大江戸余話可笑白草紙

お江戸で繰り広げられる人間模様。不定期更新のフィクション小説集です。

百花繚乱 夢の後 ~奥女中の日記~ 十九

2011年10月17日 | 百花繚乱 夢の後 ~奥女中の日記~
 兄様。御右筆の智瀬様から、美緒の名を知る事はできませなんだが、長きに渡る書き付けから、美緒はてふと名を変え、将軍様付きの御中臈のお役目にあったことが分かりました。
 ですが、美緒は千代と同じ身分にございます。御中臈になぞなれる筈もございません。現に、てふ様と申される御中臈様もおられません。人違いでありましょう。
 さて、千代は驚いておりまする。兄様は未だ京におられると、のぶ様からの文で知りました。何故京に留まられておいでなのでしょう。
 京はそれほど良き所にございますか。御尊顔を拝したく存じます。
 美緒の行方が知れますれば、千代は御目見え以下の女中にございますれば、来年春の年季明けには、大奥を退出も出来まする。その折りに兄様がおられませなんだら、戻っても寂しゅうございます。
 長月九日は重陽の節句にございました。菊に長寿を祈る日にございます。御台様から御祝儀やお酒を賜ります。中でも、邪気を祓い長生き効果のある菊を酒に漬けた、菊酒は大変珍しゅうございました。
 町屋でも、八日の夜に菊を綿で覆い、九日に露で湿った、の綿で体を拭いて長寿を祈います。菊に関する歌合わせや菊を鑑賞する宴も催されるなど、大切な日にございます。
 兄様のこそ、長寿のために行って頂きたい儀式にございました。



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