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好事家の世迷言。(初代)

※はてなブログ『好事家の世迷言。(続)』へ移転計画中。

調べたがり屋の生存報告です。

宇宙戦争という国際問題、の話。

2023-03-07 | 物語全般
『見知らぬ明日』(by小松左京)、読了。

知ったきっかけは、『マブラブ』の元ネタの一つというレビュー。
小松作品には、今のところ関心が高くない、つもりだけれど、世間で薦められてるならと、図書館で借りた。
因みにケイブンシャ文庫。
あまり聞かない名前だなと調べたら、現在は存在してない出版社だった。

本作は、1968年初出。
当時の世には、太平洋戦争の傷が強く残る。
宇宙開発もこれからで、月にだって行けてない。
ロシアでなくソ連。 1ドル360円固定。中国は国連未加入のため、現在より遥かに実状をつかめない。
国府(=台湾)という表現に、恥ずかしながら暫く戸惑った。
そういった時代の、 新疆ウイグル自治区に、異星からの侵略者が下りてくる。
つまり宇宙戦争の話……と簡単には言えない。
文庫の約300ページの内、2/3くらいまでは、何だか分からん内に起こってしまった異星人?との戦い?に対する、大国たちの内輪もめが続くからだ。
対立してる国同士が、現場で手を取り合い、国連軍が作られ、やっと事態が動いたと思うも束の間、異星人は核兵器(水爆)でしか殺せないと、異星人の基地が作られた富士山が破壊される、その直前で物語は終わる。
確かに『宇宙の戦士』や『戦闘妖精・雪風』や『マブラヴ』の世界へつながる前日譚のような印象。
後に調べたところでは、この種の作品を語るなら、ハインラインの『人形つかい』も読まねばならないようで。
このジャンルとの付き合いは、まだ終わらなそうだ。

ところで、この作者の作品って、やたら生々しいセ○クスシーンが、私にはたまらなくノイズになる。
不倫が平和の象徴みたいな扱いなのは、どうかと思うよ?

それでは。また次回。

伏線回収的・恋愛映画。

2023-01-26 | 物語全般
映画『プリティ・ウーマン』のDVDを見る。

映画好きなら見た方がいいというレビューを見かけて気になっていたものの、見るのを先延ばしにしていた作品。
何と言っても、私にとっての鬼門のジャンル、恋愛ものだから。

そんな私でさえ、テーマソングのフレーズだけは、すぐ頭の中で流れるほど覚えている。
つまりは普及の名作なのだろうと、勉強のつもりで鑑賞した。

ワーカホリック気味の企業買収業のエドワードと、娼婦(フッカー)のヴィヴィアンとの、偶然の出会いから物語は始まる。
当初は金銭だけでつながった縁だったのが、互いに次第に惹かれ合っていく。

正直に申し上げて、興味は終盤まで薄かった。
成人の恋愛である以上、性描写はあって当然で、どのコンドームを使うかって会話も寧ろ正しい展開だと理解してても、どうしても拒否反応が出てしまう。
ピアノの鍵盤の上であれこれというのも、ロマンよりも「汚れる」って感想が先に出る。

このカップルにおける一番の貢献者は、彼らを最大限に尊重したホテルの支配人だと思う。
ヴィヴィアンにドレスコードの高い服を着せてくれて、テーブルマナーを教えてくれて。
『マイフェアレディ』辺りを連想した。

また、彼ら自身も幸運に恵まれた。
エドワードは「君はどうしたいんだ?」とヴィヴィアンに率直に聞ける人間だったし、ヴィヴィアンに素質があった。
私じゃ本場のオペラに夢中になれないと思う。

といった感じで、何となくの流し見のまま入った終盤、我が評価は跳ね上がった。
序盤から示されていた、「非常階段」「高所恐怖症」「塔に閉じ込められた姫」の三題噺が一つにつながった瞬間、膝を打った。 
私のように恋愛ものがダメという人も、この最後のオチは見る価値あります。
確かにオススメです。

それでは。また次回。

筒井康隆流・哲学講座。

2023-01-05 | 物語全般
『文学部唯野教授』(by筒井康隆)、読了。

岩波書店ハードカバーで、挑戦。
という表現になるのは、本作は筒井作品の中でトップクラスに難解な作品だから。

主人公は、早治大学所属の英文学教授・唯野仁。
因みに、初出は1987年。即ちバブル絶頂期。
誰がどこへ行っても飛び交うお金の嵐。
今の時代は、ここまで派手じゃないと思いたいが。
エ○ズをギャグに使ってたりする点にも、時代と筒井節全開を感じる。

そんな彼の授業内容は、文学批評論。
歴史に沿って、あらゆる批評家、作家について述べていくわけだが。
とにかく唯野、というより筒井氏の博覧強記に圧倒される。
古今東西の資料、未翻訳の書籍もガンガン出てくる。
読みやすい口語体文章でありながら、内容は私ごときにはやっぱり分からない。
一瞬分かったような気がして、でもやっぱり混乱しての繰り返し。

しかも唯野、自分が架空の存在である事も把握しており、筒井氏への言及も少なくない。
唯野が小説家として活動してるのも、その研究の一環だとか。

授業で唯野は、「虚構の、虚構による、虚構のためだけの理論」
「虚構の中から生まれた、純粋の虚構だけによる理論でもって、(略)あらゆる分野の理論を逆に想像してしまうことさえ可能な、そんな虚構理論」
という物を目指していると語る。
きっとそれが、物語の最後に、唯野が物した長編小説なのだろう。
ラストシーンは鮮やかで、情景が脳裏に浮かんだ。

さて、この次、唯野教授の最終講義、ハイデガー論に挑戦するのは…………いつにしようか。

それでは。また次回。

国と国と、手を取り合って。

2022-12-14 | 物語全般
映画『海難1890』のDVDを見る。

以前、レビューでオススメと書かれていて記憶に留めていた。
日本とトルコの友好125周年を記念し、2国によって合作された映画。

この映画についての説明は、Wikipediaなどを読んだ方が早いかもしれない。
「エルトゥールル号」で検索すれしば、事実のみの文章がヒットするはずだ。

その「エルトゥールル号遭難事件」と、後に起こった、イラン・イラク戦争時における法人救出劇と。
以上の、二つの出来事をくっつけた形で一本の映画になっている。

前者の遭難事件で90分、後者の救出劇で30分くらいの比率。
ちょっとバランス悪い気もする。
遭難事件がメインというのは理解できるが。

二つの出来事を関連づけるため、主演の人たちが時代を超えた兼ね役を務めている。

全体的に、卒の無い作り。
人間が奥底に持つ優しさについて、逐一台詞で説明している場面など、良くも悪くも、授業で習っているような感覚をおぼえた。
そのじつ前者の「エルトゥールル号」については、トルコでは学校の教科書に載ったりするほどの一般常識との事。
逆に、後者の救出劇は、救援機を出せない(出さない)日本への非難意識を強く感じ、複雑な気持ちになった。

昔の日本は素晴らしかったが、それに引き換え今は……という感想なら、書きやすいなと思った。
そんな事を考える私は、人としてひねくれてるんだろうか。

以下、余談。
実は、千葉の御宿でも、似たような事例があるんですよね。
本作と同じような形で、1609年にスペイン領メキシコの人たちを助けてる次第。
映画化されてないかな。

それでは。また次回。

頼むからスッキリさせてと言いたい本。

2022-12-11 | 物語全般
『頼むから静かにしてくれ』(byレイモンド・カーヴァー)、読了。

1・2巻の分冊を一気読み。

ン十年前の事。友人が本を読みふけっていて、私は他の友人と何かの話で盛り上がっていた。
不意に友人が、読んでいたそのハードカバーの本をパタン!と閉じた。
その表紙に書かれていたのが『頼むから静かにしてくれ』。
友人いわく、あくまで偶然だったのだが。

それ以来、気になり続け、けれどタイトル以外何も知らない本をハードカバーで買う予算も機会もなく、結局図書館のお世話になった。

それで手に取れた物は、なぜか2冊の分冊になっていた。
1冊目は13編、2冊目は9編と分かれている。
しかも、『頼むから~』は、何と2冊目の一番最後。
覚悟して全部読むかと表紙を改めて、またも村上春樹氏訳と知って、浮かんだ嫌な予感が、当たった。

どの話も、生活に疲れた人たちの日常の一コマ。
大抵ああでもこうでもと会話が繰り返され、出来事は途中でそのまま終わって。
「それで結局どうなった?」というフラストレーションが私には残ってしまう。
『頼むから~』は、そんな鬱屈の極地。
そもそも私は現実逃避の手段として読書をしてるわけで、そんな私とはまるで相容れない作風としか言いようがなく。

22編も一気読みして、感性の合う話が皆無というのも逆に凄い。
今回は、長年のわだかまりを消せただけでも良しとしよう。

それでは。また次回。

わんわん戦記物語。

2022-11-23 | 物語全般
『馬の首風雲録』(by筒井康隆)、読了。

筒井氏作品の長編第2作。初出は1972年。

長編第1作で『48億の妄想』で虚実についてを書ききっている作者。
本作では、悲惨な出来事を笑い飛ばすという作風が既に確立されている。

馬頭星雲に位置する、犬に似た種族の内紛と、それに経済的に介入する地球人の物語。
行商人のお婆さんと、その息子たち4人の半生が交錯しながら描かれる。

しばらくぶりに、読むのが楽しいという気持ちに浸れた本だった。
私としては、鬼門中の鬼門だろう戦争がテーマの作品なのに。
東西の戦争文学をコラージュしていると言われても、元ネタ全然分からないのに。
章タイトルで、あらかじめネタバレ食らわしてくるのに。
登場人物は、ドブサラダとかズンドローとかユタンタンとか変な名前ばっかりなのに。
その登場人物は現れては死んでいき、最後まで無事に残るネームドはほぼゼロなのに。
戦争は本作の中で終息せず、打ち切り漫画みたいに途切れてしまうのに。
争いを求めるのは生き物の性(さが)だと繰り返し断言されて悲しかったりするのに。
その一方、激しいドタバタ騒ぎが何度も巻き起こって不謹慎な気もするのに。
悔しいけれど面白いのだ。

ただ、既に起きてしまっている目下の戦闘はともかく、平和な世の中を作者が望んでいるだろう事もきちんと伝わってくる。
戦争のない異世界を夢に見た詩人トポタンは、筒井氏がやや投影されてるんじゃないかというのは、私の勘繰りかな。

それでは。また次回。

全てが暴力で解決されるという、世界。

2022-11-05 | 物語全般

『宇宙の戦士』(ロバート・A・ハインライン)、読了。


1959年初出。
「ガンダムの元ネタ」という触れ込みだけを、ずっと以前に耳にした。
逆にいえば、それ以外の予備知識は無し。
自分の知るハインラインなら読みやすいだろうと手に取って、そして混乱した。


1987年にロシア&アメリカ&イギリスの連合と、中国とで戦争があった事で、国家がほぼ壊滅した後、世界連邦が作られたという世界。
クモと呼ばれる宇宙人と長く戦争を続けており、兵役を経ないと市民権がないという。
それで主人公は、最初は何となくの進路として軍隊に入り、ひたすら根性をしごかれ、「宇宙の戦士」として成長していく。


と言っても、全世界が統一されているわりには、軍の描写は画一的で、実際の米軍の話をSFに置き換えただけなのではという感覚が付いて回った。
そもそも「市民権」という概念からしてアメリカ的だし。
あらゆる文化の人がアメリカ的思想に殉じてるというのは、自分にはあまり響かなかった。
ただ、男女や人種など、他の差別は一切存在してない事は好ましかった。


なお、「ガンダムの元ネタ」というのは、厳密には挿絵(イラスト)であり、小説の描写はちょっと違う気がする。
装着するパワードスーツなのだから、アイアンマンとかの方が近いだろう。


因みに原題は『STARSHIP TROOPERS』。
どこかで聞いた事あるぞと調べれば、このタイトルで映画化されてふんですね。
まるっきり別物のようだけど。
怖いもの見たさで、いつか見ようかな。覚書。


それでは。また次回。


「すごいサイト」のお話。

2022-10-12 | 物語全般

『プラトニックチェーン(1)』(by渡邊浩弐)、読了。


或る漫画のモチーフと似てるというレビューで知った。


全30話収録の短編集。
週刊ファミ通で連載されていたという作品。
初出は2003年。
『噂』(by荻原浩)(2001年)より後、『絶叫仮面』(by吉見知子&平山けいこ)(2009年)より前。


2003年頃は、ガラケーのiモード全盛期で、PCの個人サイトが華やかだった。
スマホは無い。SNSどころか、mixiもまだ無い。
前略プロフも無い。そんな当時。


物語はどれも非常に短く、4~5ページで完結する。
前後どちらの章から読んでも成立する、といった風変わりな展開もある。
この形式から判断すれば、短編というより、ショートショート集と呼んだ方がよいかもしれない。


ただし、物語たちにはある程度の共通項がある。
いわゆるギャル系の「ヒトミ」と「リカ」、その二人と関わる同年代の男性「ケンイチ」など、恐らく同一人物だろうキャラ達がしばしば登場するのだ(明言はされない)。


そして最大の共通項は、「プラトニックチェーン」と呼ばれる「この世のあらゆる情報を調べられるサイトと、そのサイト管理人である探偵」という謎めいた存在だ。


例えば、1話だけネタバレしない範囲で述べれば、私の印象に残った『たくらんで……』では、「自分と限りなく似たプロフィールの人を出来るだけ多く集める」なんて離れ業もお手の物。


さて、もしも自分が、そんな風に何でも調べられる「すごいサイト」を知ったら何をするだろう。
一人っきりでノンビリ出来る秘密基地としてセカンドルームを手に入れるとか、そんな事くらいだなぁ。


それでは。また次回。


「白人酋長もの」というジャンルを知った。

2022-10-05 | 物語全般
(※私には合わない映画でした)
映画『アバター』を劇場へ見に行く。
 
上映当時、3D映画の傑作と持てはやされていたのを覚えている。
けれど、私としては当時、あらすじを少し聞いた時点で興味を持てなかった。
アメリカの金鉱近くに住んでるネイティヴと、そこに取り入ろうとするヨーロッパ人の恋愛西部劇の変形だと思ったから。
(追記。記事タイトルにした「白人酋長」というジャンルは、上記のような「文明人が未開人の長になる話」を指す言葉です)
 
それが、待望の続編公開とやらで、期間限定再上映までされるなら、話の種にと見に行って。予想以上に後悔してダメージ受けた。
 
どうして大衆向けハリウッド映画は、異分子を拒絶する話ばかり創るのか。
『宇宙戦争』辺りの時代から、何ら進歩していない。
(私は『ジュラシック・パーク』も苦手です)
 
世のレビューにあった「異星観光体験」を思わせる景観は悪くなかった。
が、物語後半の、凄惨な自然破壊や殺し合いで全部上書きされてしまって、今は不快感しか残ってない。
 
何より解せないのは、地球人の主人公が自分の立場を決めないまま、地球側にも異星側にもどっち付かずで、そのくせ異星人のヒロインとセ○クスするという不実ぶりである。
しかも最後は、完全に異星側に亡命状態。
 
二者間の架け橋になってくれよ。
地球からまた侵略される危険性が残ったままじゃないか。
ああ、だから格好の続編が創れるわけですね。
こんな作品が世界興行1位というのが、謎だ。
 
それでは。また次回。

英雄は年を経て、なお強く!

2022-10-04 | 物語全般
映画『トップガン』『トップガン マーヴェリック』を劇場へ見に行く。
(2作連続上映)

2019年以来、本当に長く延期されていた『マーヴェリック』。
いざ公開されたら、驚異的な興行成績を叩き出している好評ぶり。
話の種に一度見てみるかと調べたら、旧作の『トップガン』と2本立てで見られる回を知って飛びついた。

見終えて納得。
延期しまくっただけの事はある。
それぞれ単独でも面白く、そして旧作・新作と連続して見れば、まるで初めから前後編として想定されていたような快作だ。

ストーリーは分かりやすい。
天才的センスを持つ主人公が、戦闘機乗りとして首席を目指す訓練生活。
そして、それから約30年後、主人公は再び同じ舞台へ戻る。

本当は細かい感想を書くつもりだったが、どうしても無粋なネタバレになってしまうので断念。
特に新作は、「ヒーローが歳を取った続編」の理想と浪漫が満載である。
長い経験を積んで、なお強く、下の世代を導く様に、私は打ち震えた。

ああ、そうだよ。
私は、“彼ら”に、こういう誇らしい姿でいてほしかったんだ!
老いて落ちぶれた姿なんて見たくなかったんだよ!

ともあれ、旧作も新作も、最後は爽やかな感慨を得られると言っておく。
オススメです。

それでは。また次回。