あの笑顔の吉野彰氏は昨年(2019年)ノーベル化学賞に輝きました。パソコンや携帯
電話に用いられるリチウムイオン2次電池の発明者の一人として世界に貢献した大きな
功績が顕彰されました。 さらに電気自動車の実用化に向けても、この電池を本命として
鋭意開発が進められているところです。
しかしこのリチウムは、現在ところ産出国が限定的であり、今後の需要の拡大に向けた
リチウム資源の長期的な安定供給が懸念されてもいるのです。 リチウムは、海水にも
含まれているそうで、埋蔵量は豊富ですがこれから精製するコストから限界があるとの
ことだそうです。したがって、これまでも各国でリチウムに代わる代替元素を使用した
充電池(2次電池)の開発が進められてきました。
可能な元素
(ネット画像より)
ネットをあれこれ調べていると、たくさんの関連記事がありました。 それらから、
興味を引き理解できる記事をまとめてみました。
現在2次電池として、何といってもリチウムイオン電池が全盛であることは明らかで
すが、冒頭に述べた点からも、リチウムイオン電池を超える電池が要望されており、これ
までナトリウムイオン電池やカリウムイオン電池などが次世代の2次電池として期待され
研究開発がなされてきました。 研究のポイントは、正極、負極、電解質の材料および
その組み合わせであるようです。
3年前(2017年)、東京理科大学の駒場慎一教授が、プルシアンブルー(紺青:顔料)
を使った正極を開発し、黒鉛の負極にカリウムイオンを溶解する純度の高い電解液を
組み合わせてカリウムイオン電池が実現したのです。
開発されたカリウムイオン電池の性能は
・負極の素材は黒鉛、正極の素材:鉄系のプルシアンブルー
・正極の容量:1g当たり141mAh,負極は250mAh
・電圧:4ボルト
・電池のエネルギー密度;1kg当たり200wh
・充放電回数:400回迄負極の性能低下なし。
等とあり、リチウムイオン電池に比べて性能的には見劣りしない。
カリウムイオン電池のメリット
・カリウムはリチウムに比べて入手し易い。(金属としてだけの比較)
・リチウムイオン電池に比べより安全性が高い。 カリウムイオンはリチウムイオン
電池に比べ発火しにくく安全性が高い。
・リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池に比べ負極の電位を下げられるため
電圧をより高く出来る。
・カリウムイオンはリチウムイオンに比べ動き易いので電池にすると大電流を流しや
すく、充放電の速度はリチウムイオン電池の10倍以上になる。
・電極材料のコストが低コスト 正極には、青鉛筆の芯にも使われる安い材料である
プルシアンブルーを使用した。 因みにリチウムイオン電池はコバルトなど高価な
材料が使われており、電池の製造コストに占める割合は4割もあるとされる。
カリウムイオン電池のデメリット
・イオンが大きいのでリチウムイオン電池の様に小型軽量化は難しい。 このため風力
発電用など据え置き型の蓄電池用が期待される。
・リチウム電池と比べ同じ容量ではより重くなる
この東京理科大の開発で、これまで殆ど手が付けられていなかったカリウムイオン
電池の開発に乗り出す研究者や企業が急増しているようです。
論文数
(ネット画像より)
2012年頃、米スタンフォード大学等で、太陽光・風力など自然エネルギーの電力貯蔵
に適した二次電池としてカリウムイオンの可能性を見出し、リチウムイオン電池よりも
低コストな大容量蓄電装置に利用できる見通しがえられていたとのことです。
次世代の2次電池として、思いもよらない元素が研究されているのです。カルシウム
イオン電池、マグネシウムイオン電池、ナトリウムイオン電池などがあるそうです。
カリウムイオン電池と関係はありませんが・・
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます