限りなき知の探訪

45年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

【2011年度・英語授業】『日本の工芸技術と社会(5)』

2011-12-08 15:33:35 | 日記
【日本の工芸技術と社会 5: Painting, Ukiyo-e, and Modern Visual Arts (Manga and Animation)】

日本の絵画を発展の歴史を振り返ると、法隆寺の壁画や高松塚古墳の壁画にみられるように、中国からの強い影響がわかる。その後、水墨画や南画の影響を受けつつ、日本独自の画風を確立したのが、狩野派であり琳派であった。さらには江戸時代の庶民の風俗を描いた浮世絵は日本独特の雰囲気をもち、世界ではあたかも日本絵画の代表的存在であるかのごとく認識されている。

しかし、江戸の日本においては浮世絵画師は、生活の為に春画の製作にも手を染めていたため、世間的な評価は低かった。その影響は明治以降も引き続き、日本画の本流からは蔑視されている。

一方、本格的な日本画というのは、その画材に特殊な鉱石で作られる顔料や金銀などを使うため、材料費が高い。さらには、日本画壇の封建的なしきたりとも相俟って日本画の世界というのは非常に閉鎖的雰囲気を持っている。

世界から日本の絵画を見ると、現在ではマンガがその代表的存在である。現在、世界各国で日本語を学びたい若者の大多数がマンガに触発され、日本語でマンガを読みたいために日本語を習っている、といってもいいほどである。日本にいると想像できないほどの強い影響力を日本のマンガは世界に対して持っている。マンガは青少年に与える悪影響などで功罪は半ばするが、日本の文化の一端として考えるべきであろう。

第5回目の講義メモを以下に示す。

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○日本の絵画の発達
・奈良時代、日本の絵画は、デザインや技術も含め、中国から非常に強い影響を受けた。有名なものに、法隆寺の金堂壁画などがある。
・大和絵は、中国の唐絵と対比されるように、日本独自の絵画として、9世紀に登場し、四季を中心に屏風や襖絵、扇子などに描かれた。和歌との関連も深い。
・日本では肖像画は、あまり流行らなかった。有名な肖像画としては、聖徳太子、源頼朝、足利尊氏、武田信玄などがあるが、実際の人物かどうかは疑問が多い。



○中国の絵画
・中国の絵画は唐の初期に2つの派ができた。一つは、北画あるいは北宗画で、もうひとつは南画、文人画と呼ばれるもの。
・中国の北画の最高傑作は、張択端(1085 - 1145)の清明上河図である。
・水墨画とは、墨絵とも呼ばれる。日本には14世紀に中国から取り入れられた。雪舟が有名だ。

○日本画の3大流派
・日本絵画における3大流派は:狩野派、土佐派、巨勢派。
・狩野派は、狩野正信を開祖とし、京都に起こった。弟子達を使って複数人のグループワークで作品を完成させるシステムを考案したのが、元信。永徳は織田信長に仕えた。永徳には京都で活躍した娘婿の山楽と徳川幕府に仕え、江戸で活躍した探幽がいる。・明治時代の狩野派の画家では、狩野芳崖、橋本雅邦が有名である。
・狩野派の三大巨匠は、元信、永徳、探幽。
・土佐派は、15世紀から19世紀にかけて栄え、特に日本独自の大和絵を得意とした。細部にわたる、きめ細やかな線や色使いが特徴的。有名な絵師では、土佐光長、藤原光長、土佐光信、土佐光起がいる。
・巨勢派は、巨勢金岡によって9世紀に京都で起こった。巨勢からは絵仏師の流派が生まれた。代表的画家に巨勢広貴がいる。
・琳派は、俵屋宗達が創設した。とりわけ、光琳、乾山の尾形兄弟が有名だ。
・琳派の代表作に、俵屋宗達の風神雷神図、尾形光琳の八橋図がある。

○文人画と南画
・文人画は学者の余技として描いた絵画を言う。柳沢淇園は、文人画の開祖で、中国人の沈南蘋の影響を受けた。文人画や南画では、与謝蕪村、池大雅が有名だ。

○浮世絵
・風俗画としては、「洛中洛外図」が有名で、14世紀から19世紀にいたる京都の街並みが、事細かく描かれている。
・浮世絵とは、浮世、つまり流れゆく世の中を描いた絵のこと。17世紀の江戸時代の始めに、中産階級を中心に栄えた。・絵のモチーフは、歌舞伎役者、相撲取り、色街、美女、観光名所、庶民のくらし、などであった。
・浮世絵の有名な絵師として、東海道五十三次を描いた、安藤広重もしくは歌川広重、富獄三十六景や北斎漫画を描いた、葛飾北斎がいる。
・喜多川歌麿は、浮世絵の歴史に最も影響を与えた。美女をモチーフとした絵を多く残した。
・東洲斎写楽は、わずか9カ月の活動期間に幾多もの有名な作品を作ったがその後、忽然として行方が知れなくなった。
・春画は、性描写の画で、江戸時代に多く作られた。有名な浮世絵の画師たち、鳥井清信、喜多川歌麿、葛飾北斎、河鍋暁斎なども春画を作った。
・版画は、絵師・彫師・摺師の共同作業で作られる。

○日本のルノーワール、ピカソ、ゴッホ
・画風の類似の点で言うと、竹久夢二は日本のルノーワールと言える。同じく、木版画家の棟方志功はピカソ、裸の大将との異名も持つ山下清はゴッホとも言えよう。

○マンガ
・マンガというのは、コミックだけでなく、風刺画も含む。
・古くは、地獄草紙、百鬼夜行絵巻、鳥獣戯画などがこのジャンルに属す。
・鳥獣戯画は、日本最古の漫画で、鳥羽僧正によって描かれたと言われているが確証はない。現在、国宝で高山寺に保管されている。
・戦後すぐに、手塚治虫の鉄腕アトムと長谷川町子のサザエさん、の2つが登場し、マンガ界に大きな影響を与えた。その他、横山光輝の鉄人28号や三国志、石ノ森章太郎のサイボーグ009、ちばてつやの明日のジョー、松本零士の宇宙戦艦ヤマトなどが有名だ。
・さらには、水木しげるのゲゲゲの鬼太郎、藤子不二雄のドラエもん、赤塚不二夫の天才バカボン、さいとうたかをのゴルゴ13、尾田栄一郎のワンピースなどが有名だ。
・アニメーションでは、手塚治虫の鉄腕アトム、ジャングル大帝、宮崎駿の千と千尋の神隠し、鳥山明のドラゴンボール、青山剛昌の名探偵コナン、田尻智のポケットモンスターが有名だ。
・マンガには功罪が半ばする。功としては、難しい内容を分かりやすく説明するためにマンガ本が挙げられる。成功例としては、もしドラ、家裁の人、ナニワ金融道、などがある。一方、罪としては、暴力シーンや性的シーンがマンガにしばしば登場することで青少年に対する情操教育の点で非難が挙がっている。
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