★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

何となく桜が咲いて、花に包まれたような気がしていた

2018-12-08 23:48:51 | 文学


 ここに写し取る今は知らず。境の話を聞くうちは、おでん燗酒にも酔心地に、前中、何となく桜が咲いて、花に包まれたような気がしていたのに、桃とも、柳ともいわず、藤、山吹、杜若でもなしに、いきなり朝顔が、しかも菅笠に、夜露に咲いたので、聞く方で、ヒヤリとした。この篇の著者は、そこで、境に聞反したのであった。
「朝顔?」
 と。

――泉鏡花「白花の朝顔」