そして時の最果てへ・・・

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量子力学の特徴

2010-04-13 23:29:24 | 雑感
まだまだいきます、量子力学のお話。前回の続きです。

1930年代に完成した量子力学の基礎理論は、「古典力学」に次の3つの新要素を加えたものでした。

①プランク定数という最小単位
②状態ベクトル
③作用素

エネルギーが飛び飛びの値を取る、など前期量子力学は、①の要素だけで様々な成果を挙げました。「量子」とはそもそも「飛び飛び」と言う意味です。この考え方を積極的に採用するべきだと主張したのがプランクやアインシュタインたち。

さらに量子力学が理論的に研究され、量子力学に数学的な基礎が完成したのが1930年代初め頃。その量子力学の数学的記述に登場したのが、②と③の要素です。

②の性質からは、物体は複素ヒルベルト空間のベクトルでしかないという結論が導かれます。まぁ難しくて理解できませんので大雑把に説明しますと、(特に量子論的効果が現れ易い電子などの小さな粒子は)物体の「状態」が波のように広がっている、ということです。

え?それでも理解できない?う~ん、ある意味それは妥当なんですよ。

光がある時は波、ある時は粒子として振舞う、という直感で理解できないような現象を、数学の言葉で表現した結果「複素ヒルベルト空間のベクトル」になったわけで、その理解は直感ではなく数学的記述にしか頼る術がないのです。

実はそんな話、中学・高校の数学でも登場しました。覚えてますか?

リンゴがマイナス1個あります。・・・って、そんなモン理解できるか!
いやいや、方程式
x + 1 = 0
の解を-1と定義するんですよ!

2乗して-1になる数!?・・・って、そんなモン理解できるか!
いやいや、方程式
x^2 + 1 = 0
の解(の片一方)を i と定義するんですよ!

こんなふうに人間は、直感的に理解できないものも、数学的記述に頼ることによって、自然の姿を表現する便利な道具として利用してきました。それを量子力学に応用した結果、「量子力学の父」と呼ばれるプランクですら、理解できない難解な数学で記述される世界が広がっていた、というわけです。

(③の性質は、②と一緒にでてきたもので、①と②の間をつなぐもの、ぐらいの理解で十分です。)

さて、実験結果を適切に表現しようとした結果、人間の直感と大きく乖離した自然の姿が立ち現れてきました。

そんな量子力学の人間の直感と乖離した姿に、量子力学を構築してきた物理学者の中にも耐えられなくなって反発し始めた人たちがいました。それが①の要素の推進者であったアインシュタインと、②・③の要素を世に送り出したシュレーディンガーだったのです。

次回は量子力学の不思議な面を説明し、反発した理由を考えてみようかと。