原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

【書評】「弁護士専門研修講座」シリーズ(ぎょうせい)

2011-05-18 | 書評
本試験が終わって3日目,受験した方の心と身体の傷もそろそろ癒える頃かな,と。そして,次第に時間を持て余すようになる頃かとも思います。司法試験は,法曹になるための最大のハードルではあれど,あくまでも通過点。当然,それが目的ではないので,「何かしないと」「何かしたい」と思う方も多いと思います。

答案の再現は,やっぱり速やかにやるべきです。万が一,不合格だった場合にはリベンジに向けての好個の資料となりますし,また,バイトになりますから(笑:詳しくは各予備校のHPを)。

答案の再現ばかりではなく,やっぱり何か法律に触れたいと思うのでしょうが,いわゆる受験勉強的なもの(条文の素読みや,基本書を読むことなど)は,さすがにうんざりでしょう(笑)今,それをしてもさして意味があるようにも思いません(集中できずにだらだらやるのが関の山かなぁ)。こういう時にやることは,ある程度「面白い」と思える要素があって,かつ,勉強になるものがいいですよね。

そこで,表題のタイトルの本をお勧めします。このシリーズ,東京弁護士会の研修講座(講演)を収録したもので,ベテランの実務家(主に弁護士・裁判官)が主として若手・中堅弁護士向けに事件処理の解説をしたものです。私もいくつか読みましたが,教科書で勉強したことを,実務的にどう活かしていくのか,読んでいて「なるほど」の連続の本です。実に面白い。写真は民事交通事故訴訟で,他に出ているシリーズとしては,会社法務,労働関係,倒産,知財,独禁,離婚,相続・遺言,裁判員裁判など。詳しくは,こちらを参照してください。

写真は,民事交通事故訴訟の本ですが,民裁修習では交通事故に必ず出会います。実務的にも重要な訴訟類型であることに間違いありません。数としても多いし,ちょっといやらしい話をすると,訴額が大きくなるので,原告側の代理人としては割のいい仕事なんでしょうね。不法行為に基づく損害賠償請求事件なわけですが,受験生がこれまで勉強してきた知識をどう活かすかということに加えて,自賠法の使い方であったり,過失相殺の方法であったり,保険法の知識であったり,そこらへんをわかってようやく事件の解決ができるようになるわけです。こういったあたりを勉強できる本です。写真の民事交通事件のもくじを抜き出すと…

1.民事交通事故訴訟入門

2.損害の算定1(損害総論・積極損害・消極損害)

3.損害の算定2(慰謝料・物損・過失相殺)

4.損害の算定3(後遺障害・損益相殺)

5.自動車保険の基礎

ともすれば無駄に時間を使いがちなこの時期にお勧めです。

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