週刊 最乗寺だより

小田原のほうではなく、横浜市都筑区にある浄土真宗本願寺派のお寺です。

勝田山 最乗寺
045-941-3541

聖☆おにいさん

2011-10-23 00:01:07 | ひとりごと

昨日、本屋の中をダーっと通り過ぎるつもりで歩いていたら、平積みになっていたマンガに目が止まり、ついつい購入してしまいました。

それがコチラ。
            

『聖☆おにいさん』 7巻です。

作者は中村光さん、タイトルは「セイント・おにいさん」と読みます。

怪しげな二人組がご飯を食べている表紙だけでは、内容はさっぱり分からないと思いますので、少しばかり説明を。

このマンガは、ブッダとイエスが、世紀末を無事に乗り切ったご褒美に下界でバカンスを満喫しようと、日本の東京立川の安アパート(風呂なし)の一室で、「聖」(せい)という名字で一緒に暮らすという設定で描かれる日常コメディです。 

というわけで、画像の左の髪の長い方がキリスト教のイエス・キリストで、右のおだんご頭の方が仏教のお釈迦さまになります。

それにしても、ブッダとイエスが日本の下町で同居・・・、ありえませんよね(笑)
けれど、そのありえない設定の中で、随処に仏教やキリスト教の宗教ネタが挟み込まれていて、その元ネタを知らなくても面白いのですが、知っていれば更に面白いということで、仏教界では僧侶や寺族や研究者の読者が多数いるマンガです。

例えばですが、表紙のブッダが着ているTシャツには「ニルヴァーナ」と書いてあります。
「ニルヴァーナ」とは「涅槃」のこと
分からない読者は、自分で調べたりするらしいので、ある種の玄関口となっているのかもしれませんね。 (私も分からないときは調べます)

ちなみにこのマンガ、2009年の手塚治虫文化賞短編賞を受賞しています。
そしてさらに、イギリスの大英博物館に日本文化の一つとして展示されています。

マンガといえど、侮れません。
初期仏教や聖書について、詳しい方はもちろん、興味がおありの方には、一読の価値があると思いますので、よろしければご覧になって笑ってくださいませ。


希望の緑

2011-10-22 04:09:54 | ひとりごと

最近の龍くんは、次から次へと風邪菌をもらってきて、なかなかお外で遊べません。
そんな龍くんのマイブームは、お絵かきを自分でせずに、要望したものを相手に描かせるというもの。

で、今日描かされたのはコチラ ↓
    
       

       

龍くんの大好きな国旗です。
ちなみに、一段目は左から日本・デンマーク・スペイン・クロアチア。
二段目はイギリス・ロシア・ウクライナ・スーダン・エルサルバドルです。

他にもグァテマラ・アメリカ・オーストラリアなどを描きましたが、正直しんどい(泣)
できたら、もっと簡単な国旗を指定してくれたらいいなぁと思います。
例えば、こんな国旗とか・・・↓

    

リビア(大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国)です。
緑一色で、基準がおかしいとは思いますが、描く側としてはとっても簡単な国旗です。

そのリビアの国旗も、もともとはエジプトと同じ国旗でした。
しかし、時のエジプト大統領のイスラエル訪問が、リビアのカダフィ大佐の逆鱗に触れ、エジプトと同じ国旗であることさえも許せず、一夜にして自国の国旗を変えてしまったといいます。

それほどの権力を有していたカダフィ大佐の「死亡」というニュースが新しいリビア。

42年に及ぶ独裁政治に幕が降りたからといって、「めでたしめでたし」といかないことは、他の国の例を見ても明らかなことでしょう。

元ではありますが、「核保有国」「テロ支援国家」といった対外的なイメージとは裏腹に、リビアには6歳から15歳まで無償の義務教育期間があり、さらに義務教育に限らず国公立の学校の学費もすべて無償というサービスが備わっていました。
そして、15歳以上の人口の識字率は82.6%という高水準な教育制度が垣間見えたことは、リビアの内乱のニュースしか知らなかった私にとって、意外な一面でありました。

しかし、その制度を施行した国家(政権)が崩壊した今、彼の国の混乱は大人のみならず子供の未来にも関わる事態でもあるということを痛感しました。

政権崩壊の良し悪しは、遠くに住む私が語るべきことではありません。
けれど、もし教育の一側面である「他者を知る」「異なる価値観を持つ人間を知る」という機会が失われてしまうのならば、それは悲しく思います。

リビアの国旗を示す『緑』は、イスラム教にとって神聖な色だそうです。
「豊かな緑」「農業」「大地と自然の恵み」、そして「希望」。
砂漠の地で広がったイスラム教。
その希望の色である緑一色の国旗は、この世界から消えることになるでしょう。
それでも、その希望を抱いている人々が消えるわけではありません。

今はただ、子供の希望が打ち砕かれ、鉛筆の代わりに銃を手にする事態にならないことを、子供のために色鉛筆を持った手で願うばかりです。


東京タワーと、ときどきオカン

2011-10-20 00:25:30 | ひとりごと

          


曇天にそびえ立つ東京タワーは、なかなかの迫力がありますね。

昨日は所用で近くまで来たので、ちょっと足を伸ばして東京タワーの足元まで行ってきました。

特に高いところが好きというわけではないからでしょうか。
いつも足元から見上げるだけで、満足して帰ってしまいます。

思い返せば、展望台へ登ったのは、今から20年以上も前のこと。
両親に連れられて行ったあの時も、やっぱり今日のような曇り空でした。

ガラスの外に目を向けても、見えるのはガスだけで、東京の高層ビル群も街並みも、何一つ見下ろすことができなかったちょっと切ない思い出です。
その思い出が書き換えられることのないままに、東京タワーがスカイツリーに見下ろされる側になってしまいました。

スカイツリーもきっと見上げるだけで、私は満足できるのですが・・・。
私の満足より、龍くんの好奇心を養うことを優先しなくてはいけませんね。

こうした発想をするとき、私も母親になったんだなと思ったりします。
そして同時に、私の父や母も、私を優先しながら、さまざまな感性が育てられる機会を与えてくれていたんだぁと気づかされます。

東京タワーを一緒に見上げていた母親と、いつかもう一度登れたらいいと、素直に言えない感謝と共に思いました。


しっかりしっかり

2011-10-19 01:04:16 | 仏教小話

漢字で「確り」と書く「しっかり」。
この「しっかり」の語源は、金沢の加賀友禅にあるというお話を聞きました。

着物の世界には「悉皆屋(しっかい)さん」という方がいます。

もともとは、江戸時代に大阪で染め物や洗い張りなどの注文を取り、京都の専門店に取り次ぐことを生業とした人のことを言いました。

現在では、白い反物が着物へと仕上がるまでの工程に関わる、あらゆる職人さんたちの間を取り持つ重要な役割を担う人を「悉皆屋さん」というのだそうです。

そして金沢では、この「悉皆」が「しっかり」の語源であると言われているとのことでした。

さて、「悉皆」は仏教の経典にもよく出てくる言葉で、「みなことごとく」と読みます。
意味としては、「一人残らず」といったところでしょうか。

よく知られている語としては、「山川草木悉皆成仏(さんせんそうぼくしっかいじょうぶつ)」という言葉が、天台宗の最澄のものとして教科書にも載っています。

しかしながら、この言葉の典拠は存在しないとのこと。

この言葉と似た言葉に「草木国土悉皆成仏」というものがあり、これは平安時代の安然という天台宗の僧侶が書いた著作の中に確認できるそうです。
教科書は絶対ではないので要注意ですね。

何はともあれ、これらの言葉には『涅槃経』にある「一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶしょう)」という言葉が思想の源流にあります。

「すべての生きとし生けるものには仏となる本性がある」

その「すべて」の中に、石などの無生物や植物などが含まれなかったのがインドの仏教。
それらもまた、私と等しく仏のいのちを生きるものとして考えられたのが日本の仏教。

何一つ軽んじていいものはないということ・・・。

だから今日も、皆悉く、しっかり生きましょう。


熊野のカラス

2011-10-17 04:02:58 | 仏教小話

昨日のカラスのお話をもう少し。

落語『三枚起請』は、遊郭の花魁が「ずっと心変わりをしない」と書いた起請文を3人の男に渡したことに始まる騒動の模様を描いたもの。

起請文とは、約束事をするときに、それを決して破らないということを神仏に誓う文書のこと。
鎌倉時代後期から、社寺にある「牛王法印」(ごおうほういん)という護符の裏に書くのが通例となりました。

そして、この落語の起請文には、熊野三山の牛王法印「熊野牛王符」が用いられ、これに書いた約束事を破ると、熊野の神使であるカラスが一羽(三羽の説もあり)死に、書いた本人も血を吐いて地獄に落ちると信じられていました。

さて、ここで出てくる熊野の神鳥であるカラス。
このカラスは3本足のカラスです。

皆さんも、一度は目にしたことありますよね?

実はこのカラス、サッカー日本代表のユニフォームにあるシンボルマークに描かれています。
もともと熊野の地が、日本に初めてサッカーを紹介した中村覚之助氏(1878~1906)の出身地であることから、協会設立10周年の昭和6年にシンボルマークとして採用されたそうです。

そして、このカラスの名は「八咫烏(ヤタガラス)」といいます。
日本神話に登場し、神武東征の際に熊野から大和への道案内をしたとされる鳥です。
太陽の化身だったという説があることも含めれば、朝が来ないで欲しいと願った「三千世界の烏を殺し」という都都逸も、この八咫烏の存在が深く関係していることが分かりますね。

で、この八咫烏は家紋などにも用いられています。
その一つが、戦国時代に紀伊国の雑賀衆(さいかしゅう)をおさめた鈴木氏の家紋。

鈴木氏で有名なのが鈴木孫一。
彼は軍事力が極めて高い、鉄砲技術に優れた雑賀衆を率いて、浄土真宗と関わりの深い石山合戦で、第11代門主・顕如上人率いる石山本願寺について織田信長と戦い、数度勝利をおさめました。


いやぁ、ようやくカラスが自分のフィールドまで繋がりました(笑)
長かった・・・、お読みくださった方、お付き合いありがとうございました。