聞きなれない言葉ですが、身近にある事柄なんです。
スーパーなどのレジ前の並ぶところに、1mほどの間隔で足跡のしるしが描かれていま
すが、アレですね。 コロナの頃に人との間隔を空ける・・ことを上手に誘導している
のです。また、通販サイトなどで、「○○円以上は送料無料」などもそうですね。
(サインモールより)
ナッジとは、強制やインセンティブ(特典、報酬)を用いずに、人々の行動を望ましい
方向に誘導する手法を指すとあります。英語でnudge(ナッジ)は、軽く押す、後押し
するという意味で、もともとは、肘でつついて合図をするという言葉だそうですが、
行動経済学、意思決定、行動政策、社会心理学、消費者心理および関連する行動科学の
概念であるとあります。
難しいですが、冒頭の例でも分かるように、何気なく、人の行動や意思決定(判断)を
誘導する効果をいっているのですね。
ナッジという言葉やその形式などは30年ほど前からあったそうですが、2008年に2人の
アメリカ人によって書かれた著書をきっかけに、この「ナッジ理論」が有名となり、
オランダのスキポール空港の男子トイレの小便器に「ハエの画像」を彫り込んだところ、
男性の狙いを改善し、清掃コストが低減されたことはよく知られた事例とあります。
ついでですが、この著書の中で、強制なしに行動に影響を与えることを「リバタリアン」
(個人の自由を最大限重視し、国家の役割を最小限に抑える思想)と呼んでいるとあり
ます。
ナッジ理論を活用するうえで重要な基本原則に、”NUDGES”の頭文字を取った次の6つの
要素が挙げられています。
- インセンティブ(iNcentives)
- マッピングの理解(Understanding mappings)
- デフォルト(Defaults)
- フィードバックの提供(Give feedback)
- エラーの予期(Expect error)
- 複雑な選択の体系化(Structure complex choices)
・インセンティブは、特定の行動を促すための動機付けで、例えば、購買時のポイ
ント制などがそうです。(購買を促進する、同じ店に来させる・・)
(Ameba Ound より)
・マッピングの理解では、たとえば、家庭のエネルギー使用量をリアルタイムで表示
したり、過去の使用量を示したりして使用状況を把握させる。
・デフォルトは、何も選択しなかった場合に自動的に適用される初期設定のことで、
推奨している選択肢を初期値として提示することを言います。たとえば、パソコンが
最初から省電力設定にされていると、多くの人はそのまま使用し、結果的に環境保全に
貢献しています。
・フィードバックの提供では、行動結果をすぐに、評価や改善点を相手に知らせる
ことで改善を促すことを言い、たとえば、ネットに電話番号を登録する時など、「半角」で
入力しないとエラーとして「半角入力」が要請され、以降そのように理解する。また、
デジカメなどの撮影結果の画像表示もそうですね。
・エラーの予期は、発生しやすいエラーやミスをあらかじめ想定し、先手を打って
対策を講じることで、たとえば、シートベルト着用忘れ防止のアラームなどがあります。
・複雑な選択の体系化では、多数で複雑な選択肢がある場合に、構造的に整理して、
選択をしやすくすることで、たとえば、ネットショップなどで、その人の好みに合い
そうな商品を提案する「レコメンド機能」などがあります。
このように、ナッジ理論は、人々の選択や行動を望ましい方向へ誘導する効果的な
手法ですが、あくまで「選択の自由を確保しつつ、より良い方向へ誘導する」との考え
方で、個人の意思決定の主体性を尊重し、選択の自由を阻害しないよう配慮することが
求められます。そして、ナッジの効果検証と改善のサイクルを常に回しながら進める
ことが大事だとあります。
ナッジ理論を真摯に活用することで、企業と顧客、そして社会全体の利益につながる
行動変容を促していくことが期待されるでしょう。
以下には、これまでのいくつかの例を拾ってみました。
営業分野で、「松竹梅の法則」を応用した見積もり提示がありました。高中低の3つの
価格帯で選択肢を示すことで、中間の選択肢に誘導するナッジを活用するのです。売り
たい商品やプランを中間に配置することで、顧客の選択行動を誘導できるのです。
(revicglobal.com より)
マーケチング分野でも、購入金額によって会員ランクの設定やそれに応じた得点を
付与するなども良く用いられていますね。
また、男性職員育休取得促進策で、育休取得を基本として、取得しない場合に申請を
求める方式へと変更したことによって、2016年には12.6%だった男性職員の育児休業
取得率が2021年には83.2%まで増加したそうです。 デフォルト設定の変更という、
シンプルながら効果的なナッジが奏功した例です。
ある市では、、特定健康診査の促進にナッジを取り入れました。毎年特定健康診査を
受診するように促す案内を交付していましたが、受診しない人は相変わらず受診しない
という結果になっていたのです。そこで受診しない人に、まずは「どこで受けるか」を
選択してもらう案内を交付した結果、特定健康診査を面倒に感じていた人も、「受診
する場所を決めるだけなら」と選択するようになり、その後の受診日の予約や手続き
まで行うようになったとあります。
このほか、処方箋の様式が2008年から、ジェネリック医薬品デフォルトとされ、
ブランド医薬品しか認めない場合は医師によるサインが必要としたことにより、ジェネ
リック医薬品の普及が促進されたそうです。
また、簡単なところでは、「自転車置き場の張り紙」があります。「ここは自転車捨て場
です。ご自由にお持ちください」という貼り紙をしたところ、「自転車を放置しないで
ください」と伝えるよりも、放置自転車問題を解決したのです。
まだまだありますがこの辺りで・・
ナッジという言葉は知らなくても、内容は理解できますね。
BEYOND THE REEF(珊瑚礁の彼方) Steel Guitar
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