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ジャコメッティ展

2017年07月20日 | アート

国立新美術館で開催中の「国立新美術館開館10周年 ジャコメッティ展」(~9月4日まで)を見に行きました。

スイスで生まれ、パリで活躍した20世紀を代表する彫刻家、アルベルト・ジャコメッティ(1901 - 1966年)。針金のように細い人物の彫刻の印象が強いですが、本展を見て、アーティストとしての出発点は絵画であったこと、彫刻作品においてもさまざまな変遷があったことを知りました。

本展は日本で11年ぶりに開催される回顧展。フランスのマーグ財団美術館のコレクションを中心に、初期から晩年までの作品132点(うち彫刻約50点)が展示されています。ギャラリーは広々として混雑なく、じっくり鑑賞できました。

女=スプーン 1926/27年

初期の頃の彫刻作品は、意外にも立体感、重量感があり驚きました。パリに出てきた頃のジャコメッティは、キュビズムやアフリカ、オセアニアのプリミティブ・アートの影響を受けたそうです。上はアフリカのダン族の女性を模したスプーンから着想を得た作品。丸くえぐれた女性の体は子宮を表しているように感じました。

鼻 1947年

30年代、ダリやブルトンらと交流し、一時的にシュルレアリスムの影響を受けました。枠は檻、頭は頭蓋骨を表しているのでしょうか。横からのシルエットは銃のようにも感じられました。”死”を連想させる作品です。

小像 1946(1980)年

シュルレアリスムと決別してからは、作品はどんどん小さくなり、しまいにはマッチ箱に入るほどのミニミニサイズの彫刻になりました。イコンのようにも感じられ、以前、東京都庭園美術館で見た内藤礼さんの小さな人形のインスタレーションを思い出しました。

3人の男のグループI(3人の歩く男たちI) 1948/49年

小像時代のあとは、反動するかのように1mを越える細長い女性立像を作る時代が続き、次に訪れたのは”群像”の時代です。3人、7人、9人...とありましたが、それぞれの人物には個性がなく、ピクトグラムのような印象を受けました。

ディエゴの胸像 1954年

共同でアトリエも構えた、弟ディエゴの胸像。弟といういことで特別の思い入れがあったのでしょうか。めずらしくモデルの個性を感じさせる作品でした。

犬 1951年

人物をモデルにした作品が続く中、「犬」と「猫」が目を引きました。どちらも骨組だけでそれぞれの特徴をとらえているのがおもしろい。エジプトの壁画にある象形文字を思い出しました。

圧巻だったのは、「ヴェネツィアの女」全9体。1956年、ヴェネツィア・ビエンナーレのために制作された作品で、ボウリングのピンのように3角形に配置され、大迫力でした。モデルは妻のアネットだそうです。

(手前) 頭部 1959年 (奥) 女性立像 1959年

チェース・マンハッタン銀行のプロジェクトから。3つの大型作品が展示され、ここだけ撮影可能でした。銀行前の広場のモニュメントとして制作依頼され、当初は針金の骨組に石膏をつけて削り取るという方法で作られましたが、できあがりに満足できず断念。広場への設置は実現しませんでしたが、その後ブロンズで鋳造され、数々の賞を受賞しました。

歩く男 1959年

ポスターにも使われているこの作品は、新たな一歩を踏み出そうとする、人間の勇気と力強さが感じられ、特に心に残りました。


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4 コメント

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変遷 (ノルウェーまだ~む)
2017-07-22 18:25:20
セレンさん☆
作風の変遷がとても興味深いですね。
マッチ箱に入る大きさのものになっていくのや、細長い人の群像なんて…
細長い人の像はよく目にする機会があります。
彼のどういった心情が作風の変化に繋がったのか、ちょっと知りたいですね☆
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早く見たいな (ごみつ)
2017-07-22 23:04:57
こんばんは!

ジャコメッティは昔から大好きなので、必ずこの展覧会も行くつもりです。次のお休みには行けそうかな~。

彼の彫刻から感じる、精神性の深さみたいなのに魅かれるんですよね。

日本の哲学者の矢内原伊作(彼の肖像もありましたか?)と親交があったりするし、小説で言うとカミュの作品みたいな、何て言うか人間の実存の本体を、彫刻で表現す・・みたいな感じが、何となく私にはさびしく感じられるんですよ・・。

こんなにまとめて見る機会も頻繁にはないでしょうし、凄く楽しみです!
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☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ (セレンディピティ)
2017-07-23 09:55:01
まだ~むさん、おはようございます♪
ジャコメッティの細長い人物像は、ひと目で彼の作品とわかる
強烈な個性がありますが
初期の頃の立体的な作品やミニミニサイズの作品など
知らなかった作品の変遷を見ることができて興味深かったです☆

自分の見るままに作っていくうちに、どんどん細くなっていったそうですが
人間の根源を追求していくとこうなるのでしょうか???
哲学者たちに受け入れられたというのも納得です。
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☆ ごみつさま ☆ (セレンディピティ)
2017-07-23 10:11:43
ごみつさん、おはようございます♪
ジャコメッティ展、よかったですよ!
国立新美術館、ギャラリーが余裕をもって作られているので
ゆったりした空間で作品に向き合うことができました。
混まないうちに是非☆

記事には書いていませんが、矢内原伊作さんのコーナーもありました。(スケッチなど)
ジャコメッティはモデル泣かせの彫刻家だったそうですが
彼の制作に根気強くつきあってくれるのが妻と弟、そして矢内原氏だったとか。
きっと心の深いところで通じ合う間柄だったのでしょうね...
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