最近、博士号を取ることの是非についてご質問を
いただきました。また以前にもメールで
質問いただいたこともありまして、そういう意味でも
皆さんの興味がある話題かなと思い、お返事した内容を
再編集して載せていきたいと思います。
大きく分けて
・製薬会社で研究するに当たって博士号を取っておくべきか?
・製薬会社に入った場合、博士号を持っていた方が金銭的に得なのか?
ということについて、結論は出ないにせよ考えていきたいと思います。
まず、仕事内容について…
SIUの会社(オクスリ・ツクル製薬)では
修士卒と博士卒では仕事内容は同じです。
お給料は博士卒のが年齢の分は高いですが
修士卒の方が長く働けるので、一概にどちらが得とは言えないです。
研究において「博士号」というライセンスがあって
悪いことは無いと思いますが、あれば研究を続けられるというものではなく
ある一定の実力を示す印だと思います。
TOIEC何点以上みたいな・・・
そういう意味では博士号を持っていなくても
博士号取得者と同等やそれ以上の方もいらっしゃいます。
ただし海外留学するに当たって、博士号取得が前提であったりしますし
(やっぱり海外ではPhDが無いとテクニシャン扱いなのかも知れない)
まったく影響が無いわけでもありません。
また、海外の会社と打ち合わせする時に「PhD」の文字が名刺に入っていないと
最初は軽く見られるという話を、有能だけれどPhDをもっていない方から
聞いたことがあります。
(ただし話しているうちに、実力の有無は理解してくれるそうです)
では会社が国内留学をさせてくれれば、論文も書けて
ドクターを取れるといいなあ、って思ったりしますが
国内留学(海外もですが…)できるかどうかは
会社の体力にあるかどうかにも関係してくると思います。
聞いた所ではO塚なんかは海外留学行ってこいって
雰囲気らしいですが…
以前も書きましたが、論文博士も無くなる方向性です。
論博が無くなったとしたら、会社の仕事で
論文を書いておいて、お金だけ払って大学院に在籍して
過程博士という形で貰うという方法は考えられますが
国立大学で年間五十万強、入学金等も込みに考えると
200万弱かかりますね。
これは会社は出してくれないので自腹です…
この値段を高いと考えるか、安いと考えるかは難しいですね。
大学で過程博士を取るより、企業に所属しつつ博士を取るのは
難しいということは確実です。
では次にお金を基準に修士卒と博士卒について考えて見ましょう。
<修士から博士の進む場合の3年>
収入[年間]
0円(学振・TAなどの収入なしと仮定して)
支出[年間]
学費50万/年(国立)
50万/年*3年=150万
博士をとる場合の3年
0円(収入)-150万円(支出)=-150万円
[ 一人暮らしなら10万×12ヶ月=生活費120万/年程度もかかりますが]
一方、修士卒で製薬会社に入社したときは
<修士で就職する場合の3年>
収入[年間]
[約24万/月(税引き前)×(12ヶ月[給与]+α[ボーナス3~8ヶ月]]
=約400万/年
400万/年*3年=1200万
支出[年間]
学費に関しては0円
1200万(収入)-0円(支出)=1200万円
このような仮定が成り立つのであれば
修士卒と博士卒では金銭的には
かなりの差が開きます。この考え方では
修士卒のメリットも見出せるのではないかと思います。
この収入格差が会社人生で埋まるかどうかは未だに不明(笑)
博士号を取るか取らないかに関しては
(研究職全般に対しても問題で、製薬研究職だけでないですが)
以下の本があります。
「博士号とる?とらない?徹底大検証!―あなたが選ぶバイオ研究人生」白楽ロックビル (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4897066492/qid=1135534457/sr=1-2/ref=sr_1_10_2/249-3766112-4763552
学生には結構いいお値段(¥3,045なり)だと思うので、とりあえず立ち読みしてみては?(笑)
SIUが「博士進学するか否か?」に迷っている学生さんに
できるコメントは
「今やっている研究をもっと続けたければ博士へいってみたらどうでしょう?」
ということです。すごくオーソドックスですが…
たぶん博士進学で得るものも、失うものも人によって異なると思いますので
まず今の研究が続けたいかどうかが、一番の問題かな?と思います。
最後にまとめると
「現状では博士進学が製薬研究職に有利だとも不利だともいえない」
というのが結論です。迷っている皆さん多少は役に立ちましたでしょうか?