そして時の最果てへ・・・

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トポロジーの誕生

2009-03-30 23:53:10 | 歴史
わけあって数学のお話。特に「幾何学」にスポットを当ててお話をしようかと思います。
(カテゴリーは「歴史」でいいのかしら?)

17世紀、微積分学がアイザック・ニュートンやゴットフリート・ライプニッツによって基礎付けられ、同時に力学がニュートンによって微積分学の手法により表現されるようになりました。

そして幾何学もルネ・デカルトによる座標という概念が適用され、微積分学の言葉によってその豊かさを飛躍的に増すこととなります。

物理学や幾何学は、微積分学の「応用分野」となったのです。

特に幾何学に特化して述べれば、レオンハルト・オイラーによる微分方程式の研究をベースに、ニールス・アーベルの楕円関数論、ヤーノシュ・ボヤイの非ユークリッド幾何学など(その裏にガウスの影がちらつきますけど)が次々と生み出されていき、複雑な幾何学は微分方程式論の発展として形を成してゆき、ベルンハルト・リーマンの基礎付けたリーマン幾何学の登場によって、「微分幾何学」は幾何学の王道という地位を確立するに至りました。

しかし時代が進んで20世紀に入ると、数学者の想像力が生み出した形(幾何学)は、数式でがんじがらめにする微分幾何学の手法では窮屈になるほど豊かになってしまいました。

そんなとき、ある一人の数学者がこんなことを考えます。
「宇宙の形って、どんなんだろうか?」
その数学者は、アンリ・ポアンカレ。

その時点で既に伝統的となっていた微分幾何学は、宇宙の形のような外からは絶対に眺められない物に対してはうまく効力を発揮できなかったのです。

ならば!ということで、古い数学である微積分学ではなく、当時の数学界に勃興していた新しい数学・群論を幾何学に適用してみてはどうか?

その発想は奇抜な幾何学を生み出します。世の中のあらゆる物体を「穴の数」で分類しようと言うのです。そこではボールやスプーンや将棋の駒などを同じ形として考え、ドーナツやコーヒーカップやトイレットペーパーの芯などを同じ形として考えます。

このトポロジーと呼ばれるは幾何学は、微積分学により複雑になりすぎた幾何学をシンプルに記述し、20世紀の幾何学がさらにさらに自由な方向へ羽ばたくきっかけとなりました。20世紀の数学はトポロジーの色に染められ、微分幾何学は古臭い数学として忘れ去られてゆくこととなります。

さて、そんなトポロジーは、誕生の瞬間からず~っとある難題とともに歩んでいくこととなります。その名はトポロジーの産みの親・ポアンカレの名を冠した「ポアンカレ予想」。次回はポアンカレ予想がどんなものであるか、どのように証明されたかをお話しします。

最後にポアンカレ予想を難しい言葉で示しておきます。

単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である。

わかります?