佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

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画像診断 特集 免疫能低下患者の肺病変

2009年04月09日 22時05分06秒 | 独断!放射線科医の推薦図書
 久しぶりの書籍紹介です。
 タイトル通り、免疫能低下患者の肺病変が特集されています。

画像診断 Vol.29No.3 (29)

秀潤社

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 まさに、序説で田中伸幸先生がおっしゃっているとおり。
 免疫能低下患者についてオーダーされる胸部画像は、重要な鑑別疾患が多数あるにも係わらず、非特異的な画像所見を呈することが多く、読影するのが困難になりがちです。
 一口に、「免疫抑制状態」と言っても、状況は様々にあります。画像が撮像された時の患者の状態を把握し、それぞれの状態で起こりうる感染症を含む病態を知り、病理像を想像することで、より真実に迫った画像診断が出来ると思います(どの分野でも同じですが)。
 ただし、この複雑な臨床像を理解するのは一般の読影医にとっては困難だろうし、画像診断を専門としない内科医にとっては(逆に)画像から病態を想像するのは困難だろうと思います。

 その点で、今回の特集は、放射線科医だけでなく幅広い分野のDr.にとって非常に勉強になる本だと思います。

 こちらのアマゾンのリンクでは内容が見られないようなので、特集のコンテンツを簡単にまとめます。

・胸部単純X線写真とCTの役割 高橋雅士先生
:免疫不全とは、どのような状態があるか。それぞれの状態における感染症と、画像診断の果たす「役割」について述べられています。HRCTの果たす役割がこれほど重要視されていたとは!

・細菌性肺炎 芦澤和人先生
:典型的な細菌性肺炎と、非典型的な細菌性肺炎が解説されています。好中球減少時には、肺局所における組織反応が乏しく、広範なすりガラス影を呈する場合がある!

・肺真菌感染症 村山貞之先生
:アスペルギルス、カンジダ、クリプトコッカス症を中心に。これらの病原体は様々な病型を呈するわけですが、典型的な画像と共に、病態からせまる読影の手がかりが記載されています。

・ニューモシスティス肺炎とウイルス肺炎 荒川浩明先生
:代表的な日和見感染で、よく鑑別に挙げます。宿主の免疫状態によって画像所見が変化するのもよく知られています。今回の記事で、初めて網羅的に勉強することが出来ました。

・結核症 狩野麻実先生
:「種々の免疫低下状態における結核の画像所見」という項目がもうけられています。糖尿病、慢性腎不全/透析、SLE、TNF阻害薬(!)、HIV。結核菌に対する防御免疫メカニズムを知ることで、それぞれの病態でとりうる画像所見が推測できるかも!?

・薬剤性肺障害 酒井文和先生
:除外診断が重要な疾患群である。画像所見は多彩であり、画像に基づいた分類も、病理病態的な背景まで担保するものではない…と記述されています。しかし、提示されている典型的な画像から、所見を丁寧に読むトレーニングになりました!

・原疾患の肺病変 岡田文人先生
:悪性リンパ腫、白血病などの治療中に胸部異常陰影が出現した場合に、どのように解釈するか。原疾患の画像所見に精通している必要があります。多くの典型画像がまとめられています。

・移植後合併症 田中伸幸先生
:「移植後の肺合併症は多様であるが、移植からの期間と、その時期に好発する疾患を考慮することが重要である。逆に言えば、移植後の時期で合併症がある程度、類推できる」まさに、その通りに解説されています。

 少し長くなってしまいました。上手く伝えられず、抜粋している部分が多くありますが、このような紹介の仕方は、ちょっとまずいでしょうか?
 ご助言いただけたら幸いです。

 しかし、とても勉強になる特集でした!日常診療でもヘビーローテ本棚入り間違い無しです!