goo blog サービス終了のお知らせ 

「日々これせっせとお薬作り」 -製薬会社新米研究員SIUの日常-

新薬の研究に営む毎日・・・のはず。製薬会社研究職の日常をつたない文章でつづります。

「SCRAPPER」の奇妙の冒険(第三部)

2008年03月11日 | スペシャル
第三部です。
この論文ではSCRAPPERが脳における記憶メカニズムの消去に重要な役割
(synaptic tuning)をすることを示しています。
そこがこの論文が非常にインパクトを持つところです。
さてパソコンにおけるデータの消去はなんとなく理解できますが、
ヒトにおけるデータの消去というのはどういう物でしょうか?

ヒトにおける記憶の消去のメカニズム(の一端)
データの消去をパソコンで考えてみましょう。情報はHDDに入ってます
これは磁気情報ですね。まあ簡単に言うと砂場の砂鉄を下敷きの上に載せて
下から磁石を当てると形が出来ます、あれの延長線上のことをもっと精緻に
規則的に「1,0」を作り出し、後で読み取ることが出来るようにしたのが
PCにおけるHDDの情報記録システムです。
BUMPファンだからといって「知らなきゃいけないことは、どうやら1と0の間(by カルマ)」というのは
認めません、必ず「1,0」で記録してます(わからないヒトすみません)
*HDDの記録システムについては門外漢なので、説明が大幅に間違っている場合はご指摘願います。

ヒトの記憶においては磁気を当ててすぐ記録・消去というわけにはいきません。
ではどうするか、細かいことを言い出すときりが無いし
まだわかっていないことも多いし
何よりSIUの知識のボロが出るので(笑)単純な説明で行きましょう。

先ほどクドイほど「1,0の記録」と言いました。「1,0」というのは「有り,無し」とも捉えられますね。
ヒトの脳内である部品(分子)が「有ったり,無かったり」で記録されていると思うと
想像がしやすいのではないでしょうか。そろばんの玉が上がったり下がったりするという
説明の方がホントは良いかもしれませんが…
(識者の方へ:クドイですがわかりやすさ第一、正確性は欠いた表現です)

この論文に出てくる「SCRAPPER」は先ほど記憶の消去系に関係する
と述べたことから想像されるとおり、部品の排除系に寄与します。
部品を無くすことにより、記憶の消去に寄与するんですね。
具体的には「SCRAPPER」は壊す部品の印付け係です、もっとサイエンティフィック
に言うとシナプスに局在するユビキチンリガーゼ
(synapse-localized E3 ubiquitin ligase)です。


SCRAPPERとubiquitination(ユビキチネーション)

自動車はスクラップ工場で壊され、鉄屑になるように
ヒトの体内においても、使い終わった部品は壊されなければなりません。
普通の商品(例えばタンスとかでも良いです)と同じようにヒトの体の中でも
部品は古くなり、動きは悪くなっていくのです。
加えて一説にはヒトにおいて新しく作られた部品(タンパク質)の30%が
不良品とも言われます。

そんな不良品が体内に溜まっていくと、体がうまく働かなくなっていくんじゃないか?というのは
簡単に想像が付きますね。実際、異常タンパク質の蓄積は中枢性疾患だけで考えても
アルツハイマー病やパーキンソン病などとの関連が報告されています。
というわけで、ヒトの体の中では「モノ作り」だけでなく「モノ壊し」というのが
頻繁に行われており、そのことは非常に大切なことなのです。

ふー、一気に書いたら疲れました。ちょっとジュース飲みます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

お待たせしました、飲みました、続けます。

ヒトにおいても「部品(タンパク質)」が定常的に壊されていることは
さきに述べました、ではどんなシステムなんでしょうか?
人間社会において考えると、やっぱりスクラップにするような車は
どこか故障しているとか、すでに古くなったとかそういうものですよね。
不良品じゃないのに、工場から出てきたレクサス(メルセデスでも可)を壊す人は
いないはずです。いる場合は、SIUに連絡してください
SIUのものに名義変更させていただきます(笑)

という訳で、ただ「壊す」だけでなく「何を壊すか?」というのがとても大事になってくるのです。
ふう、これでやっと近接型スタンド「SCRAPPER」の働きについて説明できます。

ユビキチン・プロテアソーム系(Ubiquitin-proteasome System)における「SCRAPPER」
さて皆さんユビキチン・プロテアソーム系というものをご存知でしょうか?
こいつが体内(細胞内)で古くなった・いらなくなった部品(タンパク質)を
排除・分解するためのメカニズム(の一つ)です。

余談ですが、ユビキチン-プロテアソームシステム(UPSシステム)の研究にて
イスラエル工科大学アーロン・チェハノバ教授、アブラム・ヘルシュコ教授、
カリフォルニア大学アーバイン校アーウィン・ローズ博士は
2004年のノーベル賞化学賞を受賞しています。

どういうシステムかというと、不要となった部品に「ユビキチン」という
「タグ」を付け(ubiquitination:ユビキチネーション、ユビキチン化)
そのタグが付いたモノを「プロテアソーム」という「分解工場」に運んでいき
分解されるというイメージです、イメージできるでしょうか?

より詳しく言うと
ユビキチン・プロテアソーム系においてユビキチンの付加にユビキチン活性化酵素(E1:ubiquitin activating enzyme),
ユビキチン結合酵素(E2:ubiquitin conjugating enzyme),
ユビキチンリガーゼ(E3:ubiquitin ligase)が連携します、…って書いていくと
文章を読みながら寝てしまいそうなのでココでこの話は打ち止めで(笑)
まあ上の3つのうちSCRAPPERはE3(正確にはE3の構成要素)だということを
つかんでいれば良いと思います。

ココまでの解説を読んでいただけるとわかるように
一部マスメディアにおける「このスクラッパーはタンパク質を破壊し…」という記述は誤りなんですね。
正確には「このスクラッパーはタンパク質に印を付加し、プロテアソームの分解(degradation)を促す…」
ということになります。細かいけど直接破壊するのと、タグを付ける((ubiquitination)は大きく違いますよね。

もし良ければCell表紙の画像を、別のウィンドウで開いて大きくしてみてください
紫色の人型に描かれている「SCRAPPER」は青いハート形をしているユビキチンを
赤い分子:RIMに付加している(付けている)ことがわかります。
SIUが表紙と論文内容を知った時に驚いたのは、漫画家さんに簡単に内容を
伝えたら、「SCRAPPER(壊し屋)」という名前もありますし、単純にスタンドが
分子を叩き壊す絵が出来てくるだろうと思うのに
きちんとユビキチネーションを表す絵が出てきたことが驚きでした。
丁寧に荒木先生に研究内容を伝えたことが伺えます。

ちなみに表紙右下に「ubiquitin ligase for synaptic tuning.」という
コメントが書いてあります。直訳(意訳)すれば
「ユビキチンライゲースはシナプスのチューニングに働く」と
いったところでしょうか。
そう「SCRAPPER」は脳内にあるシナプスのチューニングに働く、ひいては
記憶に働くのでは?というのがこの論文のキモです。

さてさて、第三部はココまで。四部でまとめる・・・はず(笑)

「Scrapper」の奇妙な冒険(第二部)

2008年03月06日 | スペシャル
第一部がカバーイラストについてだったので
第二部以降は内容に触れて行きたいと思います。
まあ、内容というよりはこの論文がなぜCell(セル)に載ったか?
というところを述べつつ、バックグラウンドを中心に説明して
興味をもたれた方に自分で読むのに少しでも手助けになれたらと思います。

*諸注意
---------------------------------------------------------------
さてさて、ココからは学術用語を解説無しに使っていくこともあります
従いまして、分子生物学などの素養を持っている方を一応の対象とします。
検索「JOJO」で飛んできた方で「何言ってるかまったくわかんないよー」と
思われるた方がいらっしゃる可能性がありますので、先に謝っておきます。
申し訳ありません。

逆に、中枢の専門家の方にお願いです。SIUが解説するまでもなく
中枢における記憶・認知・判断などなどは解明されていないことが
多々ありますので、本論文の解説の際にどうしても言い過ぎの面が
出てしまっております、ご容赦ください。
そして何より、SIUの専門は中枢領域ではないので情報には聞きかじったことも
含まれております。大幅に正確性を欠いていることは無いと思いますが
気になる内容についてはご指摘いただけると幸いです。
---------------------------------------------------------------

さて言い訳はこれぐらいにして(笑)
始めましょう…

<内容解説その1>
・この論文がなぜインパクトがあったか?
荒木先生のマンガはジャンプに載りますが、隣のクラスの田中君が
描いたマンガは載りませんよね?
それと同じで重要な発見のあった(マンガで言えばとても面白い)論文しか
有名科学雑誌には載りません。これから説明するのは、この論文のインパクト
つまりCellというbig Journalになぜ載ったかという理由説明です。
どこが面白かったかということですね。

この論文の面白みは、SCRAPPERが脳における記憶メカニズムの消去に
重要な役割(synaptic tuning)を果たしていることを示した事
(正確にはUbiquitin-proteasome Systemの関与かな?)
そこが非常にインパクトを持ったところです。
さてパソコンにおけるデータの消去ならば、なんとなく理解できますが
ヒトにおけるデータの消去というのはどういうシステムでしょうか?

人における記憶というのはHDD(ハードディスクドライブ)に
情報を書き込むのと似ています。
パソコンにおいてHDDへの書き込み方式に磁気システムを用いているのと同様
人においては脳に情報を書き込んでおり、磁気システムに相当するモノは
シナプスを用いたシステムというものになります。
(↑正確性を欠いた表現ですが、その辺はご容赦を)

自分の持っているパソコンを想像してください、HDDに情報を溜め込むと
ある一定量(例えば500GB)を超えるとそれ以上データが入れられなくなりますね。
だからHDDの中身の見ながら「あ、このデータはいらないから捨てよう」とか
「これは古いからもう良いや」とかしてHDDの中身を減らしますね。

生物においても同様であり
例えば「今まで食べたパンの枚数は?」と聞いて
瞬時に答えられる人は稀です。
通常の人は「生まれてから今まで、食べたもの全て」を
記憶していないし、する必要もないのです。
意識はしていないかもしれませんが、人においても勝手に「
要らないデータの消去」は行われているのです。

これまでの研究においては書き込み系(どうやって記憶・記録するか)の
分子メカニズムはそれなりに進展がありましたが、消去系(要らないデータの削除)に
ついてはイマイチ理解が進んでいませんでした(らしいです_笑)。
ココまでが、バックグラウンドでした。
長い解説、お読みいただきありがとうございます。
そしてお疲れ様でした。

やっとこさ、この論文にでてくる「SCRAPPER(スクラッパー)」の登場です。
というところで第二部終了。第三部に続きます。

「Scrapper」の奇妙な冒険(第一部)

2008年03月05日 | スペシャル
本日、取り上げたい話題のキーワードは「JOJOとCell」です。
なんか長くなりそうなんで、何日かに分けてアップします。
そして何より本コンテンツは友人のW氏に捧げます。

医学・生物学系の研究をされていて、かつ幼少期にジャンプを読んでたような方は
荒木飛呂彦先生(「ジョジョの奇妙な冒険」の著者)の絵が2007年の
Cellのカバーイラストを飾った、というニュースは結構「グッ」と来たのでは
無いでしょうか?(右上にあるのがその表紙、クリックで大きくなります
表紙の著作権等問題があれば、ご指摘ください。即刻削除します。)

荒木先生ののマンガを読んだことがない方も、カバーイラストを
見ていただければわかりますが、良い意味で「独創的なタッチ」です。
もっと言うとジャンプっぽくない(笑)
(現在、SIUはジャンプを読んでないので、最近はわかりませんが)

それでですね、SIUが話題にしたい事というのは…
この表紙に載っているスタンド様
(「さま」ではなく「よう」と読んでください)なモノが、
「オラオラオラ!」と言ってそうだとか、「いやそんなパワー型のスタンドでは
無いはず、だってラバーズよりちっちゃいんですよ」とか
(なんせシナプスの調整やってますから、一分子の大きさですよ)
そういう事ではないのです。

そんなことは、SIUよりもっともっとジョジョに愛情をもたれている方が
ネットのあちこちで、討論・検討されていると思います。

今回、時期を逸したのにもかかわらず(2007年の論文ですし)
この論文を話題にしようと思ったのは、SIUの友人がたまたま
表紙が出来るまでの内輪話をラストオーサーの方が語っていたのを聞いてきて
それをSIUに熱く伝えてくれたので(口コミの力はすごいですね_笑)
それを元に「第一部(笑)」を書いていこうかと思った所存であります。
*注:ちなみに「第一部」ですが、波紋もツェペリさんも出てくる
予定はありません。

話題にするのはこの論文(Cell press)↓
http://www.cell.com/content/article/abstract?uid=PIIS0092867407009026

さてさてSIUの友人が聞いて来た話によると
この企画は1st authorが考えた訳では無く、
3rd の Hiroshi Ageta, lastのMitsutoshi Setou(瀬藤氏)がJOJO(ジョジョ)の
ファンであり、企画したものだそうです。1st authorの思いは…(笑)
そして荒木先生と直接コンタクトを取れる方(そう「ジョジョ立ち」で有名な方)
にネットを通じ連絡、相談したそうです。

googleで調べたらこの辺のくだりは荒木先生と引き合わせた張本人
「文芸ジャンキー」さんのページ↓で詳しく書かれております。
http://kajipon.sakura.ne.jp/art/jojo-cell.html
このサイトはジョジョ以外もすばらしいですね。。。

ちなみにこの論文の1stのIkuko Yaoさんは女性なんですよ。
このジョジョ騒動について、どうお考えなのか知りたいです。
池田理代子先生(「ベルバラ」の著者)に書いて欲しいとか無かったのかな?(笑)

ちなみに…
この論文が載った号のCell↓
http://www.cell.com/content/issue?volume=130&issue=5#cover_caption
カバーについての解説も下のほうに載ってます。
「Cover Caption」を読んでください。
瀬藤氏がおっしゃっていた、JOJO好きな3rdのAgeta氏の名前が出てきております。

話によると論文を出した時点で表紙を狙っていて「もし依頼が来たら荒木先生へ」
ということまでイメージしていたそうです。「SCRAPPER」というスタンドっぽい
名前はこの表紙をイメージしてか否かは、わかりませんが…
狙ってたんかな?

ちなみにもう一度、カバー絵を確認してもらいたいのですが
人型の「SCRAPPER(スクラッパー)」はRIMという赤い円盤状の
分子を殴ってますが、壊れないで青いハートがくっついただけです。
この青いものがubiquitin(ユビキチン)という付加タンパクを表しています。
ここでは赤い円盤(RIM)が壊れているわけでないことが大事ですね。
「SCRAPPER(スクラッパー)」って名前なのに叩き壊していないという。

これは絵を書いた荒木先生にユビキチン・プロテアソーム系
(Ubiquitin-proteasome System)
のこと十分に解説したんだろうと思います。
上の記述が何のことかわからない方は、明日以降になるたけわかりやすく解説を
書こうと思いますので、少しお持ちください。

さて軽い話題に戻りまして…
友人が話を聞いた際にはラフデッサンというか、荒木先生の走り書きも
示されて説明されていたそうです。
初期ののラフデッサンでは、RIMはベンゼン環と言うかDNAっぽいというか
円柱状のパーツが重なって6角形を作りそれが連なっている構造で
描かれていましたが、瀬藤氏の「これでは誤解を招きやすい絵になる」
というような指示でデザイン変更になったそうです。
世界のアラーキーに変更を迫るとはやりますね、瀬藤先生(笑)
ちなみにラフデッサンだけでも数枚、出てきたらしいのでJOJOファンの人は
見たいんだろうなぁ、新しいスタンドが生まれる状況を…
SIUも見たい(笑)

バックの赤は講談社のデザイナーの方が決めたらしく
当初はスピード線が入っていた状態での手渡しになっていたそうです。
ちなみに後ろの絵は、時系列的に少し前を示しているのでエアブラシを使って
輪郭をボカシて動きを出しているそうです。これも講談社のデザイナーさんが
やったらしいです。ノリノリですね(笑)
この状態では「Cell」誌のロゴタイトルは入ってません。
この状態でCell編集部に渡したところ、Cell編集部のデザイナーさんが
『Cell』のタイトルに前後にRIMを持ってくるという皆さんノリノリの
作業だったそうです(笑)

というような、カバーにまつわるお話で「第一部」完。
「第二部」では少しだけ論文内容に触れて行きたいと思います。

日本における外資系製薬企業

2005年01月13日 | スペシャル
2005.1.4 にkeiさんにいただいたコメントで
「日本における外資系製薬企業の
今後についてどう思うか?」
という趣旨の質問をいただきました。

その時は特に中外製薬について軽くコメント
させていただきましたが、本日は
外資系製薬企業の今まで、そして今後を
SIUの独断と偏見で語らせていただきます。
外資系メーカーにお勤めのかた、間違っていたら
こっそりメールください(涙)

ちなみに内資製薬企業の今後は2004.12.31に
「スペシャル」のカテゴリでUPしてますので
読んでない方は、よかったらどうぞ。

さてと・・・
ちなみに外資らしからぬ名前の
外資系メーカーって知ってます?

こんなの↓
万有製薬*→メルク
中外製薬*→ロシュ
エスエス製薬→ベーリンガー
(エスエスは外資っぽいか・・・)

あとなんか、あったっけな・・・?
ぱっと思いつくのは、このくらいですかね。
「万有→メルク」なんかは、この世界にいる方は
「あたりまえじゃん」とお思いでしょうが
一般的には結構、日本のメーカーだと思われていたりします。
しかし一般薬*出してない割には名前が知られているよな
万有って・・・

日本に進出している、海外メーカーか・・・
最初に大風呂敷を広げたのは良いのですが
SIUは日本に研究所を持っているメーカーしか
わかんないんですよ。
だから売上とかに関しては、「外資は・・・」と
一括りにした、全体的な総括になってしまいますね。
しかも営業の現場とかは
まったくもってわからない・・・
読者さんにMRさんがいたら、
現場がどんな感じか誰か教えてください(涙)

「事件は研究所で起こっているんじゃない
営業で起こってるんだっ!」

(もう古いな・・・、歳か・・・)

「COX-2インヒビター封鎖できませぇーん」とか
(いいかげんにしないか、ワタシ)

本題に戻ります
一般的に日本に入り込んできている
外資メーカーというのは
ものすごく大きいわけです、つまり・・・

研究・開発・パイプライン導入にお金がかけられる

自社製品(ピカ新)をたくさん持っている
(いい薬が多い)
ので

(あくまで、簡単にいうと)
「売るライン=販売網」 さえあれば儲かるわけです。

ところが、今までは日本の製薬市場は外資が
参入しにくかった(らしい)それで売れなかったと。
金融なんかと同じでいろいろな形で守られてたんですね。

外資が日本において、自社では薬が売れない状況で
しょうがないから、日本の会社に委託して
手数料払って売っていたのです。
日本の会社はその利ざやが有ったわけです。
代理店さんみたいな感じですね。
しかし、状況はかなり変わってきてます。

外資が日本においても販売網を整備しており
日本における営業の仕方もわかってきたようです。
例えばファイザーはファルマシアとの合併によって
国内一番のMR数を誇るようになり
他社に託す意味はなくなっています。
(2005年1月現在で3000人以上いるらしい・・・
すごいですね)
販売網を構築できている会社は、これからで出てくる
薬に関しては、間違いなく自社のみで販売するでしょう。

また、お医者さんも盛んにEBM*と言い出し
本当に効くいい薬であれば外資製だろうが
内資製だろうが関係なく使うようになってきています。

このように流れとしては、いい薬を持っていて
販売網も出来あがってきた、海外メガファーマが
日本市場を徐々に、しかしながらしっかりと
飲み込んできているというのが現状です。

・・・と、SIUは思っているのですが。
真実はどうでしょうかね?

何はともあれ自分をかんがみると、研究者の役割は
「患者さんが喜んでくれるような薬をつくる」
というのに限りますね。

日本で勝ち組みといわれている会社は
そのような薬を持っているからやっていけるわけですから。
はい、がんばります、たとえ実験で火傷をしようとも*(涙)


中外製薬*
研究所は御殿場にあります。
富士のふもと。
冬はホントに寒いらしいです。
けっこう箱根まですぐの距離だったりする。
旧ロシュの鎌倉研究所は閉鎖され、御殿場に一本化。
加えて筑波研究所は閉鎖の模様・・・
中外製薬の御殿場寮は
「プレミヤム・アウトレット」の
わりと近くにある。
(ちなみにここのアウトレットは関東近県の
アウトレットの中ではSIUの一番お勧め)
さらにもっと近くに怪しいホテル群がある(笑)
(2005.1.13記入)

万有製薬*
(過去ログより)
こんなに日本らしい名前ながら、しっかり外資です。
会社のイメージはMRさんにしても
研究職にしても、おとなしいという感じ。
ロシュ・ダイアグノスティックスから
(ロシュの診断薬部門)
引き抜かれた社長さん(平手さん)が
頑張って体質を変えようとしているが
なかなか変わらないとの噂。
社内では「変わるのは十年後だ」と
言われているとか、いないとか。
(2004.12.27記入)

一般薬*
処方箋なくて薬局で買えるお薬
対義語としては「医家向け薬」かな?

EBM*
Evidence Based Mediceneの略
「根拠に基づいた医療」ということ。
製薬各社は上市後の商品にも
大きなお金を投資して
他の類似品と差を見出すための
大規模臨床スタディを組んでいる。

たとえ火傷をしようとも*
「あちち」(2005年01月12日)の項を参照のこと

今年はありがとうございました(2005年の製薬業界を予想!その1)

2004年12月31日 | スペシャル
今年も残すところ、あと一日です。
昨夜は実家に帰るため、ほぼO/N*で車に乗っていた
SIUです。腰が痛い…

このblogを初めて2週間少しですが
最近、ほんの少しだけ閲覧数が増えてる(かも…)
何人か固定のお客さまがいる(のですか?)
たまたま、間違ってボタンを押した人がいるだけでは?
(まったくもって自信の無いワタシ)
もし定期的に見てくれる方がいるのなら
ありがとうござます。

見に来ていただけるとやる気が出ます!
出来る限り毎日更新、毎日洗練していますので
いつもとは申しません、週に一度は来てくださいませ(笑)

さて本日は大晦日特別として
SIUが大胆予想させていただきます。


……
………
…………曙vsホイス*はバックマウントからのチョークで
ホイスの勝ち…
ちがーう!!!

K-1の結果予想も自信がありますが、そうではなく
2005年の製薬業界です。
大胆予想行きます。

[巨人・アステラスの強さ(2005年の製薬業界を予想!その2)]に続く…



補足*

O/N*
「Over Night(オーバーナイト)」と読む
一晩中の意。
大学時代の研究室で良く使われていましたが
この分野で一般的かと、言われれば自信が無い…
使いますよね?

使用例1
実験プロトコルにて
「E.Coliを37℃,O/Nで培養した後
Plasmid prep.を行い…」

使用例2
明け方6時の研究室にて
「昨日は、ほぼO/Nでセミナーのレジュメを
作っていたんで、今から2-3時間寝てから、また来ます」

使用例3
ある恋人の小さな亀裂
「せっかく家で、ご飯作って待ってたんだぜ…
実験でO/Nだったからしょうがない? なんでお金も
貰ってないのに、そんな働かなきゃいけない訳?
おれ理解できないよ。もういい、とりあえず今日帰るわ」


曙vsホイス*
結果、オモプラッタでしたね。
オモプラッタって、柔道にも
実はある技なんですよね。
膝固めって技が「寝技で勝つ柔道」
に書いてありました。
・・・って、コメントしますが
このブログを読む人の
99%がオモプラッタを知らないと
思われ(笑)

巨人・アステラスの強さ(2005年の製薬業界を予想!その2)

2004年12月31日 | スペシャル
この前も製薬会社の再編について書きましたね。
最近の国内合併について、おさらいしましょう。

最近の内資の合併(予定も含む)
・住友製薬+大日本製薬→大日本製薬(新会社名?)
・グラレン製薬+帝国臓器→?(新会社名知りません)
[2005.1.25追加情報 新社名「あすか製薬」に決まったそうです]
・山之内製薬+藤沢薬品→アステラス製薬*
・ 大正製薬+富山化学→大正富山化学(出資会社名)


やはりこの中でインパクトがあったのは
「アステラス」でしょう。
(その2)では巨人アステラスの戦力分析をしたいと思います。

「泌尿器の山之内*」と「免疫抑制の藤沢*」という
国内で勝ち組と言われる、2社が組む事により
武田に続き、世界トップ10を狙える会社が出てきました。
この合併のメリットは、以下の3点ではないでしょうか
・販売力の強化(主に世界的な市場において)
・パイプラインの強化(研究・開発費増も含む)
・ 間接部門費の削減


販売力の強化について
合併によって、国内のMRさんが2700人体制になることが
メリットと評す場合もあるが、人件費の増加もおこるため
一概に多ければいいとは限らない。
(まあ、いまのファイザー日本支社を見てると
とにかく多いほうが良いようにも見えますが…)
それよりも、お互い北米市場と欧州市場という違う地域に
販売網をひいているため、今まで充分に売ることが出来なかった
市場において、自社製品を売れる体制が出来あがることになる。
これが合併における、販売力の面での一番の効果であると
SIUは考える。

・パイプラインの強化
単純に今フェーズに乗っている化合物が増える
導入品を入れるときにキャッシュフローに余裕があるので
導入しやすい。研究開発費が増えるためいい研究が出来る
(…と経営陣は思う)こんなことがメリットとしてあがるだろう。
良くいわれることは、藤沢が化合物(微生物由来)から薬を
作る事を得意とするのに対し
山之内はターゲット因子を狙って行く手法を得意と
するため、違ったアプローチが可能になる
ということだ。
正直に言うとSIUは、そうそう簡単に理屈どおりには
行かないと思っています。
古い日本的な考え方*のように思えるかも知れませんが
その理由としては、顔見知りじゃないと
仕事が進みにくということは、よくある話だからです。
一つの会社として混ざり合うのは、
想像以上に時間がかかるでしょう。恐らく年単位で…
ただし人材の交流がなされ、一体感が出てきたときには
スクリーニング法だけで無く、重点疾患領域も異なる2社ですので
とても腰のしっかりした(つまり薬の出せる)会社に
なるでしょう。
たとえば、心臓を狙っていたバイアグラが勃起不全薬になったように
結果として出来た薬が最初に狙っていた疾患ではなく
他の疾患に効く*ということはよくある事です。
しかし、循環薬を作ろうとして、結果として
免疫系に効く薬が出来たとしても、自社でその領域が
無ければ充分にフォローアップが出来ません。
この意味でも「アステラス製薬」というのは
強い会社といえるでしょう。
大きい事=強い事という構図は様々な所に現れます。

間接部門費の削減
SIUはこれが一番早く、結果が出てくると考えています。
社員が倍になっても間接部門は倍の人数要りません。
早々に早期退職制度を用いて、人件費の抑制が
行われるはずです。
どこの会社にも働き以上の給料を貰っている人が
いますよね?(あー、ゴメンナサイ私かも…)

以上、長々と書いてきましたが
2005年は必ずしもアステラス製薬にとって
良い年ではないかもしれません、ただ
SIUは短期的な不安はあるせよ、中・長期的には
「アステラス製薬」は世界と互角に闘える
非常に有望な日本発の企業
だと
考えております。がんばれ明日を照らしてくれ!
しがない新米研究員のためにも…(笑)

あー、つかれた。
年末に何やってるんでしょうね、ワタシ
仕事でもないのに…(笑)
でも続きます。

製薬業界の再編[国内](2005年の製薬業界を予想!その3)に続く

(2005年の製薬業界を予想!その2)の*補足

2004年12月31日 | スペシャル
泌尿器の山之内*
別名「おしっこの山之内」
別に山之内の社員が、よくおしっこに行く
という訳ではない。
ハルナール*(一般名:塩酸タムスロシン)という
排尿障害に対するお薬が、良く売れており
また最近、承認がおりたお薬に頻尿・尿失禁治療薬
Vesicare(ベシケア*)という大型化が望める製品を
有しているため、このような名称で呼ばれたりする。
というか社員が自分で言っているらしい(笑)
ひと昔前は、ピカ新ではなくゾロ新を多くそろえていたため
「まねのうち」とさげすまされていたが、今は豊富な
パイプラインを持つ。社長の竹中さんが研究畑を
歩んできただけあって(いまでも毎年・薬理学会は
欠かせないと、日経に書いていた)
ゲノム情報にもかなりのお金を落したようだ。
(有効に使えてるのかな?)
さあ、みんな
アステラス製薬になるまでの残された時間に
尊敬の念をこめて呼ぼう「おしっこの山之内」と…
(2004.12.31)(2005.1.7改定)

ハルナール*
製品名:Harnal(米ではFlomax)
[一般名:tamsulosin HCl(塩酸タムスロシン)]
山之内製の排尿障害に対するお薬。
この薬は軽症~中等度の前立腺肥大症等で
おしっこが出にくくなった人に使われたりする
(らしい)
このオクスリはα1受容体の拮抗作用を持ち
それにより薬効が発現している・・・
らしい(笑)
このオクスリは非常に良く売れていて
山之内のHPから2004.11.4の株主向け資料で
確認すると、ハルナールの売上は681億円/yearで
あると記されている、すごいね!
(2005.1.7)[Special Thanks:gumecchimanさん]

ベシケア*
製品名Vesicare(ベシケア)
[一般名:solifenacin succinate(コハク酸ソリフェナシン)]
山之内製の頻尿・尿失禁治療薬。
どんなオクスリかというと・・・
一般的に年をとると、そんなに尿が
たまっていないのにもかかわらず
頻繁におトイレに行きたくなる。
これが「頻尿」。頻尿は過活動膀胱等の原因によって
もたらされるが、Vesicareはこれに抗する作用を持つ
新薬。作用機序はムスカリン受容体拮抗によるもの。
米国FDAにより2004年11月に承認された
大型化が見込まれる製品である。
(2005.1.7)


免疫抑制の藤沢*
藤沢が国内で勝ち組と呼ばれる理由、それが…
免疫抑制剤 FK506(一般名:プログラフ)
臓器移植の際に欠かすことの出来ない、この薬の元は
筑波山の山中に住む微生物から見つけられた。
当時、筑波に研究所を持つ他社の研究本部長はみな
これを見つける事の出来なかったために
本社に呼び出され怒られたという、いかにも作り話っぽい
お話しが残っている。
なぜ、筑波の山中からこんなものが見つかったかというと
製薬業界において一時期、森林の色々なところをつついて
微生物を培養し、その中から有効な化合物の骨格を
見つけ出す事が流行った
(らしい、SIUは当時を知りませんので)
からである。
ちなみに、その当時、出張の際にはみんな竹串を渡され、
地面をつついて来るように言われた、らしい。
(ホントかなぁ…)
微生物由来の化合物のメリットは、思いもつかないような
変な骨格の化合物を作り出してくる事
(と化学屋さんが言っていた)
今ではこの分野にしぶとく力を入れているところは少ないが
成功体験がある藤沢は、やはり力を入れているようだ。
(2004.12.31)

古い日本的な考え方*
SIUは会社に入るまでは「仕事ではきっちり付き合うけど
プライベートでは別だぜ」って、アメリカンに考えていましたが
「趣味とか、全然仕事と関係無い分野で会社の人と仲いいと
仕事まで、うまく進むなぁ」というのが会社に入った後の感想。
自分でもこうなるとは意外。
まあ、自分の趣味が主で会社の付き合いはあんまり無いけど(笑)

最初に狙っていた疾患ではなく、他の疾患に効く*
現在、多くの会社において
重点疾患領域の絞込みが行われています。
経営において資本の選択の集中を行う必要性は
理解しますが、選択と集中が最終的にものを出すこと
(薬を上市すること)にプラスである、とは
断言できないことを、経営陣に覚えておいて
頂きたいと思います。
アリセプトにせよ、メバロチンにせよ社内で
必ずしも順調なプロジェクトでは無かった
ということが、一つの証であると思われます。
…ってこんなこと、マジにweb上に記して
どうする気だワタシ?(涙)

製薬業界の再編[国内](2005年の製薬業界を予想!その3)

2004年12月31日 | スペシャル
さて(その3)までたどり着きました、この章では…
ズバリ今年、合併する製薬会社(国内)を予想して見せます!
外れても石投げないで下さい。
ちなみに…
(諸注意)
ペーペーのワタシは当たり前ですがインサイダー情報などは
まったく持っていないので、推測の根拠になる情報は
全て新聞記事やプレスリリースから得た物です。
(これも当たり前ですが)
間違っても信じて株を買って儲けようとか思わないように。
合併が決まって、どっちの会社も下がる事だって
あるんだからね。

というわけで、ズバリ
2005年合併しそうな会社群は…
科研製薬*
田辺製薬*
第一製薬*
三菱ウェルファーマ*
持田製薬*
です、多いなぁ。
(あいうえお順ですから、順番に気を悪くしないでね)
この規模の会社は研究開発型のメーカーとしては
一社では生き残れないと十分考えていると思います。
そして、これがあればしばらく食べて行ける、という
強い商品を抱えているとはいい辛い状況です。
したがって、どの組み合わせかは断言できませんが
ここの中で合併が行われる確率は、かなり高いと
考えています。ただし、田辺製薬は大正との合併に
一度失敗しているので、その辺の事がどのように
今後の行く末にどのように影響を与えるのかは
判断しにくいですね。
[2005.1.19に過筆:第一の製品・クラビットを導入品だと
勘違いしてました・・・ 自社製品なのでお金は今のところ
SIUの思っていたよりも余裕があるはずです。したがって
「合併ややしたい企業」の方に移動させた方が良いと思われます]

上記の会社がホントは手を組みたい会社
三共*
エーザイ*

潤沢なキャッシュフローをもつ三共と
アリセプトを持つエーザイ。
どちらも当分は合併しなくても
自社で生きていける。
しかし生きていけるのと、合併の有無は
また別、どのように動くかは勿論わからないが
上記、合併したい組はこの2社のどちらかと合併できたら
「ばんばんざい」と考えているのではないでしょうか?
逆にこの2社にとっては、上記会社と合併することに
それ程メリットは見出せないかもしれない…
塩野義*はスタチンの行方が気になる所ですが
合併「やや」したい組だと思われ、
案外、三共かエーザイと手を組むのは「ややしたい組」かもしれません。

外資に買われそうな会社
小野薬品*
キリン*(今年はない?)
キッセイ薬品*
日本新薬*

プロスタグランジンの小野薬品。
小粒でもピリリと辛いキッセイ薬品。
2社ともけして大きいわけではないですが
独特の強い研究領域を持つため
外資には魅力的に、うつるのではないかと考えています。
これまでに書いた会社群に比べ、時価総額が低いのも魅力です。
日本新薬もほぼ同じ理由ですが狙われる気がしましたが
独特の技術というのが、RNAiに関する事なので、
これからRNAiがどのくらい有望な技術に
なってくるかによって買収の可能性が動くと思われます。
2005年の内は買われないかな?
キリンの医薬部門もカラーとして同じなのですが
キリン本体の考え方としては、酒部門のほかに
柱が欲しいと思われるので、本体から切り離すという戦略は
この一年は無いのではないか、と思います。

行く先読めないオーナー企業
大塚製薬*
三共*
大正*

これら企業はオーナー会社であり
会社の状態よりもトップの意見で決まる事が
予想されますので、予測困難です。

大胆予想
武田薬品*
国内向うとこ敵無しの武田薬品ですが
世間では「エーザイか三共を買うのでは」なんて
言われてるらしい…
しかし、あえてSIUは確率の低い予想をしてみます。
当たったら誰か誉めてください、誰も読んでなったら…
どうしよう…(涙)

武田がアボット社を買う、というのはいかがでしょう?
売上順位的にはアボットのほうが上ですが、
サノフィ+アベンティスの事例で小さい会社が
大きいほうを飲み込むことが、可能であることがわかりました。
武田は潤沢過ぎるほどキャッシュフローを持っており
(株主に、還元せよとのプレッシャーをかけられるほど)
不可能ではないと考えます。
では、なぜアボットなんでしょうか?
武田は北米市場においては、TAPという合弁会社を
アボットと作って薬を販売しています。
(TPNAという100%子会社もある)
武田の考えとしてはTAPを完全子会社化し
北米による利益率を上げたいはずである。
事実TAPの譲渡交渉が行われていたようだが
まとまりはしなかったようだ。
しかし、アボット本体ごと買収してしまえば
おのずとTAPもついてくる。
国内の中堅どころと、ちまちま手を組むよりも
よっぽど武田的な発想だと思うんですが、
いかがでしょうか?