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エンドロールのつづき

2023年02月19日 | 映画

もう一ヶ月くらいたちますが、久しぶりにインド映画を見に行きました。

エンドロールのつづき (Chhello Show / Last Film Show)

インドの貧しいチャイ売りの少年が、初めて見た映画をきっかけに映画の世界に魅せられ、いつか自分で映画を作りたい、と夢見る物語。インド出身のパン・ナリン監督が、自身の体験をもとに作った作品です。

この映画のことを知った時、インド版「ニュー・シネマ・パラダイス」みたいだなーと思い、楽しみにしていました。主演の男の子の無垢な笑顔がかわいくて、ニュー・シネマ・パラダイスのトトみたい!と思っていました。

監督はインドのグジャラート州出身で、本作もグジャラート州で撮影されています。そしてこの映画の主役に抜擢された男の子、バヴィン・ラバリもグジャラート出身で、学校に通いながら祖父のチャイ売りを手伝っているそうです。

映画は貧しい中にも明るく前向きに生きる少年たちの姿がノスタルジーたっぷりに描かれています。親切な技師さんの計らいで、少年サマイがこっそり映写室に入れてもらうシーンなどもあり、たしかにニュー・シネマ・パラダイスのテイストもあるのですが

私にとって意外だったのは、サマイの映画への興味の方向です。「映画を作りたい」と聞いて、私はてっきり、ストーリー作りや映像作りに興味を持ったのだろうと思っていたのですが、サマイが興味を持ったのは、映画を上映する仕組みでした。

映画=動く絵をスクリーンに映し出すのに、光の作用が大きくかかわっていることに気がつくと、身の回りの道具を使ってカメラの仕組みや、アニメーションの仕組みについて次々と実験を行います。そう、まるでリュミエール兄弟のように。

そしてついには、映画館からこっそり持ち出したフィルムを編集し、自分で映画を作って上映に成功します。私はサマイの映画作りに対する、科学的アプローチに感動しました。

最初はサマイが映画を作りたいという夢が理解できず、反対していた父ですが、ある時ひょんなことから、サマイが仲間たちと手作りの楽器で演奏しながら、秘密の場所で映画上映会を行っているところを見てしまいます。

サマイがとうとう自分の力で映画を作り、幸せそうに仲間と喜びを分かち合っている姿を見た父親は、チャイ売りをしてためたお金をサマイに渡し、映画の勉強ができるよう彼を送り出す展開に、映画「リトル・ダンサー」(Billy Elliot) を思い出しました。

この映画では、サマイの父親が親戚にだまされて羊を取られ、チャイ売りで生計を立てていること。チャイ売りをしている駅に列車が停車しないことになり、その仕事さえも失ってしまうこと。インドの貧しい暮らしの現実もさりげなく描かれています。

そうした中、優しいお母さんが家族のために作る、おいしそうなごはんが心に残り、食のもたらす力についても考えさせられました。

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