三島由紀夫原作の舞台「豊饒の海」を見に行きました。場所は新宿の ”紀伊国屋サザンシアター TAKASHIMAYA” です。東京公演は既に終了していますが、12月8・9日に大阪公演が予定されています。
「豊饒の海」は三島由紀夫の最後の作品で「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の4部から構成されています。私にとって心に残っている特別な作品ですが、ちょうど先日「奔馬」の舞台である奈良の三輪山を訪れたばかりだったこともあり、不思議な縁を感じました。先日偶然この舞台のことを知り、急遽チケットを取って見に行ってきました。
「豊饒の海」は輪廻転生の物語。「春の雪」の主人公である侯爵の令息 松枝清顕が、「奔馬」では右翼の少年剣士、「暁の寺」ではタイの王女、「天人五衰」では孤独な通信員に転生していきます。この壮大な4部の物語を、どうやって2時間40分の舞台に収めるのか。駆け足になってしまうのでは?と少々心配でもありました。
ところが舞台では、第1部の「春の雪」をベースに、他の3つの物語が交錯する作りになっていたので、なるほど~と納得しました。たしかに時系列に展開すると、第1部に登場する清顕は、前半早々に退出することになってしまいますものね。4つの物語が交錯することで、4人の関係性が鮮やかに浮かび上がり、物語に深みを与えていたように思いました。
主人公の松枝清顕を演じるのは東出昌大さん。とにかく背が高くて(189cm)、足が長く、頭が小さくてびっくり。@@ 繊細で誇り高く、未熟さゆえに情熱に突っ走り、やがて破滅へと突き進む清顕。白いシャツを清潔に着こなし、どこか古風な佇まいも感じられる東出さんは、清顕のイメージにぴったりでした。
清顕が転生する少年剣士 飯沼勲に、宮沢氷魚さん。小説では、勲には男くさくてごついイメージを抱いていましたが、宮沢さんのもつ透明感やひたむきな雰囲気は、勲の理想に向かって突き進む純粋な精神に通じるように思いました。最後に転生する孤独な通信士 安永徹に上杉柊平さん。真に迫った酷薄な演技にぞくっとしました。
この他、清顕と禁断の恋に落ちる幼なじみの綾倉聡子に「終戦のエンペラー」の初音映莉子さん。全作にわたって登場する清顕の親友 本多は、青年、中年、老年と3人の役者さんがリレーで演じます。老年の本多に「沈黙 サイレンス」の笈田ヨシさん。本多の女友達 慶子に舞台女優のベテラン神野三鈴さん。
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白木の床に黒を背景にした舞台は、シンプルにてスタイリッシュ。幕が上がると、舞台中央の奈落に三光の滝が設えられていて、一気に物語の世界に引き込まれました。そして印象的だったのは黒子たちの所作の美しさ。大道具・小道具のセッティングだけでなく、登場人物たちを死の世界へと誘う悪魔を演じているように感じました。
死の気配が濃厚なこの作品を見ていると、私はどうしても老いることへの恐怖に打ちのめされます。決して夭逝することを美化しているわけではないし、清顕たちが幸せな最期を遂げたわけではないのですが。
清顕に魅せられ、彼の亡霊に人生を翻弄されてきた本多。ところが老いてから、聡子が出家した月修寺を訪れると、聡子は清顕を知らないというのです。聡子が到達したこの境地こそが、私たちが目指す場所なのかも...とふと思いました。
「豊饒の海」、この舞台のポスターが駅の通路に貼ってあって、最初映画!?と思ったら舞台だったので、行けないな~なんて思ってた作品です。
セレンさん、見に行かれたんですね~。うらやましいです。
内容を読ませていただくと、なかなか斬新な演出になっていて面白そうですね!
とは言え、豊饒の海シリーズを1作も読んでいないので、読んでからじゃないと・・ですね。
私も早く読まないとな~~。
私もTwitterで知って、最初は映画??と思っていました。
始まってからだいぶ経っていたので、きっともうチケットないだろうなー
と期待せずにサイトをのぞいたのですが、ラッキーなことにさくっと取れました。
舞台はすごくよかったですよー。
客席との間も近く、生のお芝居ならではの迫力を感じました。
演出もなかなか凝っていて。
原作を読んでいなくても楽しめると思いますが
読んでいると、あの場面をこんな風に表現するんだーという発見がありました。(^_−)−☆