学名は:Malus sieboldii
Malus:リンゴ属。
※ギリシャ語のmalon(リンゴ)から出た名。
sieboldii:<Sieboldianus=日本植物の研究者シーボルトの
漢字で書くと:小梨(別名:酢実)
※酸味のある実と云う意味から『ズミ』、樹皮を黄色の染料に使用したことから、
『染み(しみ)』が転化してついたと云われています。
なので本当は『ズミ』として表記した方がいいのかもしれませんが、上高地で咲く花を
紹介していることもあり、『コナシ』の名前を優先したいと思いました。
また名前の由来として、赤い実(黄色く熟す実もあります)が生ることから『コリンゴ』や
『コナシ』とついたとも云われています。
小梨平に現在『コナシ』はほとんどありませんが、明治時代に上高地でリンゴを栽培しようと
した時期があり、接木する台木として植えられたことから『小梨平』と名付けられたようです。
樹皮は煮出して、名前の由来となった黄色の染料となり、ミョウバンなどを加えると
黄色の絵具を作ることも出来るそうです。
上高地で咲く時期:6月上旬~中旬(年によってかなり変わります)
(トップの写真の撮影日:2007.6.11)
蕾(撮影日:2007.5.31)
※このくらいの蕾では、まだなかなか咲きません。 この場所は河童橋からも近く
いつも咲き具合を見ている枝です。
蕾(撮影日:2007.6.4)
※これはバスターミナルからすぐ梓川に出たところにある木の蕾です。
ここは日あたりが良くて、いつも早く咲き始めます。 朝、陽射しを浴びてしばらくすると
たくさんの蕾が一斉に咲き出す瞬間は、とても素敵な時間です。
私はその時が何より大好きで、そのために毎日猿蟹合戦のカニのように、まだかまだかと
見に行くようになります。 このくらいの膨らみでもまだ咲かないのです…。
蕾(撮影日:2007.6.6)
※この枝も、前の写真と同じ場所です。 つまり2日後の膨らみ具合と云うわけですが、
この状態で、もうすぐなんです。 この蕾はこれから2日くらいで、開花しました。
蕾(撮影日:2007.6.9)
※上高地で咲くコナシの蕾は、前の2枚の写真のように薄いピンク色のものが多いのですが、
温泉ホテルの売店前のコナシは、蕾が真っ赤です。 これは開花直前になっているので、
少し薄くなっているのですが、固い頃は真紅に近い赤です。
最初は同じコナシとは思えませんでした。
でも、開いていくに従って薄くなり、咲いてしまうと他の花と同じ白い花なのです。
「あれ? 確か赤い蕾してたよね?」って大阪人的なツッコミを花にしてしまう私です。
花(撮影日:2007.6.11)
※河童橋から右岸を下流に歩いて行くと、右側にウェストン園地に続く木道があります。
そこを右に行かないで、左に行くとプレハブの建物があるのですが、そこから梓川の河原に
出られるところがあります。 その河原にかなり大きなコナシの木があります。
たくさんの蕾をつけて重そうに咲くのですが、低いところにも枝があるので、満開に咲いた
花を間近で見ることが出来ます。 甘い匂いに幸せぇ~な気持ちになります。
実(撮影日:2006.9.25)
※一番最初に紹介した蕾の写真の枝です。 もう少し赤くなる頃には、猿たちが先を争って
食べに来ます。 五千尺ホテル前の木に赤い実がたくさん生った時、猿が5~6匹
鈴なりのようになって、夢中で食べているのを見たことがあります。
下で人間がカメラを向けても気にすることなく無我夢中の猿を見て、これから冬に向けて、
栄養を蓄えておかなければいけない野生の厳しさだなぁと妙に感動しました。
下手をすると生死に関わってくるのですから、必死ですよね。
実(撮影日:2007.9.20)
※明神館の前には2本のコナシの木があります。 とても大きく老齢の樹ですので、
毎年は咲きません。 とてもうまい具合に交互にどちらかの木が花をつけます。
2007年は明神館に向かって左の木に花が咲き実が生ったので、2008年は
右の木の番です。
誰に云われたわけではないのに、花を咲かせるのは2年に1回と決めているなんて
驚きですよね。 そのうち3年に1回しか咲かなくなる時が来るのでしょうか…。
いつかそういう年に出会うなら、それも愛しい驚きとして捉えたいと思います。