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好事家の世迷言。(初代)

※はてなブログ『好事家の世迷言。(続)』へ移転計画中。

調べたがり屋の生存報告です。

日本元祖・閉鎖病棟(ネタ)映画。

2019-12-08 | 物語全般

映画『クワイエットルームにようこそ』のDVDを見る。

『閉鎖病棟』から関連して思い出した。
私の場合、日本で精神科病棟を扱った映画といえばコレだ。

ライター業に勤しむ主人公は、激務の中ふと目覚めたら、
見知らぬ天井の下で全身拘束されていた!
自分の事情を、周りの誰も分かってくれない、
奇妙な人々の闊歩するそこは、まるで異世界。
元の外界へ戻れるのは、最低でも14日後。どうなる主人公!

正直に言いましてこの映画、我が第一印象は決して良くなかった。
精神科ゆーても、出てくる病は摂食障害や希死念慮まで。
で、そういった病やその治療を戯画化しすぎなんじゃない?とも。

でも。そもそも、そういう風に、やれ不謹慎だと眉をひそめてる自分が、
実は一番偏見もってるんじゃないかと後で気づいて愕然となった。

主人公自身を含め、「正常」に見える人こそが、
別の角度からは「異常」な面が浮かび上がる連続。
序盤のギャグのような展開は、2周目に見る時、意味を変える。
涙の場面で胸が温かくなり、笑顔の場面で胸が悪くなるという、
一見ムジュンした描写は、こちら観客に強く印象を残す。

なお、余談ながら。この映画、出演者がめちゃくちゃ豪華。
宮藤官九郎氏や庵野秀明氏の演技を見れるのは貴重。しかも上手いし。
深く考えすぎずに見るのが吉です。

それでは。また次回。


予蝶とは御使いからの知らせである。

2019-11-22 | 物語全般

映画『エンジェルサイン』を劇場へ見に行く。

北条司氏が監督として初めて手がけた実写映画。
全6話のオムニバス(プロローグとエピローグとで1話と計算)。
特徴としては、台詞ほぼゼロの、事実上のサイレント映画という事。

去年までの自分だったら、逆立ちしても行かなかっただろう。
が、今年は別。
子供時代からの恩返しの一環で、電車を乗り継ぎ、東京の映画館へ出向いた。
礼儀として、ネタバレ一切見ないように心がけて突撃した。

ところで。ファンの間では、北条司の作品で「エンジェル」は
禁句というジンクスがある。
詳しくは調べれば分かるので、ここでは書かない。

で、この映画も「エンジェル」を冠していて。今回もジンクスは発揮された。
何度も私はこのブログで書いてるが、物語での「人死に」は本当にダメ。
それでもまあ、一つや二つなら耐えようと思ったが、
まさか全6話、全話に死が付いて回るなんて誰が思うか。
今度こそ死にネタじゃないだろう→残念やっぱり死にました、
が繰り返された辺りで、我が感情は底の底。浮上するまで、暫く時間がかかった。

あと個人的に、「父親と娘の絆」というモチーフが複数登場したのも
ダメージ大きい。
深く考えると、20年前の怨嗟が蘇りかねないので、この映画にはもう言及しません。

それでは。また次回。


異世界移住計画。

2019-11-03 | 物語全般

『量子宇宙干渉機』(by J・P・ホーガン)、読了。

『星を継ぐもの』『未来からのホットライン』『時間泥棒』『仮想空間計画』……
と読んできたホーガン作品。今回も興味深い内容だった。

時は21世紀。
無限数に存在する「世界」を知覚しようと作った機械。
ところが実際には何とその機械は、被験者の意識を、
そういった別の「世界」へジャンプさせる物だった。

このヤヤコシイ世界観が
1996年に既に世に出ていた事に改めて驚かされる。

やがて研究者に被験者たる3名は、
「別天地」と名付けた或る「世界」に辿り着く。

戦争間近の緊張状態である元の「世界」と違い、
「別天地」では何と第一次大戦から起こっていない。
科学はゆっくりと進んでいるが、
それは人々の競争意識が高くないから。
その、争いのない平穏な地へ、最終的に3名は移り住む事を選ぶ。

ただ本作、一つだけ引っかかる点がある。
意識を「別天地」へ旅立たせた三人が、元の世界に残した身体の事。
彼らの主観では、古い余分な殻を脱ぎ去ったようなものだが、
客観的に有り体に言ってしまうとコレ、
安楽死してるように見えてならんのです。
位置の近い宇宙同士は同じ行動を取るのだとしたら、
他の世界とまた問題が起きたりしないのか、ちと心配である。

それでは。また次回。


異世界転生、乙女ゲームの悪党ポジで。

2019-11-01 | 物語全般

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった』(by山口悟)、第2巻まで読了。

webの「小説家になろう」版の時から、繰り返し読んでいる作品。
来年春のアニメ化情報を機に、書籍版を購入。
全文読んで、なおも購入したくなるのは、それだけで良作の証拠だ。

さて。この作品の感想を語るには、大量の予備知識が必要になる。
主人公のカタリナ・クラエスは、いわゆる「異世界転生」して、
「乙女ゲーム」の「悪役令嬢」役になっていると、ある日気づいてしまう。
簡単にいえば、少女漫画で(本来の)主人公を邪魔する悪党ポジに
なってしまってるというわけだ。

もし、このまま物語通りに進めば、カタリナは殺されるか国外追放かの二者択一だった。
が、幸いだったのは、カタリナが「目覚めた」のがまだ8歳の幼少期だった事。
持ち前の気質を取り戻した彼女は早々に、将来たった一人で生き抜いていく努力を始める。
剣技や魔力を鍛える傍ら、貴族でなく農民として働くため、畑仕事に精を出す。
また、彼女の最大の長所は、他人を決して非難しない事。
その強い共感力から、周りのサブキャラ達ーー個人能力は高いのに
自己肯定できずにいるーーと、いつしか固い絆を結んでいく。
数知れない人々にとって、恩人のような存在になっていく。

極端な悪人が登場せず、遣われている文体も礼儀正しい。
いわゆるジュブナイルとしてオススメの作品。
恋愛ゲームの知識が要るため、年少者には読みにくいのが残念なくらいだ。

さて。第3巻以降はweb版の外伝、そして書籍版独自展開。
少女小説を気に入ったのは久しぶり。楽しませて頂こう。

それでは。また次回。


映画ネタ×2。

2019-10-18 | 物語全般

ここ暫くの、映画のハシゴ。


★『アド・アストラ』

主人公は、消息不明になった父を追い、太陽系の端を目指す。
宇宙旅行が身近になった未来のようで、それでいて細かい描写は現代的。
SFというより、むしろ純文学の作品を見ている印象が強かった。
前評判から、もっと壮絶な展開を予想していたが、実際はごく静か。
現在の考証に基づいた宇宙の景色は美しかった。
ただ、さすがに淡々としすぎて、うつらうつらと寝落ちしかけたのは私だ。


★『僕のワンダフル・ジャーニー』

『僕のワンダフル・ライフ』をビデオで見てから『ジャーニー』を劇場で。
高木渉氏が犬の声を演じてると知ったため吹替で。
犬好きの理想を詰め込んだ作品。
レトリーバーからヨーキーまで、年齢も種類も異なる犬が、
全員同じ犬に見える演出が凄まじい。
個人的には『ライフ』の方が、シナリオの偶然性が少ないため好み。
『ジャーニー』は前評判通り、ラストが最高。
黄金色の草原で、どうか二人ともお幸せに!


それでは。また次回。


世にあふれる放置自転車の意外な正体とは。

2019-10-13 | 物語全般

『どんがらがん』(byアヴラム=デイヴィッドスン)、読了。

全16話の短編集。

この本の収録作は、私の好きな
ミステリ・SF・ファンタジーの全てに渡っている。
これらのジャンルの共通点は、
「この世ならざる世界」を扱っている事だ。
殊能将之氏が編集しているというのも頷けるラインナップ。

本命は『さもなくば海は牡蠣でいっぱいに』。
タイトルの由来はホームズシリーズ『瀕死の探偵』の一節だが、
内容はホームズとは1ピコメートルも関係ない。
必要な時に限って引き出しから消える安全ピン。、
溜めてる覚えがないのにタンスから常にあふれるハンガー。
どこからともなく集まっては消えていく放置自転車。
それらの正体を知る事が出来る、かもしれない奇怪な作品。

表題にある『どんがらがん』は、SF要素ありのファンタジー。
どうしても、「どんがらどん」と発音したくなるのは、
私だけではないと思いたい。

文章の癖が強くて読むのに難儀するが、
一旦ハマればその癖が味になる。
小説好きなら一度は目を通す価値のある作品群だ。

それでは。また次回。


破壊される、夢の世界たち。

2019-10-07 | 物語全般

『ペンギン村に陽は落ちて』(by高橋源一郎)、読了。

奇妙な本である。
久しぶりに、いわゆるトンデモ本に当たったかもしれない。
こんな本を出せた1989年当時は大らかだったんだな。

構造からして一口で説明しづらい。
全7話の短編集と呼んでいいか分からない。
最初の「序文」というのも、そういう題の作品である。
その後の1作品が、前編と後編に分けられていて。
その前編と後編の間に、4つの短編が挟まっている。

で、問題は、その短編たちのモチーフ。
『Dr.スランプ』『サザエさん』『ウルトラマン』『ガラスの仮面』
『キン肉マン』『北斗の拳』『ドラえもん』
……という1989年当時の有名キャラ達、の同名人物(と呼ぶべき)によって、
不条理な展開がひたすら続いて終わる(終わってないかも)。

個人的に残念なのは、当の作者が、元ネタの作品たちに詳しくなさそうな事。
『Dr.スランプ』こそ、原作コミックスの細かい設定を持ち出しているが、
他は何とも。
ゾフィー(Zoffy)が女の子って設定に仰天するし、
ケンシロウはマトモな言語しゃべれてないし。
元ネタのファンが素直に楽しめる作品にしてほしかったな。

それでは。また次回。


創られた世界で、勇者は走る。

2019-09-29 | 物語全般

映画『レゴ ムービー』のDVDを見る。

公開当時は、純然たる子供向けと思い、見過ごしていた。
が、メタ構造を巧く扱ってるという評を読み、それで見た。

結論を言えば。数ヶ月ぶりに映画で泣いた。歓喜でマジ泣きした。

最初の舞台は、レゴブロックで作られた街・ブロックシティ。
主人公は、マニュアルに沿って生きる一介の作業員・エメット。
彼はひょんな事から、「世界」を救う勇者として活躍する事になる。

カラフルなブロックによる遠大なジオラマや、
刻々とトランスフォームするアイテムを眺めるだけでも見る価値ある。
主人公とヒロインとの共闘による成長も、胸が温かくなる。

そして、ストーリーの核心は――上位世界にある。
エメット達の「世界」の概念を作る、私たち現実の「世界」だ。
「大人」も「子供」も、誰もが対等であると、本作は示してくれる。

なお、この映画は字幕と吹替と、両方で見るのを強くオススメする。
歌の場面が多いから、字幕版は外せない。
逆に吹替版は、声優さん達の超絶技巧を味わえる。
何せ、キャストはたった8名。メインもモブも兼ねまくり。
特に、沢城みゆき氏・山寺宏一氏・玄田哲章氏のファンは見てほしい。

この設定で、次作の舞台は宇宙に移るという噂。
いずれ見なければ、と覚書。

それでは。また次回。


東西混交、パラレル時代劇。

2019-09-08 | 物語全般

『九十九81悪剣傳』(byタタツシンイチ)、読了。

古本屋でジャケット買い。
それで読み始めたものの、実は前半はなかなか手が進まず、
途中で暫く挫折していた。

この作品の舞台は、私たちと全く異なる歴史を辿る日本だ。
500年前に元寇に敗北し、あらゆる人種が侵略、移住してきた世界。
それでいて、日本独自の、私たちの江戸時代の文化も十二分に残っている。
言語も入り交じり、外来語は片っ端から日本語化。
「身元改め」と書いて「あいでんちばい(indentify)」は恐れ入った。

そうした設定を飲み込んでいれば、一気に読める。
乱れきった悪政の国を、文字通り斬りまくる侍・
九十九81(つくも やそいち)と、その相棒の農夫・メロスの物語。

サブタイトルには「殉死も悪いもんじゃねぇ」とある。
また、81に問われてメロスは、「乱れた畑は焼く」と答える。
さて問題。そんな状況で、国王が亡くなった時、起こる出来事は?
答えの予想はついたものの、それでも衝撃は強かった。

ところで、後の事件を思わせる箇所が幾つもあったけれど。
調べたところ続刊は出てないのかな?

それでは。また次回。


ゲーム世界からの脱出ゲーム。

2019-09-01 | 物語全般

『仮想空間計画』(by J.P.ホーガン)、読了。

『星を継ぐもの』『未来からのホットライン』『時間泥棒』と、
読んできた本どれも当たりのホーガン作品。

コンピュータのエキスパートである主人公は、
VR(仮想現実)装置事業の失敗から社会生活不適応者となり、
リハビリしながら12年を暮らしてきた。

だが彼は、自分がずっと、時間圧縮されたVR世界で生きていた事を知る。
きっかけの一つは、自分の周りの人々が、
たとえ話のユーモアを理解できない事だった。
彼らは皆、CGアニメのNPC。
会話で成長しようとしているAI達だったわけだ。

最後、VR世界からの脱出劇は圧巻。
かつての記憶を取り戻した主人公は、
得意分野の専門用語を操り、VRシステムを掌握。
偽の世界は崩壊し、彼は生きるべき現実へ還る。

これほど高度な話が、にもかかわらず非常に分かりやすく
書かれている事に驚くほか無い。
ましてこの作品、初出は1995年。
(余談ながら『クラインの壷』は1989年)
VRに興味ある方はどうぞご一読を。

それでは。また次回。