東京エレクトロンの2025年3月期の純利益見通しは市場予想並みとなった
東京エレクトロンは10日、2025年3月期の連結純利益が前期比22%増の4450億円の見通しだと発表した。
生成AI(人工知能)向けなどで半導体製造装置の販売が回復する。純利益は市場予想並みの水準を確保し、株価は時間外取引で上昇した。業績見通しが市場予想を下回った他の半導体関連と明暗が分かれた。
純利益はQUICKコンセンサス(前期比24%増の4530億円)並みの水準となった。
売上高は前期比20%増の2兆2000億円、営業利益は28%増の5820億円を見込む。配当は年481円と88円増やす。併せて800億円を上限とする自社株買いも発表した。
新規装置の売上高は24年4〜9月期に7700億円、24年10月〜25年3月期に9100億円と、22年4〜9月期(9177億円)に近い水準へと復調する
。AIの開発・運用に使うサーバーの旺盛な設備投資を背景に、最先端のDRAM(メモリーの一種)やロジック向けが伸びる。
東エレクは需要見通しも据え置いた。ウエハーに回路を作る「前工程」向け装置の24年の世界市場は前年比5%増の1000億ドル(約15兆5000億円)と予想する。
「年後半から最先端DRAMの投資回復を見込む」(河合利樹社長)。弱含む長期記憶用のNAND型フラッシュメモリー向けも「来年以降は投資が大きく戻ってくると期待している」(同社)。
注目のAI関連需要は25年にかけて本格的に立ち上がると見る。「今期、来期までの需要は見えている」(同社)といい、25年のAIサーバー向けの製造装置市場は160億ドル程度と想定する。
決算発表を受け、私設取引システム(PTS)では東エレク株が一時、10日の東証終値から2%上昇した。
アセットマネジメントOneの前川文彦ファンドマネジャーは「研究開発費を約500億円増やすなかでも期待を裏切らない利益計画を出した。自社株買いも発表し、及第点の内容だった」と指摘する。
東エレクは日本企業の株高をけん引してきた。
4月4日には昨年末比6割上昇し、年初来高値を付けた。PER(株価収益率)は5月10日時点で47倍台と23年1月(約17倍台)の3倍弱にまで切り上がった。ゴールドマン・サックス証券の中村修平アナリストは「今期の業績回復は途上だ。来期にかけて市場期待を上回る成長が見えてくるかが重要になる」と話す。
一方、これまで半導体関連は業績見通しが市場予想に届かず、株価が調整する例が相次いだ
。オランダの製造装置大手ASMLホールディングは4月17日、24年4〜6月期の売上高見通しを57億〜62億ユーロ(約1兆円)と発表。上限値で市場予想(QUICK・ファクトセット、63億7490万ユーロ)を下回り、米国市場で株価は7%下げた。
アドバンテストは4月26日、25年3月期の連結純利益が前期比8%増の670億円の見通しだと発表した。市場予想(QUICKコンセンサス、1013億円)を大きく下回り、翌営業日に失望売りが膨らんだ。
半導体関連への過熱していた期待が修正された格好だが、中長期的な成長見通しは崩れていない。「AI期待はどこかで盛り上がってくる」(大和証券の柴田光浩シニアストラテジスト)。東エレク決算を機に市場に安心感が広がれば、先行きに強気な見方が再び増える可能性もある。
(大道鏡花)