コメント欄で、こんな相談がありました。
回答を書いていたら、えりゃー長くなってしまったので
本記事にさせていただきたいと思います。
(多少省略させていただいてます)
悩み (4年生様)
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いきなりで恐縮なのですが悩みがありまして
今私は旧帝国大学の理学部生物学科の4年生なんですが
同じ大学の医科学修士に進学するか悩んでいます。
将来的には製薬会社に研究職として就職したいんですが、
大学院を4年の時の研究室から変わるとあまり印象がよくないんじゃないかと
よく言われるのが気になります。研究自体は医科学修士のほうが興味があるのですが・・・。
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SIU回答
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<大学院選び>
4年生様、こんにちは。
いきなり結論から言うと研究室を変えても問題ないとおもいますよ。
自分のやりたいことをするのが一番です。
なぜ不利にならないかというと…
時間があるときにまた書きます(笑)
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SIU追記:ひどい回答だ(笑)
4年生様、再度質問
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ご返事ありがとうございます。
ものすごく気になります。
最近の流れ的に、もうそろそろ決断しなければならないので
早く時間があるときが来るよう望んでいます(笑
具体的に言うと今の研究室に残れば細胞を扱うことになり、
医科学修士に行くと癌遺伝子をノックアウトしたマウスを解析したり、
造血系をノックアウトしたマウスの解析をしたりします。
高校生の頃から製薬で働くのが夢だったので(大げさですが)
就職に有利になる方に行きたいと思っています。
大学院を変わるとESを出す時点で半年強しか研究をしていないので
不利かなーと言う思いと、マウスを扱った方が有利なのかなー
という思いが交差して非常に苦悩しています。
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SIU、再度回答(この記事にて初掲載)
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4年生さん、こんにちは。
そしてお返事が遅すぎて、申し訳ないっす。
「もう返事なんか役に立たないよ」という時期かも
しれませんが、お返事を書きます。
先に述べたように研究室を変えるそのこと自体は有利でも
不利でもないと思います。
理由はいくつかありますが
現在いる研究室のアクティビティが
低いのであれば、高い研究室に鞍替えした方が
色々なものを獲得できますよね。
その場合は変えたほうが良いと思われます。
会社がもし研究室を変えた人間をマイナスに見るとしたら
「目的も無くあっちこっちにいって、足場の定まらないやつだなぁ」と
思われたときではないでしょうか?
逆に言えば自分の中で研究室を変える理由をきっちり持っていれば
何の心配も無いとと思います(たぶん)。
逆に新しい物というのは、えてして境界領域に生まれますから
研究室を変えることが将来、自分の「売り」に繋がるかもしれませんね。
>大学院を変わるとESを出す時点で半年強しか研究をしていないので
>不利かなーと言う思いと、マウスを扱った方が有利なのかなー
>という思いが交差して非常に苦悩しています。
極端な言い方をすると会社は修士に入ってから
半年しか立っていない人間に
研究成果を求めることは少ないと思いますよ。
(無いとはいいませんが…)
SIUは入社ん年目ですが会社に入っての実績は(涙)
まあそれは置いておいて(笑)
就活はむしろ「今ある材料でどんなことを考えているか?」という
テストに近いと思います。
だから手持ちデータが少なかったら、バックグラウンドデータを
しっかり提示して、手持ちデータが未来にどう繋がっていくか
今後の研究をいかに見据えているかをアピールすべきだと思います。
(抽象的な説明ですみません)
もちろん薬に近い分野にいた方が有利な部分もあるかとは
思います、ただSIUの知り合いに大学時代は植物の研究をやっていて
入社して、初めてmouse/Ratに触った子もいますが
今じゃいっぱしの薬理屋さんです。
そういう人もいるので、なにをやってたから有利というのは
一概に言いきれない部分が多いんです。
むしろ意外な知識を持っているので重宝されたり…
だからSIU個人の意見としては
「好きなことをする」ということをお勧めしているわけですね。
というのは、まず「楽しい」⇒そして「身に付く」と
思うから、ただそれだけです。
だから四年生さんが単純に、ガン遺伝子のKO miceの解析が
面白そうだったらお勧めです。
でも細胞を使った実験でも薬屋になるには役立つ技術が満載ですよ。
具体的に細胞名やターゲット名(評価するものも含めて)を
出すのは、SIU個人の業務内容が透けて見えてしまうので
難しいのですが、製薬会社にて細胞を扱っていても
解けない問題、解決したいことって山積みなんです。
例えば、細胞にGPCRを発現させて薬物を作用させcAMPもしくは
Ca2+の増加(もしくは産生抑制)を追うことにより薬物の評価をすることは、
どこの製薬会社もやっていることです。
ちょっと調べるとHTSのための論文もたくさんでてると思います。
(とはいうものの、これらの評価系構築に関してはSIUは詳しくなかったりする_笑)
しかしCHOやHEK293にレセプターを発現させる
(場合によってはGsとかも共発現させる)
という系は、本当の意味でHITの化合物を拾っているのか?
という問題があったりします。
そのために実験目的に最も適したモデル細胞を
いかに選ぶか?がお仕事になったりするわけですね。
でも簡単に使える細胞はみんな使えてしまうので、自前でしか出来ないような
モデルを作りたい。
例を出すと、どうしても株化したモデル細胞では測定因子が安定しないから
なるたけプライマリーな状態の細胞を個体から採取かつ、維持して
それで薬物の評価をおこない、そのデータが安定して再現するとしたら
これほど薬屋さんとして欲しい技術は無いですよ。
もちっとヒントを出すとすれば、
複数の細胞を同時にカルチャーすることによって
パラクライン的な相互作用を起こすことを可能にして
測定項目の分泌物を安定させるとか。
(例えばですよ、出来なくても責任取れません_笑)
すみません、かなり寝不足なんで文章の推敲が足りないですが…
ようは「視野が広いと興味も広がる、だからどっちに行っても良し!」って
まとめで一つどうでしょうかね。
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以上