畑倉山の忘備録

日々気ままに

暗黒裁判

2016年08月12日 | 鬼塚英昭
瀬島龍三と四元義隆がいかに中曽根康弘のために陰で働いてきたかを私は書いた。それは、中曽根を首相に仕立てて、「田布施システム」のために働かせることであった。中曽根康弘は救われた。田中角栄はそのために犠牲となった。中曽根が内閣総理大臣となっていく物語の前に、一つの論文を引用することにする。

「われわれの中で、外国の報道機関、外国の物書き、外国人の法律学者などなど、法律に接触する人々に、次のことをけっして漏らしてはならない。

<田中角栄被告は、ただの一度も最重要証人に反対尋問する機会を与えられることなく、有罪を宣せられたのである>

それを聞いた文明国の人は、百人が百人、千人が千人、万人が万人、一人残らず日本はそんな野蛮国であったのか、と仰天することであろう。われわれはそんな国の恥を、世界に晒すことはないのである。」
(「『角栄裁判』は東京裁判以上の暗黒裁判だ!」渡辺昇一「諸君!」昭和五十九年一月号)

貴あれば賎あり。時の権力者ありて、その恩恵が国の民草に及ぶ。しかして、田中角栄は殺されにけり。憶!

(鬼塚英昭『瀬島龍三と宅見勝「てんのうはん」の守り人』成甲書房、2012年)




内奏

2016年08月12日 | 鬼塚英昭
戦後も「田布施マネー」を擁して迫水久常、三浦義一らが「田布施システム」を維持管理し、「てんのうはん」のために尽くしてきた。その二人の維持管理人が死んだ後も、瀬島龍三、四元義隆が後を継いだ。しかし、この万全の処置に綻びが見える事件が起きた。それがロッキード事件である。

昭和天皇(以下天皇)と田中角栄の戦いこそがロッキード事件の真相である、と私は考えている。しかし、天皇がロッキード事件に関わっているとする本は高橋五郎の『天皇の金塊』(2008年)しかない。この本については後述する。もう一冊、ロッキード事件で天皇が登場する本がある。平野貞夫の『昭和天皇の「極秘指令」』(2007年)である。この本は直接に天皇がロッキード事件に関与したとは書かれてはいない。ただ、天皇がいかに田中角栄を嫌っていたかについて書かれている。(中略)

私たち日本人は天皇が戦後、「象徴」となり、政治に関与しなくなったと思っている。しかし、(当時の侍従長入江相政の『入江日記』にあるように…引用者)、天皇は首相はじめ各大臣を呼びつけ、細部にわたり質問し、指図していたのである。(中略)

「国家という巨大な権力機構」の中枢に天皇がいるのを、なぜか日本国民は忘れている。私は田中角栄首相も内奏させられていた、と書いた。それも普通は一時間以上である。私は三木武夫首相も「ロッキード事件」で内奏させられていたと思う。それも一度や二度ではなかったであろう。このロッキード事件での田中角栄の逮捕・裁判はまさに、小室直樹が書いているように、デモクラシーの死であった。(中略)

私はあるルートで妙なことを聞いた。それは、三木武夫首相が天皇に呼び出されたとき、天皇は首相に次のように言ったのだ。

「どうしても田中角栄を逮捕してほしい。彼は、私のファミリーのスキャンダルを種に脅しをかけた。私は彼を赦せないのだ」

三木武夫首相はフォード親書について説明した後だった。「どうすればいいのでしょうか」と三木は天皇に尋ねた。天皇は答えた。

「フォード大統領に私の親書を渡してほしい。そして、『よろしく頼む』と伝えてほしい」(中略)

高橋五郎の『天皇の金塊』という本には、田中角栄が天皇マネーに手を出したので、天皇がロッキード事件を仕掛けた、と書いてある。

(鬼塚英昭『瀬島龍三と宅見勝「てんのうはん」の守り人』成甲書房、2012年)