心打たれる文章に出合った。
それは、ある本の一部なのだが、おのずと頭を垂れて聞くような一節なのだった。
「・・・さっき摘んできた山ブドウを丁寧に洗って煮詰め、バルサミコ酢の仕込みにかかった。
完成するのは、十二年後。どんな味に生まれ変わるのか、目を閉じて想像してみる。
もしかしたら途中で失敗してしまうかもしれない。けれど、十二年後も、こうして私は同じよう
に新鮮な心で、厨房にたっていたい。・・・」
ーー小川 糸 著 「食堂かたつむり」ーー
このところずっと本も読まずに、寝ても覚めても、頭の一部を占めていたことが無事終了してーー、
「食堂かたつむり」を読んだ。本のことは以前から知っていたが、この方の本を読むのは初めて。
得意技の料理と一人のひとの生き方が縦横に張り巡らされている文にぐっと引き込まれた。
度肝を抜く仕掛けもラストに用意されていて。
TVドラマでも放映されたほかの作品も見てはいなかったけれど、富永まいさんが監督されたこの
作品の映画にも興味が湧いてきました。近々みてみたい。