畑倉山の忘備録

日々気ままに

クリミア編入を表明したプーチン大統領の演説(その3)

2018年03月24日 | 国際情勢
親愛なる皆さん。ウクライナを取り巻く環境は、まるで鏡のように今世界で起きていること、そしてかつて世界で起きたことを映し出している。地球上で2極化世界(冷戦)が終わった後も、世界は安定しなかった。カギとなる国際的な仕組みは強化されず、残念ながら頻繁に崩壊した。

米国率いる西側は、政策を実行するのに、国際法ではなく、「力の原則」に従う方を好んだ。彼らは自分たちが選ばれたもので、例外だと信じた。世界の運命を決めることができるのは常に彼らだけに与えられた権利だと。彼らはそのように振る舞っている。それが正しいと言わんばかりに。

国家の主権に対して武力を使い、同盟を組むのが常套手段だ。我々に賛同しないものは、我々の敵だとみなす。攻撃を合法だと装い、国際機関の必要な決議を破り、様々な理由で都合が悪くなれば、国連、安保理をすべて無視する。

ユーゴスラビアでもそうだった。1999年のことをよく覚えている。自分でも目の当たりにしたが、信じられなかった。欧州の偉大な都市の一つであるベオグラードが数週間のうちに空爆で破壊されたのだ。そしてその後、本当の武力介入が始まったのだ。

果たして安保理決議は、ユーゴスラビアのこの問題について、こんな風に解決しようという内容だったか?そんなわけはない。そしてアフガニスタン。イラク。リビアではあからさまに国連安保理決議に違反した。飛行禁止区域を守る代わりに空爆が始まったのだ。

一連の「カラー革命」(一部の旧ソ連諸国で起きた革命)もそうだ。それが起きた国では、圧政や貧困、展望のなさに人々が疲れ果てていた。それは理解できる。しかし、そのような感覚が皮肉なことに利用されたのだ。

利用した方の国(欧米)は、それがスタンダードだという。しかしそれは彼らの人生や伝統、文化には当てはまらなかった。結果は、民主主義や自由の代わりに、カオスだった。暴力の激突であり、政権転覆の応酬だった。「アラブの春」は「アラブの冬」へと変わった。

同じようなシナリオがウクライナでもあった。2004年の大統領選で必要な候補を押しつぶすため、法的には規定されていない3回目の決選投票が行われた(オレンジ革命のこと)。憲法に照らせば、ナンセンスであり、お笑いぐさだ。そして今、用意周到に武装した人たちが投入された。

いったい何が起きているのか、我々はよくわかっているし、それらの行動がウクライナやロシアに反発し、欧州で起きている統合政策に反対する動きであることもわかっている。

ロシアは誠実に欧州側と対話を目指してきた。常にかぎとなる問題については協力を呼びかけた。信頼レベルを強化したいし、私たちの関係を対等で開かれた、純粋なものにしたいと思っている。だが、相手方からの歩み寄りはなかった。

それどころか逆に、何度も我々はだまされてきた。我々の見えないところで事が決められ、実行された。例えばNATOの東方拡大やロシアの国境近くに軍事施設を設けることなどだ。彼らは同じことを繰り返してきた。「それはあなた方に向けたものではありません」。信じられない。

(欧州)ミサイル防衛システムの展開もそうだ。我々にとっては脅威にもかかわらず、施設や装置は設置されている。ビザ問題交渉もそうだ。グローバル市場における自由なアクセスと、純粋な競争についての約束もそうだ。

現在、我々は制裁に脅かされている。しかし、我々は(今でも)一連の制限下で生きており、国や経済において、それははっきり存在している。例えば冷戦時、米国や他の国もソ連に軍事技術・戦略物資を売ることを禁止した。ココムと言った。対共産圏輸出規制のリストだ。

形式的には今日廃止されているが、それは形式的なものだ。実際には多くのものがまだ禁止されている。

我々は根拠を持って次のように推察する。すなわちロシアを抑制しようとする悪名高い政策は、18世紀、19世紀、20世紀にわたって続いてきた。そして今も続いている。

我々は常に追い込まれている。その理由は、我々が独立した立場を取り、それを守り、率直に言い、偽善者ぶらないからだ。しかし、我々の我慢にも限度がある。ウクライナのケースでは、欧米は一線を越え、乱暴で無責任でプロ意識のないことをやった。

彼らだってよくわかっているはずだ。ウクライナやクリミアには数百万人のロシア人が住んでいるということを。(西側は)政治感覚や基準に対する感覚を失いすぎて、ウクライナで次にどんなことが起きるかということを予見できなかったのだ。

ロシアにとっては引き下がれなくなった。もしバネを限界まで押しつけたら、いつか力強く戻る。それを常に肝に銘じるべきだ。

今必要なのはヒステリーな対応をやめ、過度に冷戦などと言うことをやめ、はっきりしたことを認めることだ。すなわち、ロシアは自発的に、積極的に国際社会に参加するプレイヤーなのであり、他国と同様、考慮され、尊重されるべき国益を持っているということだ。

クリミアへの我々のアプローチを理解してくれた国々には感謝したい。まず中国だ。中国の政権は、ウクライナとクリミア周辺の歴史的、政治的な側面をすべて検討してくれた。そしてインドの自制と客観性の高く評価したい。

米国民に言いたい。独立宣言は彼らにとって何よりも重要で誇るべきものだ。クリミアの住民が自分たちの将来を自由に選びたいと思うことはその価値観にあわないとでも言うのか?我々を理解して欲しい。

私のことを欧州は理解してくれると信じている。とりわけドイツ人は理解してくれるはずだ。東西ドイツが統合するときの政治協議で、ドイツの同盟国のうち統合に賛成したのは少なかった。それに引き換え、我が国はまったく誠実に賛同した。

我々は統一を求めるドイツ人の抑えがたい希望を支持した。まさかドイツ人は忘れてないとは思うが。ドイツ国民も同様に、ロシア世界、歴史的なロシアの統一復興に対するロシア人の希望を支持していると考える。(続く)

(関根和弘)

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