鑿壁偸光 漢字検定一級抔

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「問題と解説」対義語・類義語問題と本試験との比較

2008年11月08日 | 参考書・問題集

 20-2では、対義語・類義語問題の8割を切ったので、「問題と解説」の対義語・類義語を解いています。私が持っているのは、2001年度版(1999年12月15日初版発行)です。その頃、本試験では、対義語・類義語問題は、まだ出題されていませんでした。この本の「傾向と対策(対義語、類義語)」のところにも、「「対義語、類義語」の項目は、今のところ一級の試験には出題されていません」と明記されています。(尚、最近の版は、この部分は、「出題されている」と書き換えられています。)

 本試験に出題されていないのに、問題集に載せた理由として、この本には、「漢字や熟語を一組の対義語、類義語としてとらえることは、漢字や熟語の意味を理解するのに有効な方法」「四字熟語の設問を解くのにも役立つ」とあります。至極尤もな見解です。

 14-3から、意味から熟語を書かせる語選択書き取りの小問と共に、対義語・類義語の小問が登場したのは、本試験において、漢字や熟語の意味を重視する傾向が強まったと言えるのでしょう。「問題と解説」は、本試験の出題変化を先取りした先駆的な問題集だったと評せましょう。

A 違い

1, 出題形式が全く異なる

 「問題と解説」の対義語・類義語問題は、以前書いた四字熟語問題と同じく、本試験の対義語・類義語問題とは、出題形式が全く異なっています。

 本試験の出題形式は、二字熟語が問題として与えられ、その対義語・類義語について、選択肢の平仮名から妥当なものを揀んで漢字に書いて解答する問題です。

 一方、「問題と解説」には、このような問題形式は全くなく、次の4種類の問題形式になっています。

ア、問題の二つの熟語が、対義語同士か、類義語同士か二者択一で答える問題
イ、問題の四つの熟語または訓読みのうち、対義語・類義語の関係にあるもの、またはないものを選択させる問題
ウ、 問題の熟語の対義語・類義語を、選択肢の漢字から記号で答える問題
エ、 対義語・類義語の関係にある二字熟語二つの何れも一字を伏せて、選択肢からあてはまる漢字を選択する問題

 要するにどの問題も、漢字は与えられており、選択問題です。本試験が書き取り問題であるのとは、好対照です。

2, 訓読みが結構ある

 本試験の14-3から20-2まで、調べたところ、対義語・類義語の小問で訓読み熟語があるのは、問題文に、民草(たみくさ・たみぐさ)18-2、目蓋(まぶた)19-3の二つがあるだけで、他は全て音読み二字熟語です。従って、本試験では、音読み熟語が問われています。

 一方、「問題と解説」では、上記イの形式の問題に、訓読みがいくつかあります。従って、これは本試験の対策にはなりません。 

 訓読み問題として捉えればいいのかもしれませんが、「問題と解説」の読み問題は、「辞典」には載っておらず、「必携」にだけ載っている訓読み(14-3以降は出題されていない)が多数含まれていて閉口します。漢字の字義を知るためにはいいのかもしれませんが、私は、「必携」の訓読みを全て憶えることは到底出来ないし、これを学習しなくても合格点に達することは明らかですので、全部無視しています。

 「辞典」にある訓読みも含まれていますので、一旦解いて、間違った問題だけ、「辞典」の訓にあるかどうかチェックしていますが、可成り面倒です。「問題と解説」の訓読み問題は、SIMO様のmixiでのご意見と同じく、解かなくてもいいのではと思います。

3,「辞典」の見出し語以外の熟語が結構ある。

 本試験での書き取り問題は、「辞典」の見出し語から多く出題されています。対義語・類義語問題も同様です。

 一方、「問題と解説」の熟語には、見出し語にないものが結構あります。対義語・類義語1-5(64頁)の上記アの形式の問題80語について、「辞典」に載っているかどうか調べたところ、

①見出し語 52語(65%)
②見出し語ではないが「辞典」に載っている熟語 6語(8%)
③「辞典」に載っていない熟語 21語(26%)

でした。私の学習方針ですと、②と③の34%(約3分の1)を無視することになります。

4, 一文字だけ、漢字が違う対義語・類義語が結構ある。

 本試験で、問題と解答の熟語を比べて、一文字だけ漢字が違うものは、今まで、3問しか出題されておらず、他は、全て二字とも違う熟語です。

 一方、「問題と解説」では、一文字だけ漢字の違う対義語・類義語が結構出ています。

淡水⇔かんすい(鹹水15-3K

のように、本試験で出題されたものもありますが、一文字だけ漢字の違う対義語・類義語は、対義語・類義語問題としては出題可能性は少ないでしょう。

B 本試験に役立つと思うところ

1, 本試験に出題されているものが結構ある。

 以上、違いを論ってきましたが、本試験に対義語・類義語問題としてそのまま出ている問題も結構あります。まだ、解いている途中ですし、過去問はあまり整理していないので、気づいたものだけですが、

清浄⇔おわい(汚穢16-1K
嫣然⇔かんじ(莞爾16-1K
明瞭⇔あいまい(曖昧15-2K
帰納⇔えんえき(演繹17-3K,20-2K
きか(奇禍19-1K⇔ぎょうこう(僥倖16-1K

 尤も、本試験と同じ問題形式では出題されていません。従って、本試験に対応するには、式神様の提唱されるように問題を加工すればよいのでしょう。

 しかし、類義語・対義語が本試験で出題されてから、もう6年も経っているのに、この出版社は、全く問題を変更せず、表紙だけ○○○○年版と最新版のように変えて売っているようです。販促のため、表紙を変えるのは仕方ないとしても、せめて、「合格ノート」のように、○○○○年版とは謳わない方がいいような気がします。この問題集は、以前も書いたように良問も含んでいますので、内容が変更になったような誤解を与えるのは残念なことだと思います。

2,「辞典」と併用することで、本試験に対応できる問題もある。

 この点も以前書いたことですが、例えば、

66頁 孩嬰・孩笑・孩児・孩幼(類義語でないものを択ぶ問題)
67頁 耆旧⇔嬰孩(対義語を候補語から柬ぶ問題)

 があります。太字にしたものだけが、「辞典」の見出し語にありますので、両問とも無視する問題になります。

 ただ、孩の親字欄を引けば、孩の訓は、ちのみごであり、見出し語に【孩提】も載っています。従って、この問題を解いて、「辞典」の孩の欄も学習しておけば、

 嬰児≒がいてい(孩提)20-2

も解答できたのかもしれません。私は、20-2の前は、「問題と解説」は、63頁までしかしておらず、試験後に解いて残念な思いをしました。

 毀誉褒貶な意見を書いてきましたが、過去問や漢検協会の問題集を除けば、「問題と解説」は、総合的には、「本試験型」、「合格ノート」の次の三番手に位置付けられる問題集と思います。



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