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佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

放射線科医の日常や、診療紹介、推薦図書などをご紹介します。問い合わせ先等、詳しくはカテゴリー「はじめに」をご覧下さい。

IMRTについて その5

2008年01月28日 06時57分21秒 | 診療紹介Q&A
 連載でお届けした、hirako先生の「IMRTについて」最終回です。機器の問題を含め、放射線治療の現状の一端をお伝えします。
 

 最後に、IMRT専用の放射線治療装置があれば別ですが、従来法と兼用で装置を使用した場合、IMRTが長い時間装置を占拠してしまい、従来法がさばけなくなるといった弊害もあります。(いわゆるスループットの問題)市中病院でも放射線治療が普通に行われている都会ならともかく、限られた病院でしか行われていないような地方では、高精度の放射線治療を行うことが、骨転移などすぐにでも放射線治療が必要な患者さんの治療機会を奪うことにもつながりかねないという現実があります。

当院でも治療機器の更新に伴い、技術的にはIMRTが可能になります。しかしスタッフの数や従来法の症例数から考えると、なかなか容易に足を踏み出すわけにはいきません。

 by hirako

 放射線治療についてのご質問や、「こんな記事がみてみたい」というご要望がありましたら、是非コメントをください。また、放射線治療に興味をもった学生さん・研修医がいましたら、一度見学に来てください。toku先生、hirako先生、pachinker先生などが待っています
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佐賀大学医学部放射線科 E-mail sagarad2007@mail.goo.ne.jp
所在地 佐賀県佐賀市鍋島5丁目1番1号  医局直通TEL 0952-34-2309  医局直通FAX 0952-34-2016

 これまでの「IMRTについて」の記事はこちらです。
IMRTについて その1
IMRTについて その2
IMRTについて その3
IMRTについて その4

IMRTについて その4

2008年01月27日 08時48分20秒 | 診療紹介Q&A
 hirako先生のIMRT記事、第4弾です。
 脚光をあびるIMRTの影の部分を、放射線物理学的にそして実際の照射の観点から解説してもらいました。

 次に線量率の問題があります。仮に従来法で300cGy/分の線量率で治療を行っていると仮定します。IMRTでは、照射内にばらばらな線量を当てるため、照射中にブロックが動きながら割合を調節しています。このため、平均すると30cGy/分程度の線量率ということになります。300cGy/分で1分間の治療と、30cGy/分で10 分間の治療、放射線生物学の知識がある方ならこの効果に差があることは容易に理解可能な話です。知識のない方でも、100kgの荷物を1m移動させるのと、10kgの荷物を10m移動させるのにどちらが体力を消耗するかということを考えていただければ想像可能かもしれません。つまり、正常組織への負担も軽い代わりに、病気への効果も同じ線量であれば劣る可能性をはらんでいるということです。

 また従来法では、治療中の臓器の動きはあまり考慮する必要がありませんでした。照射野内は均一な放射線があたるため、少々移動したとしても、あたる放射線の量に変わりがないからです。しかしIMRTでは、照射野内にばらばらな線量が当たるため、数mmの移動で、全く異なった放射線の量が当たることになります。前立腺は膀胱内の蓄尿の程度、直腸内のガス・便塊の動きで容易に移動します。また1分間程度であれば身体を動かさないことは可能であっても、10分間身体を動かさないことは、とても大変なことだと考えます。

 次回はいよいよ最終回です。照射機器の問題をふくむ、現場での問題点があがってきます。

 IMRTについてその1 IMRTの原理はこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/d3912274b82d637eb72bd76e94fe1792

 IMRTについてその2 前立腺がん・頭頸部がんへのIMRTはこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/c5c2b96df7e59a4a4bbd3f168be03b50 
 
IMRTについてその3 IMRTの問題点、計画段階での問題点はこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/18633dc3e6f215ca0b18753d4f94b3bd

IMRTについて その3

2008年01月26日 09時01分11秒 | 診療紹介Q&A
 hirako先生のIMRTについての記事第3弾です。

 前回まではIMRTの光の部分を書いてきました。しかし、なにごとにも光あれば影ありです。今回から、数回にわたって影の部分を書いていきます。
 まずは、従来法であれば、照射野内に均一な線量が当たるので、照射する方向とブロックの形だけ考慮すれば、放射線治療に携わる人間であれば、頭のなかでおおよその線量分布図を描くことができます。しかし、IMRTになると、照射野内にばらばらな線量が当たることになるため、その線量分布図を人の頭で想像することは不可能です。コンピューター任せ、つまりブラックボックス化しています。コンピューターがはじき出してきた方法は、本当に正しいかどうかはわからないため、検証が必要となります。
 つまり、患者さんに実際に行う前に、やろうとすることリハーサルで行う必要があります。このデータ取りと解析に非常に長い時間がかかります。(慣れた施設でだいたい10時間程度)朝から夕方まで患者さんを治療して、それから一日平均2時間の残業を一週間行ってやっと本番にこぎつけることができます。非常に現場に負担を強いる治療法であることは間違いありません。

 次回は線量率を含めたIMRTの問題についてです。

 IMRTについてその1 IMRTの原理はこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/d3912274b82d637eb72bd76e94fe1792

 IMRTについてその2 前立腺がん・頭頸部がんへのIMRTはこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/c5c2b96df7e59a4a4bbd3f168be03b50 
 

IMRTについて その2

2008年01月25日 08時33分07秒 | 診療紹介Q&A
 hirako先生のIMRTについての記事第2弾です。
 今回は、IMRTの実際、特に前立腺癌と頭頸部癌に対する治療についてです。

 IMRTという方法は、現在のところ、主に前立腺癌や頭頸部癌を中心として行われています。

 前立腺のすぐ背側には、直腸という放射線に比較的弱い構造があり、前立腺癌を根治させるだけの放射線の量を当てようとすると、どうしてもある一定の確率で直腸粘膜に障害を起こすため、直腸出血のコントロールに難渋することがあります。IMRTを用いれば、直腸への線量を低下させることができ、副作用の頻度を下げることができます。また、従来法では、直腸への副作用を懸念して、前立腺そのものへの線量もある程度加減していましたが(70Gy程度)、IMRTを用いれば、直腸への副作用の可能性が低下した分、前立腺への線量を増加することができます。(80Gy程度)

 頭頸部癌の場合は、咽頭部や頸部リンパ節領域の近傍に耳下腺、顎下腺といった唾液腺があり、頭頸部癌を根治させるだけの放射線の量を当てると、唾液腺障害による唾液の低下は必発です。唾液が低下すると、口の渇きを自覚するだけでなく、味覚が変わる、嚥下が困難になる、虫歯になりやすいなどの色々な症状がでてきます。IMRTを用いれば、唾液腺への線量を低下することができて、副作用の頻度が下げることができます。


 次回からは、IMRTのデメリットや難しさについてもふれていきます。
 IMRT関連記事 その1はこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/d3912274b82d637eb72bd76e94fe1792

IMRTについて その1

2008年01月24日 07時51分06秒 | 診療紹介Q&A
  当ブログにIMRTについて検索して来られる方が多かったので、hirako先生に依頼して記事を書いてもらいました。数日にわけて連載させていただきます。

 IMRTとは、Intensity Modulated Radiation Therapy(強度変調放射線治療)の略語です。読んで字のごとく、放射線治療の一つのモダリティです。最近の前立腺癌に対する放射線治療の増加に伴い、一般の患者さんも、よくこの言葉を口にするようになりました。ただ、まだまだ言葉先行であり、この治療法に対する正しい認識をもっている方は少ないようです。

 そもそも、IMRTと従来の放射線治療(以下従来法と省略)との違いはどこにあるのでしょうか?

 方眼紙に10cm×10cmの正方形を書いてみましょう。この正方形のなかには、1cm×1cmの正方形が100個含まれています。従来法は、一回の治療では、この10cm角の正方形の内部に均一な放射線を当てることしかできませんでした。しかしIMRTでは、一回の治療で、この10cm角の正方形の中に含まれる1cm角の正方形ごとに、違った量の放射線を当てることができます。(あくまでもこのサイズは例え話の上でのサイズです)

 これを応用することで、病気の形が円形でなくいびつな形の場合にも、その形に合わせて均一な放射線を当てることが可能になりました。また、病気のすぐそばに放射線をあまり当てたくない臓器があった場合に、その部分をある程度避けてかつ病気の部分に十分な量な放射線を当てることが可能になりました。

 このIMRTという方法は、現在のところ、主に前立腺癌や頭頸部癌を中心として行われています。

 次回は主に前立腺癌と頭頚部癌への照射についての記事です。

EOB・プリモビスト(R)説明会

2008年01月19日 08時53分52秒 | 診療紹介Q&A
 先日の医局会にてバイエル薬品よりプリモビストの説明会がありました。新たに販売が決定したMRI用の造影剤で、今までにない特性をもっているので簡単にご紹介します。

1.一般名:ガドキセト酸ナトリウム(略号:Gd-EOB-DTPA)
 ガドリニウム系造影剤なので、T1強調画像で陽性造影剤として使用可能です。

2.EOB:エトキシベンジル基
 脂溶性側鎖であるEOBを構造中に含む。このため、血管内から細胞間隙に分布した後に肝細胞へ取り込まれ、胆汁中へ排泄される。つまり、

3.肝腫瘍の血流評価に加え、肝細胞機能の評価が一度に行える

 ということです。今までは、ダイナミックスタディによる血流評価とSPIO製剤によるKupffer細胞機能評価を同時には行えませんでしたが、EOB・プリモビストにより、新たな評価が行えるようなる可能性がでてきました。
 当院でも、近日導入予定です。適応などについて、ご質問等があれば、放射線科までどうぞ。
 添付文書のPDFはこちら→
http://www.bayer.co.jp/hv/products/tenpu/eob.pdf
 
 参考文献はこちらです

・Bluemke et al. Efficacy and Safety of MR Imagin with Liver-specific Contrast Agent: U.S. Multicenter Phase Ⅲ Study. Radiology 2005; 237:89-98
・C.J.Zech et al. MR Imaging in Patients with Suspected Liver Metastases: Value of Liver-specific Contrast Agent Gd-EOB-DTPA. Magn Reson Med Sci 2007; 6:43-52
・中島寛人ほか.肝細胞癌におけるGd-EOB-DTPAの診断能,SPIOおよびCTAP/CTHAとの診断能の比較.肝胆膵2004; 48: 313-318

乳腺疾患の診断について~その1~

2008年01月11日 16時25分01秒 | 診療紹介Q&A

 最近、日本の乳癌有病率が増加傾向にあり、TVその他のマスメディアでも取り上げられる頻度がとても高くなりました。乳腺疾患の診断について少し、このブログ上でもご紹介したいと思います。
 佐賀大学附属病院には検診施設がありませんので、しこりや痛みなどの自覚症状がある方、他施設や自治体の検診で異常を指摘された方、の2パターンの理由で精密検査のため来院されます。
 診断の流れとしては、外来主治医による問診と視触診のあと、マンモグラフィー超音波検査を受けていただくことになり、更に精査が必要な場合には、乳腺外科医師による生検乳房MRI検査を受けるという流れになります。当院では、マンモグラフィー超音波検査MRIなどの画像検査は、放射線科で行っています。今日はマンモグラフィーについてお書きします。

                                マンモグラフィーとは?~ 

 ・乳房を圧迫して広げ、撮像する軟線撮影(X線)・・・人によってはちょっと痛い 
 ・短時間で乳房全体を撮影でき、スクリーニングに適しています・・・検診で使わ れるのもこのためです 
 ・撮像技術、フィルムの条件、読影環境などの影響を受けやすく、精度管理が重要・・・当院でもマンモグラフィー精度管理中央委員会の基準に基づき、条件を設定し、マンモグラフィー読影認定医である放射線科医が読影を担当 
 ・乳腺の状態でも診断能は変わる・・・乳腺組織が発達した方の乳房では乳腺と病変の差があまり出なくて、病変は見つけにくくなります
 ・石灰化はよくわかるが、腫瘤はしばしば見えづらい・・・乳癌はしこりがはっきりわかるものと、腫瘍に伴って出来た石灰化しかわからないものがあります 
 ・診断はカテゴリーで5段階に分ける   
  1:異常なし 
  2:良性病変 
  3:たぶん良性だけど確認が必要   
  4:悪性の可能性がある 
  5:たぶん間違いなく乳癌 
→基本的にはカテゴリー3以上が精密検査対象ですが、症状がある場合やしこりを触れる場合はこの限りではありません。

 なお、非常に乳癌の話題が増えたことで、過剰に心配される方や見つけたしこりをすぐに癌と思って、落ち込んでしまう方が多いのがとても気になります。しこりを見つけて病院に来る人のうち、大部分は良性の病変ですので、調べて確認するまで癌と決めつける必要はありません。怖いと思って病院に行かない方が、心にも身体にも良くないと思います。普段から検診を受け、自分で自己検診をして、異常があったときには、ちゃんと病院を受診するのが大切だと思います。


CTとは?

2007年12月13日 21時43分35秒 | 診療紹介Q&A
CT: Computed Tomography

 コンピューター断層撮影(Computed Tomography )の略です。X線を用いて体内の断層像(いわゆる輪切りの像)を撮影します。
 CT 装置の見た目は検査台とその先に検査台が通過する大きなリング状の部分からなります。CT 装置のリング状の部分には X 線発生装置と X 線検出器が対になって内蔵されています。この X 線発生装置から X 線をビーム状・扇型に出しながら、体の回りを回転させて撮影をします。X 線発生装置の反対側には X 線検出器がついており、人体を通り抜けた各ビームの X 線の量をコンピューターで計算させて体の断面像を作ります。
 本格的な医療用 CT 装置はイギリスの EMI 社の技術者 Hounsfield により、1971 年に開発されました。放射線科の発展の上では X 線の発見以来の画期的な発明でした。この功績により、Hounsfield は 1979 年度のノーベル医学生理学賞を受賞しています。
 近年は検出器が複数配列された複数検出器列CT(multidetector-row CT:MDCT)が主流となっています。これにより一度の撮影で大量のデータを得ることができるようになり3D画像など再処理画像の作成が容易になりました。

 尚、当院では 4列のMDCTが2台稼働しています(GE横河メディカル社製 LightSpeed QX/I、東芝社性 Aquilion)。

核医学検査の一部停止のお知らせ

2007年12月11日 19時59分27秒 | 診療紹介Q&A
 佐賀大学放射線部核医学検査の一部停止のお知らせです。

 骨シンチ、心筋血流シンチ(MIBI)、肺血流シンチなどのテクネチウム製剤を使用する検査について、カナダ原子力公社原子炉のトラブルのためテクネチウム製剤の原材料であるMo-99の入荷が停止しており、検査薬の供給が一部できなくなる見込みです。下記の期間はRI検査薬の入手が難しくなるために一部の検査ができません。つきましては、下記の内容でRI検査を制限させていただきますので、貴所属職員へ周知方よろしくお願い致します。

                     記

1. 期 間
  平成19年12月17日(月)から平成20年 1月中旬(予定)まで

2. 影響を受ける検査
・骨シンチ
・心筋血流シンチ(MIBI、Tetrofosmin)   
・脳血流シンチ(ECD、HMPAO)
・肺血流シンチ
・肝受容体シンチ
・レノグラム、腎シンチ
・その他のテクネチウム製剤を使用する検査
   (詳細については当院放射線科RI診療棟にお問合せをお願いします)

 原料入荷トラブルによるテクネチウム製品供給への影響について(お知らせ)の第一報がでておりますので、
 日本アイソトープ協会ホームページ http://www.jrias.or.jp/
 RIOS-NETホームページhttp://www.rios.ne.jp/
 もご参照下さい。