今さら・・という感じかもしれませんが、最近の新聞書籍広告蘭に、『VUCA時代の
研修~自立型人材が会社を伸ばす』(先端教育)が、目に留まりました。
私らがまだ現役の時代も、いわゆる成熟社会に差し掛かる時点でのビジネス環境は、
それまでと違って、不確実性、変動性が増加し、営業面でも、新規事業・開発面でも
難しい局面に差し掛かっていました。
既存概念に捕らわれない、想像力豊かな実行力のある人材が重宝がられ、幅広い
データ収集・分析を駆使し、新機軸を切り開こうとしたりしていたと思います。
(ネット画像より)
1990年代にアメリカの陸軍学校で、冷戦後の複雑な国家間の関係を表現する言葉
として『VUCA』が使われ始めたそうですが、2010年頃から、ビジネス環境を表す言葉
として用いられるようになったそうです。
ICTの発展とともに、これらの環境はますます複雑高度化し、今なお(あるいは、
今こそ)VUCAを見据えたリーダシップ、人材が企業にとって必要なのかもしれません。
VUCA(ブーカ)とは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性
(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の4つのワードを省略した造語です。 技術の
急速な進歩、国々の方針変化等により、ますます予測は困難で世界の市場は不確実性
や不透明性を増した状況で、まさしく、一層不安定なビジネス環境にあるといえそう
です。
(ネット画像より)
2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で、このような複雑で先行き不透明
な世界の現状を「VUCAワールド」というキーワードで表され、広く定着してきたよう
です。
㈱日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)のHPには、『現在のビジネス環境
は、VUCA 4つの要因により、あらたな突破口を拓くための「正解」が非常に見通し
にくい状況にあり、ダボス会議でも「VUCA時代に必要なリーダーのあり方」や「人
材能力」などに関していくつものセッションが設けられるようになっている』とあ
ります。
Lightworks-blogから、VUCAの要点を以下にピックアップしました。
・Volatility(変動性) 近年はIT技術の進歩により、市場ニーズの変化が速く
なっている。 例えば、SNSの変遷では、2004年にサービスを開始したミクシィは、
圧倒的なシェアを誇りましたが、その後、「Facebook」「Twitter」「LINE」など
海外発のSNSに移り変わってしまいました。 さらに最近では「Instagram」や
「TikTok」など、新しいサービスが生まれ、現在の社会では、成功したビジネス
モデルでも、状況の変動サイクルが速く、すぐに陳腐化してしまうなどの変化が
みられるのです。
・Uncertainty(不確実性) 世界で起こる政治的な出来事や、突然の災害による
影響がビジネスの障害になることがあります。EU離脱や、トランプ大統領の誕生な
ど、多くの人が「まさか」と思う結果となり、世界の市場に影響を与えましたが、
その他、東日本大震災や、今日の新型コロナウイルスなど、「想定外」事態が突然
起こる可能性があるのです。
・Complexity(複雑性) 複数の国や地域、企業・部署が関わってビジネスが複雑
になることで、スムーズな事業展開が難しくなる場合です。現在のグローバルなビジ
ネス環境では、各国の法律や文化・習慣など、さまざまな要因が絡み合い、ビジネス
を複雑化させています。
・Ambiguity(曖昧性) 物事の因果関係が不明確であることが多く、手探りで
進めていく必要があります。
このような状況に対処し、リーダシップを発揮するためには、次のようなアクショ
ンが必要であるとしています。すなわち、
- 明確なビジョンを持つ 先の予測が困難だからこそ、自社の将来に対して明確
なビジョンを持つことが重要であり、これがしっかりしていれば状況変化に
対して、優先順位付け、経営方針の見直しなど柔軟にできる。 - スピード経営を意識する 変動が激しい環境下では、まず行動に移し、変化に
スピード感を持ちながら臨機応変に対応する。意思決定にかける時間を短縮する。 - ダイバーシティ&インクルージョン 変化の方向が読みづらい市場ニーズへ
の対応には、さまざまな立場や価値観から生み出されるアイデアや、新たな価
値の創造が不可欠である。従業員の多様性と強みを生かす。 - 複数の事業を持っておく 予測が困難な社会では、複数の事業を持つことが
リスクヘッジになり、状況が変化にも対応が可能になる。 - 市場でいち早く主導権をとる 正解がないVUCA時代では、どの企業も主導権を
握る可能性があると言える。業界の垣根が低くなっている現代では、異業種
参入によって成功するチャンスもある。
(ネット画像より)
さらに、国際市場で確固たる競争力を保つためには、企業は次のようなリーダー
を起用しなくてはならない。
Harvard Business Reviewに、次のようにありました。
『感情的知性が高く、先を見越す洞察力があり、部下とうまく協働する方法、および
変化への素早い適応を促進する方法を実践できる人材である。』
しかし、その人材選考において、起業家精神に関連する特性、たとえば創造性や
臨機応変さ などを示す人材ではなく、人材選考とコーチングにおいて、「阻害要因
(derailers)」に注目することが重要だといっています。
ここで、阻害要因とは、イノベーションの妨げとなる行動特性であり、これらは、
幼少期に身につけたまま成人後も脱却できていない、性格にも似た気づきにくい行為
で 以下のように指摘されています。
・無意識の怠慢:不注意と衝動性が目立つ傾向。仕事を完了していないのに提出し
てしまう、拙速な反応によって思いやりに欠けるという印象を与えてしまう、など。
・過剰な防衛:アイデアが盗まれることを恐れるあまり、自分の最も優れた仕事を
手の内にとどめ、成果を他者と共有したがらない。
・過剰な自信:自分の自尊心と意思力を頼みとし、他者の助けが必要なときでも頼
らない。
・過剰な努力:限度を超えて自分を追い込む。
・不当な評価:「成功して当然」という態度。その成功をもたらした人間関係や
リソースを正当に評価せず、「次の新しい何か」を追求する衝動にばかり駆られて
いる。
これらは程度が小さければ、さほど目立たないが、リーダーがこうした振る舞い
を頻繁に、みずから示したり助長したりする場合には、自己の能力を削減するばかり
か、その影響は大きく 組織としてうまくゆかなくなる場合もあると指摘されていま
す。時にこのようなリーダーを見ることがありますね。
これらを如何に克服してゆくかが人材面で求められているのでしょう。