Naked Heart

その時々の関心事をざっくばらんに語ります

ユダの福音書

2006年04月11日 03時54分26秒 | キリスト教
ユダ裏切ってない? 1700年前の「福音書」写本解読

 米国の科学教育団体「ナショナルジオグラフィック協会」は6日、
1700年前の幻の「ユダの福音書」の写本を解読したと発表した。
 イエス・キリストの弟子ユダがローマの官憲に師を引き渡した
のは、イエスの言いつけに従ったからとの内容が記されていたと
いう。
 解読したロドルフ・カッセル元ジュネーブ大学教授(文献学)は
「真実ならば、ユダの行為は裏切りでないことになる」としており、
内容や解釈について世界的に大きな論争を巻き起こしそうだ。
 13枚のパピルスに古代エジプト語(コプト語)で書かれたユダの
福音書は、「過ぎ越しの祭りが始まる3日前、イスカリオテのユダ
との1週間の対話でイエスが語った秘密の啓示」で始まる。イエス
は、ほかの弟子とは違い唯一、教えを正しく理解していたとユダを
褒め、「お前は、真の私を包むこの肉体を犠牲とし、すべての弟子
たちを超える存在になる」と、自らを官憲へ引き渡すよう指示した
という。
 同文書は3~4世紀に書かれた写本で、1970年代にエジプトで
発見され、現在はスイスの古美術財団で管理されている。同協
会が資金援助し、カッセル元教授らが5年間かけて修復、内容を
分析した。
 福音書はイエスの弟子たちによる師の言行録で、実際は伝承
などをもとに後世作られたものと見られている。うち新約聖書に
載っているのは、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4人分だけ。ユダ
の福音書は、2世紀に異端の禁書として文献に出てくるが、実物
の内容が明らかになったのは初めて。
 詳細は、28日発売の『ナショナル ジオグラフィック 日本版』に
掲載される。
               (2006年4月7日3時11分 読売新聞)


受難週の直前というだけでなく、『ダ・ヴィンチ・コード』の映画公開
が近いからでしょうか、日本でもトップニュース扱いでした。
といっても、存在自体は古くから確実視されていましたし、「ユダは
裏切っていなかった」という説もかなり前からありました。(とっくに
否定されています。)今さらキリスト教界に、衝撃も議論も起きない
でしょう。
『ナショナル ジオグラフィック 日本版』によると、「『ユダの福音書』
を含む一連の写本は,紀元180年以前のある時点で成立したギリ
シャ語の原典をコプト語に訳したもので,この写本が作られた年代
は3~4世紀とみられている。」とされていますが、このコプト語と
いうのが少々怪しい気がします。
読売記事にも引用されている「お前は、真の私を包むこの肉体を
犠牲とし」の箇所について同誌は「つまり,ユダがイエスを死に追い
やったのは,イエス自身の望みに従った行為であり,イエスをその
肉体から解き放つことによって,真のキリスト,つまり内なる神が
解放されるというのだ。」と解釈しています。全文を読んだわけでは
ないのでその解釈が妥当かどうか判断が難しいですが、グノーシス
思想の影響は否定できないでしょう。(だからこそ「異端の禁書」に
なるわけです。)

3~4世紀の写本とすれば、歴史資料としての価値はもちろんある
でしょうが、「科学」の名の下に理屈を捏ね回すのが好きな人なら
ともかく、信仰者にとってはあまり意味がある書物とは思えません。
「福音書」とは読売記事にあるようにイエスの「言行録」ではなく、
神の救いの「福音」を宣べ伝えるものだからです。イエスの十字架
の死を「贖い」と理解する福音派も、「苦難の連帯」に留めるリベラル
派にしても、グノーシス的な「解放」を「福音」とは受け止められない
でしょう。『ユダの福音書』は「福音書」の名に値しません。

下手をすると、「殺してやることがその人の救いになる」というカルト
的教理にも発展しかねない内容ですしね。こんなものを「世紀の大
発見」なんてもて囃してるようじゃ、まだまだですね。

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