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佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

放射線科医の日常や、診療紹介、推薦図書などをご紹介します。問い合わせ先等、詳しくはカテゴリー「はじめに」をご覧下さい。

2007JASTRO報告記 医学生/研修医のためのセミナー 放射線治療の光と影

2008年01月04日 21時32分29秒 | ホームページ 放射線治療について
hirako先生の、2007年JASTRO報告記より一部抜粋です。

 医学生/研修医のためのセミナーは、放射線治療の光と影といった内容でした。

影とは
  ①放射線治療について一般人どころか、医療関係者であっても、知識がなかったり誤解があったりして、現在の癌医療においても十分に活用されていない、また放射線治療を専門とする医療者が少ないこと

  ②新しい抗癌剤がもてはやされたり、いわゆる腫瘍内科医が幅をきたすような時代になってきているが、抗癌剤使用による成績向上の上げ幅が非常に少ないこと、またそのわずかな上げ幅に費やされる費用が莫大であること、腫瘍内科医は他科の専門医師に比較して抗癌剤の知識は深いが病態認識に劣るため、実は治療成績に大差ないこと、

  ③技術をもった外科医はすばらしいが、体力/視力等の問題からその実働時間は非常に限られていること、

  ④医療の発達に伴う高齢化社会の結果、3人に1人が癌で亡くなる世の中になった以上は、癌からは避けて通ることができない、そのなかで手術、抗癌剤、放射線のいずれに魅力があるかは、上述の理由から明白であるという内容でした。

 光については、高精度放射線治療のなかでも、呼吸同期照射に標準を絞って、そこに至るための思考のプロセスについての話と、放射線治療の研究については予算がつきやすい現状があり、研究分野として明るい未来が約束されているといった話でした。


 hirako先生の記事を抜粋しながら、限られた医療資源をいかに有用に使うか、そのためには専門家の中だけで話し合うのではなく、さまざまな視点から広く議論をして教育していくことが重要なのだ、と感じました。普段、診断部門にいるので(まだ専門医でないのに)こういった大きな流れのことから疎くなってしまっていました。反省です。
 

JASTRO報告記 12.13 粒子線セッション

2007年12月31日 12時33分37秒 | ホームページ 放射線治療について
 Dr.hirakoの2007JASTRO報告記、抜粋版の年内最後は、粒子線のセッションからです。

 粒子線については、箱物行政の後押しもあって粒子線治療施設の計画が全国に多数あるが、適切な施設数はいかほどなのかという問題について議論されていました。粒子線は、その線量分布の特性や炭素線に限ってはRBEが非常に高いため、脊索腫や悪性黒色腫などの特殊疾患についてはまず問題なく適応になるが、頭頸部癌/肺癌/前立腺癌などの一般的疾患について、費用対効果がどれほどあるのかは疑問である。

  現在はX線であってもIMRTなど高精度な治療を行なうことで、粒子線と近似の線量分布が可能になっており、一般疾患については必ずしも粒子線の必要がないのではという話でした。陽子線は治療費用が1人300万として、最低年間300症例を行なわないと収益があがりません。IMRTは現在のところだいたい100~150万で行なわれており、費用は安い、しかも既存の照射装置で行なうことができます。またIMRTは今の流れでいけば、保険診療になる可能性が高いようです。

 これだけ聞くとIMRTに分がありそうですが、実はIMRTはスループットが低く、患者さんの数をこなすことができない。検証に時間がかかるため、現場への負担は多大なものがあります。

  粒子線治療は、実は日本が一番進んでおり、これを推進することは長期的には、医療界/産業界にとっては益となる可能性が高いともいえます。皆さんはどう思いますか?

 

JASTRO報告記 12.13 食道癌セッション

2007年12月24日 15時35分14秒 | ホームページ 放射線治療について
 hirako先生のJASTRO報告記より、食道癌セッションについて一部抜粋です。

 食道癌では主に国立ガンセンター東での食道癌化学放射線療法の変遷と現状について勉強してきました。2002年までは手術vs放射線化学療法ということで、生存率の点でほぼ同程度の治療成績を挙げることができたが、晩期の有害事象が少なからず認められた。
このため、2003年から放射線の線量を落として多門照射にして、再発例に積極的にサルベージの手術を行なう方針にしたが、従来の治療成績を維持しつつ有害事象を軽減させることに成功したという内容でした。また、多門にすることで生じる肺の低線量域の増加についても検討されており、症状を伴った肺臓炎については従来の頻度と変わりなかったという報告でした。

JASTRO報告記 12.13.ランチョンセミナー Sr-89

2007年12月22日 22時56分01秒 | ホームページ 放射線治療について
hirako先生のJASTRO報告記より一部抜粋です。
 Sr-89(塩化ストロンチウム)製剤については先日説明会がありました。

ランチョンセミナーはSr-89のセッションに参加。
びまん性の骨転移に対する疼痛緩和を目的として、20年以上前から海外にて使用されてきたこの薬剤、ようやく日本でも薬事承認され、商品化される運びとなりました。
びまん性に骨転移があっても疼痛部位が局在しているならば放射線治療の適応ですが、疼痛部位が多数あったり、不定の場合にはやはり照射適応からははずれてきます。Sr-89を投与すれば、造骨性/破壊性骨転移の部位に選択的に集積して、β線が照射されることにより疼痛緩和が得られます。
 奏功率は6割程度で効果発現までにだいたい1~2ヶ月かかるということでした。月単位の予後が見込めない患者さんには使えませんが、痛みのあるなしで全くQOLが変わってきますので、当院でも早く採用されることを望みます。
 ちなみに使用にあたっては取扱い講習会に参加することが必須となります。

 日本化薬株式会社記事
http://www.nipponkayaku.co.jp/news/press/20070910.html
 日経メディカルオンライン関連記事
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/200710/504437.html

2007.12.20 治療カンファ 前立腺癌治療

2007年12月20日 19時25分50秒 | ホームページ 放射線治療について
今日は2週に1回の放射線治療カンファレンスの日でした。
pachinkerが、前日のプライベイト忘年会の二日酔いのためか、いつものきれはありませんでしたが、前立腺癌の放射線治療についての簡単なレクチャーを行なってくれました。

前立腺癌は、手術、ホルモン療法、3DCRT、原体照射、IMRT、組織内照射(一時刺入、永久刺入)、粒子線治療と色々な治療方法が乱立していて、患者さんは勿論のこと、泌尿器科と放射線治療医以外の医療関係者にとっても、非常に混乱している現状があると思います。

手術については、前立腺内に腫瘍が限局しているならば、根治性が高く、非常に有効な治療法と考えますが、勃起機能は失われてしまいますし、膀胱直腸障害が出現することもあります。

ホルモン療法については、非常にお手軽感はありますが、医療費は非常に高くなりますし、HOT FLASH等の副作用も無視できませんし、根治性はなく数年後に必ずホルモン抵抗性になります。

放射線治療についてですが、実は意外に知られていないことですが、前立腺癌は放射線治療の感受性が高くありません。前立腺癌の根治線量に比較して、周囲を取り巻く腸管(小腸)が障害を起こす線量の方が低いという事実があります。そこで、周囲
の腸管への線量は低く保ちつつ、いかに前立腺に線量を集中させるかということで、上述した様々な照射方法があみ出されたということになります。

また、他の悪性腫瘍は臨床病期によって治療方針を決定することが多いですが、前立腺癌は、その他にPSA/Gleason scoreなどを組み合わせてリスク分類で方針を決定しています。低、中、高リスクそれぞれで照射範囲、照射方法、線量が変わってきます。

最近話題の永久刺入(シード)ですが、基本的には低リスクの方が対象になります。しかし、PSA検診が盛んになった昨今でも、なかなか低リスクの方は少なく、中リスクにまで適応範囲を拡げて、外照射+シードで治療している施設が多いようです。また、一時刺入については、行なっている施設が少ないですが、実は前立腺癌の性質から考えると、線量率の点から永久刺入に比し優れているという考えもあります。しかし、今日のカンファレンスでもありましたが、砕石位に近い体位で3日間ほどベッド上安静というのは、非常につらいものがあるのも事実です。

それぞれの治療法についての概説は、また別の機会に。
by hirako

2007.11.29 治療カンファ 乳がん治療

2007年11月29日 23時04分03秒 | ホームページ 放射線治療について
今日の朝のカンファは放射線治療カンファレンス、
内容は乳房温存術後と乳房切除術後の放射線治療についてでした。

乳房温存術後に放射線治療を行うことで、
局所再発の確率を1/3に低下させる、生存率を数%向上させる

乳房切除術後(腋窩リンパ節転移例)に放射線治療を行うことで、
局所再発の確率を1/3に低下させる、生存率を数%向上させる

温存術後の放射線治療は、ガイドラインで必須とされているが、
様々な要因があって3/4の症例にとどまっている。
そのひとつとして、治療期間の長さ(5週間)、医療費の問題がある。
そのため、治療期間を短縮(3週間)する試みがなされている。

こんな感じの内容だったと思います。

治療カンファレンスは画像よりもグラフが中心となるので、
画像カンファレンスに慣れている方々にとっては、
ややとっつきにくい面もあるかと思いますが、
治療に対する皆さんの知識を少しでも深めていただいて、
読影するうえで、その知識を活かしていただければ幸いです。

今週の学生さん達は、反応がよくて、
カンファレンスをした甲斐がありました。

写真はwedge filterです。