「日々これせっせとお薬作り」 -製薬会社新米研究員SIUの日常-

新薬の研究に営む毎日・・・のはず。製薬会社研究職の日常をつたない文章でつづります。

Nodame Cantabile

2008年03月31日 | 非製薬ネタ
のだめカンタービレの英語版(1、2巻)を買いました。
ワタシの英語力の無さかもしれないけど英語という言語だと
日本的な『先輩』って概念を出していくのが難しいかな?と思いました。
『You』って言葉に収束するしなぁ。
…と言いつつ、楽しみながら読んでますが(笑)

「与えよ!さすれば幸せは得られる」の論文

2008年03月27日 | 製薬会社な日常
SIUはワリと世話を焼くのが好き(おせっかいとも言う_苦笑)
加えて、ちょっとした物を渡して人が喜んでくれるのを
見るのはとっても幸せだったりいたします。
でもこれを『偽善?』とか思ったりもするので、あまりおおっぴらに
言えなかったんですね。

しかしながら最近のScienceに載った論文によると
そんな後ろめたさは感じる必要はなく、これはこれで
整合性が取れているらしいです。
ちょっと面白いのでご紹介↓

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Spending Money on Others Promotes Happiness
(自分ではなく他者のためにお金を使う方が、得られる幸福感は大きい)
Dunn EW, Aknin LB, Norton MI.
Science. 2008 Mar 21;319(5870):1687-8.
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ちゃんと内容を確認したい方はPubmed経由でアブストなり
論文を丸々読むなり、きちんと確認していただくとして
「忙しいのにそんなことやってられませんよ、課長」
という方のタメに(誰?_笑)
ざっくり内容を言うと、聞き取り調査により
「他人へ与えること」と「幸福度(Happiness)」とに相関が取れたので
実際にお金を手に入れた時、お金を「自分に使う群」と「他人にも使う群」とで
比較したら、やはり人のタメにお金を使ったほうが「幸福度」が
高かったと言うことらしいです。当たりまえっちゃー、当たり前もしれませんが
意外と言えば意外ですね。
ちなみに手元にあるお金が多くても少なくても、やっぱり「他人にも使う群」のが
幸せらしいですよ。

SIUが人のタメに何かしたあげたい、というのは科学的根拠(笑)が
あったわけですね、下心があるわけでも、偽善的な理由があるわけでもなく
(イヤあるかも_爆)

論文と掲載ジャーナルの絡みで言えば
そんなに困難ではない(と思われる、専門外だから
本当のところはわかりませんが)実験と観察を用いて
非常に興味深い結論を持ってくる、というのが面白い論文だなと思いました。
正直、これでScienceってのは美味しいのではないかと(笑)
心理系の研究している人は参考になるのではないかな?

英語読むのがめんどくさいけど、もうちっと正確なところが
知りたい人は下も合わせてお読みくださいな。

Science AAASによる日本語訳
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与えることが大きな幸せに
‘Tis Better to Give
新しい研究によれば、われわれは、自分に金を投資するよりも他人に投資する方が幸せを感じるという。金を多く持っていれば、幸福感が増すと考えがちである。しかし、先進国ではここ数十年、実質的な所得(購買力に応じて調整される所得)が急増しているにもかかわらず、幸福感はおおむね横ばいであることが、複数の研究から示されている。では、われわれは自分の可処分所得をどのように使えば、大きな幸福感を得られるのであろうか。Elizabeth Dunnらは、米国で国民調査を実施し、ボストン地域にある企業で支給されたボーナスへの社員の反応と使い道を分析した。さらに、心理学科の大学生を対象に研究室で一連の実験を行い、それらの結果を総合的に検討した。3つの研究の総合的な結果として、他人に金を投資した人は自分に投資した人よりも幸福感が大きかったことがわかった。幸福感を増すには、所定の日にわずか5ドル(米ドル)の寄付をするだけで十分であると、研究者らは報告している。
http://www.sciencemag.jp/highlights.cgi?_issue=100
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明日のイベント

2008年03月25日 | 非製薬ネタ
明日、東京で行われる
「とあるイベント(笑)」に参加しようと思うのですが
段取り悪くて、予約がうまく取れていない状況(涙)

とりあえず行ってみてダメだったら、ダメという事で(笑)

*後日談
無事参加できました、面白かった。
東京はオラが村より広いで迷ったけど(笑)

週末DVD

2008年03月24日 | 非製薬ネタ
最近映画を見にいけていないのですが、そのかわりと言っちゃーなんですが
週末はDVD見てノンビリト暮らしておりました。
忘れないためにも、見た作品のタイトルくらいは記載しておこうかと思い
ココに記入です。

見た作品
『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』
(原題『Borat: Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan』)
『選挙』
http://www.laboratoryx.us/campaignjp/
そして『キサラギ』
http://www.kisaragi-movie.com/

なんか、最近大好きなpodcastであるところの
「i-morley」および「ライムスター宇多丸のウイークエンドシャッフル」の
影響をモロに受けたセレクト(笑)

最初の二つはやっぱりインパクトが強かったです。
特に『選挙』は淡々と事実を追っているだけなのに
なんか恐ろしいもんを見た気になります。
(ボラットも恐ろしいですが、日本のことの方がより現実感が…)

キサラギは宇多丸さんの批判もわかりますが、小劇場っぽいなぁ
と思ってみたら、まったく問題なく楽しめました。

この中で一番お勧めするとしたら『選挙』かなぁ
見る人によって当たり外れはあると思うけど
新しい視点が持てると思いますよ。

抗ヒスタミン薬

2008年03月17日 | 製薬会社な日常
花粉症で大変です、くしゃみが止まらず
あまりに大変なんで、会社の机に備蓄してあった(*注)
とある抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬:H1 Receptor Blocker)を
昼休みに飲んだんですが・・・
これが眠くなる眠くなる(笑)

飲んだ2時間前後で机の前でうつらうつら。。。
まあ、前日寝不足ってのが原因だと思うんですが

いちおう、添付文書のPDFを拾いに行って(*補足)
【薬物動態】の項目を調べてみたら
Tmax(最高血漿中薬物濃度になる時間のこと)が
1.9時間、すごい眠気の発現とぴったしだ!(笑)
ちなみにT1/2(ティーハーフとお読みください)は9.2時間だそうで。

ちなみにこのお薬の名誉のために言いますと
「分布」の欄で
「14C-(薬物名)を経口投与した場合の放射能は
(中略)中枢神経系へはほとんど移行せず、乳汁中へは移行した。」と
コメントされているので、理屈上は眠くならないはず。
「副作用」の欄では「眠気は1.21%」とのコメント
SIUにはプラセボ効果が大きいか、たまたま1/100に
ハマッタということで一つ(笑)

*補足
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構で
http://www.info.pmda.go.jp/info/iyaku_index.html
医療用医薬品の添付文書(PDF)が拾えます。


*注
ちなみに会社に備蓄してある薬は
ロキソニン(抗炎・鎮痛剤)、PL顆粒(総合感冒薬)
ですね。特にロキソニンは何かあった時に便利。
PL顆粒についてはこの↓エントリもどうぞ
http://blog.goo.ne.jp/siu3siu3/e/e8e87e746aa26a66d8fe8ea4a1476691

「SCRAPPER」の奇妙の冒険(第三部)

2008年03月11日 | スペシャル
第三部です。
この論文ではSCRAPPERが脳における記憶メカニズムの消去に重要な役割
(synaptic tuning)をすることを示しています。
そこがこの論文が非常にインパクトを持つところです。
さてパソコンにおけるデータの消去はなんとなく理解できますが、
ヒトにおけるデータの消去というのはどういう物でしょうか?

ヒトにおける記憶の消去のメカニズム(の一端)
データの消去をパソコンで考えてみましょう。情報はHDDに入ってます
これは磁気情報ですね。まあ簡単に言うと砂場の砂鉄を下敷きの上に載せて
下から磁石を当てると形が出来ます、あれの延長線上のことをもっと精緻に
規則的に「1,0」を作り出し、後で読み取ることが出来るようにしたのが
PCにおけるHDDの情報記録システムです。
BUMPファンだからといって「知らなきゃいけないことは、どうやら1と0の間(by カルマ)」というのは
認めません、必ず「1,0」で記録してます(わからないヒトすみません)
*HDDの記録システムについては門外漢なので、説明が大幅に間違っている場合はご指摘願います。

ヒトの記憶においては磁気を当ててすぐ記録・消去というわけにはいきません。
ではどうするか、細かいことを言い出すときりが無いし
まだわかっていないことも多いし
何よりSIUの知識のボロが出るので(笑)単純な説明で行きましょう。

先ほどクドイほど「1,0の記録」と言いました。「1,0」というのは「有り,無し」とも捉えられますね。
ヒトの脳内である部品(分子)が「有ったり,無かったり」で記録されていると思うと
想像がしやすいのではないでしょうか。そろばんの玉が上がったり下がったりするという
説明の方がホントは良いかもしれませんが…
(識者の方へ:クドイですがわかりやすさ第一、正確性は欠いた表現です)

この論文に出てくる「SCRAPPER」は先ほど記憶の消去系に関係する
と述べたことから想像されるとおり、部品の排除系に寄与します。
部品を無くすことにより、記憶の消去に寄与するんですね。
具体的には「SCRAPPER」は壊す部品の印付け係です、もっとサイエンティフィック
に言うとシナプスに局在するユビキチンリガーゼ
(synapse-localized E3 ubiquitin ligase)です。


SCRAPPERとubiquitination(ユビキチネーション)

自動車はスクラップ工場で壊され、鉄屑になるように
ヒトの体内においても、使い終わった部品は壊されなければなりません。
普通の商品(例えばタンスとかでも良いです)と同じようにヒトの体の中でも
部品は古くなり、動きは悪くなっていくのです。
加えて一説にはヒトにおいて新しく作られた部品(タンパク質)の30%が
不良品とも言われます。

そんな不良品が体内に溜まっていくと、体がうまく働かなくなっていくんじゃないか?というのは
簡単に想像が付きますね。実際、異常タンパク質の蓄積は中枢性疾患だけで考えても
アルツハイマー病やパーキンソン病などとの関連が報告されています。
というわけで、ヒトの体の中では「モノ作り」だけでなく「モノ壊し」というのが
頻繁に行われており、そのことは非常に大切なことなのです。

ふー、一気に書いたら疲れました。ちょっとジュース飲みます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

お待たせしました、飲みました、続けます。

ヒトにおいても「部品(タンパク質)」が定常的に壊されていることは
さきに述べました、ではどんなシステムなんでしょうか?
人間社会において考えると、やっぱりスクラップにするような車は
どこか故障しているとか、すでに古くなったとかそういうものですよね。
不良品じゃないのに、工場から出てきたレクサス(メルセデスでも可)を壊す人は
いないはずです。いる場合は、SIUに連絡してください
SIUのものに名義変更させていただきます(笑)

という訳で、ただ「壊す」だけでなく「何を壊すか?」というのがとても大事になってくるのです。
ふう、これでやっと近接型スタンド「SCRAPPER」の働きについて説明できます。

ユビキチン・プロテアソーム系(Ubiquitin-proteasome System)における「SCRAPPER」
さて皆さんユビキチン・プロテアソーム系というものをご存知でしょうか?
こいつが体内(細胞内)で古くなった・いらなくなった部品(タンパク質)を
排除・分解するためのメカニズム(の一つ)です。

余談ですが、ユビキチン-プロテアソームシステム(UPSシステム)の研究にて
イスラエル工科大学アーロン・チェハノバ教授、アブラム・ヘルシュコ教授、
カリフォルニア大学アーバイン校アーウィン・ローズ博士は
2004年のノーベル賞化学賞を受賞しています。

どういうシステムかというと、不要となった部品に「ユビキチン」という
「タグ」を付け(ubiquitination:ユビキチネーション、ユビキチン化)
そのタグが付いたモノを「プロテアソーム」という「分解工場」に運んでいき
分解されるというイメージです、イメージできるでしょうか?

より詳しく言うと
ユビキチン・プロテアソーム系においてユビキチンの付加にユビキチン活性化酵素(E1:ubiquitin activating enzyme),
ユビキチン結合酵素(E2:ubiquitin conjugating enzyme),
ユビキチンリガーゼ(E3:ubiquitin ligase)が連携します、…って書いていくと
文章を読みながら寝てしまいそうなのでココでこの話は打ち止めで(笑)
まあ上の3つのうちSCRAPPERはE3(正確にはE3の構成要素)だということを
つかんでいれば良いと思います。

ココまでの解説を読んでいただけるとわかるように
一部マスメディアにおける「このスクラッパーはタンパク質を破壊し…」という記述は誤りなんですね。
正確には「このスクラッパーはタンパク質に印を付加し、プロテアソームの分解(degradation)を促す…」
ということになります。細かいけど直接破壊するのと、タグを付ける((ubiquitination)は大きく違いますよね。

もし良ければCell表紙の画像を、別のウィンドウで開いて大きくしてみてください
紫色の人型に描かれている「SCRAPPER」は青いハート形をしているユビキチンを
赤い分子:RIMに付加している(付けている)ことがわかります。
SIUが表紙と論文内容を知った時に驚いたのは、漫画家さんに簡単に内容を
伝えたら、「SCRAPPER(壊し屋)」という名前もありますし、単純にスタンドが
分子を叩き壊す絵が出来てくるだろうと思うのに
きちんとユビキチネーションを表す絵が出てきたことが驚きでした。
丁寧に荒木先生に研究内容を伝えたことが伺えます。

ちなみに表紙右下に「ubiquitin ligase for synaptic tuning.」という
コメントが書いてあります。直訳(意訳)すれば
「ユビキチンライゲースはシナプスのチューニングに働く」と
いったところでしょうか。
そう「SCRAPPER」は脳内にあるシナプスのチューニングに働く、ひいては
記憶に働くのでは?というのがこの論文のキモです。

さてさて、第三部はココまで。四部でまとめる・・・はず(笑)

匂いと記憶

2008年03月10日 | 製薬会社な日常
本日会社にて…

SIUがいつも使っていない部屋(分子生物学実験の部屋)の
流しに使用済みの氷を捨てていた時に、有機溶剤というか
なんか試薬の匂いが…
「あー、誰かなんかこぼしちゃったのかな?」と
思いつつ、その匂いが思い出せそうで、思い出せない…
あー、気になる。考えることしばし
フェノクロの匂いだ!!!」と気付きました。

フェノクロっていうのはDNAの抽出の時に用いる試薬です。
まあ、プラスミド使ったりするような人は必ず使ってるんじゃないでしょうか
それぐらいメジャーな試薬(?)。
正式にはフェノール/クロロフォルム(phenol/chloroform)という名前で
SIUが大学にいた頃は、固形のフェノールを溶かし
(たしか55-60℃位で溶かしてたんじゃないかな?)
をクロロフォルムで飽和させると、下に黄色い層、上に透明層ができるんです。
その上清を捨てる、自前で作ってましたよ。それを茶褐色の瓶で4℃ストック。
タンパク質を変性させ、かつ有機層と水層にトラップするときSIUは使ってました。
なので手にこぼし、手のひらを変性させることも数度(笑)
いちお、手袋はしてたんですけどね。

そうプラスミドプレップというか、プラスミドの抽出時に良く使ってましたよ。
細かい操作や時間は忘れたけど、アンピシリンやカナマイシンを入れた
培地でE.coliを培養して、その後lysis buffer(ライシスバッファー)で破壊。
それを用いてタンパク変性、Sup(上の方の水層)を取ってエタ沈とか
イソ沈とかやってました。
あー、そうだmouseのgenotype決めるために tailからのDNA抽出に
死ぬほど使ったこともあったなぁ、他のラボはカラムで簡単に抽出していたのに
ウチのラボは頑固一徹で、昔ながらの抽出法。。。時間がかかるし
これは辛かったなあ。
まったく話の方向性が見えなくなってしまってますが。。。

んで、何を思ったかというとプラスミドプレップなんて実験は
もう何年もやっていないんですが試薬の匂いは覚えているんですね
実験内容とともに。ここに書いたような内容が「ばぁっ」と
思い出されたわけです、走馬灯のように。
いや走馬灯だともうすぐ死んでしまいそうだから、例えが悪いですけどね(苦笑)

記憶と匂いというのは密接に絡みついているそうです。
・・・がサイエンティフィックなバックグラウンドについて
詳しいわけではないので、特に詳しく述べれるわけではないのですが
なんとなく実感したしだい。

ちなみに大学時代で強く記憶に残っている匂いはBACTO AGAR
大腸菌の培養に使う試薬です。これ吸い込むと咳き込むんですよ。。。

セミナー参加

2008年03月09日 | 製薬会社な日常
個人的に参加したいセミナーがあったため上京。
珍しくおしゃれタウン「赤坂」なんぞに行って
講義を聴いてきました、実習もありタメになりました。


セミナー終了後、都内在住の友人3人
(同業他社・医者・農家というバラエティに富んだ構成)に
電話するも一人も捕まらないので
(そりゃ、当日いきなり連絡しても捕まりませんよね…苦笑)
高円寺で一人パスタ食べて(ミートソース美味しかったです)
帰ろうとしていたときに、友人のDBから電話が!
電話ありがとうっ、東京砂漠で寂しかったよー(嘘です)

初めてお宅にお邪魔しまして、しみじみお話ししました。
じっくり話すのは久しぶりだね、付き合ってくれてありがとう。

音楽のヘビーローテーションが
「BUMP⇒ケツメイシ」に変更中のため「ケツノポリス5」を
聞きながら帰宅しました。明日も会社だー、がんばるぞ。
午前中は実験ないしね(笑)

*Cellの論文の続きを期待されている方がいらっしゃいましたら
もう少ししたらアップしますので、生暖かい目でお待ちくださるよう
お願いいたします。

「Scrapper」の奇妙な冒険(第二部)

2008年03月06日 | スペシャル
第一部がカバーイラストについてだったので
第二部以降は内容に触れて行きたいと思います。
まあ、内容というよりはこの論文がなぜCell(セル)に載ったか?
というところを述べつつ、バックグラウンドを中心に説明して
興味をもたれた方に自分で読むのに少しでも手助けになれたらと思います。

*諸注意
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さてさて、ココからは学術用語を解説無しに使っていくこともあります
従いまして、分子生物学などの素養を持っている方を一応の対象とします。
検索「JOJO」で飛んできた方で「何言ってるかまったくわかんないよー」と
思われるた方がいらっしゃる可能性がありますので、先に謝っておきます。
申し訳ありません。

逆に、中枢の専門家の方にお願いです。SIUが解説するまでもなく
中枢における記憶・認知・判断などなどは解明されていないことが
多々ありますので、本論文の解説の際にどうしても言い過ぎの面が
出てしまっております、ご容赦ください。
そして何より、SIUの専門は中枢領域ではないので情報には聞きかじったことも
含まれております。大幅に正確性を欠いていることは無いと思いますが
気になる内容についてはご指摘いただけると幸いです。
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さて言い訳はこれぐらいにして(笑)
始めましょう…

<内容解説その1>
・この論文がなぜインパクトがあったか?
荒木先生のマンガはジャンプに載りますが、隣のクラスの田中君が
描いたマンガは載りませんよね?
それと同じで重要な発見のあった(マンガで言えばとても面白い)論文しか
有名科学雑誌には載りません。これから説明するのは、この論文のインパクト
つまりCellというbig Journalになぜ載ったかという理由説明です。
どこが面白かったかということですね。

この論文の面白みは、SCRAPPERが脳における記憶メカニズムの消去に
重要な役割(synaptic tuning)を果たしていることを示した事
(正確にはUbiquitin-proteasome Systemの関与かな?)
そこが非常にインパクトを持ったところです。
さてパソコンにおけるデータの消去ならば、なんとなく理解できますが
ヒトにおけるデータの消去というのはどういうシステムでしょうか?

人における記憶というのはHDD(ハードディスクドライブ)に
情報を書き込むのと似ています。
パソコンにおいてHDDへの書き込み方式に磁気システムを用いているのと同様
人においては脳に情報を書き込んでおり、磁気システムに相当するモノは
シナプスを用いたシステムというものになります。
(↑正確性を欠いた表現ですが、その辺はご容赦を)

自分の持っているパソコンを想像してください、HDDに情報を溜め込むと
ある一定量(例えば500GB)を超えるとそれ以上データが入れられなくなりますね。
だからHDDの中身の見ながら「あ、このデータはいらないから捨てよう」とか
「これは古いからもう良いや」とかしてHDDの中身を減らしますね。

生物においても同様であり
例えば「今まで食べたパンの枚数は?」と聞いて
瞬時に答えられる人は稀です。
通常の人は「生まれてから今まで、食べたもの全て」を
記憶していないし、する必要もないのです。
意識はしていないかもしれませんが、人においても勝手に「
要らないデータの消去」は行われているのです。

これまでの研究においては書き込み系(どうやって記憶・記録するか)の
分子メカニズムはそれなりに進展がありましたが、消去系(要らないデータの削除)に
ついてはイマイチ理解が進んでいませんでした(らしいです_笑)。
ココまでが、バックグラウンドでした。
長い解説、お読みいただきありがとうございます。
そしてお疲れ様でした。

やっとこさ、この論文にでてくる「SCRAPPER(スクラッパー)」の登場です。
というところで第二部終了。第三部に続きます。