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小説「奔馬」の舞台 三輪山へ

2018年11月04日 | +奈良

朝から気持ちよく晴れた最終日、三島由紀夫の小説「奔馬」(ほんば)の舞台となった三輪山に登ってみようと思い立ちました。いつか機会があったら訪れたいと、長らく心の中で温めていた場所です。(三島由紀夫「奔馬」の感想

三輪山は大神(おおみわ)神社のご神体で、山そのものが信仰の対象となっています。そのため入山に際しては、撮影、飲食、トイレ、木の伐採すべてNGと厳しい約束事があるようです。ちょっぴりドキドキしながら、まずは大神神社をめざしました。

大神神社は、JR奈良駅から桜井線に乗って30分弱、三輪駅から歩いて10分のところにあります。小さな駅ですが、この日は大神神社で大きな祭事が営まれていて、屋台が並び、おおぜいの参拝客でにぎわっていました。それでも二の鳥居から参道に入ると、うっそうとした杜に厳かな空気を感じました。

大神神社の境内の奥まったところに、荒魂(あらたま)を祀る狭井(さい)神社があり、三輪山の登拝口は、狭井神社の境内にあります。入山する前には禰宜(ねぎ)の方から注意・説明を受け、登拝申込書を出さなければなりません。

山登りをする物好きがそうそういるとは思わなかったので^^ もっとひっそりとした神秘的な空間を想像していましたが、登拝者がおおぜいいてびっくりしました。といっても「奔馬」とは関係なく、昨今ここはパワースポットとして人気を集めているようです。

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入山中は撮影禁止で写真がないので、私の下手な説明でご容赦を...。三輪山は、頂上にあたる奥津磐座(おくついわくら)まで片道1時間半の道のりです。それほど急ではありませんが、ぬかるみや滑りやすい場所もあるので、神社にある杖を借りると歩きやすいかと思います。神の山ということで、裸足で登っている方も結構いらして驚きました。

途中の中津磐座(なかついわくら)までは沢や滝があり、せせらぎを聴きながら楽しく登れましたが、後半はやや退屈するかもしれません。でも緑の木々に包まれながら、高みを目指して無心に登ることは、なかなか得難い経験でもありました。

山道の途中に、三光の滝があります。小説の中で狂言回しをつとめる本多が、亡くなった親友 清顕の生まれ変わりを見つけるドラマティックな場面です。ベニヤ板でできた粗末な脱衣所があるだけの場所ですが、「また会おう。滝の下で」という台詞とともに鳥肌が立ったことを思い出しました。

三輪山に登った後に、大神神社を参拝しました。日本最古といわれる由緒ある神社です。小説ではここで剣道大会が開催され、上司の代理で来賓として出席した本多は、ここで本作の主人公である凛々しい少年剣士 飯沼勲に出会います。

さて...三輪といったら三輪そうめん。大神神社の二の鳥居のすぐそばにある そうめん処 森正 (もりしょう)さんでお昼をいただくことにしました。堂々と風格のある門構えが目を引きます。麻の暖簾をくぐって中に入ると、よしずが掛けられ、玉砂利を敷き詰めたお庭で食事ができるよう設えてありました。重厚な旧家の風情を楽しみつつ、ほっと人心地着きました。

そして氷できゅっと締めた冷やしそうめんのおいしいこと! 生き返りました。こちらでは、同じく奈良名物の柿の葉寿司もいただけます。

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