ハラボジの履歴書

祖父が日本に渡って来なければならなかった物語を記憶に基づき
在日100年が過ぎようとしているいま書き留めておく。

ハラボジの履歴書  8

2013年06月22日 | Weblog
 「俺は知っているんだ。お前に懐には、100円あるということを」。
口に酒を入れながら、にやにや笑いながら顔を見た。
「兄様から、200円あづかっている金があるじゃないか」。
「お前はどこでそんな話をなぜ知っているんだ」。

 「ふん、俺の鼻と耳は、金のあるところに向くようになっている」。
「なあ、ピョンオン、悪いことは言わん、その金を双月、いやひと月でいい、
貸してくれれば、倍にして返すから、どうだ」。

 「そんな金はもうない」。
「そうか、兄様は明後日帰ってくる。言われていた水路の補修、お前は
どうするんだ」。
「いらぬ心配はするな、もういいから。この酒持って、とっとと、帰れ」。
ピョンオンはちゃぶ台の酒瓶を持って大完に突き出した。
「おうそうか、そうしよう。だけど俺は兄様にあって言うぞ、おまえと博打場
に行って、お前が100円擦ってしまったことを、それでもいいなら、そうしろ」。

 大完は出された酒瓶を大事そうに受け取り、帰る仕草を見せた。
「わかった、少し待て、考える時間をくれ」。
「いつまでだ」。

「うーん、兄様が明後日帰るまでに返事を出す。ただし、その代り水路の
補修が全くてをつけていないので、それでは、兄様からどうなったか問われる」・
「だから、お前は数人の人夫を明日連れて仕事に、取りかかったような
形をとってもらいたい。それができるか」。

 「いいよ、だけど、とりあえずの金は用意しろ。10円でよい、どうだ」。

 「よし、わかった」。と言って。奥の部屋に入り、床下に隠した
ツボから10円を取り出した。

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