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ロサンジェルスのゲティ・センター
日本の方々のブログには、学ぶことが多い。 祖国について(と大仰だが)改めて教えられることが頻繁にある。植物や鳥類の和名もさることながら、美術や演劇に至るまで新しい知識を得ることができる。まさに新約聖書ヤコブの手紙第一章五節にあるように、「...、知恵に不足している者があれば、...願い求めるがよい。そうすれば、与えられるであろう。」に近い。パーソナル・コンピューターやインターネットの発達や利便性というのは、悪影響も多大だが、こうした恩恵をもたらしてもくれている。
日本は小さな国ではあっても、注目すべき絵画展や美術展が始終催され、そこへ訪れた方々の感想ブログを拝読するのも楽しい。先日は、ある方がクリムト展へいらしたことをブログにお書きになった。そして今日は別の方が明治神宮外苑美術館での展覧会についてお書きになっていらした。それを読み、「うわぁ、羨ましい!日本はいいなあ」とつぶやくのが常の私。そのつぶやきを見逃さなかった夫は、目が点になるという表現の典型的な顔つきで、「え? ロサンジェルスのゲティ・センターやゲティ・ヴィラやSFMOMA(San Francisco Museum of Modern Art)だってあるじゃないの! 灯台もと暗しだね。」と言う。「それにスミソニアンだって、捨てたもんじゃないでしょう?」と追い打ちかける。そうだった、そういえば、アメリカにも美術・博物館はあるんだった。なんでも日本だから、もっと良い、と思うたちの私である。
うちから運転して四時間かかるかかからないかでゲティ・センターに行ける。405フリーウエイ(サンディエゴ・フリーウエイ)からも丘(というよりも崖)の上に白亜の建物が見える。ストリート・レベルに位置する駐車場に$20支払うとゲティ・センターのトラムが頂上のセンターまで運んでくれる。入館料は只。この八月から十月までセンターでは18世紀のパステルによる肖像画展を催す。ゲティ・センターは、スイスの巨匠と呼ばれるリオタール(Jean Étienne Liotard 1702-1789)の「七歳のマリア・フレデリーケ」の肖像画を所蔵しているから、それももちろん展示される。この肖像画は、薄桃色の頬をした七歳の少女が生きているかのように愛らしい。パステルの持つ柔らかさがそれを助けている。これは是非行かなくては。
一方サンフランシスコ現代美術館SFMOMA(San Francisco Museum of Modern Art)は、興味深い。現在アンディ・ウォーホール展を九月二日まで行っている。「1960年から後のドイツ美術」も面白そうだ。しかしながら、よほど気に入った作家と作風でない限り、現代美術は、モンドリアンは許容できるが、たいして「跳んで」いない私の美的感覚にはあわないことが多い。ルイーズ・ブルジョワの巨大な蜘蛛の彫刻を目のあたりにしては、到底夢見がいいとは思えず、どうせなら円谷プロダクション全怪獣図鑑の頁をくくるほうが平和な気がする。現代美術が気難しいのと同様に私も現代美術に関しては気難しい。
SFMOMA/Photo: © Henrik Kam
サンフランシスコ現代美術館か円谷プロダクションか。
サンフランシスコにはウオルト・ディズニー・ファミリー博物館もある。四万平方フィートの敷地にあり、ここではディズニー・キャラクター達が出迎えはしないが、様々な趣向を凝らした展示物には歴史的価値もあり、また子供も大いに楽しめる博物館である。ここはサンタ・ロサにあるチャールス・シュルツ博物館(別名:スヌーピー、あるいはピーナッツ博物館)よりももっと規模があり、展示物も多いが、同じように楽しめるはずである。
ウオルト・ディズニー・ファミリー博物館
SFMOMAよりも、私はラ・ブレア・タール・ピット博物館(La Brea Tar Pits)を再訪して、天然アスファルトの池から見つかった太古の剣歯虎や馬や鳥の骨でも見ていたい。このアスファルト池は現在もぷくぷくとメタンガスを噴き出させ、タールの匂いがあたりに蔓延している。ロサンジェルス市内にあるまさに生きている自然博物館である。つい先日博物館近くの街角で、このアスファルトが滲み出してニュースとなった。タールの匂いにむせて頭痛も起きがちだが、この博物館は私の好きな場所である。
The La Brea Tar Pits Credit: Graham via flickr
ラ・ブレア・タール・ピット博物館
そして時間と余裕と$があれば、やはりスミソニアンに行きたいものだ。長女のクラスのシャパロン(付き添い)として、最後に行ったのは、もう20年少し前だ。呪われている青く妖しく輝く巨大なホープダイアモンドもいいが、博物館も美術館も国立航空宇宙博物館もみな圧巻である。ワシントンD.C.まで飛ばずとも、南加サンディエゴのバルボアパークにも博物館や美術館がある。そこでは数年前に死海巻物の展示会があって、家族全員で見にいった。バルボアパークやサンディエゴ周辺には素晴らしい博物館がたくさんあるのだ。
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灯台もと暗し。同じ州内で、国内で、ここだってかなり「文化」を感じられ、楽しめる施設があったのだった。つい神宮の森に惹かれて展覧会は東京で、日本で見たい、と思ってしまう狭量な私だった。この夏アメリカを訪問なさる皆さまが、こうしたアメリカが誇る博物館や美術館を是非ご覧になられることを願っている。