学歴の全く通用しない落語の世界に、東京大学経済学部を卒業して直ちに入門した
人がいます。 春風亭昇吉その人で、昨年5月に真打に昇進、本名:國枝明弘といい、
岡山県の出身です。
岡山大学法学部に在籍しながら、23歳で東大文科二類に合格し、落研で古典落語を
得意とし、2006年に全日本学生落語選手権で優勝し、翌年卒業と共に、東大から第1回
東京大学総長賞を受賞し、直後に春風亭昇太に入門しました。
この年の8月18日には、東大安田講堂で「春風亭昇吉 真打昇進披露落語会」を開催
しています。
春風亭昇吉師匠
(ネット画像より)
手元の会報に、春風亭昇吉真打がことし1/5に開催された、学士会新年祝賀会での
講演録『落語家というその知られざる世界』(春風亭昇吉師匠)がありましたので抜
き読みしてみました。
受験生の頃、岡山駅前の本屋で落語のあらすじ本を立ち読みしていたのが落語に触
れるきっかけだそうで、岡山大学に入学しながら、さらに東大を受験し、23歳で合格。
大学ではボクシング部に入ったそうですが、みんなボコボコにやられているのを見て
退部し落研に入り、落語で頭角を現すのです。
卒業直後に、春風亭昇太に入門します。入門は大変なようで、『私はこういう者です。
師匠の芸に惚れました。入門させてください。』という手紙を書いて履歴書を添えて
お届けした。
日雇いアルバイトをしながら返事を待っていると『一度話を聞こう。落語家は食え
ないぞ』と連絡があり、飛んで行ったそうです。 師匠は、私の履歴書を見て『自分
を東大卒と思っている頭のおかしい奴が来た』と思ったそうです。 で、面接のとき、
師匠に『親はどう思っているんだ、家業は何だ。』と訊かれ、緊張のあまり『か行で
すか。 かきくけこ』と言ってしまった。
(ネット画像より)
入門後、数か月から1年間は「見習い」。見習いは、楽屋入りは許されず、師匠の
身の回りの雑用、太鼓のたたき方、着物の畳み方、袴の畳み方などを習うのだそうで
すが収入はゼロですからバイトで食いつなぐ・・そんな日々を送ります。
「前座」になると、楽屋入りが許され、約4年間の前座修業が始まるのです。師匠が
楽屋に来たら着物の入った鞄を預かり、脱いだ靴をげた箱に入れますが、序列がある
ので、それを間違えないよう気を付け、師匠が帰るときはスッと靴を出せるように場
所を覚える。師匠のコートを預かりお茶を出し着付けを手伝いもう一度お茶を出す。
このお茶出しが大変で、熱いお茶が好きな人、薄いお茶が好きな人、麦茶が好きな
人・・というように、人によって好みが違う。これを間違えずに上手にやるのですが、
彼は、東西で850人ほどの芸人の半数くらいのお茶癖を覚えたとあります。
師匠の口座が終わると、次の演者が上がる前に座布団をひっくり返し、「めくり」
をめくります。 これを「高座返し」というそうですが、緊張の連続だそうです。
しかし、前座になると、空いている時間には師匠に稽古をつけてもらえるのだそうです。
「二つ目」に昇進すると、鞄持ち、下足、お茶、高座返しなどの雑用から解放され
自分で仕事を取れるようになり、紋付の羽織と袴を着ることが出来るのです。
それまで、羽織、袴に憧れていたが、いざ着てみると暑いだけだったと。 彼は、
二つ目になって、いろいろと新しく習い事を始めたそうです。三味線、長唄、講談、
講釈、日本舞踊、俳句など・・。
この二つ目の修業は14年あるそうですが、彼は10年で真打に昇進したのです。入門
から14年目の事だったそうですが、36歳にしてようやく一人前になったようだと振り
返っています。 真打になると「昇吉さん」ではなく「昇吉師匠」と呼ばれるように
なるのですね。
入門当時のことを振り返って、「前座」のころの辛かった思い出を語り、理不尽な
ことを言われても耐えるのが修業で、お茶もどうしたら師匠に喜んでもらえるかや、
極貧生活で朝から晩までコマネズミのように働いたこと、電車賃がないので歩きとう
したこと、言い訳をしない、言い返さないなど・・辛い日の連続だったそうです。
彼は、師匠の癖や芸風などいろいろと分析をしたり、データを取ったりして「人生
が楽しくなる楽語学」なる路線を目指しこれまでの落語とは一味違ったお噺を作り上
げてくれるかもしれません。
(ネット画像より)
連日大入りの大相撲夏場所も12日目が過ぎ、平幕力士の活躍が目立つ場所になって
いますが、大相撲の世界にも異変?が起きているのです。
東京大学哲学科の3年生で、相撲部屋『木瀬部屋』に入門し、まだ番付がありませ
んから、『前相撲』で出ているそうです。 須山穂嵩くん24歳。178㎝ 104㎏とあり
ます。
この15日(8日目)には、新序出世披露に臨みました。化粧まわしは志摩の海に借り
たそうです。 須山力士は、怪我をしないこと、キチっと卒業することが親との約束
だとありました。
新序出世披露
(時事通信ネットより)
落語界も、相撲界も東大出身(須山は来年卒業)というのは初めてのことだそうです。
二人とも少し遅れたけれども頑張って東大に合格し、そのまま路線に乗るのが普通だ
と思いますが、彼らには、それより自己の目指す道があったのでしょうね。
それにしても、隔世の感がありますね。やはり、マクロ的には、日本は豊かになっ
ているのですね。 日本を代表する大学を出てもそれらのキャリアが全く通用しない
というか殆ど無意味となる分野に自己の選択を優先する・・それが許される時代なん
ですね。 昔も、東大を卒業して、作家や歌手や演劇を目指す人たちがいましたし、
今もアナウンサーやスポーツ選手など多彩ですが、やはり落語家、力士となるとエッ
と思いますよね。
東大初の落語家!中卒の先輩から指導&両親は「学費返せ!」~春風亭昇吉~
東大卒の人を見てちょっと嬉しく思いました 伯山の講談のファンですが昇吉の落語も応援してみます(^^)
コメントありがとうございました。