好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

『尚も生きる。手を取りて』第40話「友を悼む」

2019-11-16 | ゲームブック二次創作

……カエル男たちのいる沼から充分に離れたと思われる辺りで、
足を止めた。
グロッグの荷物袋を改めると、入っていたのは木箱が一つ。
フタは、どうやっても開かなかった。
それから確かコレは、幸運の薬の入った瓶。
縁起物の一つだが、冒険者には役に立つ。

その後は、草原に座り込んで、長くぼうっとしていた。
空の色も、風の匂いも、何一つ変わっていない。
にもかかわらず、全てが違っているように感じる理由は、一つ。

(ナオ……大丈夫ですか?)
「ああ。俺なら、もう平気だ」
(え!?)
「どうした? すっとんきょうな反応して」
(それは驚きますよ。だってナオ、あなた喋れるんですか?)
「さっきから、な。っていうより、俺は元々こうだったんだろう。
 他の知識と同じように、声に出して喋る方法も、ずっと忘れてたんだ」
(そうなのですか。「俺」と言っているのも、同じ理由ですか?)
「多分。だが、本当は違うかもしれない。
 グロッグが『俺』って言ってたから、奴にあやかりたいっていう理由も、
あるかもな」

そうだ。奴には、返しきれないほどの物をもらった。
俺がもっと強かったら、こうして喋って助け合う事が出来たら、
結果は違っていただろう。

もう、何もかも遅い話だが。