まにあっく懐パチ・懐スロ

古いパチンコ・パチスロ、思い出のパチンコ店を懐古する
(90年代のパチンコ・パチスロ情報がメイン)

スロ屋での思い出…「千円勝負」

2012-02-18 08:25:48 | 昔話あれこれ

1991年の話。

当時、大学2年生だった私は、一丁前に法律サークルなんぞに入っており、弁護士である先輩の好意で、東京・麹町の法律事務所での勉強会にも参加していた。

まぁ、大学の途中までは、今をときめく橋下徹・大阪市長と似たような(?)道を歩んでいた訳だ。因みに、橋下氏は同じ学部(学科は違う)の1年先輩に当る。

そうはいっても、当時はパチ・スロの方が遥かに面白く感じていたので、法律の勉強など、ほとんど熱が入らなかったのが実情だ。

その勉強会の帰り道、事務所を出て、新宿通りをJR四ツ谷駅方面に向かっていると、途中で一軒の小さいパチスロ店が目に入った。

「あれ、こんな所にスロ屋があったのか?」と、思わず足を止めた。派手なネオンもなく、小さな「パチスロ」の看板が出ているのみで、今まで見落としていたようだ。

こんな風にパチ屋・スロ屋の看板を見つけると、即座に店内に突入したくなるのが、当時の哀しい性であった。

しかし、あいにく財布の中には1000円札一枚と小銭が少々…。バイト前の金欠病で、とてもスロを打てるような状況ではなかった。前日に、パチ屋で大敗していたかもしれない。

そんな状況にも拘らず、「帰りの電車賃だけ、残しておけばいいや。」という破滅的思考が働き、無謀な「1000円勝負」を挑むことにした。まったく、度し難い性格と言うべきか…。

中に入ると、狭いフロアには、メーシー2-2号機「リバティベル3」ばかりが、30台程設置されていた。当時は、このように一機種だけを設置するスロ屋も多かった。かの有名なセット攻略法「世界全滅打法」は、まだ発覚する前だ。

打っている客は7,8人ほどで、それ程出ている気配はない。麹町という場所柄、どうみても「ボッタ臭」が漂っていたが、そんな事はもはや関係ない。

データランプもない時代、特に狙い台もなく空き台に腰を下ろす。

そして、なけなしの1000円をコインサンドに投入、一か八かの「50枚勝負」が始まった。

「一枚のコインも無駄にするものか…」と、いつも以上に目押しに熱が入る。

毎プレイ、チェリーを狙うのは勿論、左リールに7が出た時は、中リールにも7を狙い、7テンパイのリーチ目も見逃さない。リンゴ、オレンジ、ピエロの取りこぼしも厳禁だ。

普段は湯水のように金を投入するパチスロでも、1000円ポッキリの一発勝負だと妙な緊張感があった。運良くビッグが入れば、7枚交換でも5000円が手に入る。なんだか、自分がパチスロ劇画に出てくる「凄腕のプロ」になったような錯覚を覚えた。

だが、50枚のコインではそうそう粘る事も出来ず、やがて残りのコインも僅かになってしまった。やはり、1000円ばかり打ったところで、店にお布施を献上するのみなのか…。

と、諦めかけたその時、まさかの「リーチ目」が出現する。

左下段に7が停止し、中リールに7を狙うと、「ブタッ」という独特のテンパイ音と共に、右上がりの形で7が二つ並んだ。これは、リバティベル3の「鉄板リーチ目」である。

見ると、クレジットにも下皿にも、コインは一枚も残っていない。まさに、最後の最後でボーナスを引いた格好だ。我ながら、当日のヒキの強さに驚く。劇画の見せ場みたいな展開が、実際に起こってしまった。

(画像はセンチュリー21を使用)

 

ただ、右リール回転中の鉄板目でも、「ビッグボーナス」と決まった訳ではない。リバティベル3の場合、最後の右リールを止めるまで、ビッグかレギュラーかは判らないのだ。7ならビッグ、ピエロならバケだ。この辺りは、現在のジャグラーなどにも通じるものがある。

当時は、目押しに絶対の自信があり、ボーナスを一発で揃える事など簡単だった。

だが、あまりに劇的なリーチ目の出現で、「これは、絶対にビッグボーナスだ!」という根拠のない確信を抱いたのがマズかった…。

私は、右リールのテンパイラインに赤7を「ビタ押し」してしまった。すると、無情にも、赤7はズルッと下に逃げてしまった。

そう、私の引いたのは、レギュラーボーナスだったのだ。

早めのタイミングで7を狙えば、7の下のピエロが止まりバケが揃っていた。それを、わざわざ7をビタで押した為に、「目押しミス」の格好となってしまった。

目の前には、100%のリーチ目が出たリバティベル3。しかし、手元には一枚のコインもない…。

困った私は、多少恥ずかしかったが、他の客に「すみませんが、コインを貸して貰えませんか?」と、声を掛けて回った。

しかし、私にコインを恵んでくれる親切な客は、一人として現れなかった。

都会のど真ん中のスロ屋で、世間の厳しさというか世知辛さを、存分に思い知らされた。情の厚い常連さんでもいたら、話は違ったかもしれないが…。

リーチ目を残して店を後にするなど、私には出来なかった。たかだか、バケ90枚のコインであっても、スロ好きの自分にとって、「ボーナスを放置して帰る」行為はあり得ない。

そこで、私は最終手段として、床に落ちているコインを拾う行動に出た。客も少なく落ちているコインを探すのは困難だった。しかし、丹念に店内を徘徊し、客が落としたばかりのコインを強引にもぎ取る「荒技」も駆使して、何とか3枚のコインを拾い集める事に成功する。

そして、ようやく念願のボーナス(レギュラー)を揃えた訳だが、あの時ほど、ボーナスを揃える事の有難みを味わったことはない。ボーナス終了後、ベル3の持ち味である「11ゲーム連チャン」に期待を込めるが、残念ながら単発。そのままレギュラーのコインも飲まれ、「1000円勝負」はあっけなく終了した。


 

今にしてみれば、「最後に残ったコインでリーチ目が出て、落ちていたコインでレギュラーを揃えた」という、僅か一行で済む他愛のない話である。

しかし、自分にとっては、こんな些細な出来事でも、壮大なドラマのワンシーンの如き強いインパクトを残した。当時のパチ屋・スロ屋での小さな記憶が、いかに心に深く突き刺さっているかを、改めて感じさせられる。