァージン”てだけで、その他の何ものでもないけど。
「日本との貿易関係の仕事をしてる」「儲かりそうね」て、日本はクドキ文句に効果があるのか?

毎日、酒と女でブラブラしてる男で、バーの常連で、ちょっとステキなホテルやデートコースも知ってて、
なにやら暗い影まで背負っちゃってて、いつでもかったるそうな物腰等々、
いわゆる“魅力的な中年男”を体現している俳優は、なかなかダンディでキザさもさほど鼻につかない。
そのプレイボーイがてこずるヒロインは、ワガママし放題。地球は自分のために回っていると思っている。
「若さが彼女を救っている」ってそのとおり。
「20歳になるくらいなら死んだほうがマシ」そんなに若さにこだわる理由が理解出来ない。
ジャン・ピエール・レオがちょい役で出演してたのが驚き。
10年前の彼がこの伊達男役を演じたらどうなるだろう?なんて想像するともっと興味が湧いてくる。


『仕立て屋の恋』(1989)
監督:パトリス・ルコント 出演:ミシェル・ブラン ほか
『髪結いの亭主』に続いてルコント監督作品を観るのは2作目。
前作のほのかな淡い感触とは逆に、静かで精神的な愛は同じでも、
ミシェルの青白い表情、葬儀屋のような真っ黒づくめのイメージが残る。
座った場所のにおいを嗅いだり、覗きで知った事実をネタに迫ったりじゃあんまり陰湿でかなり変態的
相手役の女優サンドリー・ボネールはなかなか愛嬌のある美女。
ルコントの描く中年男と若く美しい女性の大人の愛憎物語り。次回作も期待大。


『キッス・オブ・ザ・タイガー』(1988)
監督:ペトラ・ハフター 出演:ステファーヌ・フェラーラ、ベアーテ・ジョンセン ほか
この手の作品は当たり外れの差が大きいけど、まんざら面白くなくもなかった。
舞台はパリなのにドイツ語だろうか?
男優はハンサムでガッシリしたセクシーボディ。女優は対照的に短いブロンドに華奢な体、
何を考えてるのか分からないフシギな感じ。
生と死がいつも隣り合わせている一見似合いのフツーのカップル。
「人は生きていたいのよ」「まるで関係がないね」
彼女はきっと最後まで彼の言ったことを全部本当だとは信じていなかったんだ。
けど、2人の愛は本物っぽくて美しい。
「僕が他の女と寝たら、どうする?」
「嫉妬するわ。寝たことじゃなく、その前後の2人が優しく寄り添っていることに」


『ラスト・ワルツ』(1978)
 
監督:マーティン・スコセッシ 出演:ザ・バンド ほか
1976年11月25日に開かれたザ・バンドの16年間にわたる活動の最後であるライブと、
その後のメンバたちのインタビューで構成された感動の1本。
サンフランシスコのウィンターランドにて、まずアンコール映像から始まり、
ロニー・ホーキンスからディランまでルーツを担うミュージシャンの顔ぶれが揃っている
その合間に入るオフロードの打ち明け話、ゲストミュージシャンとの出会い等々。
音楽とは、突然生まれて、機械から流れてくるものじゃなく、
そのメロディを生み出し、歌い続ける人間たちの日々の暮らしがあるんだってやっと知った気がする。

こんなに人間臭いバンドを今まで見たことがなかった。
'70とは一体どんな時代だったのか。その時代に青春を送った者にしか分からないだろう。
アメリカ文化の真髄も、日本人には本当に理解することができないのもとても残念に思う。

先ごろ行われたディランの何十周年記念ライブで、ザ・バンドの面々が皆元気にプレイしていたのを覚えている。
ロビーいわく「音楽界で素晴らしい連中がこの世を去っていった。そんな人生は不可能だ」
あんなに根っこまで音楽家な人間の集まりも珍しい。
個性のぶつかり合いで16年間、同じメンバでやってきたこと自体すごいと思うが
始まったことはいつか必ず終わらせる時が来る。

メンバ全員が楽器が弾けて、ヴォーカルスタイルをもって歌えるバンド。
人間味あふれ、心に染み渡る音を聴いて、その素晴らしさを再発見した。
彼らのつくり上げた音やスタイルは、現在も私たちの心をとらえて離さない。
1シーンごと、全体の流れなどに、スコセッシがいかに工夫を凝らして気合いを入れ、
バンドの締めくくりを完璧に飾ろうとしたかひしひしと伝わってくる。珠玉の1本

(これは、ライヴビデオの最高峰。これを観て、V.モリソンも、ドクターも知った。
 ロビーがセクシーなことったら



【読書感想メモ】
「ピーター・パンの冒険」ジェイムズ・バリ
「車輪の下」ヘルマン・ヘッセ(これは今でも大好きな1作
「ピノッキオ」コローディ
「にんじん」ジュール・ルナール
「トム・ソーヤーの冒険」マーク・トウェイン

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notes and movies(1993.9~ part1)

2012-12-16 09:56:04 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
今回は水色のノートから10作ずつをご紹介。
この時期は音楽系のビデオにハマってたみたい。

  

photo1:基本形
photo2:相変わらずテニス観戦メモ
photo3:読書感想文も多い。この頃は児童書名作シリーズてところか?

若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『エドワードⅡ』(1991)

監督:デレク・ジャーマン 出演:スティーブン・ウォーディントン、ティルダ・スウィントン ほか
『ガーデン』『カラヴァッジオ』に続く3作目のジャーマン体験。
今作も古典的題材で、英国王と、その寵愛を受けた男、そして彼らをなんとか引き離そうと企む貴族らの
ドロドロとした争いをデレク流の美しい映像で気品溢れる映画に彩られている。
エドワード2世が歴史上、どのような人物だったのか、また、その当時の英国はどうだったのかは知らないが、
政治腐敗、そしてなんといっても人と人との崇高な愛の物語として充分堪能できる。
音楽や詩を好んだ王らしく、作品中のセリフも一つ一つが詩的で、それゆえに暴君になりきれなかった弱さもうかがえる。
一気に奈落の底に墜ちたモーティフが言うセリフ。
「これは円のようで、頂点を極めたら、あとは転落するだけ。もしそうなら自分の悲運を嘆いても仕方あるまい」
というのは、いかにもイギリスらしいアイロニーが効いていた。
男同士の絡みがあり、ホモセクシュアルの描写が展開される中、
王が牢獄で見た処刑の悪夢は、抑圧された罪悪感のようなものが感じられてとてもショッキング。
日英合作というのが不思議だが、どこに日本が関係しているのか?


『CO-CONGA vol.9 sharisharism 7』(1989)
出演:米米CLUB
収録ナンバー:ope-co、美熱少年、どうにもとまらない、EnMi Corrzon、El Co Conga、
Lollipop、Make up、Nuncr Contigo、トーキョードンピカ、OH!、サササササヨナラ、ライスシャワー

とってもエキサイティングな発汗ビデオ 観て、聴いて、踊り出さずにはいられないテンポとリズム
バンドの人気が急上昇して、なんかやたら変わったノリのいいバンドとして注目されて、
今よりもうちょっと色物っぽく見られていた感じがする。
ONODAさんも最初から登場して、全体がラテン調で、なんといってもデッカイ恐竜「ピーコちゃん」
ステージ狭しと横たわっていて、煙をバーっと吐きながら、鳴き方はちょっと迫力不足

いつも思うけど米米のメンバってみんな笑いのセンスを持っているんだよね。
ミュージシャンは客に見せるエンタテイメント精神がなくちゃねv
その点、石井さんを筆頭に、ラテンやっても、レゲエでも、演歌にポップ、ロック、バラード、
いろんな要素を演出できるところがほんとにお見事。人数が多い分、きっとアイデアも豊富なんだろうな。
いつもコンスタントにあの盛り上がりと熱気を持続しているとしたら凄いパワー
シュークリームシュのセクシーなダンスと衣装は、いつもバンドの華だし

特に今回は、キューバの方をゲストに“本場ハバナからの音”?を披露していて、
一層真っ赤な太陽にボンゴ?の鳴り響く濃いラテン系の熱気が感じられて、
ほぼ1時間ずーっと盛り上がりっぱなしのノリにのったミュージックビデオに仕上がっている。
この世紀末的盛り上がり、このハイテンションなモチベーションは一体いつまで続くかしら・・・なんてことも思ったりする
♪ライスシャワー の終わり際のオマケを見逃した人も少なくないんじゃないかな?

美熱少年


『Keisuke KUWATA Acoustic Revolution』(1991)
迫力ある曲ばかり たっぷり2時間聴かせてくれるアンプラグド。
シンプルでハートフル、桑田さんいわく「中・高・大学時代にラジオの深夜放送から流れる音楽、
すばらしい音を共有したい」ということで、“肥大化したラーメン屋”!?
それほど大きくはないステージで、最初はギター3人で静かに始まり、
次第にバイオリン、キーボード、ドラム、コーラス、しまいには妖しげなミスターレディっぽい方々の悩殺ダンスまであるw
ちょっと変わった嗜好のステージ。

曲の傾向をみると、桑田という日本を代表するミュージシャンがどんな音楽を好んで聴き、
後の大ヒットメイカーとなるまでに影響を受けたミュージシャンは誰かが見えてくる気がする。
ディラン、クラプトン、ストーンズ、ニール・ヤング、S.ワンダーほか、
D.ボウイやボラン!、ドアーズまで混ざっているのがビックリした。
でも、やっぱり大きく取り上げているのはビートルズで決まり。

どれを歌っても、しっかり桑田さんの音楽になっているところがさすが。
しっかりした自分の音楽性を分かってやってて、“これが日本のロックだ!”て当人たちにも紹介できる。
軽そうなノリで七変化する顔を見ているだけで飽きないけど、結構奥深くまでこだわる一面が覗ける。
とにかく大好きな曲がいっぱい、いい選曲!知らないのも今後もっと知りたいってものばかりだった


『イレイザーヘッド』(1977)
監督:デヴィッド・リンチ 出演:ヘンリー・スペンサー ほか
5年の歳月をかけたという、今や時の人、リンチの処女作。
モノクロで、その理解不能な異次元世界は、現在の感覚と変わらない異質なもの。
なんだかストーリーだけ話すとフツーに聞こえるけど、未熟児が『悪魔の赤ちゃん』以上のモンスターで
突然発疹が出たり、スープを吐き出したり、なんとも陰険。ベッドの中でミルクの海に飲まれるシーンは印象的。
夢の中で、あんぱんみたいな頬をした少女が、妙な生き物をこれでもかってほど踏みつけたり、
♪Heaven, everything's fine~と歌うシーンなんか『ツイン・ピークス』にも通じるものがあり、
リンチの発想は凡人をはるかに超えてるよね
このジョン・ナンスは、作品全体を引っ張るだけの個性充分だけど、今はどうしているのかしら???
リンチの原点を探るにはとても興味深い作品なことは間違いない。


『米米CLUB大全集 vol.10 SHARISHARISM TARO Ti-Ti』(1990)
収録曲:opening Melon Tea、Big War、New Style、Beautiful、Hey Hey Boy、Safaca、
でった~、TiTiTiTiTi、J.O Time~OH!米GOD!、GO FUNK、美熱少年、I CAN BE、
FUNK-A-ねーちゃん、かっちょいい!(introduction)

アンコールがオープニングで、最初から「ここまでやりたくはなかった」ってテロップが笑える
でも、今回のビデオは、なんだかショー中心で歌は二の次って感じ。
♪Beautiful あたりのバラードはいつも石井さんが顔一杯汗の粒を光らせて熱唱!
て決まってるんだけど、だんだんそのパターンも見えてくるもので、
オープニング熱唱もののバラードJ.O Timeあとは盛り上げるだけ盛り上がってエンディング
そのパターン化が見えていたのか、石井さんがいつもの「太鼓持ち」から目覚めて、モニターの中のJ.O とやりあうシーンはイイ。
今回はあの『エイリアン』そっくり、メタリックで危ないコスチューム(腰から下はカブトムシ風
メドレーもイントロだけだったりで、♪かっちょいい!も尻切れトンボ状態。
アナウンサーが出てきて終わりを告げるんだけど、ビデオの始まりのアンコールにつながるってわけ。
肝心な盛り上がり絶頂の♪shake hip あたりはビデオには収録されていないからちょっと残念。
今度のセットも見物。妖しげな子どもの大仏?みたいで、キョンシーみたい(古いけど)赤い札を貼ったりする。
別に確固たるテーマはないようで、でも、相変わらず相当お金がかかってるのが一目で分かる

かっちょいい


『I.B.W TOUR 1990』BAKUFU-SLUMP(1990)
収録曲:えらいこっちゃ、The Tsurai、Runner、まっくろけ、週刊東京「少女A」、
うわさになりたい、愛がいそいでる、45歳の地図、ハイランダー、I.B.W-It's a beautiful wourld、
1986年の背泳、せたがやたがやせ

なかなかイイ1本。久々に爆風を聴いたけど、独特の熱気とパワーがあるんだよね
やっぱりバンドはいいなあって思う。音楽番組がすたれてきてる感じがあって、
どうしてるのかしら皆さんって疑問があったけど、それぞれ根強いファンがたくさん集まって盛り上がってライヴ活動してる。
テレビだと安っぽい商品扱いになりがちだけど、客を前にしてちゃんと聴かせることの出来るライヴは日本の音楽シーンにはいいことかも。
最初♪ボレロ なんかで始まって、バレエの世界でも広がるかと思いきや、
♪えらいこっちゃ etc ハイテンションで「ああ、この感じ、そうそう」て思い出した。

後半は、大きなスクリーンを使っての政治的メッセージ。
以前24時間テレビのライヴにも積極的に参加してる爆風の別の一面が今作でも覗ける。
どこか日本的、庶民の生活に密着してるところも特徴。
音と映像を効果的に利用して視聴者に訴えるメッセージを強めるやり方はほかのビデオを観ても、
みんな上手く使ってるって最近思うけど、今回の小学生の一連のストーリーは、かなり現実的でインパクトあり。
実際、都心の子どもが皆こんな無機質な毎日を送っているかと思うと先が思いやられる

エンディングは巻き戻した映像で、ちょっと凝ってる。
他のメンバもきついキャラばっかりで特に河井さん、ヤメテ!ってゆう危ないパフォーマンスも披露。
でも、この人、歌うとすごく透き通ったいい声だからビックリ

涙の陸上部
以前、爆風の好きな曲はひと通り紹介したから、それ以外で。


『ORAGAYO ワールド・テレビ』BAKUFU-SLUMP(1991)
収録曲:週刊東京「少女A」、ひどく暑かった日のラヴソング、東の島にコブタがいた、
組曲「天下御免の回り物」より第二章 明日は晴れるだろう、幸福追求の権利、
ORAGAYO~愛のテーマ、リゾ・ラバ、組曲より第一章 カネ(マネーに捧ぐ)、
おおBEIJING、The blue bus blues

中野さんのユニセックスなジャケといい、河井さんのメチャクチャ外国語のニュース形式といい、
軽いノリのビデオと思いきや、実はラヴ&ピースのアパルトヘイト反対ものあり、
ベルリンの壁もの等々、かなり政治的なメッセージを持つMV。

個人的には政治的意味合いを除けば♪幸福~ がなかなか気に入った。
次の♪ORAGAYO ではジャケの派手さをさらに上回る全身ギンギラねえちゃん、
そのローブの下はギンギラパンツ一杯で歌う妖しい愛の歌

実際、外国各地に乗り込んだ様子も絡めて、特に頭真っ白になって歌詞を忘れちゃった
アパルトヘイトの集会では、ヘタクソな誘導にあんな大きな反応があって、
なんてピュアでいい人たちなんだ!と心の広さに感動してしまった。
ドイツでもドラムのほんの1叩きにもちゃんと通行中の人だかりができて、
ああゆうストリートパフォーマンスが日常に溶け込んでいることがよく分かる。

ライヴでは♪カネ で河井さんの算盤パフォーマンス
1回目見事正解に次ぐ、2回目とんでもない問題に答えもあやふやなまま歌に戻っちゃうのが笑えるw
とにかく不況だのの今、問題になっている題材を歌にして、
ともすれば新興宗教団体の集会じみた雰囲気になりがちだけど、
あのスキンヘッドに、あの衣装、そしてロックに乗せると胡散臭さは少し薄れるかなw


『スヴェンガリの魔力』(1983)
監督:アンソニー・ハーヴェイ 出演:ピーター・オトゥール、ジョディ・フォスター ほか
まだまだこんなマイナーな作品がいくつもどこかに隠れているんじゃないかしら?
オトゥールとジョディが共演していたなんて
ジョディは22歳、オトゥールは50歳の役で、それぞれ実年齢に近い役どころ。
ヤンキー娘っぽいジョディと、いかにも英国紳士で王立演劇学校で学んだシェークスピア舞台劇に
ピッタリのオトゥールというこの顔合わせが実に面白い。
なんといってもジョディの歌が存分に楽しめる。これがなかなか歌手でも売り出せそうなくらい結構聴かせる
彼女の不思議な魅力とハスキーな声だけで、作品自体はなんでもいいと思えるんだけど、
ノーマルなストーリー展開の中にも、なんだか分からない心落ち着く静かな感動がある。
これって単なる今の季節(秋)の感傷かしら?それともこの作品に流れてる'80年代の香りへの想い入れかしら?
ネブラスカ出身の恋人を追いかけて出てきた女の子のスターダムへのしあがる様子は実際にもありそうな話。
若い娘に恋したおやじの哀愁もひしひし伝わってくる。


『私の夜はあなたの昼より美しい』(1990)

監督:アンジェイ・ズラウスキー 出演:ソフィー・マルソー ほか
今年観た映画の中でもベストに入る1作
13歳でデビューして、たちまちアイドルスターとなってから、その美しさだけでなく
一作ごとに確実に女優として成長し続けているソフィー。
今やフランスを代表する若手として今後も大いに有望だけど、当時彼女は24歳。
女性としても魅力溢れて、トランス状態から現在・過去・未来をすべて見通してしまう不思議なパワーを持つ女性を演じている。

ズラウスキー作品はこれで3作目くらいだと思うが、
彼の描き出す女性像はどれも絶望的な弱さと激しい美しさを持っている気がする。
重要なパートに高級ホテルの管理人とボーイの小人がいる。
彼らは男の狂気に走った脳の産物なのだろうか?
「小人はみな、芸術家なのさ」「分からない」「愛など誰も分からないんだ」
「男は女を変えようとする」「変えられないわ」
怒り、泣き、笑い、驚き、賛美し、絶望し、、、感情をストレートに出すこと。
言葉はいつも空しく限界があるけど、素直に表現することは自己の解放、肉体やすべての解放につながる。
その点でフランス人はなんて羨ましいんだろう!

(この当時から今と同じ問題を抱えていたのか


『マスカラ』(1987)
監督:パトリック・コナード 出演:シャーロット・ランプリング ほか
シャーロット・ランプリングという女優も特異なキャラだよね。そのキャリアを見ても分かるけど。
灰色がかった緑色の眼は捉えどころがなくて、その薄い唇のようにクールかと言えば、奥には深い魅力を持っている。
フランス映画にもアメリカ映画にも出演してるけど、なぜだか異常性愛の作品が多いみたい。
同じゲイでも『ロッキー・ホラー・ショー』のティム・カリーみたく明るければいいけど、
表向きは堅い職業で、裏では湿っぽい秘密があるってのはいただけない

でもこの作品中で一番目を引いたのは、海岸沿いの砂浜に建てられた古い城みたいなマンション!
砂地は玄関まで続いていて、眺めも雰囲気も浮世離れしてる。
こんな広い窓一面海の見える部屋に住んでいたら、細かいことなんかどうでもよくなっちゃうよねえ!
職場まで3時間かかったって気にならないかも?
年上の女性に一目で恋に落ちる若きデザイナーという役の俳優も好演している。

コメント

notes and movies(1993.9~ part2)

2012-12-16 09:56:03 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part1からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『ソフィー・マルソーの愛人日記』(1991)
監督:アンジェイ・ズラウスキー 出演:ソフィー・マルソー、マリー・フランス・ピシェ ほか
クラシックのことはほとんど分からないけど、今でこそ堅苦しい型にはまったイメージのある音楽も
娯楽が少なかった時代の人にしてみれば、ピアノによる崇高な芸術だったのだろう。
そこには、人々の生活があり、流れる美しいメロディには必ず作曲家の苦悩がある。
現在、古典と呼ばれているどの芸術作品も決して最初から完璧だったわけじゃなく、
その作者らの喜び、哀しみなど、繊細で激しい感情からほとばしり出たものなんだ。
大体は貧しく、誰かを愛する苦しみの中から生まれた。

ショパン役のいかにも薄幸そうな俳優はまさにピッタリ(失礼だ
群像劇で、あらゆる人物が入り乱れ、話がやや難解。
シーンの一つ一つが突発的で次から次へと移り変わってゆく。
途中から現れる白と赤の布をかぶったものたち。彼らは自然の妖精か?
それとも私たちにそっと忍び寄る死の影だろうか?

「この短く、馬鹿げた一生で一体何ができるというんだ」

始終流れる数十曲のショパンのメロディ。中には彼の作品だったと知らずに耳に慣れ親しんでいる曲もある。
今作は死期間際のショパンと周囲の人々を描いたものだが、彼がそこにたどり着くまではどんな人生だったのか、
その他にはどんな曲があるのかも知りたくなった。


『5つの銅貨』(1959)

監督:メルビル・シェイブルスン 出演:ダニー・ケイ、バーバラ・ベル・ゲデス、ルイ・アームストロング ほか
映画界における古き良き時代の名作。家族愛を描き続けるアメリカ映画。
しっかりとした構成で、自然と心底から笑いと涙を誘う感動の1本。
ユタ出身のコルネット奏者で、ディキシーランド・ジャズを引き継いで成功したレッド・ニコルズの半生の物語。
彼のバンドの一員であり、作品にも登場するグレン・ミラーも映画化されてすばらしかったが、
ニコルズ役にダニー・ケイを起用し、歌って踊れて、演技もすばらしい本物の役者さん
彼の才能と魅力が大いに発揮されている、二重、三重に楽しめるヒューマンドラマになっている。

ルイも憎らしいほどイイ役どころで出演し、ビッグナンバーを数々披露しているのが見どころのひとつ。
成功者が他のプレイヤーを引っ張りあげるっていうのもイイ。
ドロシー役の子役も可愛いだけじゃなく、しっかり自らのパートを演じて笑いと涙を誘う。
特に、泣きじゃくる彼女にケイが泣き虫マイヤーの話をするシーンは、笑えるやら泣けるやらで忘れがたいシーン。
そしてタイトルでもある♪THE FIVE PENNIES も純粋な感動を呼ぶ名曲。


『秘密の花園』(1993)劇場にて

監督:アグニエシュカ・ホランド 出演:マギー・スミス、ジョン・リンチ ほか
都心の中で本物の自然に触れる体験を共にした感じ。
3人の子どもが主演で、大人の俳優は脇を固めるのみ。観る人ひとり一人がきっと少年少女に戻り、
スクリーンの中の緑と花々の庭にたわむれたことだろう。
昔のハリウッドなら『サウンド・オブ・ミュージック』ばりに親子の絆メインで描いただろうが、
今作はワーナーでありながら、原作の舞台がイギリスのヨークシャーであることからか、
イギリス訛りの俳優を起用して、ヨーロッパ的な繊細さで、自然とのふれあいをメインにしているところがイイ。
メアリー役のケイトは、ドミニク・サンダのような魅力的な眼と愛らしさを持っていながら、
今作では「醜い愛想のないコ」として扱われている。コリン役のヘイドンが全くの新人子役なのもビックリ。
この3人の自然な演技に感心。

やはり圧巻なのは庭園の映像。メランコリックでアンティーク、春の息吹きが観客席まで届きそう
広さが不確かなのが、なおさら迷路に迷い込んだような宇宙的、幻想的な雰囲気がある。
「あなたのようにキリストは閉じ込められていたのよ。そのノドの奥には宇宙が広がっていたの」
裏には大人の世界の複雑でどうしようもない大きな悲しみが隠されていそうで、
原作をぜひ読んで細かい背景や人物の心境を知りたいと思った。
劇場の観客の中には親子連れもいて、究めて健全で美しく、感動的な今作を、乾いて複雑に屈折した
現代の子どもたちの心にも、幸福な感動が刻まれただろうと想像すると二重の喜びになった。


『デシデーリア=欲望』(1980)
監督:ジャンニ・バルチェローニ 出演:ララ・ウェンデル、ステファニア・サンドレッリ ほか
倒錯した愛情を主題とした作品を書いた原作のほうが、多分この少女の心情をもっと知ることができそう。
少女の残酷なイタズラは見ていて面白いけど、この作品もかなり男尊女卑的。
まあB級にはありがちだけど、性に興味津々の女の子をいたぶるパターンで、
イタリアで人気があるっていうわりに、話に似合わないヒロイン役はどこかモニカ・セレスに似てる!?
そのヒモ役の俳優はチープっぽいけど魅力的。ラストはなんだか腑に落ちない。
でも、この復讐劇、まだまだこれからどうなる?って感じもする。
“ブルジョア”って観念自体、日本人にはいまいちよく分からない。退廃的で金持ちってことは伝わるけど。


『オー!ラッキーマン』(1973)
監督:リンゼイ・アンダーソン 出演:マルコム・マクドウェル、レイチェル・ロバーツ ほか
♪君に友だちがいるならラッキーだ 等と歌うバンドのやわらかなサウンドにのって、一人の若い男の人生が回りだす。
なぜかずーっと観たくて気になってた、このカルト映画。マクドウェルが演じれば一筋縄じゃいかないけど、
『時計~』に比べたらまだまだおとなしい、一風変わったロードムーヴィーってところ。
途中、途中でバンドの歌が、その後の男の運命の前振りになってるアイデアや、
その他の出演者もなんだかんだで二重三重に出演するし、
バンドのファッションからも分かるようにビートニク的解放感が作品中に溢れている。


『恋の病』(1987)
 
監督:ジャック・ドレイ 出演:ナスターシャ・キンスキージャン・ユーグ・アングラード、ミシェル・ピッコリ ほか
まず目を惹くのはキンスキーとジャン、ピッコリという豪華な顔合わせ
観る前から今作はイイだろうと確信が持てる映画は少ないけど、これは見事に期待に応えてくれる。
監督は、アラン・ドロン主演の『ボルサリーノ』を撮ったドレイ。もう高齢なのに、映像、カメラワークが斬新で新鮮。
時々、ジュリエットとクレマン、男女2人だけの世界になって、観客であることを忘れるほど見入ってしまうシーンがある。
優しく囁き合っていたり、何もしないで外の景色をボーっと眺めていたり、
海岸を猛烈な勢いで走っていたり(恋人たちってどうしてああも走るのかな?幸福だからか?
あまり必要じゃないかもしれないようなこんな自然体のシーンが、登場人物らの心情により深く入り込める。

現代の最先端医療も恋の病ばかりは手も足も出ないという、皮肉だけど、素晴らしくセンスあるテーマをもとに
老医師と、若く美しい妻、そしてインターンの青年を、この3人が演じているのだから文句なし
裏話として、このジュリエット訳を最初イザベル・アジャーニの予定だったというのは聞かなきゃよかった。
彼女が演じたら・・・とつい想像してしまう。もっとミステリアスな感じになるかもね。
でも、監督がほれ込んでるだけあって、キンスキーでなければ出せない自然体の美しさ、
そこにいるだけで最高に美しく、純粋な魅力あってこその作品に仕上がっている。

加えて、ジャンの、これまた奔放な美しさ。この2人が海辺で彼方を見つめるショットは、これ以上ないって感じ
2人の間で交わされるセリフは、とてもシンプルなものばかりだけど、本当に心が通じていれば言葉などいらないのかもしれない。
これだけ心底燃え尽くせる恋愛に巡り会えたら、どんなにすばらしいことか! 身も心もボロボロに吸い尽くされたとしても。

ジュリエットをありのままに想い続ける老医師役のミッシェルもよかった。
「人の顔にこれほど欲望を感じるとは
すべての医師がこれほど命の尊さを真摯に考えてくれたらいいのに。単なる職業としてでなく。

(今作もマイベストの1本。また観たいなあ!


『ハート・オブ・ミッドナイト』(1988)
監督:マシュー・チャップマン 出演:ジェニファー・ジェイソン・リー、ピーター・コヨーテ ほか
アメリカ期待の若手女優のリーが、そのどこかあどけなくて、どこか暗い影のある独特なキャラと演技力を充分発揮している。
それにしても、どこがどうなっているのか、まるでからくり屋敷。どことなく雰囲気がリンチ風。
あらゆる趣向を凝らした部屋は異次元空間みたいで背中がゾクッとするほど危険なムードなんだけど、芸術的。
近親者からの性的暴行ってゆう設定は、フィクションだけじゃなく、現実に存在しているのが信じがたい事実なんだ。


『虹を掴む男』(1947)
製作:サミュエル・ゴールドウィン 監督:ノーマン・Z・マクロード
出演:ダニー・ケイ、ヴァージニア・メイヨ ほか
当時のハリウッド映画って本当に“よくできた話”だなって思う。
主演のケイがカッコいいし、笑えるし、終始自由に動き回っているのがイイ
現実と夢の差が対照的で、空想中のヒーローと、そうでない者との差がハッキリしているあたりが
なんとも滑稽で、他のヒーローものの映画を皮肉った感じで笑える。
毎回、魔法の言葉「ポケタ、ポケタ・・・」で始まるところはファンタジーの基本をちゃんとおさえてるしv
楽しい歌のシーンが2ヶ所しかないのが寂しいけど、♪弦のない舌のための交響曲、
♪パリのアナトール は、彼の妻シルビア・ファインの作詞作曲というからまた驚き。
楽器から動物の鳴き声まで身振り手振りを加えて早口で歌う芸はお見事
大勢のバイプレイヤーたちもそれぞれ好演しているのもポイント。

The Secret Life of Walter Mitty


『アルバレス』(1991)
監督:ロジャー・コーマン 出演:マリアム・ダボ ほか
イザベル役のダボは初見。フランス的なアンニュイ美人。
彼女の話し相手となる弁護士役の男優も、包み込む優しさが感じられるルックスでなかなか好演。
こうゆう古城がからむ呪いものホラーは、おなじみのパターンだけど、コーマンらしい映像や、展開のテンポとキレがある。
でも、こないだの『フランケン~』みたくSFにすっ飛んじゃう奇抜さがなかったのがちょっと残念。
決して完結しないエンディングはホラー映画の基本ルールだね
巻末の「コワーイ猫の写真募集」のお知らせはまったく余韻がふっ飛んでしまった。
締切日がすっかり切れているのに、このビデオを借りた人が、この先ずっと同じ目に遭うのかと思うと同情してしまう


『ストーカー』(1979)

監督:アンドレイ・タルコフスキー 出演:アレクサンドル・カイダノフスキー ほか
近未来だろうか? いつ誰が言い出したのか気づかないうちに「ゾーン」が突然現れ、
たどり着いたものは望みが叶い幸福になれるという。
厳重な警備をくぐって、ストーカー(ゾーンの案内人)がまた新たな男2人を連れて向かう。
男たちは自分を疑い、他人を疑い、語り合い、絶望しながら、幾つもの関門を通過してゆく。
そのたびに裸の自分、弱くて、自信がない本当の正体をさらけ出すこととなる。
観ているほうも彼らと共に一歩進み、半歩下がりながら、何か大きな未知の力に試されている気分になる。
作品中にはいくつもの矛盾が存在している。足のない娘が超能力を持っているのもフシギ。
現実の苦しく退屈な世界をくすんだ茶色、ゾーンの映像は自然色で色分けをしている。

「苦しみのない生活などつまらない。苦しみがあればこそ幸せや喜びがある」

タルコフスキーのメッセージがたくさん詰まっている。

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