原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

【書評】「リーガルクエスト労働法」(有斐閣)

2010-10-11 | 書評
あまりにも眠れないので、もう一本。最近読んだ、リークエ労働法の書評です。

この本、330頁程度で労働法の全体像をしっかりと解説しています。巷では、「判例に関する言及が薄い」という評価もあるようですが、私は特にそういう印象は受けませんでした。最低限必要な判例はフォローしています(もちろん、「判例について十分に紹介されている」とまでは言えない)。「事案と判旨の紹介」と「それに対するコメント」という二段構えの構成になっており、重要なポイントが印象に残りやすい。判例のポイント(抽象論としての規範部分だけでなく、個別事案における考慮要素など)を端的に押さえた書き方をしています。制度の説明、重要論点についての学説の対立も簡明になされている。一言で言えば、「通読本として最適」と言えます。「合格レベルの情報が盛り込まれている本の中で、ミニマムの本」と言えると思います。

こんな人にオススメです。

・LS2年生でこれから労働法を勉強する人。ケースブックを読む前の予習・通読用として。

・労働法につき、「木を見て森を見ず」の勉強(←ケースブックは読み込んだものの、微細な議論に目を奪われて、全体像の把握ができていない勉強)をしてしまった人で、労働法を体系的に整理したい人。

・今年の5月以来、労働法に触れておらず、手っ取り早く知識の再確認・記憶喚起をしたい人。

・答練前に、知識の確認・記憶喚起用として読む本を探している人。

・予備校本中心の勉強しかしておらず、どうも体系的理解ができていないのではないか、という不安を感じる人。

・水町先生や荒木先生の本よりも薄い通読本を探している人(注:私は菅野先生の本は辞書本と位置づけています)。

リークエシリーズは(まだ2冊しか読んでいませんが)試験向きであると思います。クセのない、スタンダードな立場が簡明に紹介されているので、通読本としてはもってこいです。変に体系を崩すようなこともしていませんし。「プラスαの知識を得る」のではなく、「必要な知識を得る(その範囲を知る←これ重要!)」「必要な知識を固める」を目指す方にお勧めの本です。

今度こそ寝ます。

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