2010年7-10月号 キャンプの治安、好転の兆しなし

カクマ４ブロック５では武装強盗に１人が殺され、３人が負傷した。

2010年9月24日の夜、アブダラヒ・Ａは自宅で強盗に襲われ殺された。この強盗団はこの襲撃の前にも同じコミュニティーの4人に暴行を加えていた。アブダラヒ・Ａは、戦争でずたずたにされたソマリアのモガディシュから逃げ、家族と共に国境を越えてケニアに入り、難民申請していた。去年、ダダーブキャンプからカクマに移転してきた。

アブダラヒ・Ａは、パン焼きをわずかな収入源にしているのでオーブンを持っている。翌朝焼くパンのために、夜のうちに小麦粉（イースト）の準備を終えていた。毎日できたてのパンを配達するため、真夜中に起きて早朝まで仕事をするのが日課だった。不運なことに、新たな日を迎えることができなかった。どんなにかパンを売りたかったことだろう。

アブダラヒの近隣に住み親戚でもある目撃者は、家族がどのように襲われたかをKANEREの記者に話してくれた。「いつものように、彼は3時頃起きてパンを焼き始めた。私も眠っていなかったので、門が叩かれて、バーンと開く音を聞いたよ。フェンスは一時しのぎのものだから、襲撃者はあっという間に壊して、家の中に進入したんだ。　そいつらは飢えていて、金や携帯電話や小麦粉を出せと要求していた。その付近の家の扉を全部開けてから、アブダラヒを銃で撃ち、急いで逃げていった。　２人が銃を持ち、3人は他の武器を持っているのが見えた」

銃弾はアブダラヒの右胸に突き刺さり、病院に向かう最中に死んだ。KANERE記者がインタビューで得た情報によると、強盗団が奪った物は、自転車と2kgの小麦粉、焼き上がったビスケットだった。

全ソマリア人コミュニティー議長は、コミュニティーの治安は以前より良くなったとも述べたが、このような状況では身の安全はまだ何も保証されていない。「被害に遭った２家族は支援を受け、保護されましたが、難民はいつも怯えて暮らしています。救援機関は常に治安維持に努めてはいますが」と、議長は付け加えた。

捜査の結果、強盗団はソマリア人グループを震え上がらせ、ブロックFまで行き、その夜のあまりの蒸し暑さに家の外で寝ていた家族をめった打ちにしたことがわかった。その家族は重傷を負い、病院に運ばれた。犠牲者の１人は「奴らは５人で、金と小麦粉を要求し、ものすごく凶暴だった。金も小麦粉もこっちが欲しいくらいなのに。夫も私も銃尾で殴られ、今でも体中が痛む」と、IRC（国際救援委員会）難民病院で語ってくれた。

ブロックDでの別のインタビューでは、M.R氏も同じ襲撃者に襲われたと訴えた。　ひどく殴打され、今は杖無しでは歩けないのだという。さらに、誰も助けてくれなかったし、コミュニティーの治安部隊も救急車を呼んで病院に搬送するのを拒んだという。救急車を断られたのは、ソマリア人の中にある部族間の不和が関係しているにちがいない、とKANEREに話してくれた。

KANEREはIRC医療担当者のコメントを得ようと接触したが、病院には看護師しかいなかった。勤務中だったエチオピア人看護師は次のように話してくれた。「治安はどんどん悪くなっています。あの２人はレントゲン写真を撮り、もう結果が出ています。犠牲者のS.Mさんは片手に２カ所の骨折があり、すぐにギプスをはめます」