原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

親の不倫相手に対する,未成年の子の慰謝料請求

2012-05-12 | 民法的内容
ツイッターでは書いたのですが,私,抜歯しまして,歯が痛いです。今日,午前中からしゃべりっぱなしだったのですが,ちょうど基礎講座を終えたあたりから痛みが増し,小泉元首相じゃありませんが,「痛みに耐えて,よく頑張った」みたいな状況でした。

ですから,声を大にして言います。受験生の皆さん,本試験で,どんなに腕が疲れても,どんなに腕が痛くても,痛みに耐えて書き続けてください。二回試験の方が分量がはるかに多いですから(いや,ほんと二回試験は腕が大変だった…)。

さて,直前期ワンポイントレクチャーとして,肢を。

「甲は,乙に配偶者と未成年の子である丙がいることを知りつつ,乙と情交を結んだ。その後,乙は丙を残して家を出て,甲と同棲を始めた。この場合,甲が乙に未成年者の子である丙がいることを認識していたことは,甲の行為の違法性を示すので,丙は甲に対して,乙による監護を受けられなくなったことを原因とする慰謝料請求ができる」

…例によって,×ですね。

甲が,乙に未成年者の子がいることを認識していただけでは足りません。最判S54.3.30によれば,甲に,乙が丙の看護をすることを積極的に阻止するなどの「害意」が認められない限り,甲の行為と丙の損害の相当因果関係を欠くので,不法行為が成立しません。「害意」がある場合とは,例えば,甲が乙に対して積極的に丙を家に残して同棲するよう働きかけた場合,などでしょうか。

相当因果関係を欠くとの点の説明は,判例によれば,乙が甲と同棲するか否かにかかわらず,乙の意思により引き続き丙を監護することは可能であるから,甲が乙と不倫して同棲に至っただけでは,丙の損害との因果関係は認められない,ということです。

「害意」が要求されるということを意識的に押さえている受験生は少ないかな,と思って書いてみました。

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