Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2021年2月号 COVID-19に直面する難民の自殺増 / KANEREスタッフライター トロッサ・アスラト

2021年02月14日 | 人権
【写真】自殺防止に取り組むNGOのキャンペーン 撮影:KANERE

自殺は国を追われた状況ではよく起きることだが、カクマ難民に見られる自殺の蔓延は、深刻な問題が増えていることを示すもので、複数のセクターからの一刻も早い援助が必要だ。
KANEREはカクマ難民キャンプと新しいカロベイエイ居住区での自殺の事例を数例取材した。一月、わずか一か月の間に、男女3名が明白な自殺行為によって亡くなったことを受け、難民キャンプの住人たちに襲撃が走った。

ドナルド・トランプ前アメリカ大統領の就任以来、第三国定住の可能性が低くなったことを受けて、カクマ難民キャンプでは男性・女性を問わず自殺や自殺未遂が増えていた。国際救済委員会(IRC)カクマ事務所への聞き取り調査による市民メディアの発表では、カクマ難民の自殺者は2016年には3名だったが、2017年には9名になった。

カロベイエイ新居住区の難民リーダー、サンティノは次のように話している。「難民キャンプでの生活は日に日に悪くなっていて、それがまさに人々が自殺を考える理由なんです。生活環境を改善し、精神的にサポートすれば自殺者は減らせます」

特に米国で起きた難民の第三国定住政策の変更は、カクマ難民キャンプの難民に大きな影響を与えた。2017年1月にトランプ政権が発足した際、ケニアだけでも約14,000人のソマリア難民の再定住手続きが延期された。多くの難民たちが抱いていたアメリカン・ドリームは、難民を国内の安全への脅威と見做したトランプ政権が行った厳しい政策によって打ち砕かれた。しかしながら、米国シンクタンクのカトー・インスティチュートが2016年に行った移民とテロリズムの関連に関する発表では、難民が引き起こしたテロ行為によってアメリカ市民が死亡した確率は、36億4千人に1人となっている。

UNHCRはアメリカへの再定住延期の影響の重要性を認め、国際社会に対し、カクマ難民キャンプの状況を今後数年で改善させる方策に言及した。これに加えてUNHCRは2018年4月、キャンプ内の荒廃や自殺率の増加についても報告している。

カクマの若手リーダー、デンザがKANEREに次のように語った。「自殺者増加の原因は鬱やストレス、希望を持てない事だ。UNHCRが、サービスへのアクセス、調査、就労機会の提供や教育など継続的な解決策を提供してくれれば、自殺問題に対処できる」

食糧援助を頼みとしながら収入が全くないか殆どない中、狭い空間で何十年も生活を続けることは、難民の生活レベルを引き下げ、時に自傷行為を誘発することもある。これは、米国を拠点として難民の権利を保護している組織、難民健康テクニカルセンターの言葉だ。

長年にわたって庇護を希望している人々は、将来に不安と疑念を抱くものだ。たいていは深刻な経済状況にも直面して不安がさらに募り、自身を傷付ける行為にまで発展してしまう。

何年も状況が変わらない難民は、自分の問題を解決する糸口すら見つけられず、鬱になったり自殺傾向を持つなど、複合的な心の病に陥りやすくなる。こうしたメンタルの問題に対処する施設は、カクマとカロベイエイにはないに等しい。しかも、この傾向はトランプ政権の采配によって深刻な影響を受けてきた。とはいえ、世界保健機関(WHO)による自殺防止のための報告書(2017)によれば、自殺は治癒や防止が可能な精神問題なのである。

カクマ2のコミュニティーリーダー、ハフソ次のように言う。「自殺はいつも鬱から始まる。ここでの生活は辛く、ゴールもなければ必要なものすら満たされない。そんな状況に置かれたとき、人々の頭の中には自殺という選択肢が浮かんでくる」

カクマでの自殺は、難民社会における深刻な健康問題となっている。しかしながら、自殺はタイムリーで科学的根拠に基づいた、コストもかからない措置で予防することができる。問題は複雑なので、自殺の効果的な防止や減少のための取り組みを、一つのグループや組織に任せるべきではない。事を最小限に抑えるために、社会的・文化的・経済的な諸要素を強化しなければならない。また、自殺防止のためには、あらゆるセクターからの積極的関与と共に、各機関の協力体制が欠かせない。カクマ難民キャンプで起きている人間性を脅かすこの大災難を回避するために、国内外の関係機関は共に立ち上がるべきだ。


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