石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

覇者を目指した男・ナベツネ

2007-11-26 10:53:20 | 人物
 きょう発売の月刊「宝島」08年1月号の巻頭に「覇者を目指す男・ナベツネの本懐」を寄稿した。

 その冒頭の一節

 読売新聞社では、「ナベツネ」ひとり元気がいい。政治・報道・スポーツ・芸能、あまねく支配する読売グループの「天皇」として彼は君臨している。社内のタブーは「ナベツネ批判」、とりわけ彼の死である。「Xデー」は囁かれることさえない。 
 
 その中盤の一節

 彼にはジャーナリストとしての理想や使命感はなかったのだろうか? なかった。オレはもっとでかい人物で、天下国家の覇者になる。そのために読売社内で覇者になり、読売を天下の覇者にする。これがナベツネの歩いた「ロング・パワー・ロード」だった。
 ナベツネの行動を「メディアとして行き過ぎ」と批判しても、私には「影響力なき者」の怨嗟と嫉妬に聞こえる。いま、老若男女に蔓延している気分は「自分には影響力がない」という自信喪失だ。だからこそ「影響力の星」として天高く輝くナベツネがまぶしいのだ。

 その終盤の一節

 しかし、「Xデー」などまるで準備していない読売グループの狼狽ぶりが目に見えるようだ。「覇者」が残していった新聞界の巨像「ヨミウリ」を、一体誰が操縦できるのだ? 
 ナベツネのいない読売新聞は、太平洋戦争の責任追及をする果敢な連載など、もうしない。首相の靖国参拝に苦言を呈しない。ひたすら「国策」に追従する、醜い「でくのぼう」に堕してゆくだろう。
自前で考え、判断できる魅力的なジャーナリストが社内にいない! 読売は一千万部超の「官報」配給会社になるだろう。もはや新聞社じゃない。今もその兆候がある。
 三途の川を渡りながら彼はうろたえるだろう。「オレがいたから、社員の主体性が育たなかった!」。それでいいのだ、覇者から転落する読売を見ずしてナベツネは昇天できたのだから。