Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2019年7月号 宗教的理由でも反発を受けるカクマでの生体認証登録

2020年06月17日 | 最新ニュース
イブラヒムとカバタ、KANEREスタッフライター

外国人と難民を含むケニアの全居住者についてデータベース化するために、政府は生体認証登録を開始した。難民キャンプも対象になる。

登録した全員が通称Huduma Namba(Service Number)の固有番号を受け取る。国家統合個人情報管理システム (NIIMS)によって発行されるもので、2018年の大統領令1号によると、番号には登録者の指紋、顔認識による生体認証データが添付される。カクマでの登録は、4月13日の朝に食料配給所 1で始まった。登録作業は52日間に及んだ。

国家統合個人情報管理システム(NIIMS)は全ケニア国民およびケニア滞在の外国人を対象に義務化された個人登録の国家プロジェクトだ。

政府は、生体認証登録によって詐欺や不正を防止し、個人データの信頼性を高め、行政サービスを強化しようとしている。ところがこのプロジェクトは国民と人権団体によって非難されている。ケニア人権委員会 (KHRC)やケニア国民人権委員会 (KNCHR)、ヌビア人権フォーラム (NRF)などの人権団体は、国民の個人情報の公開は、すべての人々は個人情報を保護される権利を持つという憲法に違反すると表明している。

政府による難民の登録作業は一般市民と比べ、あまり進んでいない。UNHCRもケニアの難民業務担当政府機関である難民事務局 (RAS)も、カクマで進められている難民の生体認証について何も言及していない。キャンプの住人の中には、これでは情報が足りないと感じている人もいる。


【写真】生体認証――カクマでの難民登録には抵抗がある 撮影:KANERE

KANEREにインタビューを受けた難民は、ゾーンやブロックやコミュニティのリーダーから、いまだに情報を得てないと言っている。キャンプの中の主に南スーダンからのクリスチャンの中には、生体認証は彼らの宗教的思想に反するとしてプロジェクトへの参加を拒否している人もいる。「もしこのプロジェクトが道理にかなったものであるならばなぜ、UNHCRを通じてゾーンのリーダーへ、そしてブロックリーダーへという、彼らの連絡窓口を通って通知されないのか」と南スーダンの長老教会の牧師が疑問を投げかけた。

その他の人たちは単純にこのプロジェクトの論理に戸惑っていた。 ゾーン2のブロックリーダーであるムズィバラアさんは次のように述べた。「私はここカクマでUNHCRの下に登録されている。なぜ市民向けにデザインされたプロジェクトに登録されなければならないのか」

エチオピアからの国境を2001年に超えてきた難民、アバ・アルシさんは、次の様な説明を受けた。「UNHCRホットラインに電話をしたところ、難民も登録の要請を受けているとだけ言われた」。

キャンプでの登録がどの程度厳格なものか疑わしい。難民の報告によると、登録には難民IDやUNHCRが発行する登録証明書など多岐にわたる書類が必要だ。

政府が国中に出した警告では、登録しない者は政府のサービスを一切受けることができないという。従って、情報不足は難民の将来に不利益をもたらすかもしれない。

Huduma Nambaを持たない者は政府のサービスを受けられないという脅しは、移動するには難民事務局から通行許可証を取得しなければならないケニア内の難民と難民申請者にとって、不利益になる。さらに、UNCHRは難民事業を徐々に政府に移管しようとしているので、登録しなかった難民申請者は、難民認定や食料配給券の受領の際に問題となるかもしれない。

アムネスティインターナショナルは4月1日のレポートで次のように述べている。「現行法の国家統合個人情報管理システムの体制は、ケニア国憲法第31条に含まれる基本的な個人権と公民権上の国際規約第17条に抵触し、深刻な人権侵害を起こすと懸念している」

アムネスティインターナショナルのイルング・ホウトンケニア常任理事は次のように述べている。「ケニアで義務付けられている生体認証登録システムの法的な体制は、市民や国内の外国人および難民のプライバシーの権利に甚大なリスクを及ぼすものだ。議会は、侵害箇所を迅速に廃止し、早急に国家特別委員会によるデータ保護法案を作り、個人情報を保護する枠組を作るべきである」

KANEREのインタビューを受けた南スーダン難民は、登録は彼らの宗教的信念に反するとし、登録への抵抗を続けると述べた。多くの南スーダン難民は登録をボイコットしている。伝えられるところによると、Hudumaへの登録を避けるためウガンダに移動しようとしている者もいるという。

ヌエル族コミュニティのリーダーであるゴージ・オルさんは「ナイロビの司教より、私たちはHudumaに登録すべきではないと指示を受けた。」とKANEREに語った。


宗教上の理由により、エチオピア、ルワンダ、ブルンジ、コンゴからのキリスト教難民の中にも登録しないと表明している者がいる。

「自分の人生を666に捧げるつもりはない」とニラマクズッィラ牧師も言う。彼はカクマのMCK教会のブルンジ人牧師だ。キリスト教の宇宙論によると番号666は「獣」を意味する。「用心してください。私たちは今、世の終わりにいるのです。「獣」は自分の配下のすべてのものを奪い取ります。ヨハネ黙示録13章18節と16章~18章を比べながら読んでください」

キャンプのホンコンマーケットのような場所は、南スーダン出身のディンカ族が圧倒的に多く、HudumaNambaの登録官たちが襲撃されたり追いかけられたりした。さらなる襲撃を避けるために、登録官はゾーン1の現地警察の保護下で仕事をしている。

題名「砂漠の声」という5分間の宗教ビデオがYouTubeに匿名で投稿された。ビデオは、新約聖書やヨハネ黙示録13章18節を引き合いに出して、神の計画を理解し神の計画に沿って行動することで、ケニアなどにいる「獣のしるし」から逃れることができると説明している。ビデオはKAKUMAのキリスト教難民を含む多くの人々に視聴されている。

難民を混乱させているもう一つの問題は、国籍の請求権に関するものだ。ソマリア人の中には、Huduma Namba登録は彼らの再定住の手続きに影響を与えるのではないかと懸念している人もいる。またある者は、Huduma Namba登録によってケニア内で地域に融合したいと考えていることがわかると、彼らの難民という地位が取り消されるのではないかと心配している。

「難民は期限前に登録するように」登録手続きを遂行中の登録官は、KANEREの取材にこう話した。「Huduma Namba登録をしたからと言ってケニア国民にするわけではない。難民は難民のままだ」

プライバシーや宗教的影響、再定住申請についての懸念があるとは言え、プロジェクトが始まって以来、多くのソマリア人とエチオピア人が登録している。


【写真】カクマではケニアのHuduma Namba登録に抵抗がある 撮影:KANERE

エチオピアコミュニティ・カウンシルの長老、ダニエルさんが考え深げに話した。「難民は面白い。私たちは2016年の調査で指紋と彩光スキャンを登録した。私たちは難民IDの申請時など、様々な機会に指紋を政府に提供してきた。政府は難民全員のデータをすでに持っているのだから、今さら情報漏洩を理由に登録しない理由はない」

カクマキャンプに比べ、カロベイエイ統合移住地での登録状況はかなり異なる。治安悪化による犠牲者が増えているため、関係団体が話し合いに来るまで登録はしないと表明している。

ヴィレッジ3の代表は説明する。「私たちは、ここの治安問題を話し合うためにUNHCRの代表に来てほしいと要求している。しかし誰も来ないので、私たちはHuduma登録をボイコットすることに決めた。彼らが来るまで、ボイコットを続けるつもりだ」

政府発表の情報によると、登録されたすべての個人情報はNIIMSに保存され、様々な政府機関とリンクされる。リンクされたデータはオンタイムで、土地登記所、社会保障基金、法執行機関、国家医療保険基金、ケニア国税庁、金融機関、入国管理局、国家運輸安全局、独立選挙と選挙区委員会、大学など、政府機関に伝達される。

KANEREはUNHCRにコメントを求めているが、いまだ返答は得られていない。

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