原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

使用貸借は貸主死亡によって終了するか?

2012-05-10 | 民法的内容
直前期の受験生の皆さんに、ワンポイントレクチャーです。まず、条文。

(借用物の返還の時期)
第597条  借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
2  当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
3  当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。

(借主の死亡による使用貸借の終了)
第599条  使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。

注目して欲しいのは、599条が、「借主」の死亡を終了原因としていることです。使用貸借も継続的契約であって、信頼関係を基礎としているからです。賃貸借の場面で、「借主が誰かは、貸主の重大な関心事」などと聞くと思いますが、その発想です。

では、貸主が死亡した場合はどうか?条文上は、終了原因になりません。貸主が死亡した場合、貸主たる地位は、相続人に承継されます。借主からしてみれば、そりゃそうです。使用貸借として不動産か何かを借りて、1か月も経たないうちに貸主が死亡したから出ていけ、というのではさすがに不安定すぎる。

もっとも、相続人からしたら、出て行ってもらいたい、そういう場合もあるでしょう。そういう場合は、597を使っていくことが考えられます。Ⅱ本文により、「目的に従った使用収益は終わったはずだから返せ」などの主張です。また、使用収益が終わっていなくても、使用貸借は継続的契約で双方の信頼関係を基礎とするので、信頼関係が破壊された場合には、Ⅱ但書を類推するという考え方もあり得ます(最判S42.11.24参照)。

以上、参考にしてください。

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