ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

カール・ブロック

2019-12-12 | わたしの思い

Carl Heinrich Bloch-Wikiから 

 

 

 



12月12日のクリスマス・キャンペイン・チャレンジ:芸術作品や歌,詩、その他創造力を発揮できるものを作り、それを友達や愛する人に分かち合うことによって、救い主への愛や思いを伝えてみよう。

 

 

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スィスティーナ聖堂の天井画やピエタの像を制作したミケランジェロや、ぼんやりほの暗い聖堂の壁に光る宗教画のルーベンスやドラクロワの創造力や才能や技術もない私は、ひたすら芸術鑑賞に徹する。ただし、おどろおどろしささえ感じさせるひと昔(つまり19世紀後半以前)前の多くの宗教画よりも、私が好むのは、北欧デンマークの巨匠Carl Heinrich Blochカール・ハインリック(ヒ)・ブロック(ホ)である。その絵画展を五年ほど前他州に見に行った。それは夫と私のアルマ・マタ(つまり母校)の美術館で催されていた。


何故彼の作品に私が非常に惹かれるのかは、まずその澄み切った筆遣いに多くの感情が込められているからだろうか。ブロックがデンマークのヒレレズにあるフレデリクスボー城の祈祷室のために、依頼されて描いた新約聖書に関する秀逸な絵画23点は、私の最も好きな宗教画である。心地よい潔さがあるように感じられるのだ。ブロック自身の深い信仰と優しさと思いやりが、繊細でありながらも献身と愛を備えた説得力のある救い主のイメージを如実に描いていると思う。

 

ブロックの作品は勿論どれも、間近く見るとその精緻な筆遣いがしっかりわかり、凡人の私を至って感服させる。特に私の心をつかんだのは、Christ with Mocking Soldier(キリストと嘲笑う兵士)である。キリストの瞳が悲しみを極限あらわしているこの絵画は、画集や書物でおなじみだが、実際に間近で目にしてハッと心を突かれる思いになった。キリストの目には浮かぶ涙が今そこに溢れているかのように描かれているのだ。だから、この絵のキリストの瞳は遠くから見ても、悲しいのだ。


Bloch, Carl (1834-1890) - Christ with Mocking Soldier


新約聖書マタイによる福音書第27章27~31節にある場面を見事にキャンバス上に表したのがこの絵である。「...総督の兵士たちは、イエスを官邸に連れて行って、全部隊をイエスのまわりに集めた。そしてその上着をぬがせて、赤い外套を着せ、またいばらで冠を編んでその頭にかぶらせ、右の手には葦の棒を持たせ、それからその前にひざまずき、嘲弄して、『ユダヤ人の王、ばんざい』と言った。また、イエスにつばきをかけ、葦の棒を取り上げてその頭をたたいた。」

 

ブロックの作品の他に、幾人かの同じ画風の絵画の展示もあり、その中でFrans Schwarzフランツ・シュワーツのAgony in the Garden「ゲッセマネの祈り(苦悩)」が印象に残った。通常の人間ならばのたうちまわる苦悩を抱え、天父に祈るキリストを天使が抱く姿で、見ていて涙がこぼれるほどの辛さを感じられる力強い絵画である。


 Agony in the Garden by Frans Schwartz, 1898

 

 

ちなみにフランツ・シュワーツ描くこの天使は、大きな美しい翼を持っている。面白いことに、旧約聖書では、出エジプト記、エゼキエル書、ダニエル書、ヨハネの黙示録、イザヤ書、創世記に、天使が人類にまみえた折、そこには翼や「羽ばたく」様子などが書かれている一方、新約聖書には、特に翼については書かれてはいない。例えば、ルカによる福音書第2章13節には、「するとたちまち、おびただしい天の軍勢が現われ、御使と一緒になって神をさんびして言った」とある。御使は(天使と同意語)「たちまち」現れたが、それが翼を使っているのか、あるいは人が翼を見たのかは一切書かれてはいない。


多くの学者や宗教家、そして私のような者まで、究極、天使は翼のある天使とない天使があると理解する。そして実は翼のあるなしを厳格に取り決めることは重要ではなく、誰の信仰にもなんら影響は与えない。あの夜、東方の三賢者や羊飼いたちが見た輝くベツレヘムの星に似て、それが彗星なのか、惑星間の合なのか、はたまた極超新星なのか、はっきりとした答えがないように、そしてそれがなんら信仰に影響を及ぼさないのと同じである。聖典に精通しているとしても、謎はあり、それをすべて理解するのは、この世だけでは足りない。そしてそれが信仰というものである。


謎は謎として、私はブロックやシュワーツの絵画を鑑賞することによって、それらが放つ天来の妙想を享受したい。それで十分である。


【後記-おまけ】

12月12日の今年最後の満月は、合衆国東部に置いて12:12に100%満月となる。カリフォルニアでは11日午後9:12に満ちる。寒月と呼ばれるこの満月は、数字の12が多いので、ゲンを担ぐ人々もいて、宝くじを買ったり、結婚式さえ挙げる。12という数字は完全な数の約数を持ち、その約数の合計も完全数なので崇高あるいはラッキーな数字と見なされている。この時期よく耳にする歌“Twelve Days of Christmas,” 「クリスマスの12日間」は、12月25日に始まり、1月5日までのことを指す。また時計は12に区切られているし、一年には12の月があり、12の星座、古代ギリシャのオリンポスには12の神々、仏教でも12の生活段階がある。聖書で広く使われている数字でもあり、12は使徒の数、イスラエルの部族数であり、 黙示録には、12の門と12の天使がいる。


一週間後の12月21日に冬至を迎える前の最後の満月は、適切には、「長い夜の月」とも呼ばれ、冬の間の暗闇の時間の長さに由来している。その夜長を利用して、2018年70周年を迎えた天文年鑑2018年度版をじっくり読みたいものである。


 

Farmers’ Almanac

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