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中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

投げ出し

2008-09-04 10:42:02 | 身辺雑記
 またしても首相が辞職した。本人としては熟慮の結果なのだろうが、唐突の感は免れない。前首相は国会での所信表明演説の直前に辞め、今回も臨時国会の開会が取沙汰されていた時であるから、「敵前逃亡」という厳しい声もある。

 それにしても、なぜこのように立て続けに総理という国政の最高責任者であるはずの者が、突然職を投げ出すのか理解できない。しかも1ヶ月前に内閣改造を行ったばかりだからなおさらだ。この人の物言いはとかく他人事のようだと評されてきた。辞任記者会見で、ある記者からそれを衝かれると「私は自分自身を客観的に見ることができる。あなたとは違う」と無愛想に言い切った。この人は前前内閣の官房長官の時の定例記者会見の時にも、ある記者の質問が気に障ったのか「あなた(記者を)辞めなさい」と言ったのを見て、ずいぶん横柄な物の言い方をするものだと思ったことを思い出した。客観的に自分を見ることができるというのだから、最近の行き詰まった政局を自分では打開できないと判断したのだろう。それならもっと早く決断すればよかったのにとも思う。不人気な自分よりも少しはましな後継者を立てて、近いとされる総選挙を有利に乗り切ろうとする思惑が見え隠れしているようでもある。

 おそらくは今の政権党は、かなりの「金属疲労」状態なのではないか。二世三世議員が4割近くを占めているようだから、国政を与る政治家としての自覚も意識も生ぬるく弛緩しているようにも思う。党の長老のある首相経験者が「一族郎党政治みたいな状況では、結局は国の伸びが止まる。父親の地盤の上で心配のない世界で生まれた人間と、自分で切り開いて汗水流して上がってきた人間とは差がある」と言ったそうだが、そのとおりだと思う。英国の下院議員は長い間地を這うような地道な活動を続け、その努力が有権者に認められて初めて議員になれると聞いたことがある。英国の上院議員は別にして、世襲議員が非常に多いことは世界的には珍しいのではないか。「○○先生の灯を絶やすな」などと議員後援会も地元の選挙民も何か勘違いしているように思う。議員職は家業でもないし世襲財産でもない。生れた時から(国会の)赤絨毯を踏むような星の下にあったなど言われた議員もいたが、たわけたことである。

 辞任した首相は、日本の国政史上初の父子で首相になったというので話題になったが、前首相と同様、結局はいくら「毛並み」が良くても、どこかにひ弱なところがあったのではないか。テレビでいろいろな職業の人たちに辞任についての感想を聞いていたが、ある酪農業者は、「飼料などの高騰で経営は本当につらい。やめられるものならやめたいと思うくらいだ。首相なんて気楽なものだ」というようなことを言っていたが、庶民の偽りのない感想だろう。

 ある会の事務局長をしている知人の女性が、自分の下にいる1人の女性の自己中心的な無責任な言動に疲れ果てて、辞めようかと思い悩んだところへ首相辞任のニュースを見て、いやいや、やはり投げ出してはいけないと思いとどまったそうだ。大方からは無責任と批判された首相の行動も、思いもよらぬところで反面教師として役立ったわけだ。