トーベン・ウルリック・ニッセン、イェスパー・ローレンツ・ベルテルセン、KANERE記者による寄稿
「旅するアート」はデンマーク文化・発展センターの支援による企画である。3月21日から4月6日、デンマークの芸術家たちがカクマにやって来た。滞在中、「旅するアート」チームは自らの経験を語り、難民たちは深い関心、喜びをもって彼(女)らを迎えた。デンマークの芸術家たちはKANERE記者、芸術家、難民、支援団体代表と会った。
この企画は、芸術とアイデンティティをテーマにしている。難民キャンプの芸術家の暮らしぶりを紹介し、デンマークの芸術鑑賞者と過酷な状況下で創作活動をしている難民の交流を目指している。まずキャンプ内に住む芸術家を探しだし、年末にデンマークで開催予定の美術展に向け、作品を制作するように依頼した。「旅するアート」によって、キャンプでの生活状況を、より多くの人に知ってもらうことができる。難民たちの力や能力も、多くの人に知ってもらうことができる。
カクマのような難民キャンプで生活するのは、苦しいものだ。じりじりと焼けるような暑さ、砂ぼこり。なによりも、キャンプに住む人たちは、母国から逃げる途中で心に傷を負っている。多くが家族を失った。親を失った子どもも大勢いる。それにもかかわらず、カクマには美も、温かさもある。デンマークの芸術家たちはキャンプ生活に少しずつ慣れ、歩きまわり、人びとに会い、たくさんの話を聞いた。難民たちの温かい歓迎ぶりだけでなく、自らの文化を守る力と決意に、強く感銘を受けて帰っていった。
難民たちは、単なる犠牲者ではない。未来への限りない可能性を秘めた人たちである。できあがった作品の中には、日々の劣悪な環境を乗り越える力を感じさせるものもあった。写真、肖像などの作品は、11月に展示される予定である。個人、芸術家としてのアイデンティティを保持しながキャンプに生きる難民芸術家たちにとって、芸術とは何なのか。これが展示会で明らかになるだろう。芸術、また芸術家たちの存在がいかに希望の支えとなり、いかに母国を離れた人たちの力となるか――展示会を通して人々の考えを深めるのがねらいだ。
このため、カクマ難民キャンプに住む多くの芸術家たちに参加を呼びかけた。「難民は、お金をねだるだけの悩み苦しむ人ではない。力を秘めた強い人たちです」と、イェスパー・ベルテルセンはKANERE記者に語った。こうした芸術家たちは、インターネット上のギャラリーにも自らを売り込む。これは、発展途上国の芸術家を支援する、初めてのフェア・トレード美術展ではないだろうか。
「旅する芸術」展は12月、デンマークで開催され、メディアでも大々的に取り上げられる予定である。多くの人に注目され、キャンプの芸術や環境に関心を持ってもらえるだろう。主催者は、「旅する芸術」が成功することを望む。また可能であればデンマークのボランティアの手も借りて、毎年カクマでワークショップを開き、若い芸術家たちのために美術展を開いていければと思う。
最後に、主催者たちはKANEREに対し、キャンプに温かく迎えてくれたと深い感謝の意を表した。KANEREから多くを学び、読者にはKANEREを支援し続けるよう呼びかけた。
なおデンマークでの美術展や、キャンプについての関心を高めようという動きについては、www.artontherun.dkを参照してもらいたい。
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